
「損益通算のために確定申告したら、なぜか国民健康保険料の通知が届いて金額が上がってた…」

「特定口座で源泉徴収されてるから、申告しなければ関係ないんじゃないの?」
結論から言うと、証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」で上場株式等の配当・売却益を受け取っているだけなら、確定申告をしない限り国民健康保険料(国保税)の計算には影響しません。ただし、損益通算や配当控除を使うために自分から確定申告をすると、その所得が国保料の算定対象に加わり、結果として保険料が上がることがあります。
この記事では、国民健康保険(国保)に加入している方(自営業・フリーランス・退職後の方など)向けに、株式の利益と国保料の関係、確定申告をするかどうかで何が変わるのかを初心者向けに整理します。保険料率や具体的な計算方法は自治体によって異なるため、最終的な判断はお住まいの市区町村・税理士への確認をおすすめします。
※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の税務・保険料の試算を保証するものではありません。制度は変更される可能性があるため、必ず最新の公式情報をご確認ください。
国民健康保険料が「所得」で決まる仕組み
会社員が加入する健康保険(社会保険)の保険料は基本的に給与額をもとに決まりますが、国民健康保険は前年の所得に応じて保険料(保険税)が変わる「所得割」という仕組みを持っています。自営業者・フリーランス・年金生活者・退職後に再就職していない方などが対象です。
所得割の計算では、確定申告書に記載された「総所得金額等」がベースになります。つまり、確定申告で株式の利益を所得として申告すると、その分だけ国保料の計算対象となる所得が増える可能性がある、という理屈です。
なぜ「特定口座(源泉徴収あり)」なら申告不要でいられるのか
証券会社で「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいる場合、株式等の売却益や配当は証券会社側であらかじめ所得税・住民税分が源泉徴収(天引き)されています。この所得については、確定申告をしなくても納税が完結する「申告不要制度」の対象です。
📰 出典:株式や配当などの確定申告による国民健康保険税への影響(国分寺市)
複数の自治体の案内でも、源泉徴収されている特定口座の配当・譲渡所得について確定申告をしない場合は、国民健康保険税の算定対象にはならないとされています。つまり「利益は出ているが、申告していない」状態であれば、国保料には反映されないのが原則です。
確定申告をすると国保料が上がることがある理由
一方で、次のような目的で自分から確定申告をすると話が変わってきます。
- 複数の証券口座の間で損益通算をしたい(A証券は利益、B証券は損失、を相殺したい)
- 譲渡損失を翌年以降に繰越控除したい
- 配当について配当控除を使いたい(総合課税を選ぶ場合)
これらのメリットを受けるために確定申告をすると、その所得が税務署から住民税・国保の担当部署にも連携されます。
📰 出典:上場株式等に係る配当所得等の課税方式と国民健康保険料について(川崎市)
自治体の案内でも、確定申告をして所得税や住民税の負担が軽くなったとしても、その所得が国保税の算定に加わることで、国保税自体は増額になる場合があると明記されています。つまり「所得税は還付されたのに、国保料の通知を見たら増えていた」ということが実際に起こり得るわけです。
令和6年度から「課税方式の統一」がスタートしている点に注意
以前は、上場株式等の配当・譲渡所得について「所得税は申告する(総合課税・分離課税)が、住民税は申告不要を選ぶ」といったように、税目ごとに異なる課税方式を選べる時期がありました。しかし税制改正により、令和6年度分(令和5年分の所得)以降は、所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことができなくなり、確定申告をすればその内容がそのまま住民税・国保税にも連動する仕組みに一本化されています。
つまり現在は「所得税だけ申告して、国保料には影響させない」という選択はできません。確定申告をするかどうかを決める時点で、国保料への影響もあわせて考える必要がある、ということです。
70歳以上の方は医療費の自己負担割合にも注意
国保に加入している70歳以上の方は、確定申告で所得が増えることによって、医療機関を受診したときの自己負担割合(1割・2割・3割の区分)の判定にも影響する場合があります。区分が上がれば、日々の医療費の窓口負担そのものが増えることになるため、保険料以上に影響が大きいケースもあります。この点は特に注意しておきたいポイントです。
確定申告するかどうかを考えるときのチェックポイント
損益通算・配当控除にはメリットがある一方で、国保料や医療費負担への影響というデメリットもあります。判断に迷う場合は、次のような視点で考えてみましょう。
- 損益通算・繰越控除で節税できる金額はいくらか(複数口座の損益や、前年以前の繰越損失の有無を確認)
- 国保料の所得割がどれくら上がりそうか(お住まいの自治体の保険料率・上限額を確認)
- 70歳以上なら、医療費の自己負担割合への影響もあわせて確認する
- 節税額と保険料増額を比べて、トータルで得になるかどうかを判断する
このシミュレーションは自治体の保険料率や世帯構成によって結果が大きく変わるため、実際の金額は必ずお住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口、または税理士に確認することをおすすめします。
注意点・NG行動
- 「特定口座だから申告しなくていい」と思い込み、損益通算のメリットを見落として余計な税金を払ってしまう
- 逆に「節税になるから」と国保料への影響を確認せずに確定申告し、想定外の保険料アップに驚く
- 課税方式の選択肢が税目ごとに分けられると誤解し、古い情報のまま判断してしまう(令和6年度以降は統一されています)
- 70歳以上の方が、医療費の自己負担割合への影響を確認せずに申告してしまう
いずれも「確定申告は税金だけの話」と思い込んでしまうことが原因です。国保加入者にとっては、税金・保険料・医療費負担をセットで考える視点が欠かせません。
資産形成への発展 制度を正しく知ることもリスク管理の一部
株式投資では値動きのリスクに目が行きがちですが、国保加入者にとっては「利益が出たときの手続き」もまた、手取りを左右する重要な要素です。特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば基本的に申告不要で完結しますが、損益通算などのメリットを享受したい場合は、税金と保険料をセットで試算する視点を持つことが、無駄な出費を避けることにつながります。
このような「知らないと損をする・慌てる」制度は投資の世界に数多くあります。値動きだけでなく、制度面のリスクや落とし穴にも目を向けておくことが、長期的に資産形成を続けるうえでの土台になります。
まとめ 確定申告の判断は「税金」と「国保料」をセットで
特定口座(源泉徴収あり)の配当・譲渡所得は、申告しなければ国民健康保険料の計算に影響しません。しかし、損益通算や配当控除のために確定申告をすると、その所得が国保料の算定対象に加わり、税金は軽くなっても国保料は増える、というケースがあり得ます。令和6年度以降は所得税と住民税の課税方式を別々に選ぶこともできなくなっているため、確定申告をするかどうかは、節税効果と保険料・医療費負担への影響を天秤にかけて判断する必要があります。
具体的な保険料率や試算は自治体ごとに異なるため、確定申告をする前に、お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口や税理士に相談し、トータルでの損得を確認してから判断するようにしましょう。

