
「NISAでつみたて投資を始めたいけど、毎月いくら積み立てればいいのか分からない…」

「SNSだと『月10万円積み立ててる』って人もいて、自分の金額が少なすぎる気がして不安になる」
結論から言うと、「収入の何割を積み立てるべきか」に、誰にでも当てはまる正解の数字はありません。大切なのは、他人の金額をそのまま真似ることではなく、自分の家計に合わせて「無理なく続けられる金額」を、いくつかの視点から考えて決めることです。この記事では、積立投資の金額を決める際の考え方を、初心者向けに4つの視点に整理して解説します。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。制度内容や統計データは変わることがあるため、最新情報は金融庁・総務省統計局など公式サイトでご確認ください。
なぜ「収入の何割」という発想で考えるとよいのか
積立投資でよくある失敗のひとつが、「とにかく多く積み立てたほうが早く増える」という考えに引っ張られて、生活が苦しくなるほどの金額を設定してしまうことです。投資は元本割れの可能性がある以上、生活費を削ってまで無理に金額を増やすことは本末転倒です。
一方で、「収入に対する割合」という発想を持っておくと、収入が増減したときにも積立額を見直しやすくなります。金額そのものを固定で覚えるより、「手取りの◯割程度」というざっくりした基準を自分の中に持っておくほうが、長く続けやすい仕組みになります。
金融庁も、資産形成の第一歩として「家計管理の基本は収入と支出を把握し、収支を黒字にすること」「黒字になった分から、先に一定額を貯蓄・投資に回す『先取り』の仕組みをつくること」を基本的な考え方として紹介しています。
📰 出典:金融庁「資産形成の基本」
積立額を決める前提として押さえておきたいこと
具体的な割合の話に入る前に、前提として押さえておきたいポイントが2つあります。
- 生活防衛資金を確保してから考える:病気・失業など不測の事態に備え、生活費の数ヶ月分程度は、値動きのない預貯金で確保しておくのが基本的な考え方とされています。この資金を投資に回すのはおすすめできません。
- 数年以内に使う予定のある資金は除く:住宅購入の頭金、結婚・出産、車の買い替えなど、近い将来に使う予定が決まっている資金も、値下がりのタイミングと重なるリスクがあるため、積立投資とは分けて考えるのが無難です。
この2つを確保したうえで、残った「余剰資金」の範囲内で、積立額を検討していきます。
積立額を考える4つの視点
「収入の何割」という一律の正解はありませんが、考える際の目安になる視点はいくつかあります。以下の4つを、自分の状況に当てはめながら参考にしてみてください。
視点1. 「手取りからの黒字分」を基準に考える
まず把握したいのが、毎月の手取り収入から生活費・保険料などの固定費を差し引いた「黒字分」がどれくらいあるかです。総務省統計局が実施している家計調査では、勤労者世帯の実収入・消費支出・黒字(可処分所得から消費支出を差し引いた額)といった家計の収支動向が、世帯属性別に定期的に公表されています。こうした統計は、自分の家計が世の中の平均と比べてどのあたりに位置しているかを大まかに把握する参考になります。
📰 出典:総務省統計局「家計調査(家計収支編)」
黒字分の全額を積立に回す必要はありません。急な出費に備える余裕分を残したうえで、黒字分の一部を積立に充てる、という考え方が現実的です。
視点2. まずは「無理なく続けられる少額」から始めて調整する
初心者ほど、最初から高い割合を設定しようとしがちですが、続けられなければ意味がありません。まずは月々数千円〜1万円程度など、家計にほとんど影響しない金額から始め、数ヶ月〜半年ほど生活してみて、無理がなければ少しずつ増額していく、という進め方も一つの方法です。
積立額はいつでも見直しができます。「最初に決めた金額を一生変えてはいけない」というものではなく、収入やボーナスの変化に合わせて、増減させながら調整していくのが現実的です。
視点3. ライフステージ・リスク許容度に応じて割合を変える
