投資信託を選ぶとき、多くの方は「信託報酬(運用管理費用)」の安さに注目します。一方で、目論見書(もくろみしょ)の費用欄には、あまり目立たない「信託財産留保額(しんたくざいさんりゅうほがく)」という項目があります。
この記事では、信託財産留保額の意味、ほかのコストとの違い、つみたて投資でどれくらい気にすればよいかを、初心者向けに整理します。制度や手数料は商品ごとに異なるため、最新の情報は必ず販売会社・運用会社の公式資料でご確認ください(本記事は2026年9月時点の一般的な解説です)。
信託財産留保額とは?
信託財産留保額とは、投資信託を売却(解約)するときなどに、投資家が負担する費用のことです。
ほかのコストと違い、販売会社や運用会社の収入になるわけではありません。ファンドの資産(信託財産)にそのまま残され、そのファンドを引き続き持つ投資家のために使われる仕組みです。
なぜ必要なの?
投資信託では、解約する人が出ると、運用会社はその資金を用意するために、組み入れている株式や債券などを売却する必要があります。この売却にかかる取引コストを、解約する人だけでなく、残る投資家が負担してしまうと不公平になります。
そこで、「解約する人にも一定の負担をしてもらい、残る投資家との公平性を保つ」ために設けられているのが、信託財産留保額です。
ほかのコストとの違い
投資信託にかかるコストは、主に次の3つに分けて整理できます。
- 購入時手数料:購入時に販売会社へ支払う(ノーロード商品は0円)
- 信託報酬:保有している間、毎日ファンドの資産から差し引かれる(運用会社・販売会社・信託銀行の報酬)
- 信託財産留保額:解約(売却)するときなどに、基準価額に対して一定率が差し引かれる(ファンドの資産に残る)
つまり、信託財産留保額は「持っている間ずっとかかる費用」ではなく、売却時にだけ発生する費用です。
いくらかかる?
信託財産留保額の水準は商品によって異なります。一般的には、解約時の基準価額に対して0.1〜0.3%程度に設定されている商品が多く見られる一方、0%(かからない)商品も珍しくありません。
たとえば、解約時の評価額が100万円のファンドで、信託財産留保額が0.3%の場合、差し引かれるのは3,000円です(計算例であり、実際の率は商品ごとの目論見書で確認してください)。
つみたて投資ではどれくらい気にすべき?
長期・積立を前提とする方にとって、信託財産留保額は次のような位置づけになります。
- 長期保有して売却する回数が少ないなら、影響は限定的になりやすい
- 一方で、短期間で乗り換えや売買を繰り返すと、そのたびに負担が積み上がる
- 信託報酬が低くても、留保額が高い商品もあれば、その逆もある
注意したいのは、「留保額がかかる商品=悪い商品」ではないという点です。留保額は、残る投資家を守る仕組みでもあるためです。大切なのは、自分の投資スタイル(長期保有か、頻繁に乗り換えるか)に合わせて、総合的なコストを比べることです。
確認する手順
商品を選ぶときは、次の順番で確認すると迷いにくくなります。
- 目論見書(交付目論見書)の「手続・手数料等」の欄で、購入時手数料・信託報酬・信託財産留保額を確認する
- 販売会社のサイトで、同じ商品の費用が同じ内容で表示されているかを見る
- 保有期間の目安(何年持つ予定か)を考え、売却の頻度が多くなりそうかを想定する
- 複数のファンドを比べる場合は、信託報酬だけでなく、留保額も含めて確認する
📰 出典:金融庁「つみたてNISA・NISA特設ウェブサイト」
📰 出典:投資信託協会「投資信託の基礎知識」
注意点・NG行動
- 信託報酬だけで商品を決めてしまう:売却時の費用など、ほかのコストも含めて比較しましょう
- 頻繁な乗り換えを前提にしてしまう:売却のたびに費用がかかる可能性があります
- 「コストが安いから必ず有利」と考える:投資信託は元本が保証されておらず、基準価額の下落で元本割れとなる可能性があります
- 税金を確認しない:特定口座での売却益には税金がかかります。NISA口座では非課税ですが、制度の細かな取り扱いは公式情報でご確認ください
まとめ
信託財産留保額は、解約するときにかかる、残る投資家との公平性を保つための費用です。長期・積立を前提にするなら、大きく気にしすぎる必要はありませんが、購入時手数料・信託報酬とあわせて、目論見書で必ず確認しておきたい項目です。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

