
「日銀が利上げするらしいから、そろそろ円高になるんじゃないの?」

「でもニュースを見てると、逆に円安が進んでる気がするんだけど…」
結論から言うと、2026年8月時点で日本銀行の9月利上げ観測は市場でかなり強まっているにもかかわらず、ドル円相場はむしろ1ドル=160円台をうかがう円安方向で推移しています。「利上げ=円高」という単純な図式は、必ずしも成り立たないのが為替相場の難しいところです。この記事では、直近の報道をもとに事実関係を整理し、そこから資産形成における「為替を単純化しすぎない」考え方を一緒に確認していきます。
※本記事は2026年8月22日時点の報道・情報をもとに作成しています。為替相場や金融政策の見通しは日々変化するため、最新の状況は日本銀行や信頼できる報道機関の公式情報でご確認ください。
ニュースの要点整理 日銀の利上げ観測強まるも円安基調が継続
2026年8月21日、日本経済新聞は「円相場再び160円視野、日米中銀幹部が講演へ 日経平均は上値重く」と報じ、ドル円相場が再び160円を意識する水準まで円安が進んでいることを伝えました。同日の日経平均株価も前日比200円43銭安と反落し、上値の重い展開になったとされています。
📰 出典:円相場再び160円視野、日米中銀幹部が講演へ 日経平均は上値重く|日本経済新聞
一方で、日本銀行の金融政策をめぐっては、9月の金融政策決定会合での追加利上げを織り込む見方が市場で強まっていると報じられています。OIS(金利スワップ)市場などから算出される利上げ確率は7〜8割程度まで上昇し、2年物国債の利回りも一時1.62%と、実に31年ぶりの高水準をつけたと伝えられました。物価上振れへの警戒から、早ければ9月にも利上げに踏み切るとの観測が広がっている格好です。
📰 出典:早ければ9月利上げも=物価上振れを警戒―日銀|時事通信(イブニングチェック)
通常、「利上げ観測が強まる=その国の通貨が買われやすくなる」というのが教科書的な理解です。しかし外為どっとコムの為替専門メディアは、2026年8月20日付の記事で「日銀が9月に利上げしても円安が止まらない」可能性がある理由を、次の3点に整理して解説しています。
📰 出典:【2026年ドル円見通し】日銀9月に利上げか?それでも円安が止まらない3つの理由|外為どっとコム マネ育チャンネル
- 実質金利がマイナス圏から抜け出せない:9月または10月に利上げしても政策金利は1.25%前後にとどまる見通しで、物価上昇率を差し引いた「実質金利」で見ればなおマイナス圏が続くとみられ、積極的に円を買う動機になりにくいとされています。
- むしろ米国側の金融政策の影響が大きい:日銀が利上げしても、米国の雇用・物価が底堅くFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測が後退したままなら、日米の金利差はそれほど縮まりません。円高転換のきっかけは、日銀の動き以上に米国側の金融政策にある可能性が指摘されています。
- 原油高・財政要因という別の円安材料:原油価格の上昇による貿易赤字拡大への懸念や、話題となっている消費税減税の財源が未定であることも、円の重荷になっているとされています。
今後の材料としては、2026年8月27日に日銀の氷見野良三副総裁がさいたま市での金融経済懇談会で講演を行う予定であることに加え、同27〜29日には米国で開催されるジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が発言するとみられており、市場はこの2つの講演内容に注目していると報じられています。
📰 出典:円相場再び160円視野、日米中銀幹部が講演へ 日経平均は上値重く|日本経済新聞
筆者の私見・考察 「利上げ=円高」という思い込みを一度疑ってみる
ここからは筆者の私見です。ニュースの見出しだけを見ると「日銀が利上げに動きそうだから、そろそろ円高が進むのでは」と考えたくなるのは自然な反応だと思います。実際、過去の教科書的な為替理論では、政策金利を引き上げた通貨は相対的に魅力が増し、買われやすくなるとされてきました。
