
「証券口座を開くとき『特定口座(源泉徴収あり)』『特定口座(源泉徴収なし)』を選ぶ画面が出てきたけど、正直よく分からないまま『あり』にしちゃった…」

「私は逆に『なし』にした気がする。これって、あとで困ることあるのかな?」
結論から言うと、会社員など給与を1か所から受け取っていて確定申告に慣れていない方の多くは、「源泉徴収あり」を選んでおけば原則として確定申告の手間を省けます。一方で、働き方や他の所得の状況によっては「源泉徴収なし」が向いているケースもあります。この記事では、両者の違いと、初心者が選ぶ際の考え方を整理します。
※ 本記事は制度の一般的な仕組みを解説する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や、個々の税務判断を助言するものではありません。税制は変わることがあるため、最新情報は国税庁や口座開設先の証券会社、税理士にご確認ください。また、株式投資等には価格変動により元本を割り込む可能性があります。
そもそも証券口座には種類がある 特定口座・一般口座・NISA口座の違い
証券口座を開設すると、多くの場合「特定口座」か「一般口座」のどちらかを選ぶことになります(あわせてNISA口座も開設できます)。
- NISA口座:一定の非課税投資枠の範囲内で得た利益に税金がかからない口座
- 特定口座:証券会社が年間の損益を計算し、「年間取引報告書」を作成してくれる課税口座
- 一般口座:損益の計算・記録を自分自身で行う必要がある課税口座
📰 出典:特定口座|投資の時間
一般口座は自分で年間の売買損益をすべて集計する手間がかかるため、特に投資を始めたばかりの方は、基本的に「特定口座」を選んでおくと事務負担を大きく減らせます。今回取り上げる「源泉徴収あり/なし」は、この特定口座を選んだ場合にさらに選択する項目です。
特定口座の「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の違い
源泉徴収ありの特徴
特定口座(源泉徴収あり)では、株式などを売却して利益が出るたびに、証券会社が税金(所得税・復興特別所得税・住民税をあわせて利益の20.315%)をあらかじめ差し引いて納税してくれます。
📰 出典:No.1476 特定口座制度
これにより、原則として自分で確定申告をする必要がありません。「税金の手続きはよく分からない」という初心者にとって、手間が少ない選択肢といえます。なお、複数の証券口座を持っていて損益を通算したい場合や、譲渡損失を翌年以降に繰り越したい場合などは、源泉徴収ありの口座でも任意で確定申告をすることができます。
源泉徴収なしの特徴
特定口座(源泉徴収なし)では、証券会社が年間の損益計算(年間取引報告書の作成)までは行ってくれますが、実際の納税手続きは自分で確定申告を行う必要があります。
給与所得者が、給与・退職所得以外の所得(株式等の利益を含む)が一定額以下の場合に申告が不要となる制度もありますが、対象になるかどうかは収入の状況や制度改正によって変わるため、自己判断せず国税庁や税務署の最新情報を確認することが大切です。
どちらを選ぶべき?タイプ別の考え方

「結局、私みたいな会社員はどっちを選べばいいの?」

「働き方や他の収入の状況によって、考え方が少し変わってくるみたいだよ」
会社員・公務員など、確定申告に慣れていない人
給与を1か所から受け取っていて、これまで確定申告をしたことがない、という方は「源泉徴収あり」を選んでおくのが無難です。利益が出るたびに自動で納税が完了するため、確定申告のやり方を一から調べる手間を減らせます。
もともと確定申告をしている個人事業主・フリーランスなど
事業所得などですでに毎年確定申告をしている方であれば、株式の損益もあわせて申告する手間自体は大きく変わりません。損益通算のタイミングなどを踏まえて「源泉徴収なし」を選ぶ方もいますが、判断に迷う場合は税理士や税務署に相談することをおすすめします。
家族の扶養に入っている配偶者・学生などの場合
扶養に入っている方は、証券口座での利益の申告方法によって、扶養の判定に使われる所得の集計に影響する場合があります。扶養の要件(収入の目安)は制度改正で変わることがあるため、扶養している側の勤務先の担当窓口や税務署に、事前に確認しておくと安心です。
複数の証券会社に口座を持っている人
複数の口座で利益と損失が両方出ている場合、それぞれ「源泉徴収あり」の口座であっても、確定申告をすることで口座間の損益を通算できる制度があります。損益通算をしたいときは、源泉徴収の有無にかかわらず確定申告が必要になる点を覚えておきましょう。
選ぶ際・変更する際に知っておきたい注意点
- 年の途中での変更は原則できない:源泉徴収あり/なしの選択は年単位が基本で、その年最初の売却(または配当等の受け取り)以降は、年の途中で変更できません。翌年分からあらためて選び直すことは可能です。
- 迷ったら「あり」から始めるのも一つの考え方:どちらが向いているか判断に迷う場合、まずは手間の少ない「源泉徴収あり」で始め、確定申告に慣れてきたら翌年以降の選択を見直す、という進め方もあります。
- NISA口座は源泉徴収の概念自体がない:NISA口座内の利益は非課税のため、特定口座の源泉徴収あり/なしとは別の話です。両方を開設して使い分けている方も多くいます。
- 制度・税率は変わることがある:今回紹介した税率や申告不要制度は執筆時点の情報です。最新の内容は国税庁の公式サイトや口座開設先の証券会社でご確認ください。
こんな考え方には注意(NG行動)
- 「源泉徴収なしにすれば税金を払わなくて済む」という誤解:源泉徴収なしを選んでも、利益が出れば納税義務自体はなくなりません。確定申告という手続きが自分に回ってくるだけです。
- 確定申告が面倒だからと、利益を過少に申告したり、申告そのものをせず放置したりすること:無申告や過少申告は、延滞税・加算税などのペナルティにつながる可能性があります。
- よく調べずに「なんとなく」で選び、あとから慌てて証券会社に問い合わせること:開設前に、自分の働き方や他の収入の状況に照らして落ち着いて選びましょう。
まとめ 迷ったら「源泉徴収あり」、状況に応じて見直しを
特定口座の「源泉徴収あり」は、証券会社が納税まで代行してくれるため、確定申告に不慣れな初心者にとって手間の少ない選択肢です。一方「源泉徴収なし」は、複数口座の損益通算などを自分でコントロールしたい方に選ばれることもあります。
どちらが正解ということはなく、自分の働き方・他の所得の状況・確定申告への慣れ具合によって向き不向きが変わります。迷ったときは無理に自己判断せず、国税庁の公式情報を確認したり、必要であれば税理士に相談したりしながら、自分に合った選択をしていきましょう。株式投資そのものには価格変動により元本を割り込むリスクがある点もあわせて覚えておいてください。

