
「もうすぐ産休に入るけど、収入が減る間もNISAの積立って続けたほうがいいのかな…」

「育休中は手取りが減るって聞くし、家計が不安で積立を止めるべきか迷ってるんだよね」
結論から言うと、産休・育休で収入が変わる時期は、積立を「続ける・減らす・止める」のどれを選んでも間違いではありません。大切なのは、生活を切り詰めてまで積立を優先しないことです。NISAはあくまで長期・積立・分散を基本にした資産形成の手段であり、家計を圧迫してまで続ける制度ではありません。この記事では、産休・育休中の収入の仕組みを踏まえたうえで、つみたて投資をどう考えればよいか、初心者向けに整理します。
なお、本記事は特定の商品や金額を推奨するものではなく、一般的な考え方の整理を目的としています。制度・給付率は執筆時点(2026年8月)のものです。最新情報は厚生労働省や勤務先、金融機関の公式情報でご確認ください。
なぜ「積立を続けるべきか」で悩んでしまうのか
産休・育休に入ると、多くの人がまず気にするのが「収入がどれくらい減るのか」という点です。会社員の場合、育休中は給与の代わりに雇用保険から育児休業給付金が支給される仕組みになっており、給与を満額もらえる働き方とは家計の見え方が変わります。
一方で、「NISAはコツコツ続けることが大事」というイメージが広く浸透しているため、「収入が減る時期に積立を止めたら、今までの努力が無駄になるのでは」と不安に感じる人も少なくありません。悩みの背景には、主に次のような事情があると考えられます。
- 育休中の手取りが実際どれくらい変わるのか、イメージしづらい
- 出産費用・ベビー用品・将来の保育料など、新たな出費が重なる時期でもある
- 「積立を止める=長期投資の失敗」という思い込みがある
- 職場復帰後にいつ・どう積立額を戻せばよいか分からない
- SNSなどで「育休中も満額積立を続けた」という声を見て、自分だけ止めるのが不安になる
こうした悩みは、産休・育休という「収入の形が一時的に変わる期間」に特有のものです。会社員として毎月安定した給与を受け取っていた頃と同じ感覚で家計を組み続けようとすると、無理が生じやすくなります。まずは収入の仕組みを正しく理解したうえで、積立額を見直すかどうかを考えていきましょう。
産休・育休中の収入の仕組みを整理する
判断の前提として、育休中の収入がどう扱われるかを簡単に押さえておきましょう。
会社員が育児休業を取得すると、勤務先からの給与が支払われない期間は雇用保険から育児休業給付金が支給されるのが一般的です。給付額は休業開始時の賃金をもとに一定の割合で計算され、休業開始から一定期間は67%、それ以降は50%が目安とされています(延長・出生後休業支援給付など細かい要件は別途あります)。
📰 出典:Q&A~育児休業等給付~|厚生労働省
なお、出産前後の「産休(産前産後休業)」期間は、育休とは異なり健康保険から出産手当金が支給される仕組みです。目安として、標準報酬日額の3分の2程度が、出産日以前42日・出産日後56日のうち会社を休んで給与が支払われなかった日数分について支給されます。
📰 出典:出産で会社を休んだとき(出産手当金)|全国健康保険協会
ポイントは、育児休業給付金・出産手当金のいずれも非課税であり、産休・育休期間中は健康保険料・厚生年金保険料も、勤務先が手続きを行うことで原則免除される点です。額面上は給与より少なく見えても、税金・社会保険料が引かれないぶん、手取りベースでの目減り幅は数字ほど大きくないケースが多いとされています。とはいえ、賞与相当分やボーナス払いの支出計画への影響、休業が始まる月・終わる月の日割り計算など、家庭ごとに事情は異なります。まずは「自分の場合、月々の手取りがいくらになりそうか」を、勤務先や公式情報で確認することが最初のステップです。
「続ける・減らす・止める」を比較すると
3つの選択肢には、それぞれメリットと注意点があります。どれが正解というものではなく、家計の状況に合わせて選ぶものだと捉えてください。
| 選択肢 | メリット | 注意しておきたい点 | |—|—|—| | 満額で続ける | 非課税枠を無駄なく使える/積立ペースを崩さずに済む | 生活防衛資金が薄いと家計を圧迫しやすい | | 減額する | 家計にゆとりを持たせつつ積立習慣は維持できる | 減額のタイミング・再開時期を後で決める手間がある | | 一時停止する | 支出が読みにくい時期でも家計を最優先できる | 「止める=失敗」と感じて再開のきっかけを逃しやすい |
たとえば、毎月3万円を積み立てていた人が育休中に1万円へ減額した場合を考えてみましょう。積立額が減っても保有している資産(それまでの積立分)はそのまま非課税で運用が続きます。あくまで一例の試算であり、実際の増減や将来の成果を保証するものではありませんが、「積立額を一時的に減らしても、これまで積み上げてきた分がゼロになるわけではない」というイメージを持っておくと、必要以上に不安を感じにくくなります。
積立を「続ける・減らす・止める」を考えるときのポイント
1. 生活防衛資金が確保できているかを確認する
病気・急な出費など「もしも」のときに備える生活防衛資金(一般的に生活費の3〜6カ月分が目安とされます)が心もとない状態であれば、積立額を減らす・一時停止することを優先的に検討してよい場面です。産休・育休は収入構造が一時的に変わる期間でもあるため、貯蓄が薄い状態で積立だけを無理に続けることは、家計全体のリスクを高めてしまいます。
