
「NISAでコツコツ積み立ててきたのに、口座を見たら含み損になっていた…」

「このまま続けていいのか、いったん止めた方がいいのか分からなくて不安」
結論から言うと、積立投資は「一時的に含み損になること」自体は特に珍しいことではなく、それだけを理由にすぐ積立をやめる必要はないというのが一般的な考え方です。ただし、「何が起きても機械的に続ければいい」という単純な話でもありません。
この記事では、積立投資の残高が含み損(評価損)になったときに、続けるかどうかを考えるための5つの視点と、逆に見直しを検討したほうがよいケース、注意点を初心者向けに整理します。なお、本記事は特定の商品の売買を推奨するものではなく、最終的な判断は読者ご自身の状況に応じて行っていただくものです。
そもそもなぜ積立投資は含み損になるのか
積立投資で買っているのは、株式や投資信託など、日々値動きする金融商品です。景気の変動や金利動向、内外の経済ニュースなどによって、基準価額や株価は上下します。プラスの局面もあればマイナスの局面もあるのは、投資という仕組み上、避けられない性質です。
金融庁が公表している資産形成に関する資料(2026年8月執筆時点で公表されている内容)では、国内外の株式・債券に分散投資した場合、保有期間が5年程度では年率でおよそ-8%〜+14%と収益率に大きな幅があった一方、保有期間が20年程度まで長くなると、年率のばらつきがおおむね+2%〜+8%程度の範囲に収れんする傾向が示されています。短期間だけを切り取ればマイナスになる局面が普通にある一方、保有期間を長く取るほど結果のばらつきが小さくなりやすい、というのが積立・長期投資の基本的な考え方の背景にあります。過去の実績データに基づくものであり、将来の運用成果を示すものではない点にご注意ください。最新の内容は金融庁の公式サイトでご確認ください。
📰 出典:金融庁「資産形成の基本」(NISA特設ウェブサイト)
つまり、「今、含み損になっている」ことと「この投資が失敗だった」ことは、必ずしもイコールではありません。特に積立を始めてからまだ数年程度であれば、値動きの幅の中に収まっている可能性も十分にあります。
含み損が生じる要因はさまざまです。海外の金利動向、為替の変動、企業の決算内容、地政学的なニュースなど、複数の要素が組み合わさって株価や基準価額は日々動きます。どれか一つの出来事だけで「今後ずっと値下がりが続く」と断定できるものではなく、逆に「すぐに値上がりに転じる」と断定できるものでもありません。相場の先行きを正確に予測することは、専門家であっても難しいとされています。
また、行動経済学の分野では、人は同じ金額でも「得た喜び」より「失った痛み」の方を大きく感じやすい傾向(損失回避性)があると言われています。含み損の数字を見たときに、実際の金額以上に不安を強く感じてしまうのは、ある意味で自然な心理反応とも言えます。だからこそ、感覚だけで判断せず、次の章で紹介するような具体的な視点に沿って、一つずつ状況を確認していくことが大切です。
含み損のときにやってしまいがちなNG行動
考え方を整理する前に、含み損の局面で陥りやすい行動を確認しておきましょう。
- 積立を止めて、下がったタイミングで売ってしまう(狼狽売り):一時的な下落局面で売却すると、その時点の含み損が確定損失になってしまいます。
- SNSの「今すぐ売った方がいい」「もう終わり」といった声に流される:個人の感想や憶測であることが多く、自分の状況に当てはまるとは限りません。
- 不安から積立額を大きく増やしたり、逆に生活費を削ってまで無理に続けようとする:どちらも家計を圧迫し、長続きしない要因になります。
- 含み損を取り戻そうとして、値動きの大きい商品に短期間で乗り換える:長期・分散という積立投資の基本から外れ、かえってリスクを高める可能性があります。
これらはいずれも、「続けるかどうか」を冷静に判断する前に、感情で動いてしまうパターンです。特に「積立を止めて下落局面で売ってしまう」行動は、それまで積み立ててきた含み損を確定損失に変えてしまい、その後に基準価額が回復したとしても、その回復分の恩恵は受けられなくなってしまいます。まずは一呼吸置いて、次の視点で状況を整理してみましょう。
続けるかどうかを判断するための5つの考え方
1. そもそも「いつ使うお金」なのかを思い出す
積立投資を始めたときに、何のための資金だったかを振り返ってみましょう。老後資金など10年以上先に使う予定のお金であれば、目先の含み損だけで結論を出す必要性は低いと考えられます。一方、数年以内に使う予定が具体的にあるお金であれば、そもそも値動きのある商品での運用に向いていなかった可能性があり、資金の置き場所自体を見直す余地があります。
2. 生活防衛資金は別に確保できているか
積立投資とは別に、急な出費や収入減に備える生活防衛資金(一般的に生活費の3か月〜1年分程度が目安とされます)が確保できているかを確認しましょう。この資金が不足している状態で投資を続けると、いざという時に含み損の状態で取り崩さざるを得なくなるリスクが高まります。
3. 積立額が今の家計を圧迫していないか
含み損そのものよりも、「毎月の積立額が家計を圧迫していないか」の方が、続ける・続けないを判断するうえで重要な場合があります。無理な金額を積み立てて生活が苦しくなっているなら、投資をやめるのではなく、まずは金額を減らして続けるという選択肢も検討できます。
4. 「一時的な下落」なのか「自分の事情の変化」なのかを区別する
