
「信用取引をしていたら、急に『追証』という通知が来た…何をすればいいのか分からなくて焦っている」

「放置するとどうなるの?いくら入金すればいいの?調べても数字が難しくてよく分からないんだよね…」
結論から言うと、追証(おいしょう・追加保証金)とは、信用取引の担保になっている「委託保証金率」が一定の水準を下回ったときに、不足分の担保を追加で差し入れる義務のことです。多くの証券会社では、追証が発生してから一定の期限(翌々営業日の正午までなど)を過ぎても解消できない場合、保有しているポジションが強制的に決済される「強制決済(ロスカット)」が行われます。この記事では、追証がどのような計算で発生するのか、具体的な数値例と発生後の対応の流れ、そして追証を避けるための考え方を初心者向けに整理します。
※ 委託保証金率の基準・追証解消の期限・掛目などの具体的な数値は証券会社によって異なり、変更されることもあります。本記事は2026年8月時点で確認できる一般的な情報をもとにした解説であり、実際の数値は必ず利用している(または利用を検討している)証券会社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
そもそも「委託保証金率」とは
信用取引を始めるには、証券会社に担保として一定の委託保証金を差し入れる必要があります。委託保証金率とは、保有しているポジション(建玉)の約定代金に対して、担保となる保証金の価値がどのくらいの割合を保っているかを示す数値です。
📰 出典:日本証券業協会「信用取引」
株価が値上がり・値下がりして含み損益が生じると、担保の実質的な価値も変動するため、委託保証金率は日々変わります。含み損が大きくなるほど委託保証金率は下がっていき、一定のラインを下回ると「追証(追加保証金)」の差し入れが必要になる、という関係です。
📰 出典:SBI証券 よくある質問「信用取引において、あといくら下がったら追証が発生するか計算できますか」
委託保証金率の計算方法を具体例で確認する
委託保証金率は、おおまかに次のような考え方で計算されます(掛目や計算方法の細部は証券会社によって異なります)。
- 委託保証金率(%)=(委託保証金の評価額-建玉の評価損)÷ 建玉の約定代金 × 100
言葉だけだとイメージしづらいので、簡略化した数値例で確認してみます(あくまで説明のための一例であり、実際の計算方法・手数料・金利などは考慮していません)。
| 項目 | 数値(例) | |—|—| | 委託保証金として差し入れた金額 | 100万円 | | 信用取引で保有した建玉の約定代金 | 300万円(保証金の約3倍) | | 開始時点の委託保証金率 | 100万円 ÷ 300万円 = 約33.3% | | その後、値下がりで発生した評価損 | 60万円 | | 評価損反映後の委託保証金の実質評価額 | 100万円-60万円=40万円 | | 評価損反映後の委託保証金率 | 40万円 ÷ 300万円 = 約13.3% |
📰 出典:SBIネオトレード証券「信用取引の『追加保証金(追証)』について」
多くの証券会社では、委託保証金率が20%前後を下回った水準を「追証発生ライン」の目安としています。上の例のように委託保証金率が約13.3%まで下がった場合、多くのケースで追証の対象となる、というイメージです。ただし、この20%という数値はあくまで一例で、証券会社によって最低維持率の基準(20%・25%・30%など)や計算方法は異なります。自分が使っている証券会社の基準は、必ず公式サイトで確認してください。
なぜ「約3倍」まで取引できてしまうのか
信用取引では、委託保証金を担保に、その約3倍程度までの取引ができる仕組みが一般的です。これは、少ない自己資金で大きな金額を動かせる「レバレッジ効果」を生む一方で、値下がりした際に委託保証金率が急速に低下しやすいという裏返しでもあります。上の例のように、建玉に対してわずか20%程度の評価損(60万円/300万円)が出ただけで、委託保証金率が33.3%から13.3%まで一気に下がってしまう点は、信用取引特有の注意点だといえます。
追証が発生してから解消までの流れ
