
「夜のニュースで株価が動いても、翌朝まで何もできないのかな…」

「証券会社のアプリに『PTS』って表示があるけど、これって何のことだろう?」
結論から言うと、PTS(私設取引システム)とは、東京証券取引所などの公設の取引所を介さずに、証券会社などが独自に運営する株式の売買の場のことです。多くの証券会社がこのPTSを通じて、取引所が閉まっている夜間や早朝にも株式の売買注文を出せるサービスを提供しています。この記事では、PTSの基本的な仕組みと、利用する際に知っておきたい注意点を初心者向けに解説します。
そもそもPTSとは?初心者が知っておくべき仕組み
PTSは「Proprietary Trading System」の略で、証券取引所を介さずに証券会社などが提供する私設の株式売買の仕組みを指します。日本国内では、ジャパンネクスト証券や大阪デジタルエクスチェンジといった運営会社がPTSを運営しており、多くのネット証券がこれらのPTSと接続するサービスを提供しています。
PTSの大きな特徴は、東京証券取引所などの立会時間(日中の取引時間)が終わった後の夜間や、取引所が開く前の早朝にも、リアルタイムで株式の売買注文を出し、実際に約定させられる点です。証券会社によって取引時間は異なりますが、日中の「デイタイム・セッション」に加えて、夕方から深夜・早朝にかけての「ナイトタイム・セッション」を設けているところもあります。
📰 出典:夜間取引/PTS取引(楽天証券)
なぜPTSという仕組みがあるのか
証券取引所の取引時間は平日の日中に限られています。しかし、決算発表や海外市場の動き、経済指標の発表などは、取引所が閉まっている夜間や早朝に起こることも少なくありません。PTSは、こうした取引所の時間外に生じた投資家のニーズに応え、値動きに応じてタイムリーに売買したいという声に応える形で発展してきた仕組みです。取引参加証券会社数の多さから、国内のPTSの中には東京証券取引所に次ぐ規模まで拡大しているものもあるとされています。
取引所取引とPTSの違いをざっくり比較
初心者にとっては、普段利用している取引所での取引と何が違うのかが分かりにくいところです。一般的な違いを簡単に整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 取引所(東証など) | PTS | |—|—|—| | 運営主体 | 証券取引所 | 証券会社・私設取引システム運営会社 | | 取引時間 | 平日の日中(立会時間) | 証券会社により異なり、夜間・早朝にも対応する場合がある | | 取引参加者の数 | 多い(市場全体) | 取引所より少ない場合がある | | 価格の連動性 | 市場全体の需給を反映 | 取引所とは別に価格が形成され、一時的に差が生じることがある |
※ 上記はあくまで一般的な傾向であり、証券会社や銘柄、時間帯によって状況は異なります。
PTSを利用する際の基本的な流れ
PTSでの取引は、多くの場合、普段使っている証券会社の取引画面から通常の株式注文と同じような操作で行えます。基本的な流れを整理してみましょう。
- 利用している証券会社がPTS取引に対応しているかを確認する
- 取引したい銘柄がPTSでも取引対象になっているかを確認する(全銘柄が対象とは限りません)
- 証券会社が定めるPTSの取引時間(デイタイム・ナイトタイムなど)を確認する
- 通常の注文画面で「東証」ではなく「PTS」を選択して注文を出す
- 約定状況を確認し、取引所の翌営業日の取引にも影響が及ぶ可能性があることを踏まえて資産全体を管理する
証券会社によって、対応する銘柄の範囲や取引時間、手数料体系は異なります。利用を検討する場合は、必ず口座を持つ証券会社の公式サイトで最新の条件を確認してください。
PTS利用時に知っておきたい注意点・リスク
PTSは便利な仕組みである一方、通常の取引所取引とは異なる特有の注意点があります。初心者ほど、以下のポイントを踏まえたうえで利用を検討することが大切です。
1. 取引参加者・取引量が取引所より少ないことがある
PTSは私設の取引の場であるため、東京証券取引所に比べると参加している投資家の数や取引量(流動性)が少ない銘柄・時間帯もあります。取引量が少ない状況では、希望する価格や数量で売買が成立しにくくなる可能性があります。
2. 買い値と売り値の差(スプレッド)が広がりやすい場面がある
