
「NISAでコツコツ積み立ててきたけど、いざ使うとなるとどうすればいいか分からない…」

「一気に売るのは怖いし、税金や暴落のタイミングも気になるんだよね」
結論から言うと、NISA・つみたて資産の取り崩しは「定額」か「定率」かを決め、一度に全部売らず、時間を分けて少しずつ取り崩すのが基本の考え方です。積み立てて増やす時期と同じように、取り崩す時期にも「長期・分散」の発想を持ち込むことがポイントになります。
この記事では、投資初心者・中級者の方に向けて、NISA資産の取り崩し方の基本的な考え方と、押さえておきたい注意点をやさしく解説します。なお、取り崩しの最適なペースや商品選びは人によって正解が異なるため、本記事は一般的な考え方の紹介にとどめ、特定の商品・売却タイミングを推奨するものではありません。最終的な判断はご自身の状況に合わせて行ってください。
なぜ今「取り崩し方」で悩む人が増えているのか
2024年から始まった新しいNISA制度は、非課税で保有できる期間の上限がなくなり、制度自体も恒久的な措置になりました。そのため、若いうちから始めた方も、長期間にわたって非課税のまま資産を保有し続けられるようになっています。
📰 出典:金融庁「NISAを知る」制度の概要(非課税保有期間の無期限化・制度の恒久化)
一方で、つみたてNISAやiDeCoを数年〜十数年続けてきた方の中には、教育資金・住宅資金・老後の生活費など、実際に資産を「使う」タイミングが近づいてきた方も増えています。「増やし方」の情報は世の中に多くありますが、「取り崩し方」の情報はまだ少なく、いざという時にどうすればよいか分からず悩んでしまう方が多いのが実情です。
まず押さえたい基本 NISA資産は売却しても非課税
取り崩しを考えるうえで、まず知っておきたいのがNISA制度の基本的な仕組みです。
NISA口座内で保有している投資信託や株式は、売却して得た利益に税金がかかりません。これは資産を増やす時期だけでなく、取り崩す時期にも共通するメリットです。
ただし、注意しておきたい点があります。NISAには「年間投資枠」(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)と、生涯を通じた「非課税保有限度額」(総枠1,800万円)という2つの枠があり、保有商品を売却しても、その年の年間投資枠が復活して再利用できるわけではありません。売却した分(取得時の金額=簿価ベース)の非課税保有限度額は、翌年以降にあらためて利用できるようになる、という仕組みです。
📰 出典:金融庁「NISA特設ウェブサイト」よくある質問(非課税枠の再利用に関する説明)
この仕組みを知らないまま「売ってすぐ買い直せば枠が増える」と誤解してしまうと、想定していた非課税投資ができなくなることがあります。取り崩しを考える際は、この点をあらかじめ理解しておくと安心です。※制度の内容は変更されることがあるため、実際に取り崩しを行う際は、金融庁や取引している証券会社の最新情報を必ずご確認ください。
取り崩しを始める時期の目安をどう考えるか
「いつから取り崩しを始めればいいのか」も、多くの方が悩むポイントです。明確な正解はありませんが、考え方の目安としては以下のような視点があります。
- 教育資金・住宅資金など、使う時期がはっきり決まっているお金は、必要になる数年前から少しずつ取り崩しを始め、直前に相場が大きく下がっていても慌てずに済むようにしておく
- 老後の生活費として使う場合は、年金の受給開始時期や退職のタイミングに合わせて、取り崩しを始める年齢を決めておく
- 「まだ当分使う予定がない」お金については、無理に早く取り崩さず、そのまま長期で保有し続けるのも一つの選択肢
大切なのは、いつ・何のために使うお金なのかを整理したうえで、取り崩しの時期とペースを考えることです。目的が曖昧なまま「なんとなく不安だから」で早く取り崩してしまうと、非課税のメリットを十分に活かせないまま資産を減らしてしまうこともあります。
取り崩し方の代表的な2つの考え方
資産を取り崩す方法として、一般的に紹介されることが多いのが「定額取り崩し」と「定率取り崩し」という2つの考え方です。それぞれの特徴を整理してみましょう。
定額取り崩し 毎月・毎年決まった金額を取り崩す方法
「毎月5万円」「毎年60万円」のように、取り崩す金額をあらかじめ固定する方法です。
- メリット:家計管理がしやすく、収入の見通しが立てやすい
- デメリット:相場が下がっている時期も同じ金額を売る必要があるため、資産の減りが早まる可能性がある
定率取り崩し 残高に対して一定の割合を取り崩す方法
「残高の年4%」のように、その時点の資産残高に対して一定の割合を取り崩す方法です。
- メリット:残高が減れば取り崩す金額も自動的に減るため、資産が想定より早く尽きるリスクを抑えやすい
- デメリット:相場によって毎月・毎年受け取れる金額が変動し、家計管理がしにくい面がある
なお、「残高の4%程度を目安にする」という考え方が紹介されることもありますが、これは海外の研究をもとにした一つの参考値にすぎません。相場状況や資産構成によって適切な水準は変わるため、「この数字なら絶対に安全」といった保証があるものではない点に注意してください。
定額と定率、資産の減り方のイメージ(簡易シミュレーション)
数字のイメージをつかむために、仮に資産1,000万円を「定額」と「定率」で取り崩した場合の違いを簡単に見てみましょう。※以下はあくまで理解を助けるための一例であり、実際の運用成績や将来の成果を保証するものではありません。運用による値動きは考慮せず、単純化した試算です。
| 取り崩し方法 | 1年目の取り崩し額 | 相場が下落した年の取り崩し額 | 特徴 | |—|—|—|—| | 定額(年40万円) | 40万円 | 40万円(変わらない) | 家計管理はしやすいが、資産の減りが速まりやすい | | 定率(年4%) | 40万円 | 残高に応じて減る(例:残高800万円なら32万円) | 家計管理はしにくいが、資産が急に尽きにくい |