2. 積立を止めても「資産がなくなる」わけではない
積立の新規設定を止めたり金額を減らしたりしても、これまで積み立ててきた投資信託などの資産がなくなるわけではありません。多くの金融機関では、保有資産をそのまま非課税で保有し続けながら、新規の買付だけを止める・減らすことができます。「積立を止める=これまでの資産形成を手放すこと」ではない、という点を整理しておくと、必要以上に「もったいない」と感じずに判断しやすくなります。
3. NISAの非課税枠は「その年に使い切れなくても」制度上問題ない
現行のNISA制度では、年間投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)を使い切れなかった年があっても、その年の未使用分が翌年に繰り越されるわけではありませんが、生涯にわたる非課税保有限度額(1,800万円)自体が減ったり消えたりするわけではありません。産休・育休の年に積立額を減らしても、その後また積立を再開すれば、長期的な非課税投資枠は引き続き活用できます。焦って無理に枠を埋める必要はありません。
📰 出典:NISA特設ウェブサイト|金融庁
4. 一時的な出費なのか、継続的な収入変化なのかを分けて考える
出産準備費用やベビー用品などの一時的な出費であれば、その期間だけ積立額を減らし、家計が落ち着いたら元の金額に戻すという考え方ができます。一方、時短勤務や働き方の変化で復帰後も収入が以前と変わる見込みなら、無理に元の金額へ戻すことを前提にせず、新しい家計に見合った金額に設定し直すほうが、長く続けやすくなります。
5. 復帰のタイミングで段階的に見直す
職場復帰後は、保育料など新たな固定費が発生する一方、給与収入も戻ります。復帰直後にすぐ元の積立額に戻すのではなく、数カ月分の家計の実績を見てから調整する、というのも一つの考え方です。積立額の変更はいつでも行えるため、「一度決めたら固定」と考えず、ライフイベントに合わせて柔軟に見直す前提でいるとよいでしょう。
6. 夫婦・パートナーで家計を分担している場合は世帯全体で考える
共働き世帯の場合、どちらか一方が産休・育休に入っても、もう一方の収入が家計を支えることになります。「休業中の本人の積立だけ」を見て判断するのではなく、世帯全体の収入・支出・貯蓄のバランスで考えると、より実態に近い判断がしやすくなります。たとえば、休業する側の積立を一時的に減らし、その分をもう一方が続ける、といった調整も一つの考え方です。それぞれの口座は名義人本人のものなので、非課税枠自体を融通し合うことはできませんが、家計としてどこにゆとりを配分するかは柔軟に決めて構いません。
実践する際の注意点・リスク
- 元本割れのリスクは変わりません。産休・育休中であっても、投資信託や株式である以上、価格が下がる可能性は常にあります。家計が苦しいときに無理に積立額を増やすことは避けましょう。
- 育児休業給付金の非課税・社会保険料免除は、あくまで給付金そのものに関する制度です。NISA口座内の運用益が非課税になる仕組みとは別の話なので、混同しないよう整理しておきましょう。
- 自治体によっては、保育料の算定に世帯の課税状況を用いる場合があります。NISA口座内の利益は非課税のため原則として算定基礎に含まれませんが、特定口座など課税口座での配当・売却益は、申告方法によっては住民税の課税所得に影響する可能性があります。心配な場合は、お住まいの自治体や税理士に確認することをおすすめします。
- 育児休業給付金の給付率・延長要件、NISAの非課税枠のルールは今後変わる可能性があります。本記事は執筆時点の情報であり、最新の内容は厚生労働省・金融庁・勤務先の公式情報をご確認ください。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)を並行して利用している場合は、原則として60歳まで引き出せない点に注意が必要です。産休・育休で収入が減る時期は、まずいつでも引き出せるNISA・預貯金を優先し、iDeCoの掛金は職場の担当窓口や運営管理機関に相談しながら見直すのが無難です。
- 職場復帰後は、保育料の支払いなど新たな固定費が発生します。積立額をすぐに元へ戻すのではなく、数カ月分の家計の実績(実際の収支)を確認してから調整すると、無理のないペースを見つけやすくなります。

「収入が減る間は、無理せず積立額を調整してもいいんだね」

「止めても『失敗』じゃないって分かって、少し安心した」
まとめ 無理なく続けられる金額に調整することが長期投資の近道
産休・育休は、家計の収入構造が一時的に変わる大きなライフイベントです。この時期にNISAの積立を続けるか、減らすか、一時停止するかは、家庭ごとの状況によって正解が異なります。大切なのは、生活防衛資金を優先し、無理のない金額で「長く続けられる形」に調整することです。積立を止めることは長期投資の失敗ではなく、家計全体を守るための合理的な選択のひとつだと捉えて、落ち着いて判断していきましょう。
最終的な投資判断や積立額の設定は、ご自身・ご家庭の状況に応じて自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資は元本割れの可能性がある商品であることを理解したうえで、余剰資金の範囲で行うようにしましょう。

