
「REITって分配金利回りは調べたことあるけど、『NAV倍率』って言葉も出てきて、正直よく分からない…」

「株のPBRみたいなものなのかな?でも同じなのか違うのか、自信がなくて」
結論から言うと、NAV倍率とは「REITの投資口価格が、保有する不動産の実質的な純資産価値(NAV)の何倍で取引されているか」を示す指標で、株式のPBR(株価純資産倍率)に近い考え方の指標です。ただし計算の元になる数字の性質が異なるため、単純に「PBRと同じ感覚」で使うと誤解を招くことがあります。この記事では、NAV倍率の考え方とPBRとの違い、割安・割高を見るときの注意点を初心者向けに解説します。
※ 本記事は2026年9月執筆時点の情報です。数値の水準や制度は変わる可能性があるため、投資の際は必ず各REITの運用会社・証券会社の公式情報でご確認ください。本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。
NAV(純資産価値)とは何か
NAVとは「Net Asset Value」の略で、REITが保有する不動産などの資産を時価で評価し直し、そこから負債(借入金など)を差し引いた「実質的な純資産の価値」を指します。会計上の帳簿価格ではなく、保有不動産を現在の市場価値で評価し直す点がポイントです。
REITは決算期ごとに、保有する不動産について不動産鑑定士による鑑定評価額を開示しています。この鑑定評価額をもとに資産全体を時価評価し、負債を差し引いたものが1口あたりのNAV(1口あたり純資産)として計算されます。
NAV倍率の計算方法
NAV倍率は、次の計算式で求められます。
NAV倍率 = 投資口価格 ÷ 1口あたりNAV
- NAV倍率が1倍より高い → 市場価格が、保有不動産の実質的な純資産価値より「割高」に評価されている
- NAV倍率が1倍より低い → 市場価格が、保有不動産の実質的な純資産価値より「割安」に評価されている
一見すると、株式のPBR(株価純資産倍率、株価÷1株あたり純資産)と同じ考え方に見えますが、この後説明するとおり、分母の性質には重要な違いがあります。
NAV倍率とPBRは何が違うのか
株式のPBRは、会計上の帳簿価格をベースにした純資産(自己資本)を分母に使います。一方REITのNAVは、保有不動産を「現在の市場価値」で評価し直した金額をベースにしている点が大きな違いです。
| 比較項目 | PBR(株式) | NAV倍率(REIT) | |—|—|—| | 分母の性質 | 会計上の帳簿価格ベースの純資産 | 不動産鑑定評価額など時価ベースの純資産 | | 評価対象 | 企業全体の資産・負債 | 保有する個々の不動産 | | 評価の更新頻度 | 決算ごとの帳簿価格 | 決算ごとの鑑定評価(実勢の不動産市況を反映しやすい) | | 1倍が意味すること | 帳簿上の解散価値と株価が同水準 | 保有不動産の時価評価額と投資口価格が同水準 |
PBRが「帳簿上の解散価値」に近い概念であるのに対し、NAV倍率は「今、保有不動産を時価で売却したと仮定した場合の価値」により近い概念です。そのため、不動産市況(地価・賃料相場)が変化すると、会計上の帳簿価格が動かない場合でもNAVは変動しうるという特徴があります。
NAV倍率が「1倍を下回っている=お得」とは限らない理由
NAV倍率が1倍を下回っていると、「保有不動産の価値より安く買える、お得な銘柄」のように見えることがあります。しかし、次のような点には注意が必要です。
- 鑑定評価額はあくまで時点の評価:不動産鑑定評価額は、実際に売却したときに同じ価格で売れることを保証するものではありません。市況の急変時には評価額と実勢価格が乖離することもあります。
- 市場が将来のリスクを織り込んでいる可能性:分配金の減額懸念や、保有物件の空室率上昇といった将来の懸念が市場価格にすでに反映され、NAV倍率が低く出ているケースもあります。
- 用途・エリアによって適正水準の目安は異なる:オフィス系・住宅系・物流系など用途によって、市場から評価されやすい倍率の水準の傾向は異なるとされています。同じ「1倍未満」でも、背景にある事情は銘柄ごとに異なります。
「NAV倍率が低い=割安で必ず値上がりする」という単純な図式ではなく、なぜその水準で評価されているのかを、財務内容や保有物件の状況とあわせて確認する視点が欠かせません。
NAV倍率を見るときの実践的なチェックポイント
NAV倍率を投資判断の参考にする際は、次のような点もあわせて確認することをおすすめします。
- 分配金利回りとあわせて見る — NAV倍率だけでなく、分配金利回りの水準もあわせて確認し、どちらか一方の数字だけで判断しない
- LTV(総資産に占める有利子負債の割合)を確認する — 負債の水準が高いほど、金利上昇局面での財務面の影響を受けやすい傾向があるとされています
- 同じ用途のREIT同士で比較する — オフィス系はオフィス系同士、物流系は物流系同士など、似た用途の銘柄と比較する
- 過去の水準からの変化を見る — 現在のNAV倍率が、その銘柄の過去の水準と比べて高いのか低いのかという相対的な変化も参考になります
NISA・税金の扱いは通常のREITと同じ
NAV倍率はあくまで投資判断のための指標であり、NISAでの取り扱いや税金の仕組みそのものが変わるわけではありません。新しいNISA制度では、成長投資枠の対象商品としてJ-REITも含まれていますが、整理銘柄・監理銘柄に指定されている銘柄など、対象から除外される条件もあります。分配金の税金についても、通常のREITの分配金と同様の扱いとなります。
📰 出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト
制度の詳細や対象商品の条件は変更される可能性があるため、実際に購入する前に金融庁や利用する証券会社の最新の公式情報を必ずご確認ください。
まとめ 一つの指標だけで判断せず、複数の視点を組み合わせる
NAV倍率は、REITの投資口価格が保有不動産の実質的な純資産価値と比べて割安か割高かを見る、株式のPBRに近い考え方の指標です。ただし分母となるNAVが時価評価ベースであるという特徴があり、「1倍を下回っている=お得」と単純に判断できるものではありません。分配金利回り・LTV・同じ用途の銘柄同士の比較など、複数の視点を組み合わせて確認する姿勢が大切です。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。REITは価格変動・分配金減額などの元本割れリスクがある金融商品です。投資は必ず自己責任で、余剰資金の範囲内で行ってください。