このように、同じ「年4%」からスタートしても、相場が下落した局面では、定率のほうが取り崩す金額(=売却する口数)が自動的に少なくなるという違いがあります。どちらが良い・悪いということではなく、「毎月の受取額を安定させたいか」「資産を長持ちさせることを優先したいか」など、ご自身が何を重視するかで選び方が変わってきます。
取り崩しで意識したい3つのポイント
1. 暴落時に慌てて全部を売らない
取り崩しの最中であっても、市場が大きく下落する局面は起こり得ます。積み立て時と同じように、下落したタイミングで焦って資産すべてを現金化してしまうと、その後の回復局面の恩恵を受けられなくなる可能性があります。取り崩し額を毎月・毎年に分け、時間を分散させておくことは、こうした局面での判断ミスを減らすことにもつながります。
2. 生活費の口座と取り崩し用の資産を分けて考える
取り崩したお金をすぐに生活費として全額使い切ってしまうと、相場が悪化した時に「予定より多く売らざるを得ない」状況に陥りやすくなります。ある程度の生活防衛資金を別に確保したうえで、取り崩しペースを決めておくと、相場の波に振り回されにくくなります。
3. 証券会社の「定期売却サービス」を活用する選択肢もある
近年は、あらかじめ設定した条件で投資信託を自動的に売却してくれる「定期売却サービス」を用意するネット証券が増えています。例えば、毎月決まった金額を売却する「定額指定」に加えて、残高に対する割合で売却する「定率指定」に対応するサービスも登場しており、NISA口座内の資産にも利用できるケースがあります。
📰 出典:SBI証券 よくある質問「投資信託定期売却サービスとはどのようなサービスですか?」
こうしたサービスを使えば、都度自分で売却注文を出す手間を減らせますが、サービス内容や対応商品は証券会社ごとに異なります。利用を検討する場合は、取引している証券会社の公式サイトで最新の条件をご確認ください。
なお、高齢者向けに毎月分配型の投資信託などを対象に加える新しい非課税制度(通称「プラチナNISA」)の創設も議論されていますが、執筆時点では正式な制度として実施されているものではありません。今後の税制改正の動向によって内容が変わる可能性があるため、こちらも最新情報は金融庁の発表をご確認ください。
📰 出典:日本経済新聞「『プラチナNISA』創設へ 金融庁、高齢者向けに毎月分配型追加」
取り崩し初心者がやりがちなNG行動
最後に、取り崩しを始める段階で陥りやすい行動を3つ紹介します。心当たりがないか、確認してみてください。
必要になった分だけまとめて一括で売却してしまう
まとまったお金が必要になったからといって、そのタイミングで保有資産を一気に売却してしまうと、たまたま相場が下がっている時期に当たった場合、想定より少ない金額しか受け取れないことがあります。急ぎでない資金であれば、複数回に分けて売却時期をずらすことも検討できます。
「利回りが高い」という理由だけで取り崩し用の商品に乗り換える
取り崩しの段階になって、「分配金利回りが高い」という理由だけで別の商品に乗り換えるケースも見られます。ただし、分配金の利回りが高い商品の中には、運用の利益だけでなく元本の一部を取り崩して分配しているものもあります。仕組みを理解しないまま乗り換えると、想定と異なる結果になることがあるため、商品性をよく確認することが大切です。
取り崩しペースを一度決めたら見直さない
家計の状況や相場環境は年々変化します。一度決めた取り崩しペースをそのまま何年も見直さずにいると、想定より資産の減りが早まっていることに気づくのが遅れる場合があります。年に一度など、定期的に残高と取り崩しペースを確認する習慣を持つと安心です。
取り崩しの前に知っておきたいリスクと注意点
取り崩しを始めた後も、投資である以上は元本割れのリスクがなくなるわけではありません。相場が下落している局面で取り崩しを続ければ、資産の減るペースが速まる可能性があります。
また、想定より長生きした場合に資産が想定より早く尽きてしまう「長生きリスク」も意識しておきたいポイントです。厚生労働省の簡易生命表によると、65歳時点の平均余命は男性で約19年、女性で約24年とされており、取り崩し期間は数十年に及ぶ可能性があることが分かります。
📰 出典:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
平均余命はあくまで統計上の目安であり、実際には人によって大きく異なります。「何歳まで生きるか」を正確に予測することはできないため、取り崩しペースには一定の余裕を持たせておくという考え方も一つの選択肢です。
そのほか、以下の点にも注意しておきましょう。
- 特定の投資信託・銘柄について「これが取り崩しに最適」といった断定はできません。商品選びは、手数料や分配方針などを比較したうえで、ご自身の状況に合わせて判断してください
- 税制・手数料・サービス内容は変更されることがあります。実際に取り崩しを始める前に、必ず公式サイトの最新情報を確認してください
- 取り崩し方法に「絶対に正しい正解」はありません。家計状況やほかの収入(年金など)によって、適した方法は人それぞれ異なります
まとめ 取り崩しも「長期・分散」の発想で
NISA・つみたて投資で資産を育ててきた方にとって、取り崩しは「ゴール」であると同時に、資産と長く付き合っていくための新しいスタートでもあります。
定額・定率どちらの取り崩し方にもメリット・デメリットがあり、一気に売らず時間を分けて取り崩すという発想は、積み立て時の「長期・分散・積立」の考え方と地続きです。焦らず、ご自身の家計や今後のライフプランに合わせて、無理のないペースを見つけていただければと思います。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。投資判断は必ずご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