同じ収入であっても、独身か家族がいるか、住宅ローンを抱えているかどうかなどによって、無理なく投資に回せる割合は大きく変わります。一般的には、支出の変動が少ない独身の会社員などは比較的まとまった割合を投資に回しやすい一方、子育て世帯や住宅ローン返済中の世帯は教育費・返済など固定的な支出が多く、投資に回せる余地が小さくなりやすい傾向があります。
また、年齢が若いほど「時間を味方につけて長期で積み立てる」余地が大きい一方、退職が近い世代では、値動きの荒い商品への配分や積立額を控えめにするなど、リスクの取り方自体を見直す視点も必要になります。あくまで一般的な傾向であり、実際の判断は家族構成や資産状況、リスク許容度によって人それぞれ異なります。
視点4. 「増額できるタイミング」をあらかじめ決めておく
毎月の積立額を大きく増やすのが難しくても、昇給時・賞与(ボーナス)支給時など、収入が一時的に増えるタイミングに合わせて積立額を見直す、という方法もあります。多くの金融機関のつみたてNISAでは、毎月の積立額に加えて、特定の月だけ増額する設定ができる場合があります(サービス内容は金融機関により異なるため、利用中の証券会社・銀行の公式サイトでご確認ください)。
日常の生活費から捻出するのではなく、「増えた分の一部」を積立に回す形にすると、生活の負担を増やさずに積立額を引き上げやすくなります。
参考:積立額別のシミュレーション例(あくまで一例です)
イメージをつかむための一例として、毎月の積立額を変えた場合の将来の試算を紹介します。以下は、年率3%で複利運用できたと仮定した場合の、20年間積み立てた際の元本と試算上の資産額の目安です。
| 毎月の積立額 | 20年間の積立元本 | 年率3%で運用できた場合の試算額(目安) | |—|—|—| | 5,000円 | 120万円 | 約164万円 | | 10,000円 | 240万円 | 約328万円 | | 30,000円 | 720万円 | 約984万円 | | 50,000円 | 1,200万円 | 約1,640万円 |
※あくまで一定の利回りを仮定した試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。実際の値動きにより、試算額を下回る(元本割れする)可能性があります。運用商品には手数料(信託報酬など)もかかるため、実際の手取り額は試算より少なくなります。
この試算からも分かるとおり、金額の大小そのものより「無理なく続けられるかどうか」のほうが、長期的には結果を左右しやすいポイントです。少額であっても、途中でやめずに続けられる金額を選ぶことには意味があります。
積立額を決めるときにやりがちなNG行動
- SNSやネットの「他人の積立額」をそのまま真似する:収入・家族構成・支出は人それぞれです。他人の金額は参考程度にとどめ、自分の家計に当てはめて考えましょう。
- 生活防衛資金まで積立に回してしまう:急な医療費や失業などに備えた現金まで投資に回すと、いざというときに資産を含み損の状態で取り崩すことになりかねません。
- 「もっと増やしたい」焦りから、いきなり高い金額に設定する:継続できなければ、複利の効果も十分に得られません。まずは無理のない金額を継続することを優先しましょう。
- 収入が減った・支出が増えたのに積立額を見直さない:自動引き落としのまま放置せず、家計の状況が変わったタイミングで積立額も定期的に見直すことが大切です。
まとめ 「割合」はあくまで目安、自分の家計に合わせて決めよう
積立投資の金額に、誰にでも当てはまる「正しい割合」はありません。生活防衛資金と近い将来に使う予定の資金を確保したうえで、家計の黒字分・ライフステージ・リスク許容度といった複数の視点から、無理なく続けられる金額を自分で決めていくことが基本になります。
まずは少額からでも始めてみて、実際に生活してみた実感をもとに、少しずつ調整していくのがおすすめです。金額に迷う場合は、独学で決めるだけでなく、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナー(FP)に相談しながら、自分と家族の家計に合った金額を見つけてみてください。

