
「このファンド、平均的なリターンは良さそうだけど、暴落したときにどれくらい下がるものなの?」

「値動きが荒いって聞くと、実際どこまで含み損に耐える必要があるのか想像がつかないんだよね」
結論から言うと、投資信託や株式の「下落局面での痛みの大きさ」を知る手がかりになる指標のひとつが「最大ドローダウン」です。過去のある期間で、資産が最も高かった時点(ピーク)から最も低くなった時点(ボトム)まで、どれくらい下落したかをパーセンテージで示したもので、平均的なリターンや値動きの荒さ(標準偏差)だけでは見えにくい「最悪期にどこまで耐える必要があったか」を具体的にイメージする材料になります。ただし、あくまで過去の実績値であり、将来の下落幅を保証・予測するものではありません。この記事では、最大ドローダウンの意味・見方・活用時の注意点を初心者向けにやさしく整理します。
そもそも最大ドローダウンとは?初心者にもわかる意味
最大ドローダウン(Maximum Drawdown)とは、ある期間中に資産評価額がピーク(最高値)からどれだけ下落したか、その最大の下落幅を示す指標です。単純に「価格が上がったか下がったか」ではなく、「一番高かったときと比べて、どこまで沈んだか」に注目する点が特徴です。
証券会社の用語解説でも、最大ドローダウンは「投資信託や株式のリスクを測る代表的な指標のひとつ」として紹介されており、ピークからボトムまでの下落率で表されると説明されています。
投資信託の目論見書や運用報告書には「年率リターン◯%」「標準偏差◯%」といった数字が並びますが、これらの平均的な指標だけでは、実際に自分が保有していたら含み損がどこまで膨らんでいたのかを直感的にイメージしにくいことがあります。最大ドローダウンは、その「最悪期にどれだけ耐える必要があったか」を具体的な下落率で示してくれる点で、標準偏差とはまた違った角度からリスクを把握できる指標です。
最大ドローダウンの計算の考え方【具体例で見る】
考え方のイメージ
最大ドローダウンは、おおまかに次のような考え方で求められます。
- 最大ドローダウン =(期間中の最高評価額 − その後の最安評価額)÷ 期間中の最高評価額 × 100
つまり、資産が一番大きく増えた「山」から、そのあとに訪れた一番深い「谷」までの下落率を計算したものです。
具体例で考える最大ドローダウン
あくまで考え方を説明するための架空の例として、2つのファンドの値動きを比較してみます。
| 項目 | ファンドX | ファンドY | |—|—|—| | 期間中の最高評価額 | 150万円 | 180万円 | | その後の最安評価額 | 120万円 | 108万円 | | 最大ドローダウン | (150-120)÷150 = 20% | (180-108)÷180 = 40% |
この例では、ファンドYの方が期間中の最高評価額は高かったものの、その後の下落幅(最大ドローダウン)も大きく、山と谷の差がより激しかったことが分かります。平均的なリターンの数字が良くても、下落局面での落差が大きいファンドもあるという点が、最大ドローダウンを見る意味のひとつです。
なお、これはあくまで考え方を示すための一例であり、特定の投資信託や金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。
📰 出典:右肩上がりだから大丈夫?投資の「痛み」を測る「ドローダウン」とは|トウシル 楽天証券
楽天証券の投資情報メディアでも、ドローダウンは「平均的な右肩上がりのグラフだけでは分からない、投資の“痛み”を測る指標」として紹介されています。
最大ドローダウンの見方 3つのポイント
1. 「どこまで耐えられそうか」の目安にする
自分がその商品を保有していたとして、評価額が最大ドローダウンの水準まで下がったときに、慌てずに持ち続けられそうかをイメージしてみることが大切です。過去に30%を超えるドローダウンがあった商品であれば、同じような下落が今後も起こり得ることを前提に考えておく必要があります。
2. 「回復までの期間」もあわせて確認する
最大ドローダウンの数字だけでなく、その後どれくらいの期間で元の水準まで回復したのか(回復期間)もあわせて確認すると、より実感を持ちやすくなります。同じ下落幅でも、数か月で回復したケースと、数年単位で低迷が続いたケースとでは、精神的な負担の大きさが変わってきます。
