
「離婚を考えているんだけど、NISA口座で積み立てている投資信託って、財産分与の対象になるのかな…?」

「NISA口座って自分名義でしか作れないよね?相手に半分あげるとき、口座ごと渡すわけにもいかないし、どうすればいいんだろう」
結論から言うと、婚姻期間中に築いたNISA口座内の株式・投資信託は、原則として財産分与の対象になります。ただし、NISA口座は制度上「本人名義でしか保有できず、他人の口座へそのまま移すことはできない」という大きな制約があるため、預金のように単純に金額を分けるわけにはいきません。この記事では、初心者の方に向けて、離婚時にNISA口座内の資産がどのように扱われるのか、基本的な考え方と注意点を整理します。
※ 本記事は制度・法律の一般的な仕組みを解説する情報提供が目的であり、個別の法律相談・税務相談の代わりになるものではありません。具体的な財産分与の進め方は弁護士に、税金の扱いは税理士にご確認ください。また、投資には元本割れのリスクがあり、最終的な投資判断・手続きの実行はご自身の責任で行ってください。
NISA口座の株式・投資信託は財産分与の対象になるのか
そもそも「財産分与」とは
財産分与とは、離婚する夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、原則としてそれぞれの貢献度に応じて分け合う制度です。名義がどちらか一方になっていても、その財産が婚姻期間中の収入から形成されたものであれば、「夫婦の共有財産」とみなされ、分与の対象になるのが一般的な考え方です。
NISA口座も例外ではない
証券口座やNISA口座は法律上「自分名義の資産」に見えますが、その中身が婚姻期間中の収入を原資にしているのであれば、預金や不動産と同じように財産分与の対象になります。弁護士向けの法律解説サイトでも、婚姻期間中に開設・積み立てたNISA口座の資産は、原則として他の共有財産と同様に分与対象として扱われると説明されています。
📰 出典:弁護士法人浅野総合法律事務所「投資信託は財産分与の対象になる?NISA・iDeCoの扱いも解説」
一方で、結婚前から保有していた株式・投資信託や、相続・贈与によって取得した資産は「特有財産」として、原則は分与の対象から外れる場合があります。この線引きは個別の事情によって判断が分かれるため、財産分与の話し合いを始める前に、いつ・どのような原資で購入した資産かを整理しておくと、後の手続きがスムーズになります。
NISA口座ならではの制約 「口座ごと相手に渡す」ことはできない
NISA口座は本人名義でしか持てない制度
ここで初心者がつまずきやすいのが、NISA口座の制度上の制約です。NISA口座は「自分自身の非課税投資枠」として法律で定められた制度であり、口座内の株式・投資信託をそのまま配偶者名義のNISA口座へ移す、といった手続きはできません。
これは離婚時に限った話ではなく、たとえば口座保有者が亡くなった場合の相続でも同様の制約があります。証券会社の解説記事でも、NISA口座内の金融商品を相続人のNISA口座にそのまま非課税で引き継ぐことはできず、相続人の課税口座への移管という扱いになることが説明されています。離婚時も、この「NISA口座は本人以外の口座へそのまま移せない」という制度上の性質は変わりません。
📰 出典:楽天カード「みんなのマネ活」NISA口座にある金融商品は離婚や死亡、破産の場合にどうなる?徹底解説!
