結論から言うと、決算書で見かける「非支配株主持分」や「非支配株主に帰属する当期純利益」は、連結した子会社のうち、親会社以外の株主の取り分を表すものです。初心者の方は「連結の純利益=自分が持つ会社の株主の取り分」と思い込まず、「親会社株主に帰属する当期純利益」がどれかを確認する習慣をつけておくと、決算の数字を落ち着いて読みやすくなります。株式投資は元本割れのリスクがあり、数字の見方を知っても利益や株価上昇が保証されるわけではありません。この記事では、仕組みと確認方法、3つの注意点をわかりやすく解説します。
※本記事は2026年10月時点の一般的な会計の考え方をもとにしています。会計基準や開示の様式は変わる可能性があるため、最新の情報は各社の決算短信・有価証券報告書(EDINET)や日本取引所グループなどの公式情報でご確認ください。

「連結決算に『非支配株主』って出てきたけど、何のこと?」

「純利益が2つ書いてあって、どっちを見ればいいか迷うよね」
非支配株主持分とは?まず結論
大きな会社は、子会社をいくつも持っていることが多く、決算では親会社と子会社をまとめた連結決算が基本になります(連結と単体の違いについては、別記事の「持株会社」の解説でも触れています)。
子会社の議決権の過半数を親会社が持っていれば、その子会社は連結の対象になります。ただし、親会社が子会社の株を100%持っているとは限りません。たとえば80%だけ持っていて、残りの20%は別の株主が持っている、というケースもあります。
この親会社以外の株主のことを「非支配株主」と呼び、その人たちの取り分を表したものが次の2つです。
- 非支配株主持分:貸借対照表の「純資産」の中にある項目。子会社の純資産のうち、非支配株主に対応する部分
- 非支配株主に帰属する当期純利益:連結損益計算書で、連結の純利益のうち非支配株主に対応する部分
一方、親会社の株主(=みなさんが親会社の株を買った場合の立場)に対応するのが、「親会社株主に帰属する当期純利益」です。決算短信では、この数字が1株当たり利益(EPS)などの計算に使われるのが一般的です。
仮の数字で見てみよう
実在の企業ではなく、わかりやすくするための仮の数字です。
- 親会社P社は、子会社S社の株の80%を持っている
- 連結の当期純利益は、P社単体の分とS社の分を合わせて100億円とする
- そのうちS社が生み出した利益が10億円とする
連結決算では、S社の利益はいったん全額(10億円)が連結に取り込まれます。ただし、S社の株の20%は他の株主のものなので、10億円のうち2億円は非支配株主の取り分として区分されます。
| 項目 | 金額(仮) |
|---|---|
| 連結の当期純利益 | 100億円 |
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 2億円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 98億円 |
このとき、P社の株主にとっての取り分に近いのは、100億円ではなく98億円のほうです。差は小さく見えますが、子会社が多い会社や、非支配株主の割合が大きい会社では、差が大きくなることもあります。
初心者が気をつけたい3つの注意点
1. 「連結の純利益」と「親会社株主に帰属する純利益」は別物
決算ニュースの見出しでは、「連結純利益」といった言葉が使われることがあります。報じ方によって、どちらの数字を指しているかが異なる場合もあります。
- 決算短信の連結損益計算書で、「親会社株主に帰属する当期純利益」の行を確認する
- ニュースの数字と、決算短信の数字が違って見えるときは、定義の違いを疑ってみる
2. 貸借対照表の「純資産」にも非支配株主の分が含まれる
純資産の合計には、親会社の株主のもの(株主資本など)だけでなく、非支配株主持分も含まれます。
- 「純資産が多いから安心」と見る前に、内訳を確認する
- PBRやROEなどを自分で計算するときは、どの純資産・どの利益を使っているのかをそろえる(指標の定義は、データ提供元によって異なる場合があります)
3. 非支配株主が多い=悪い、とは限らない
非支配株主がいる理由は、会社によってさまざまです。たとえば、上場している子会社を持つ、他社との合弁で事業を行う、現地の事業パートナーと組むといったケースがあります。
- 割合の大小だけで、良い・悪いを決めつけない
- 「非支配株主に帰属する利益」が増えた場合は、子会社の利益が増えたことが背景にある場合もある
- 気になる場合は、決算短信や有価証券報告書の説明で、どの子会社の影響かを確認する
決算書で確認する3ステップ
- 決算短信の連結損益計算書で、「親会社株主に帰属する当期純利益」と「非支配株主に帰属する当期純利益」の両方を見る
- 連結貸借対照表の純資産の内訳で、「非支配株主持分」の金額を見る
- 金額が大きいときは、有価証券報告書(EDINET)の「関係会社の状況」などで、どの子会社が関わっているかを確認する
決算書は、各社の「IR情報」のページや、金融庁のEDINETで無料で閲覧できます。
📰 出典:日本取引所グループ「決算短信・四半期決算短信」に関する情報
初心者が避けたいNG行動
- 「連結純利益」の数字だけを見て、親会社株主の取り分だと思い込む
- 非支配株主持分が大きい(または小さい)という理由だけで、会社の良し悪しを決める
- 指標を計算するとき、利益と純資産の定義をそろえずに、他社と比べる
- 決算の数字を見て、短期的な株価の上げ下げを当てようとする
まとめ|「誰の取り分の数字か」を確認する習慣を
- 非支配株主持分は、連結した子会社のうち、親会社以外の株主の取り分を表す
- 連結の純利益は、親会社株主の分と非支配株主の分に分かれている。みなさんが見るべきは「親会社株主に帰属する当期純利益」
- 割合の大小だけで判断せず、決算短信と有価証券報告書で背景を確認する
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。株式投資には元本割れのリスクがあります。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で、長期・分散・積立を基本に行ってください。

