
「昔応援していた会社が、今すごく有名になっているのを見ると『あのとき株を持っていたら…』って思っちゃう」

「でも実際に何年も株を持ち続けるのって、想像以上に難しい気がするんだよね」
結論から言うと、投資の世界で「もっと早く・もっと多く持っていれば」という後悔はつきものですが、大切なのは特定の1社に賭けることではなく、長期・分散という基本方針を淡々と続けることです。この記事では、2026年7月に話題になったセガとエヌビディアをめぐる逸話を入り口に、「持ち続けることの難しさ」と、初心者が長期投資を続けるための考え方を整理します。
※ 本記事は特定の企業への投資を推奨したり、過去の株価上昇を根拠に将来の値上がりを保証したりするものではありません。個別の投資判断はご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。
話題になったニュース セガとエヌビディアの30年前の縁
2026年7月、東京・秋葉原で開かれたイベントに、半導体大手エヌビディアの創業者でCEOのジェンスン・フアン氏が来場し、日本のゲーム会社セガとの間にある30年来の縁について語ったことが報じられました。1990年代、ゲーム用チップの開発につまずき経営が苦しかった当時のエヌビディアに対し、セガが数百万ドル規模の出資を行い、資金繰りを支えたというエピソードです。フアンCEOは「セガの支援がなければ、今日のエヌビディアは存在しなかった」といった趣旨の謝意を、当時を知るセガの関係者を前に語ったとされています。
📰 出典:Yahoo!ニュース(ロイター)「『セガによる救済がなければ、今のエヌビディアはなかった』 フアンCEOが30年前の恩義に感謝」
📰 出典:時事ドットコム「エヌビディアCEO、セガに謝意 90年代に危機救済―東京で記念イベント」
このニュースをきっかけに、SNSやメディアでは「もしセガがエヌビディア株を売却せずに持ち続けていたら、資産価値はどれほどになっていたか」という、いわゆる“たられば”の試算が話題になりました。当時のエヌビディアは無名の新興企業でしたが、その後AI・半導体分野での成長を経て、現在では世界有数の時価総額を持つ企業へと成長しています。
なぜ「持ち続けられなかった」のか 私見として考えられる背景
ここからは筆者の私見です。セガが当時エヌビディア株をどのような経緯で手放したのか、詳細な事情は公表された情報だけでは分かりません。ただ、一般論として、企業や個人が成長途中の株式を長期間持ち続けるのが難しい理由は、いくつか考えられます。
第一に、出資した時点では、その企業が将来どこまで成長するかを正確に見通すことは誰にもできません。当時のエヌビディアは、数あるベンチャー企業の一社にすぎず、「いつか世界的な企業になる」と確信を持てた人は多くなかったはずです。
第二に、企業にとって保有株式は、自社の資金繰りや本業への投資判断と切り離せません。出資した株式の評価額が上がった局面で、自社の事業資金として現金化する判断がなされることは、経営判断としてごく自然にあり得ることです。結果として大きく値上がりする前に手放してしまうケースは、企業に限らず個人投資家にもよく見られます。
これは「セガの判断が誤りだった」という話ではありません。むしろ、後から振り返れば大きく値上がりした投資であっても、渦中にいる当事者がそれを最後まで持ち続けるのは、想像以上に難しいという、投資につきものの構造を示す例だと言えるでしょう。
この逸話から資産形成へ広げて考えたい3つの視点
1. 「あのとき買っていれば」を個別株の後追いに使わない
大きく値上がりした銘柄の話を聞くと、「次に来そうな企業」を探して先回りしたくなる気持ちが生まれやすくなります。しかし、将来どの企業がどれだけ成長するかを事前に正確に当てることは、プロのアナリストでも難しいのが実情です。過去の成功例をもとに「次はこれだ」と特定の1銘柄に資金を集中させることは、値上がりする可能性と同じだけ、値下がりする可能性も抱えるハイリスクな行動である点を忘れないようにしましょう。
2. 「持ち続けること」自体が投資の技術であると理解する
一般に、投資では「良い銘柄を選ぶこと」以上に、「選んだ資産を長期間保有し続けること」が難しいとされています。値上がりすれば利益を確定したくなり、値下がりすれば不安で手放したくなるのが人の心理です。だからこそ、個別株の見極めに自信がない初心者ほど、特定の1社に集中するのではなく、インデックス投資などを通じて幅広い銘柄に分散し、長期で積み立てる方法が選択肢になりやすいと言われています。
📰 出典:金融経済教育推進機構「投資の時間」
3. 過去の一つの成功例を「再現可能な必勝法」と思い込まない
セガとエヌビディアの逸話は象徴的で分かりやすい話ですが、同じような巡り合わせが自分の投資にも起こると期待するのは禁物です。数ある出資・投資の中で、後から振り返って「大成功だった」と語られる例はごく一部であり、その裏には値上がりしなかった、あるいは損失に終わった無数の投資判断があることも忘れてはいけません。話題性のあるエピソードに感情を動かされすぎず、あくまで一般的な教訓として受け止める姿勢が大切です。
長期保有を続けるためにできること
- 生活防衛資金を先に確保する: 急な出費のたびに投資資産を取り崩す状況では、長期保有を貫くこと自体が難しくなります。まずは生活費数か月分の貯蓄を確保したうえで、余剰資金の範囲で投資を行いましょう。
- 1社・1テーマに集中させない: 特定の企業やテーマに資金を集中させると、その企業の業績や株価の変動に資産全体が大きく左右されます。銘柄・地域・時間を分散することで、一つの判断ミスが資産全体に与える影響を和らげられます。
- 値動きを毎日追いかけすぎない: 株価を頻繁にチェックすると、短期的な上下に感情が振られやすくなります。積立投資などでは、あらかじめ決めたルールに沿って淡々と続けることが、長期保有を続けるコツとされています。
- 「持ち続ける」と「損切りする」の基準を事前に決めておく: 感情的な判断を避けるため、どのような場合に売却を検討するかを、購入前にある程度決めておくという考え方もあります。
この話題を投資判断の根拠にする際のNG行動
- 「次のエヌビディアを探す」といった触れ込みで、特定の新興企業や無名の銘柄・通貨への投資を過度に煽る情報を鵜呑みにすること
- 過去の一つの成功例だけを根拠に、「この銘柄も同じように値上がりするはずだ」と断定的に判断すること
- 話題性だけに引きずられ、自分のリスク許容度や生活資金の状況を無視して資金を集中させること
まとめ 話題のエピソードは「教訓」として、判断は自分の方針で
セガとエヌビディアをめぐる30年前の逸話は、支援した側が結果的に大きな成長を後押ししたという美談であると同時に、「値上がりする資産を最後まで持ち続けることの難しさ」を教えてくれる話でもあります。この話をきっかけに次の有望株を探そうとするのではなく、「自分は資産を長く持ち続けられているか」「1社・1テーマに偏っていないか」を振り返るきっかけとして受け止めるとよいでしょう。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の企業・銘柄への投資を推奨したり、将来の値上がりを保証したりするものではありません。最終的な投資判断は、長期・分散・積立という基本方針を踏まえ、ご自身の責任で余剰資金の範囲で行ってください。