追証が発生すると、証券会社からメールや取引画面上の通知などで連絡があります。ここからの対応は、大きく分けて次の2つの選択肢があります。
- 不足分の担保を追加で差し入れる:現金を入金する、あるいは代用有価証券(保有株式など)を差し入れて委託保証金率を回復させる
- 建玉の一部または全部を決済する:ポジションを減らす・手仕舞うことで、必要な委託保証金の金額そのものを小さくする
📰 出典:SMBC日興証券「信用取引の『委託保証金率』『委託保証金維持率』とは?」
多くの証券会社では、追証が発生した日から一定の期限(例として、追証発生日の翌々営業日の正午までといった基準)が設けられており、この期限までに1または2の対応をとる必要があります。期限や具体的な計算・回復すべき保証金率の水準は証券会社ごとに異なるため、追証の通知を受け取ったら、まずは自分が取引している証券会社の該当ページで正確な金額・期限を確認することが最優先です。
期限までに対応できないとどうなるか
期限までに追証を解消できない場合、証券会社によって保有している建玉が強制的に決済されます。いわゆる「強制決済」「ロスカット」と呼ばれる措置です。これは、自分が「まだ持ち続けたい」「もう少し待てば株価が戻るかもしれない」と考えていたとしても、その意思とは関係なく執行されます。想定していないタイミング・価格でポジションが決済され、損失が確定してしまう可能性がある点は、現物取引にはない信用取引特有のリスクです。
初心者が陥りやすい失敗・NG行動
- 追証発生の通知メールや取引画面のアラートを見落とし、気づいたときには期限が迫っている
- 「もう少し待てば株価が戻るはず」と楽観視し、対応を先延ばしにしてしまう
- 追証を解消するための資金を、生活費や別の用途のために確保していたお金から捻出してしまう
- 追証をきっかけに、含み損を早く取り返そうとして、さらにポジションを増やしてしまう
- そもそも委託保証金率にほとんど余裕がない状態(借入枠の限界近く)で取引を続けてしまう
追証を発生させにくくするための考え方
以下は、追証のリスクを抑えるための一般的な注意点であり、特定の取引手法や証券会社の利用を推奨するものではありません。
- レバレッジを目一杯まで使わず、委託保証金率に余裕(バッファ)を持たせた金額でポジションを持つ
- 含み損が一定水準を超えた段階で、追証を待たずに自分の判断で建玉を見直す
- 取引アプリなどで委託保証金率を日々確認する習慣をつける
- 生活費や近い将来使う予定のあるお金を、信用取引の担保に回さない
- そもそも信用取引の利用自体を、投資に慣れるまでは避け、現物取引を中心に考える
信用取引は、少ない資金で大きな金額を動かせる分、含み損の拡大スピードも速く、追証・強制決済という現物取引にはない資金負担・タイミングリスクを伴います。「早く資産を増やせる方法」というより「損益の振れ幅とリスク管理の難易度が大きくなる取引方法」と捉えておくほうが実態に近いでしょう。長期・分散・積立を軸に無理なく資産形成を進めたい方にとっては、まずは現物取引を中心に考え、信用取引を検討する場合も仕組みを十分理解したうえで慎重に判断することをおすすめします。
まとめ 追証は「委託保証金率の低下」への警告サイン
追証は、信用取引の担保となる委託保証金率が一定水準を下回ったときに発生する、追加の資金負担です。発生後は期限内に入金や建玉の決済で対応しないと、証券会社によって強制的にポジションが決済されるリスクがあります。具体的な基準・期限・掛目は証券会社によって異なるため、信用取引を利用している(または検討している)方は、必ず公式サイトで最新のルールを確認しておきましょう。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・取引手法の利用を推奨するものではありません。信用取引には価格変動リスクに加え、投資額を超える損失が生じる可能性、追証・強制決済により想定外のタイミングで損失が確定する可能性があります。制度・数値は証券会社ごとに異なり変更されることもあるため、最新情報は必ず公式サイトでご確認のうえ、投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