取引参加者が少ない時間帯には、買いたい価格と売りたい価格の差(スプレッド)が、取引所が開いている日中よりも広がりやすくなることがあります。想定より不利な価格で約定してしまう可能性もあるため、注文方法や価格設定には注意が必要です。
3. 取引所の株価とPTSの株価が一時的に乖離することがある
PTSは取引所とは別の市場であるため、同じ銘柄でも取引所の終値とPTSでの価格が一致するとは限りません。夜間のニュースなどを受けてPTSで大きく値が動いても、翌営業日の取引所の寄り付きが必ず同じ水準になるとは限らない点も理解しておく必要があります。
4. 銘柄・時間帯によって取引できない場合がある
すべての上場銘柄がPTSの取引対象になっているわけではありません。また、システムメンテナンスや相場急変時の措置などにより、一時的に取引が制限される場合もあります。
執筆時点の情報である点にご注意ください
PTSの運営会社、対応証券会社、取引時間、手数料などの制度は変わる可能性があります。本記事の内容は執筆時点(2026年7月)の一般的な情報をもとにしたものであり、最新の取扱状況は必ず利用する証券会社の公式サイトでご確認ください。
資産形成への発展:PTSとどう付き合うか
PTSは「夜間でも売買できる」という利便性が注目されがちですが、資産形成の基本という観点では、次のような考え方を大切にしたいと筆者は考えます。
- 夜間に値動きがあったからといって、焦って売買判断をする必要はない
- PTSは流動性やスプレッドの面で取引所と異なる特性があることを理解したうえで利用する
- 短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長期・分散・積立という基本方針は変えない
- PTSを使う・使わないにかかわらず、最終的な投資判断は自分の資産計画に基づいて行う
夜間に株価がニュースに反応して動いているのを見ると、つい「今すぐ売買しなければ」という気持ちになりやすいものです。しかし、PTSでの値動きが必ずしも翌営業日の取引所での値動きと一致するとは限らない以上、慌てて判断するよりも、まずは事実関係を確認し、落ち着いて考える時間を持つことが大切です。
こんな使い方・判断はしないようにしたい
- PTSの値動きだけを見て、翌営業日の株価がどうなるかを断定的に予想すること
- 取引量の少ない時間帯に、価格を確認せず成行に近い形で注文を出すこと
- 「夜も売買できるから」という理由だけで、本来の投資方針以上に頻繁な売買を行うこと
- PTSでの一時的な値動きに影響されて、長期の資産形成方針を安易に変更すること
よくある疑問に答えます
Q. PTSを使えば、どの証券会社でも夜間に株が売買できますか?
A. すべての証券会社がPTSに対応しているわけではありません。対応の有無や取引時間、対象銘柄は証券会社ごとに異なるため、口座を持つ証券会社の公式サイトで確認する必要があります。
Q. PTSでの取引は、取引所での取引よりも得をしやすいのでしょうか?
A. 一概には言えません。夜間の値動きに素早く対応できるという利点がある一方、流動性の低さやスプレッドの広がりといった特有のリスクもあります。得か損かは状況によって異なり、PTSの利用自体を推奨するものではありません。
Q. 初心者はPTSを使うべきですか?
A. 必ず使わなければならないものではありません。仕組みとリスクを理解しないまま利用すると、想定外の価格で約定してしまう可能性もあります。まずは通常の取引所での取引に慣れることを優先し、PTSは仕組みを十分理解したうえで検討するとよいでしょう。
まとめ:仕組みとリスクを理解したうえで、必要に応じて活用を
PTS(私設取引システム)は、取引所の時間外にも株式を売買できる便利な仕組みですが、流動性の低さやスプレッドの広がり、取引所株価との一時的な乖離など、通常の取引所取引とは異なる特有の注意点があります。夜間に値動きがあったからといって焦る必要はなく、仕組みとリスクを理解したうえで、自分の資産計画に沿って落ち着いて活用することが大切です。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・取引手法の利用を推奨するものではありません。株式投資には元本割れのリスクがあります。投資は必ずご自身の判断と責任で、余剰資金の範囲内で行ってください。制度・取扱内容は執筆時点(2026年7月)の情報であり、最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。

