子ども名義で株を買うのは危ない?「名義株・名義預金」の税務リスクと正しい始め方

株式投資

「子どもの将来のために、自分のお金で子ども名義の証券口座を作って株を買ってあげたい」

「でも、これって普通の贈与と何が違うの?あとで税務署に指摘されたりしないか心配…」

結論から言うと、子ども名義の口座に親のお金で株や投資信託を買うこと自体は違法ではありません。ただし、贈与としての手続き(贈与契約書の作成や、子ども自身による口座の管理など)を踏まずに行うと、税務上は「名義株」「名義預金」=実質的には親の財産とみなされ、相続が発生したときに思わぬ相続税がかかったり、贈与のつもりだった資金移動が贈与税の申告漏れとして扱われたりするリスクがあります。この記事では、名義株・名義預金の仕組みと、リスクを避けるための正しい始め方を初心者向けに解説します。 ※本記事の税制・手続きに関する情報は執筆時点(2026年8月)のものです。最新情報は国税庁・税務署・税理士にご確認ください。

なぜ「子ども名義で株を買う」家庭が増えているのか

新NISAの広がりとともに、「子どものために早くから資産形成を始めさせたい」と考える保護者は少なくありません。ただし、NISA口座は成人(18歳以上)でなければ開設できず、未成年の子ども名義で投資をする場合は原則として課税口座(特定口座・一般口座)を使うことになります。

  • 教育資金や将来の独立資金を、時間をかけてコツコツ準備したい
  • 自分のNISA非課税枠を使い切っているので、家族名義の口座も活用したい
  • 子ども自身に「お金や投資について学ぶきっかけ」を持たせたい

こうした動機自体は自然なものですが、「子ども名義の口座にお金を入れて株を買う」という行為には、税務上の見落とされがちな注意点があります。

なお、未成年向けの新しい非課税投資制度については2027年以降の導入が議論されていますが、制度の詳細は変わる可能性があるため、最新情報は金融庁の公式発表でご確認ください。本記事では制度の是非ではなく、「家族名義で資産を持つこと」自体に伴う税務リスクに焦点を当てて解説します。

「名義株」「名義預金」とは? 仕組みをやさしく解説

「名義株」「名義預金」とは、口座やその中の株式・預金の名義人は子どもや配偶者になっているものの、実際にお金を出し、管理し、運用の判断をしているのが別の人(多くの場合は親)である財産のことを指します。

税務上は「誰の名前がついているか」よりも、「実質的に誰の財産か」を重視する考え方(実質課税の原則)があります。そのため、以下のような状態が当てはまると、名義は子どもでも実質的には親の財産、つまり相続財産に含めるべきものと判断される可能性があります。

  • 資金を拠出したのが子どもではなく親である
  • 口座の通帳・証券口座のIDやパスワード、印鑑を親が管理している
  • 子ども自身がその口座の存在や中身をよく知らない
  • 子どもが自分の判断で入出金や売買をしたことがない

📰 出典:国税庁「相続税の誤りやすい事例集(被相続人以外の名義の財産)」

国税庁が公表している相続税申告の「誤りやすい事例集」でも、名義にかかわらず、資金を実際に拠出した人(被相続人)の財産と認められるものは相続税の課税対象になる旨が説明されています。家族名義になっている預貯金や株式であっても、この考え方が及ぶ点は知っておく必要があります。

なぜリスクになるのか? 具体的に起こりうること

「名義株・名義預金」の状態を放置していると、次のような場面で問題が表面化することがあります。

1. 相続発生時に相続財産へ算入される

親が亡くなったとき、子ども名義の口座であっても実質的に親の財産と判断されれば、相続税の申告対象に含める必要があります。申告から漏れていた場合、税務調査で指摘され、本来の相続税に加えて延滞税・加算税がかかることがあります。国税庁の統計でも、相続税の税務調査で申告漏れが指摘される財産の中で現金・預貯金等の割合が大きいことが知られており、家族名義の財産は特に確認されやすい項目とされています。

2. 贈与のつもりが「贈与税の申告漏れ」とみなされる

「毎年少しずつ子ども名義の口座にお金を移していたのだから、それは贈与のはず」と思っていても、贈与が法的に成立するには「あげた人」と「もらった人」の双方の意思確認(子どもが受け取ったことを認識していること)が必要です。子どもが口座の存在すら知らなければ、贈与は成立しておらず、単なる名義預金と扱われる可能性があります。

3. 資金の流れが不透明だと説明が難しくなる

税務調査では「いつ、誰が、どの口座から、いくら移したか」という資金の流れを確認されます。記録が残っていないと、後から「これは贈与だった」と主張しても認められにくくなります。

名義株・名義預金と指摘されないための考え方・正しい始め方

家族のために早くから資産形成のサポートをしたいという気持ち自体は問題ありません。大切なのは、贈与としての実態と記録をきちんと残すことです。一般的に意識されている考え方には、次のようなものがあります。

  • 贈与契約書を作成する:金額や日付を明記した簡単な書面でも、贈与の事実を後から示す材料になります。
  • 暦年贈与の基礎控除(年間110万円)を意識する:1年間に受け取る贈与財産の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。基礎控除を超える場合は、期限内に贈与税の申告・納付が必要です。
  • 資金は子ども自身の口座を経由させる:親の口座から直接、子ども名義の証券口座に入金するのではなく、一度子ども名義の預金口座に贈与として振り込み、そこから証券口座へ入金する動線にすると、資金の流れが分かりやすくなります。
  • 通帳・印鑑・パスワードの管理を、成人したら本人に引き継ぐ:子どもが未成年のうちは保護者が管理せざるを得ませんが、成人後もずっと親が管理し続けている状態は「名義預金」と判断される材料になりやすい点に注意が必要です。
  • 記録を残す:振込明細、贈与契約書、贈与税の申告書控えなどは保管しておきましょう。

📰 出典:国税庁No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」

暦年課税の基礎控除額や税率は制度改正の対象になりやすい分野です。実際に贈与を行う際は、必ず国税庁の最新情報や税理士への相談で確認してください。

実践する際の注意点・リスク

  • 家族名義で株式・投資信託を保有する場合も、値下がりによる元本割れのリスクは通常の投資と同じようにあります。「子どものため」であっても、必ず増えることを約束するものではありません。
  • 贈与税・相続税の判断は、家庭の状況(贈与の時期、金額、他の財産の状況など)によって結論が変わります。具体的な金額や手続きの当否は、税理士・税務署に確認するようにしてください。
  • 特定の銘柄や投資信託を「これがおすすめ」と勧める意図はありません。あくまで長期・分散・積立を基本とした一般的な考え方を前提にしています。
  • 制度・税制は変わる可能性があるため、本記事の情報は執筆時点(2026年8月)のものとしてご覧ください。

まとめ 家族名義の投資は「記録」と「実態」がカギ

子ども名義の口座で資産形成のサポートをすること自体は、多くの家庭で行われている自然な取り組みです。ただし、名義と実質の所有者がずれたままになっていると、相続や税務調査の場面で「名義株・名義預金」として扱われ、思わぬ課税につながる可能性があります。

贈与契約書の作成、基礎控除を踏まえた申告、資金の流れの記録、そして子どもが成人した後の口座管理の引き継ぎ――こうした基本を押さえることが、家族のための資産形成を安心して続けるための土台になります。判断に迷う点があれば、自己判断で進めず税理士や税務署に確認しながら進めていきましょう。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。税務・法律の個別具体的な判断は、税理士・国税庁・税務署にご確認のうえ、投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

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