NISAの投資信託は何本持てばいい?「たくさん買うほど安心」という誤解と過剰分散の落とし穴

株式投資

「NISAで人気ランキングを見るたびに気になって買い足していたら、気づけば7〜8本も投資信託を持っていた…」

「本数が多いほど分散できて安心な気がするけど、これで合ってるのかな?」

結論から言うと、投資信託は「本数を増やすこと」自体が分散投資ではありません。中身(投資対象)が重なっていれば、何本持っていても分散効果は薄いままです。むしろ初心者のうちは、全世界株式や米国株式に幅広く投資するインデックスファンドを1〜3本程度に絞る方が、値動きの把握や管理がしやすく、結果的にリスク管理もしやすくなるケースが多いといえます。

この記事では、「本数を増やせば安心」という考え方がなぜ起こりやすいのか、その背景と落とし穴、そして本数よりも重視すべき視点を、初心者向けに整理して解説します。なお、制度や商品に関する情報は執筆時点(2026年8月)のものです。最新の内容は金融庁や利用中の証券会社の公式情報で必ずご確認ください。本記事は特定の投資信託・銘柄の購入を推奨するものではなく、投資信託には価格変動による元本割れのリスクがあります。投資の最終判断はご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

なぜ「本数を増やせば安心」と思ってしまうのか

ランキングやSNSで次々に「気になるファンド」が現れる

NISA口座で投資信託を選ぼうとすると、証券会社のサイトやSNSでは常に「人気ランキング1位」「話題の新ファンド」といった情報が目に入ります。すでに1本持っていても、別のファンドが人気だと知ると「これも良さそうだから追加しておこう」という気持ちになりやすいものです。悪気なく少しずつ買い足した結果、気づけば本数だけが増えていた、というのはよくあるパターンです。

「分散投資」という言葉のイメージが先行しやすい

金融庁のNISA特設サイトでも、資産形成の基本として「長期・積立・分散」投資の重要性が説明されています。

📰 出典:資産形成の基本|NISA特設ウェブサイト(金融庁)

ただし、ここでいう「分散」とは、値動きの異なる複数の資産・地域・銘柄を組み合わせることで価格変動の影響を和らげる考え方であり、「商品の本数を増やすこと」そのものを指しているわけではありません。言葉のイメージだけが先行すると、「とにかく色々な商品を持てば安心」という誤解につながりやすくなります。

成長投資枠・つみたて投資枠でそれぞれ別の商品を選んでしまう

現行のNISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、両方の枠を使える設計になっています。この2つの枠でそれぞれ別のファンドを何となく選んでしまい、結果として似たような投資対象のファンドを重複して保有してしまうケースも少なくありません。

投資信託の「本数」より大事な3つの視点

本数そのものよりも、次の3点を確認する方が、分散投資の質を判断するうえで役立ちます。

1. 投資対象が重なっていないかを確認する

たとえば「全世界株式インデックスファンド」と「米国株式(S&P500など)に連動するファンド」を両方保有している場合、後者の投資先の多くは前者にも含まれています。銘柄名や運用会社が違っても、中身の大部分が重複していれば、実質的には似た値動きをする商品を二重に持っていることになります。目論見書や運用報告書に記載されている「主な投資対象」「組入上位銘柄・国」を見比べてみると、重複の有無を把握しやすくなります。

2. コスト(信託報酬)が積み上がっていないか

投資信託には保有期間中、信託報酬というコストが継続的にかかります。本数が増えるほど、それぞれのコストを把握・比較する手間も増えます。似た投資対象のファンドが複数ある場合、信託報酬(運用管理費用)が低い方に一本化した方が、長期的なコスト負担を抑えやすいという考え方もあります。

📰 出典:投資信託の基礎知識|投資信託協会

3. 目的ごとに整理されているか

「老後資金用」「教育資金用」など、目的が異なる資金をあえて別のファンドで管理している場合は、本数が複数あること自体に合理性があります。大切なのは「何となく増えた本数」ではなく、「目的に応じて意図的に選んだ本数」になっているかどうかです。

具体例で見る「本数を増やしても分散にならない」ケース

言葉だけでは分かりにくいので、簡単な例で考えてみましょう。あくまで一般的な仕組みの説明であり、特定の商品を指したものではありません。

  • Aファンド:日本を含む全世界の株式に投資するインデックスファンド(組入銘柄の多くを米国株式が占める設計が一般的です)
  • Bファンド:米国の主要企業に投資するインデックスファンド

この2本を「値動きの違う商品を組み合わせて分散した」つもりで両方保有しても、Aファンドの中身の多くをすでに米国株式が占めているため、実質的には「米国株式への投資割合をさらに増やしただけ」になっている可能性があります。本数は2本に増えていますが、値動きの傾向はかなり似通ったものになりやすい、というイメージです。

反対に、次のような組み合わせは「本数は少なくても、値動きの傾向が異なる資産を組み合わせている」という意味で分散の考え方に近づきます。

| 組み合わせの例 | ねらい | | — | — | | 株式インデックスファンド+債券インデックスファンド | 株式と債券は値動きの傾向が異なりやすいとされる | | 先進国株式+新興国株式 | 経済成長の局面や為替の動きが異なる地域を組み合わせる | | 国内資産+海外資産 | 為替変動や国内景気の影響を分散する |

このように、「本数」ではなく「値動きの傾向が異なる資産をどう組み合わせているか」で分散の質を考えることが大切です。

すでに本数が増えてしまった場合はどうする?