3. 集計する期間によって数値が変わる
最大ドローダウンは、直近1年・3年・5年、あるいは設定来など、どの期間で見るかによって数値が異なります。相場が比較的穏やかだった期間だけを切り取ると小さめの数値になりやすいため、できるだけ長い期間、かつリーマンショックやコロナショックのような大きな下落局面を含む期間で確認する習慣を持つと、より実態に近い数値を把握しやすくなります。
最大ドローダウンだけで判断すると危険な理由
最大ドローダウンは便利な指標ですが、これだけを見て投資判断をするのは避けたいところです。初心者が陥りやすいNG行動を整理します。
- 数値が小さいファンドだけを選ぶ:最大ドローダウンが小さい=「必ず安全」「必ず儲かる」ファンドではありません。あくまで過去の一時点での下落幅を示す参考値のひとつにすぎません。
- 将来も同じ幅で収まると思い込む:過去の最大ドローダウンを超える下落が将来起こらない保証はどこにもありません。相場環境が変われば、下落の深さも変わり得ます。
- 信託報酬や純資産総額など他の情報を確認しない:最大ドローダウンが小さくても、信託報酬(運用コスト)が割高であれば手取りのリターンは目減りしますし、資産クラス自体が異なれば単純比較は難しくなります。
- PER・PBRなど個別株の割安度を測る指標と混同する:最大ドローダウンは主に値動きの「痛みの大きさ」を見る指標であり、株価が割安か割高かを判断するPER・PBRとは目的が異なります。
実際の投資判断への活かし方【NISA・つみたて投資での使い方】
つみたてNISAや投資信託を選ぶ際は、最大ドローダウンを「絶対の答え」ではなく「自分のリスク許容度と照らし合わせるための材料の一つ」として使うのが現実的です。
- 同じ投資対象(例:全世界株式、先進国株式など)のファンドを複数ピックアップし、最大ドローダウン・シャープレシオ・信託報酬・純資産総額などをあわせて比較する
- 「もし評価額がこの最大ドローダウン分だけ下がったら、自分は積立を続けられそうか」を事前にシミュレーションしておく
- 一時的な下落に動揺して売却してしまう「狼狽売り」を避けるため、あらかじめ下落の可能性を織り込んだうえで投資額・投資先を決める
なお、どの投資信託・銘柄を選ぶかは、年齢・収入・投資の目的・リスク許容度によって人それぞれ異なります。本記事は特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。最終的な投資判断は、必ずご自身の責任で行ってください。
最大ドローダウンを見る前に知っておきたいリスクと注意点
投資信託や株式は、預貯金と異なり元本が保証された商品ではありません。基準価額や株価は市況によって日々変動し、購入時より値下がりして元本割れとなる可能性があります。最大ドローダウンなどの指標はあくまで過去のデータに基づく参考情報であり、将来の下落幅や運用成果を保証するものではありません。
また、税制や制度は変更される可能性があるため、NISA制度の詳細や最新の投資信託ラインアップについては、必ず金融庁や各証券会社の公式サイトなど最新の公式情報をご確認ください。本記事は2026年8月時点の一般的な情報をもとにした内容です。
投資を行う際は、生活費など当面必要なお金とは分けて、余剰資金の範囲で、ご自身の判断と責任のもとで行うようにしてください。
まとめ 最大ドローダウンは「下落の痛み」を知る一つの物差し
最大ドローダウンは、平均的なリターンや値動きの荒さだけでは見えにくい「過去に最も深く沈んだときの下落幅」を具体的な数値で示してくれる指標です。回復期間や集計期間もあわせて確認しながら、「その下落幅に自分が耐えられそうか」を事前にイメージしておくことで、いざ相場が下落したときにも慌てず、長期・分散・積立という基本を守りやすくなります。
ただし、最大ドローダウンはあくまで過去の実績にもとづく参考指標のひとつであり、これだけで将来の値動きや運用成果を保証するものではありません。信託報酬やご自身のリスク許容度なども含めて総合的に判断し、無理のない範囲で腰を据えた資産形成を心がけましょう。

