単元未満株、売る?増やす?「買取請求」「買増請求」の使い方と注意点

株式投資

「株式分割や相続で、気づいたら中途半端な株数の『単元未満株』を持っていた…」

「証券会社のアプリだと普通に売れないみたいだし、このまま放置していいのかな?」

結論から言うと、単元未満株(いわゆる端株)は取引所でのリアルタイム売買こそできませんが、「買取請求権」を使えば発行会社に買い取ってもらって現金化でき、「買増請求権(売渡請求)」を使えば不足分を会社から買い増して単元株(通常100株)にまとめることができます。ただし、どちらも価格を自分で指定することはできず、対応の有無や手数料は証券会社・発行会社によって異なります。この記事では、2つの請求権の仕組みと使い方、知っておきたい注意点を初心者向けに整理します。なお、本記事の内容は執筆時点(2026年9月)の一般的な制度・実務に基づくものです。実際の手続き・手数料・取扱いの詳細は、必ずご利用の証券会社・発行会社の公式情報でご確認ください。

そもそも単元未満株(端株)とは?なぜ持つことになるのか

単元未満株とは、その会社が定める「単元株数」(多くの上場企業では100株)に満たない株数の株式のことです。単元株に満たないため、証券取引所を通じた通常の売買(指値・成行注文でのリアルタイム取引)の対象にならず、原則として議決権もありません。

初心者の方が単元未満株を持つことになる主なケースは、次のようなものです。

  • 株式分割によって保有株数が単元に満たない端数になった(例:単元株数100株の銘柄を150株保有していた場合、分割比率によっては端数部分が単元未満になることがあります)
  • 単元未満株投資サービス(いわゆる「ミニ株」「S株」などの名称でネット証券が提供)を利用して1株単位で購入した
  • 相続や贈与で単元に満たない株数を引き継いだ

近年はネット証券各社が少額から株式投資を始められる単元未満株サービスを充実させており、初心者が意図的に1株単位で買い付けるケースも増えています。一方で、買い付けたあとに「単元株にまとめたいのか、今の株数のまま持ち続けるのか、あるいは手放すのか」を考えないまま放置してしまう方も少なくありません。「中途半端な株数だから、どうしていいか分からない」という方向けに、単元未満株を手放したい場合と、逆に単元株までまとめたい場合、それぞれの選択肢を見ていきます。

単元未満株を「売りたい」人向け:買取請求権とは

仕組み(会社法192条)

📰 出典:会社法 第192条 単元未満株式の買取りの請求|法令集

単元未満株主は、発行会社に対して自分が保有する単元未満株式を買い取るよう請求できることが会社法192条で定められています。これはすべての株式会社の単元未満株主に共通して認められている権利で、証券取引所を通さずに「会社に直接、現金化してもらう」仕組みだとイメージすると分かりやすいです。

手続きの流れと価格の決まり方

買取請求は、証券会社の口座で管理している単元未満株であれば、証券会社を窓口として手続きします。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 証券会社に買取請求の手続き方法を確認する(電話・郵送・オンラインなど、証券会社によって受付方法が異なります)
  2. 所定の請求書類を提出し、対象銘柄・株数を明らかにして請求する
  3. 請求受付日(またはその翌営業日)の市場価格を基準に買取価格が決まる
  4. 価格確定後、数営業日程度で代金が証券口座等に入金される

ここで重要なのは、買取価格を自分で指定することはできないという点です。通常の株式取引のように「この値段で売りたい」と指値を出せるわけではなく、請求した時点に近い市場の実勢価格が機械的に適用される仕組みです。そのため、株価が大きく変動している局面で請求すると、想定より不利な価格になる可能性もあります。

📰 出典:単元未満株式の買取請求手続きについて|楽天証券

手数料についても証券会社ごとに差があります。一例として、ネット証券各社の公式情報では「1銘柄につき数百円〜1,000円程度」の取次手数料が案内されているケースが見られますが、金額は変更される場合があるため、必ず利用中の証券会社の最新の公式情報を確認してください。また、いったん買取請求を行うと、原則として自分の都合だけで自由に撤回することはできず、撤回には会社側の承諾が必要とされている点にも注意が必要です。

単元未満株を「増やして単元株にしたい」人向け:買増請求権(売渡請求)とは

仕組み(会社法194条)

📰 出典:会社法第194条|Wikibooks

買取請求とは逆に、「せっかくなら単元株までまとめて、議決権や株主優待の対象になりたい」という場合に使えるのが買増請求権(単元未満株式売渡請求)です。会社法194条では、定款にその旨の定めがある会社に限り、単元未満株主が単元株に不足する株数分を会社(が保有する自己株式)から売り渡してもらえるよう請求できるとされています。

「定款に定めがある会社に限り」という点がポイントです。買取請求はすべての会社の単元未満株主が使える権利であるのに対し、買増請求は会社ごとに対応の有無が異なり、対応していない会社も少なくありません。証券会社でも、発行会社が買増請求に対応していない銘柄では取り扱いができない場合があるため、事前の確認が欠かせません。