「気づいたら7〜8本になっていた」という場合でも、慌てて一度にすべて売却する必要はありません。次のような順番で、落ち着いて整理していく考え方があります。

  1. 各ファンドの目論見書・運用報告書で投資対象を確認する:組入上位の国・銘柄を見比べ、重複の度合いを把握します。
  2. 信託報酬(コスト)を比較する:似た投資対象のファンドが複数あれば、コストの低い方を軸にする考え方もあります。
  3. 一本化を急がず、今後の積立先を整理することから始める:すでに保有している分をすぐに売る必要はなく、まずは新規の積立先を絞ることで、少しずつ本数の増加を抑えられます。
  4. 売却する場合は課税口座かNISA口座かを確認する:NISA口座内であれば売却益・分配金は非課税ですが、特定口座・一般口座では課税対象になる点に注意してください。

いずれの場合も、無理に急いで整理する必要はありません。焦って売却すると、かえって判断を誤ることもあるため、まずは「重複しているかどうか」を確認するところから始めるのがおすすめです。

初心者が陥りやすい過剰分散のNG例

人気だからと次々に買い足してしまう

その時々の人気ランキング上位を追いかけて買い足していくと、投資対象の重複に気づかないまま本数だけが増えていきます。値動きの管理も複雑になり、「結局どのファンドがどれだけ値上がり・値下がりしているのか把握できない」状態になりがちです。

商品ごとの評価額を追うのに疲れてしまう

本数が増えると、証券会社のアプリを開いても評価額の一覧がずらりと並び、全体の状況を把握しづらくなります。管理が煩雑になった結果、値動きが気になって頻繁にログインしてしまい、かえって一喜一憂しやすくなるという声も見られます。

リバランス(資産配分の見直し)が後回しになる

保有商品が多いほど、資産配分の偏りに気づきにくくなり、見直し(リバランス)のタイミングを逃しやすくなります。管理できる範囲の本数に抑えておく方が、定期的な見直しも続けやすくなります。

実際は何本くらいが目安?考え方の整理

あくまで一般的な考え方として、初心者が最初に持つ投資信託の本数を考える際は、以下のような整理の仕方があります。

  • 全世界株式インデックスファンド1本で、日本を含む世界中の株式に幅広く分散投資する考え方
  • 米国株式インデックスファンド+先進国・新興国株式インデックスファンドなど、地域を分けて2〜3本で構成する考え方
  • 株式に加えて債券やREITを含むバランス型ファンドを組み合わせ、資産の種類自体を分散する考え方

どの組み合わせが「正解」というものではなく、それぞれにメリット・デメリットがあります。重要なのは、自分がどの範囲まで内容を把握・管理できるかを基準に選ぶことです。本数を絞ることで管理がしやすくなる一方、絞りすぎると特定の地域・資産への偏りが生じる可能性もあるため、投資対象の広さと管理のしやすさのバランスを意識してください。

保有商品を見直す際の注意点とリスク

売却すると利益に課税されるケースがある

NISA口座内の売却益・分配金は非課税ですが、特定口座・一般口座で保有している投資信託を売却する場合は、利益に対して課税される点に注意が必要です。整理・一本化を検討する際は、この点も踏まえて判断してください。

NISAの年間投資枠は「使った分」がその年のうちに復活するわけではない

NISA口座内の商品を売却した場合、非課税保有限度額(生涯投資枠)は翌年以降に売却分の簿価相当額が再利用できますが、その年の年間投資枠自体は、使った分がすぐに復活するわけではありません。買い直しのタイミングを考える際は、この年間枠の仕組みも確認しておくと安心です。

📰 出典:よくある質問|NISA特設ウェブサイト(金融庁)

元本割れのリスクは常に伴う

投資信託は預金と異なり、元本が保証された商品ではありません。本数を1本に絞ったとしても、投資対象の値動き次第で元本割れする可能性がある点は変わりません。本数の整理はあくまで「管理のしやすさ・分散の質」を高める工夫であり、リスクそのものをなくす手段ではないことを理解しておきましょう。

特定の商品への投資を断定的に勧めるものではない

本記事で紹介した考え方は、あくまで一般的な整理の一例です。「このファンドを買うべき」といった個別商品の推奨を意図するものではなく、最終的にどの商品を、何本、どのように保有するかはご自身の状況や目的に応じて判断してください。

まとめ 大切なのは本数ではなく「重複していないか」の視点

NISAで投資信託を選ぶとき、「本数が多いほど安心」というのは誤解であり、本当に大切なのは投資対象が重複していないか、コストが積み上がっていないか、目的に応じて整理されているかという視点です。初心者のうちは、全世界株式や米国株式に幅広く投資するインデックスファンドを1〜3本程度に絞ることで、値動きの把握やリバランスもしやすくなります。

すでに本数が増えてしまっている場合も、慌てて売却するのではなく、まずは目論見書や運用報告書で投資対象の重複を確認するところから始めてみてください。焦らず、自分が管理できる範囲で、長期・積立・分散という基本を意識しながら投資を続けていくことが、資産形成を無理なく継続するコツです。

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