株式投資をしていると、売却して損失が出ることがあります。「損をしたら終わり」と思われがちですが、税金の仕組みには、損失を将来の利益と相殺できる制度が用意されています。それが「損益通算」と「繰越控除」です。
この記事では、初心者の方に向けて、上場株式の損失を確定申告で繰り越す仕組みと、使えないケースの注意点を整理します。
※ 制度・税制は2026年9月執筆時点の一般的な内容です。個別の状況で扱いが変わることがあるため、最新情報は国税庁の公式ページや税務署・税理士にご確認ください。
この記事で分かること
- 損益通算と繰越控除、それぞれの意味
- 損失を3年間繰り越すために必要な手続き
- NISA口座や仮想通貨では使えない点
損益通算とは?
損益通算とは、同じ年の中で、利益と損失を相殺して課税対象の金額を減らす仕組みです。
📰 出典:国税庁「株式等の譲渡による所得」
一般的な整理は次のとおりです。
- 上場株式などを売却して出た損失は、同じ年の他の上場株式などの売却益と相殺できる
- 申告分離課税を選んだ場合は、配当所得などとも通算できる場合がある
- 特定口座(源泉徴収あり)の場合、同じ口座内の損益は自動で通算される
たとえば、A銘柄で20万円の利益、B銘柄で10万円の損失が出た場合、課税対象は差し引き10万円になります。
繰越控除とは?
損益通算しても引ききれない損失がある場合、確定申告をすることで、翌年以後3年間にわたって損失を繰り越せる制度があります。
- 繰り越した損失は、翌年以降の株式の売却益や配当所得から差し引ける
- 繰越期間は損失が出た年の翌年から3年間
- 繰越控除を受けるには、損失が出た年に確定申告をしておく必要がある
- 繰り越した後も、利益が出ない年を含めて毎年連続で申告を続ける必要がある

「確定申告って、損したときもしないといけないの?」

「損失を繰り越したいなら、申告が必要です。何もしないと繰越はできません。」
手続きの流れ
- 証券会社から「年間取引報告書」を受け取る
- 損失が出ていることを確認する(特定口座の場合は書類の記載で確認)
- 確定申告書に「上場株式等に係る譲渡損失の繰越」の内容を記入する
- 翌年以降も、繰越が残っている間は毎年申告する
書き方や必要書類は年によって変わる可能性があります。国税庁の案内や、e-Taxの画面の案内に従ってください。
使えない・注意が必要なケース
NISA口座の損失
NISA口座で出た損失は、他の口座の利益との損益通算や、繰越控除の対象になりません。非課税のメリットの裏返しとして、損失の扱いにも制限がある点は理解しておきましょう。
仮想通貨の損失
暗号資産の利益は、原則として雑所得に区分されます。上場株式の譲渡損益とは通算できず、株式の損失を暗号資産の利益と相殺することもできません。詳細は税務署・税理士にご確認ください。
申告をしなかった場合
損失を出した年に申告をしていないと、後から「繰越をしたい」と思っても原則としてできません。毎年連続して申告する必要がある点も、忘れがちなポイントです。
筆者の私見:損失を「無駄にしない」ための視点
ここからは筆者の考えです。
損失が出た事実は変わりませんが、税制の仕組みを知っておけば、将来の税負担を軽くできる可能性があります。ただし「税金が減るから損をしてもいい」という考え方は危険です。あくまで、避けられなかった損失を最終的に整理するための制度と捉えるのが健全だと考えます。
やりがちなNG行動
- 損失が出たのに、面倒だからと確定申告をしない
- 税金を減らす目的だけで、無理に売却して損失を確定させる
- NISA口座の損失も繰り越せると思い込む
- 一度繰越の申告をしたあと、途中の年に申告を忘れる
リスクと注意点
- 株式投資は元本割れのリスクがあります。「必ず儲かる」ものではありません
- 本記事は税務の一般的な解説であり、個別の税務相談ではありません
- 制度は改正されることがあります。最新の内容は国税庁の公式情報で確認してください
- 本記事は情報提供を目的とし、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行いましょう
まとめ
- 損益通算は、同じ年の利益と損失の相殺
- 繰越控除は、通算しきれない損失を翌年以後3年間繰り越せる制度で、確定申告が必要
- NISA口座の損失や、暗号資産の損益とは通算できない
- 長期投資では、値動きによる損失が出る場面もあります。制度を知って、落ち着いて向き合いましょう