だからこそ「分け方」を工夫する必要がある
つまり、離婚時の財産分与では「NISA口座の中身を半分ずつ、そのまま配偶者の口座に移す」という単純な分割はできません。実務上は、次に紹介するような方法を組み合わせて、実質的に公平になるよう調整することになります。
財産分与の主な3つの方法とNISA口座での考え方
財産分与には、一般的に次の3つの方法があるとされています。それぞれNISA口座の資産にどう当てはめられるか、基本的な考え方を見ていきましょう。
| 方法 | 内容 | NISA口座資産での考え方 | |—|—|—| | 現物分割 | 財産をそのままの形で分ける | NISA口座はそのまま渡せないため、単独では使いにくい | | 代償分割 | 一方が財産を取得し、他方に相当額の金銭等を支払う | NISA口座は元の名義人が保有し続け、評価額相当を他の財産(預金等)で調整する方法 | | 換価分割 | 財産を売却して現金化し、その金銭を分ける | NISA口座内の商品を売却して現金化し、双方で分ける方法 |
代償分割 NISA口座はそのまま保有し、他の資産で調整する
代償分割は、NISA口座の名義人がそのまま株式・投資信託を保有し続け、その評価額に相当する分を、預金など他の財産で配偶者に渡す方法です。非課税の運用を続けたい場合に選ばれやすい一方、他に調整できる財産が十分にないと成立しにくいという制約があります。
換価分割 売却して現金で分ける
NISA口座内の商品を売却し、現金化してから分ける方法です。手続きとしては分かりやすい一方で、売却するタイミングの市況によっては、想定より低い評価額で現金化せざるを得ない可能性がある点に注意が必要です。また、売却によって得た非課税枠は、その年のうちは再利用できない場合がある点も、NISA制度の一般的な仕組みとしてあわせて知っておきたいポイントです(制度の詳細は執筆時点の情報であり、最新の取り扱いは金融庁・証券会社の公式情報でご確認ください)。
どちらを選ぶかは夫婦の状況次第
どちらの方法が良いかは一律には決まらず、他に分与できる財産の種類・金額、双方の今後の資産形成方針、口座を維持したい意向の有無などによって変わります。財産分与全体のバランスを見ながら、弁護士など専門家を交えて話し合うことをおすすめします。
手続きを進めるうえで知っておきたい注意点
評価額をいつの時点にするかで金額が変わる
株式・投資信託は日々値動きするため、「いつの時点の評価額を基準にするか」によって分与額が変わってきます。話し合いの中で評価基準日を明確にしておかないと、後から「あのときはもっと高かった/安かった」という食い違いが生じやすくなります。
売却益には税金がかかる場合がある
換価分割のためにNISA口座外で運用していた特定口座・一般口座の株式・投資信託を売却した場合、利益(譲渡益)に対して税金がかかります。一方、NISA口座内での売却益は非課税ですが、財産分与全体でどのような税負担が生じるかは、資産の内訳によって変わるため、税理士に確認しながら進めると安心です。
勝手に相手の口座を操作しない
財産分与の話し合いが決着する前に、配偶者名義の証券口座やNISA口座を無断で操作したり、相手に断りなく売却を進めたりすることはトラブルの原因になります。手続きは必ず口座名義人本人が行い、話し合いの内容を書面(離婚協議書・公正証書など)に残しておくことが大切です。
初心者がやりがちなNG行動
- NISA口座も預金のように「そのまま半分渡せる」と思い込んでしまう
- 評価額の基準日を決めないまま、感覚的に金額を決めてしまう
- 税金や非課税枠の再利用ルールを確認せず、思ったより手取りが少なくなってしまう
- 弁護士・税理士に相談せず、当事者同士だけで複雑な財産分与を進めてしまう
- 話し合いの内容を口約束のままにし、書面に残さない
まとめ NISA口座の資産は「分け方」を工夫する前提で話し合いを
NISA口座内の株式・投資信託は、婚姻期間中の収入を原資にしている限り、原則として財産分与の対象になります。ただし、NISA口座そのものを配偶者名義に移すことはできないため、代償分割(他の資産で調整する)や換価分割(売却して現金で分ける)といった方法を組み合わせて、実質的な公平さを実現していく必要があります。
制度・税制は今後変更される可能性があるため、本記事の内容は執筆時点(2026年8月)の一般的な理解として参考にしつつ、実際に財産分与を進める際は弁護士・税理士に相談し、最新の公式情報もあわせてご確認ください。
なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や、個別の法律・税務判断を助言するものではありません。株式・投資信託には価格変動・元本割れのリスクが伴います。最終的な判断はご自身の責任で、専門家への相談も活用しながら慎重に進めてください。