📰 出典:単元未満株の買増請求|SBI証券

価格の決まり方や、自分で価格を指定できない点は買取請求と同様で、請求時点に近い市場価格を基準に機械的に決まります。買増請求が成立すれば、不足株数分を新たに取得して単元株数に達し、以後は通常の市場取引・議決権行使・株主優待(対象銘柄の場合)の対象になります。

買取請求と買増請求、どちらを選ぶべき?判断のポイント

どちらが「正解」というものではなく、目的によって選ぶべき請求権が変わります。一般的な整理は次のとおりです。

| 比較項目 | 買取請求権 | 買増請求権(売渡請求) | |—|—|—| | 使える会社 | すべての株式会社(会社法192条) | 定款に定めがある会社のみ(会社法194条) | | 目的 | 単元未満株を現金化したい | 単元株にまとめて議決権・優待を得たい | | 手続き後の状態 | 保有株式がなくなる(現金化) | 単元株主になる(保有株数が増える) | | 価格 | 市場価格連動・自分では指定不可 | 市場価格連動・自分では指定不可 | | 主な注意点 | 一度請求すると原則撤回不可 | 対応していない会社が多い |

例えば「その銘柄への追加投資は考えていないが、中途半端な株数を整理したい」という方は買取請求、「もともと関心のある銘柄で、あと少しで単元に届くなら株主優待や議決権も得たい」という方は買増請求、というように、ご自身の投資方針に照らして検討するとよいでしょう。もちろん、どちらの請求も行わず、単元未満株のまま保有し続けるという選択肢もあります。

実際に手続きに進む前には、次の3点をあらかじめ確認しておくと安心です。

  1. 保有している証券会社が、その銘柄について買取請求・買増請求のどちらに対応しているか
  2. 手数料はいくらか、どの口座(特定口座・一般口座・NISA口座)から差し引かれるのか
  3. 価格が確定するタイミングと、入金・受渡しまでの目安期間

これらは証券会社ごとに案内内容が異なるため、公式サイトのヘルプページやカスタマーサポートへの問い合わせで確認するのが確実です。

よくある質問(Q&A)

NISA口座で保有している単元未満株も買取請求できますか?

証券会社・口座区分によって取扱いが異なります。NISA口座内の単元未満株が買取請求・買増請求の対象になるかどうかは、口座を開設している証券会社の公式サイトやカスタマーサポートで個別に確認する必要があります。NISA口座は非課税の恩恵がある一方、口座間の商品移管や手続きの制約が課税口座と異なる場合があるため、「なんとなく大丈夫だろう」と判断せず、事前確認を徹底しましょう。

買取請求をしたあと、途中で「やっぱりやめたい」と思ったらどうなりますか?

前述のとおり、買取請求は原則として単元未満株主側の都合だけで自由に撤回することはできず、撤回するには会社側の承諾が必要とされています。請求する前に、本当に手放してよいかをよく検討することが大切です。

単元未満株のままでも配当金や株主優待はもらえますか?

配当金は、保有株数に応じて単元未満株にも按分して支払われるのが一般的です。一方、株主優待は多くの企業で「1単元(通常100株)以上の保有」を条件としているため、単元未満株のままでは対象外となるケースが多い点に注意してください。優待を目的に単元株を目指すのであれば、買増請求(対応銘柄の場合)や、証券会社の単元未満株投資サービスでの買い増しが選択肢になります。

利用する際に知っておきたいリスクと注意点

  • 価格変動・元本割れのリスク:買取請求・買増請求とも、価格は市場価格に連動して決まります。株式である以上、価格は日々変動しており、請求のタイミングによっては取得時より低い価格で買い取られたり、高い価格で買い増したりすることになる可能性があります。
  • リアルタイム取引とは仕組みが異なる:通常のネット証券アプリでの指値・成行注文とは別の手続きであり、価格や約定タイミングを自分でコントロールできない点を理解しておく必要があります。
  • 証券会社・発行会社ごとに取扱い・手数料が異なる:手数料の有無・金額、受付方法、買増請求への対応可否は会社ごとに違います。必ず事前に公式サイトや窓口で確認してください。
  • 税金の扱い:買取請求によって生じた利益は、通常の株式譲渡と同様に譲渡所得として課税対象になり得ます。特定口座(源泉徴収あり)であれば原則として証券会社が税額を計算・徴収しますが、口座の種類によっては確定申告が必要になる場合もあります。詳細な税務判断は国税庁の情報や税理士・税務署に確認することをおすすめします。

まとめ 焦らず、まず公式情報の確認から

単元未満株を持て余していても、慌てて動く必要はありません。現金化したいなら買取請求権、単元株にまとめたいなら(対応している会社であれば)買増請求権という2つの選択肢があること、そしてどちらも価格は市場連動で自分では指定できないことを押さえておけば、落ち着いて判断材料をそろえられます。

本記事は制度の一般的な仕組みを解説する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や、買取請求・買増請求の実行を推奨するものではありません。株式は価格変動により元本割れする可能性がある金融商品です。実際に手続きを行う際は、必ず証券会社・発行会社の最新の公式情報を確認し、最終的な判断はご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

タイトルとURLをコピーしました