
「証券口座を開設するとき、『源泉徴収あり』と『なし』を選べって言われたけど、正直どっちが何なのか分からない…」

「とりあえず『あり』にしとけばいいって聞いたけど、本当にそれで大丈夫なのかな?」
結論から言うと、特定口座の「源泉徴収あり」は、株式や投資信託を売却して利益が出るたびに証券会社が自動で税金を差し引いてくれるため、原則として確定申告が不要になる口座です。一方「源泉徴収なし」は、税金が天引きされない代わりに、利益が出た年は自分で確定申告をする必要があります。この記事では、両者の違いと、それぞれどんな人に向いているのかを初心者向けに整理します。
なお、税制は変更されることがあるため、本記事の内容は執筆時点の一般的な仕組みの解説です。実際の手続き・最新の制度については、必ず国税庁や利用する証券会社の公式情報をご確認ください。
そもそも「特定口座」とは何か
証券会社で株式や投資信託を取引する口座には、大きく分けて「一般口座」と「特定口座」があります。
一般口座は、1年間の売買損益を投資家自身がすべて計算し、確定申告を行う必要がある口座です。取引が多くなるほど計算の手間が大きくなります。
これに対して特定口座は、証券会社が1年間の売買損益を計算し、「特定口座年間取引報告書」を作成してくれる口座です。この報告書があることで、確定申告の手間を大きく減らせます。特定口座には、さらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります[引用元:No.1476 特定口座制度|国税庁|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm]。
「源泉徴収あり」と「なし」の違い
源泉徴収あり
特定口座(源泉徴収あり)は、口座内で株式などを売却して利益が出るたびに、証券会社が税金(原則として所得税および復興特別所得税、住民税をあわせて20.315%)をその都度差し引いて納付してくれる口座です。この仕組みにより、口座内の上場株式等の譲渡所得については、原則として確定申告が不要になります[引用元:SBI証券「特定口座の『源泉徴収あり』と『源泉徴収なし』の違いについて教えてください」|https://faq.sbisec.co.jp/answer/5ef99c79d46ae80016c2b123/]。
源泉徴収なし
特定口座(源泉徴収なし)は、証券会社が年間の損益をまとめた「特定口座年間取引報告書」を作成してくれる点は「あり」と同じですが、取引のたびに税金は天引きされません。そのため、利益が出た年は、投資家自身がこの報告書をもとに確定申告を行う必要があります[引用元:No.1476 特定口座制度|国税庁|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm]。
表で比較
| 項目 | 源泉徴収あり | 源泉徴収なし | |—|—|—| | 税金の天引き | 売却益が出るたびに自動で天引き | 天引きされない | | 確定申告 | 原則不要(一定の場合は任意) | 利益が出た年は原則必要 | | 年間取引報告書 | 証券会社が作成 | 証券会社が作成 | | 手間 | 少ない | やや多い |
いずれの口座を選んでも、証券会社が損益を計算してくれる点は共通しています。違いは「税金が自動で天引きされるかどうか」と「確定申告の要否」にあります。
それぞれどんな人に向いていると言われているか
あくまで一般的な傾向であり、最終的な判断はご自身の状況に応じて行ってください。
- 源泉徴収ありが向いていると言われるケース:会社員などの給与所得者で、確定申告の手間をできるだけ減らしたい人。株式等の利益以外に確定申告をする予定がない人。
- 源泉徴収なしが向いていると言われるケース:もともと個人事業主などで確定申告を毎年行っている人。複数の証券会社の口座間で損益通算をまとめて行いたい人。
なお、「源泉徴収あり」を選んでいても、他の証券会社の口座と損益通算をしたい場合や、譲渡損失を翌年以降に繰り越したい場合などは、任意で確定申告をすることも可能です[引用元:マネックス証券「特定口座の『源泉徴収あり』と『源泉徴収なし』の違いを教えてください。」|https://faq.monex.co.jp/faq/show/3854?site_domain=default]。
「源泉徴収あり」を選ぶときに知っておきたい注意点
1. 扶養控除・配偶者控除への影響を避けやすい
「源泉徴収あり」を選び、かつ確定申告をしない場合、口座内の株式等の譲渡所得は、原則として税法上の「合計所得金額」に算入されません。これにより、扶養に入っている家族が株式投資を行う場合などで、扶養控除の判定に影響しにくいというメリットが一般的に挙げられます。ただし、確定申告をした場合や、他の所得の状況によって扱いが変わることもあるため、扶養の要件は複雑です。心配な場合は税務署・税理士に確認することをおすすめします。
2. 損失が出た年でも「あえて確定申告」した方が有利な場合がある
「源泉徴収あり」で確定申告不要にしていても、その年に譲渡損失が出た場合、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺できる「譲渡損失の繰越控除」という制度を利用できます[引用元:国税庁 タックスアンサー No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm]。確定申告をしなければこの制度は使えないため、損失が出た年は「申告不要のまま放置」が必ずしも最適とは限りません。
3. NISA口座とは別の制度
NISA口座内の取引には、そもそも税金がかからないため、特定口座の源泉徴収の有無は関係ありません。NISA口座と特定口座を両方開設し、非課税枠を超える取引や、NISA対象外の商品を特定口座で行う、という使い分けをしている投資家も多く見られます。
4. 一度選んだ区分は途中で変更できる場合がある
多くの証券会社では、その年に一度も取引をしていない場合に限り、年の途中でも「源泉徴収あり」と「なし」を変更できることがあります。ただし、既に取引をしてしまった後は、その年内は変更できないのが一般的です。変更を検討する場合は、必ず利用している証券会社の規定を確認してください。
まとめ 迷ったら「源泉徴収あり」+ 必要に応じて確定申告が基本
特定口座の「源泉徴収あり」と「なし」の違いは、税金が自動で天引きされるかどうか、そして確定申告が原則必要かどうかという点にあります。多くの会社員にとっては、手間を減らせる「源泉徴収あり」が選ばれる傾向にありますが、それでも損失の繰越控除や複数口座間の損益通算をしたい場合は、あえて確定申告をした方が有利になることもあります。
本記事は特定口座の一般的な制度の解説であり、特定の証券会社の利用や、確定申告をすべきかどうかを助言するものではありません。税制は変更される可能性があり、個々の状況によって最適な選択は異なります。実際の判断にあたっては、国税庁の公式情報や税務署、税理士への確認をおすすめします。投資そのものにも価格変動による元本割れのリスクがあるため、余剰資金の範囲で、ご自身の判断と責任において行ってください。