含み損の原因が市況全体の一時的な下落なのか、それとも転職・収入減・大きな支出予定など、自分自身の状況変化によるものなのかを分けて考えましょう。前者であれば、積立の方針そのものを変える理由にはなりにくい一方、後者であれば、積立額や投資方針の見直しを検討する材料になります。
5. 感情ではなく、あらかじめ決めたルールで判断する
「含み損が◯%を超えたら家計全体を見直す」「年に1回だけ資産配分を確認する」など、事前にルールを決めておくと、下落局面で慌てて動いてしまうことを防ぎやすくなります。値動きを見るたびに一喜一憂してしまう場合は、口座を確認する頻度自体を減らすのも一つの工夫です。
具体的には、次のような工夫が考えられます。
- 証券会社アプリの値動き通知をオフにし、確認は月1回・四半期に1回など頻度を決める
- 「暴落時こそ売らない」ではなく「暴落時は口座を見ない」というくらい距離を置くルールにする
- 積立設定を自動化し、毎回自分で「買うかどうか」を判断しなくて済む仕組みにしておく
- 家計簿アプリなどで資産全体を月次で確認し、投資口座の評価額だけを日々追いかけない
こうした仕組みをあらかじめ作っておくことで、含み損が出たタイミングでも「決めたとおりに淡々と続ける」という選択がしやすくなります。
参考:積立を続けた場合のイメージ(あくまで一例です)
具体的なイメージを持つために、簡単な例で考えてみます。仮に毎月3万円を積み立てていて、市場全体が大きく下落し、それまでの投資元本に対して評価額が2割程度目減りしたとします。この状況で積立を止めて売却すると、その時点でおおよそ2割分の損失が確定します。一方で、そのまま同じ金額の積立を続けた場合、下落した局面でも同じ金額で以前より多くの口数(持ち分)を買えることになるため、その後に基準価額が回復した際には、積立を続けていた分だけ回復の恩恵を受けやすくなる、という考え方があります。
これは制度上の仕組みを説明するための一例であり、実際の金額や将来の値動きを保証するものではありません。基準価額がいつ・どの程度回復するか、あるいはさらに下落するかは誰にも分かりませんので、あくまで考え方の一つとして参考にしてください。
それでも見直しを検討したほうがよいケース
ここまで「含み損だけを理由にすぐやめる必要はない」という考え方を紹介してきましたが、これは「何があっても絶対に続けるべき」という意味ではありません。積立投資はあくまで手段の一つであり、目的や状況が変われば、内容を見直すこと自体は自然なことです。上記の5つの視点を踏まえたうえで、以下のようなケースでは、続け方そのものを見直す価値があります。
| ケース | 見直しの方向性の例 | |—|—| | 生活防衛資金が全く確保できていない | 積立額を減らし、まず当面の生活資金を優先的に確保する | | 数年以内に使う予定のお金だと分かった | 値動きのある商品での運用から、預貯金など元本変動の少ない置き場所への変更を検討する | | 収入減・失業など自分の事情が大きく変わった | 家計全体を見直したうえで、無理のない金額に積立額を調整する | | 商品性や手数料への理解が不十分だったと気づいた | 商品内容を確認し直し、必要であれば運用方針そのものを再検討する |
いずれの場合も、「今すぐ全部売る」という極端な判断の前に、金額の調整や資金の色分けといった段階的な見直しを検討することが基本的な考え方になります。
「やめる」か「続ける」かの二択にしなくてもいい
見直しを考えるとき、つい「今の積立を全部やめるか、このまま続けるか」の二択で考えてしまいがちですが、実際には次のような中間的な選択肢もあります。
- 積立額を今より少ない金額に減らして続ける
- 一定期間だけ積立を一時停止し、家計が落ち着いたら再開する
- 新規の積立額は減らしつつ、これまで積み立てた分はそのまま保有しておく
いきなり全部売却するのではなく、まずは金額や期間を調整するところから検討すると、無理のない形で長期投資を続けやすくなります。
注意点:本記事は投資判断を保証するものではありません
ここまで紹介した考え方は、あくまで一般的な整理であり、特定の商品の購入・売却・継続を推奨するものではありません。積立投資を含め、投資には元本割れのリスクが常にあります。将来の運用成果を保証するものではなく、過去のデータやシミュレーションも将来の値動きを約束するものではない点にご注意ください。
- 制度・税制(NISAなど)の内容は変更される場合があります。最新情報は金融庁や各金融機関の公式サイトでご確認ください。
- 家計の状況や資金の使いみちは人それぞれです。この記事の内容がそのまま当てはまるとは限りません。
- 大きな方針転換を検討する場合は、必要に応じてファイナンシャルプランナーなど専門家にも相談することをおすすめします。
投資は必ず余剰資金の範囲で、自己責任のもとで行ってください。
まとめ:含み損は「続けるか」を考えるきっかけであって、答えではない
積立投資が含み損になること自体は、長期投資の過程で起こり得る自然な現象であり、それだけを理由に慌てて売却する必要はありません。大切なのは、「いつ使うお金か」「生活防衛資金はあるか」「積立額は無理なく続けられる水準か」といった自分の状況を確認したうえで、感情ではなく事前に決めたルールで判断することです。
含み損が出たときこそ、積立投資を始めたときの目的を思い出し、落ち着いて自分の家計と向き合う機会にしてみてください。焦って結論を出す必要はありません。今回紹介した5つの視点を一つずつ確認しながら、自分にとって無理のない続け方を考えていくことが、長期的な資産形成と付き合っていくうえでの土台になります。