ただ、今回のケースが示しているのは、為替相場は「片方の国の金融政策」だけで動くものではなく、①日米の金利差そのものの水準、②実質金利(名目金利から物価上昇率を引いたもの)、③貿易収支や財政といった構造要因、④市場参加者の期待や思惑など、複数の要因が同時に絡み合って決まるという当たり前でありながら見落としやすい事実です。「利上げ観測=即・円高」と単純化してしまうと、実際の値動きとのズレに戸惑うことになりかねません。
もちろん、これは「日銀が利上げしても円安が続く」と断定しているわけではありません。専門家の間でも見方は分かれており、氷見野副総裁やパウエル議長の発言次第で相場が大きく動く可能性も十分にあります。あくまで「単純な図式で将来を決めつけるのは危うい」という姿勢を持つことが大切だと筆者は考えています。
資産形成への発展 為替の「思い込み」に資産配分を委ねない
こうしたニュースから、資産形成において意識したいのは次のような視点です。
為替の方向感を正確に言い当てることは、プロのエコノミストや為替ディーラーでも簡単ではありません。個人投資家が「次はこう動くはずだ」という予測に自分の資産配分を大きく賭けてしまうと、予測が外れたときのダメージも大きくなります。だからこそ、円安・円高どちらに転んでも大きく崩れにくいように、あらかじめ資産を分散しておくという考え方が重要になります。
具体的には、日本株だけでなく海外株式やドル建て資産を組み入れた投資信託・NISA口座での積立などを通じて、通貨や地域を分散しておくことが、為替の思い込みに振り回されにくい資産形成につながります。すでにNISAなどで長期・積立・分散投資を続けている方は、目先の為替ニュースの見出しに一喜一憂して積立設定を頻繁に変更する必要は基本的にありません。
具体的なアクション・心構え 目先の値動きより「仕組み」を理解する
- 為替や金融政策のニュースを見たら、まず「誰が」「何を根拠に」そう言っているのかを確認する習慣をつける
- 「利上げ=円高」のような単純化された図式を鵜呑みにせず、複数の要因が絡んでいることを念頭に置く
- すでに積立投資をしている場合、短期的な為替の思惑だけで設定を変えず、長期の方針を維持することを基本にする
- 為替リスクが気になる場合は、一度に判断を変えるのではなく、資産配分(国内・海外、円建て・外貨建ての比率)を見直すところから考える
- 円安・円高いずれについても「必ずこうなる」といった断定的な情報には注意し、公式発表や複数の報道を確認する
注意点・NG行動 やってはいけない為替との向き合い方
- 為替予想を根拠に、短期売買やレバレッジを効かせた取引に手を出すこと(為替証拠金取引などは元本を超える損失が生じる可能性があります)
- 「利上げ観測が強いから今のうちに」といった煽り文句だけで、根拠を確認せず外貨建て商品や暗号資産などに一括で資金を投じること
- SNS上の「〇〇円まで確実に動く」といった断定的な予想を鵜呑みにすること
- 為替差益を狙って生活防衛資金にまで手をつけてしまうこと
いずれも、投資は自己責任が大原則であり、価格変動によって元本を割り込む可能性があることを忘れないようにしたいところです。
まとめ 為替は「単純な公式」で割り切らず、長期の視点で
日銀の9月利上げ観測が強まる一方で、ドル円相場はむしろ160円をうかがう円安基調にあるという今回のニュースは、「政策金利が上がれば通貨も買われる」という単純な図式だけでは為替を語れないことを教えてくれます。個人投資家にとって大切なのは、目先の見出しに一喜一憂して売買判断を急ぐことではなく、通貨・地域・資産の分散によって、どちらに相場が動いても大きく崩れにくい土台をつくっておくことです。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。為替相場を含む投資には常に価格変動・元本割れのリスクが伴います。投資はご自身の判断と責任で、余剰資金の範囲で行うようにしてください。

