
「会社に企業型DCがあるんだけど、マッチング拠出とiDeCoって何が違うの?」

「今年の4月に制度が変わったって聞いたけど、前と何が違うのかよく分からなくて…」
結論から言うと、マッチング拠出は企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入している人が、会社の掛金に上乗せして自分でも掛金を出せる制度、iDeCo同時加入は企業型DCとは別にiDeCoの口座を作り、そちらでも積み立てる方法です。この2つは同時に使うことはできず、どちらか一方を選ぶ仕組みになっています。そして2026年4月、マッチング拠出について「会社の掛金額を超えて拠出できない」という長年の上限ルールが撤廃され、以前より多く上乗せしやすくなりました。この記事では、両者の違いと今回の改正のポイント、選び方の考え方を初心者向けに整理します。 ※ 本記事は2026年8月執筆時点の制度に基づく一般的な解説です。制度は今後も見直される可能性があるため、最新情報は厚生労働省・企業年金連合会・iDeCo公式サイト、勤務先の担当部署等で必ずご確認ください。
そもそも「マッチング拠出」とは?企業型DCの基本をおさらい
企業型DCは、会社が毎月一定額の掛金を出し、加入者本人が用意された投資信託や保険商品などの中から運用先を選ぶ年金制度です。マッチング拠出は、その会社の掛金に加えて、加入者自身が給与から上乗せで掛金を出せる制度のことを指します。
マッチング拠出の主なポイントは次のとおりです。
- 上乗せした掛金は給与天引きで拠出される
- 上乗せ分の掛金は全額が所得控除の対象になり、所得税・住民税の負担を抑えながら積み立てられる
- 運用商品は会社の企業型DCで用意されているラインアップから選ぶ
- すべての会社が導入しているわけではなく、勤務先が制度を採用していないと利用できない
マッチング拠出を導入している企業型DC実施企業は半数程度にとどまるとされており、まずは自分の会社がこの制度を導入しているかどうかを確認するところから始める必要があります。
📰 出典:企業年金連合会「マッチング拠出(企業型年金加入者掛金)」
2026年4月、マッチング拠出の「上限撤廃」で何が変わった?
改正前は「会社の掛金額まで」しか上乗せできなかった
これまでマッチング拠出には「加入者本人の掛金は、会社の掛金額を超えてはならない」というルールがありました。たとえば会社の掛金が月1万円であれば、本人が上乗せできるのも最大で月1万円まで、というように、会社側の拠出額が上乗せできる金額の”天井”になっていたのです。会社の掛金が少ない人ほど、本人がもっと積み立てたいと思っても上乗せできる金額が限られてしまう、という制約でした。
改正後は拠出限度額まで自由に設定できるように
2026年4月1日施行の確定拠出年金法施行令の改正により、この「会社の掛金額以下」という制約が撤廃されました。改正後は、会社の掛金額にかかわらず、法令で定められた拠出限度額(他に企業年金がない場合は月5万5,000円、確定給付企業年金(DB)など他の企業年金がある場合はより低い上限)の範囲内で、本人が自由に上乗せ額を設定できるようになっています。
たとえば会社の掛金が月1万円のケースで比べると、次のようなイメージです(他に企業年金がない場合の一例で、実際の上限は会社の制度・他制度の有無によって異なります)。
| | 改正前 | 改正後(2026年4月〜) | |—|—|—| | 会社の掛金 | 月1万円 | 月1万円 | | 本人が上乗せできる上限 | 月1万円まで | 月4万5,000円まで | | 合計の拠出額の目安 | 月2万円 | 月5万5,000円 |
さらに2026年12月には、他に企業年金がない場合の拠出限度額自体が月6万2,000円へ引き上げられる予定であることも各種報道・解説で紹介されています。こちらも会社の制度改定や規約変更の状況によって適用時期が変わるため、勤務先の案内を確認するようにしましょう。
📰 出典:三井住友信託銀行「2026年4月 マッチング拠出制限撤廃に向けた規約変更等のご案内」
マッチング拠出とiDeCo同時加入、何が違う?比較表で整理
企業型DCに加入している人が掛金を上乗せする方法には、マッチング拠出のほかに「iDeCoへの同時加入」という選択肢もあります。2022年10月の制度改正により、企業型DC加入者でも労使での規約変更なしに、原則としてiDeCoへ同時加入できるようになりました。ただし、マッチング拠出とiDeCo同時加入は同時に利用することはできず、加入者ごとにどちらか一方を選ぶ仕組みです。
| 比較項目 | マッチング拠出 | iDeCo同時加入 | |—|—|—| | 掛金の決め方・手続き窓口 | 会社の企業型DCの制度内で設定・手続き | 自分でiDeCoを扱う金融機関を選んで口座開設 | | 運用商品の選択肢 | 会社の企業型DCのラインアップから選ぶ | 選んだ金融機関のiDeCo商品ラインアップから選ぶ | | 手数料 | 会社が一部を負担しているケースがある | 口座管理手数料などを基本的に本人が負担 | | 掛金の上限(他に企業年金がない場合の目安) | 拠出限度額(月5.5万円)から会社掛金を差し引いた範囲 | iDeCo単体で月2万円かつ会社掛金と合算で月5.5万円以内 | | 併用の可否 | iDeCo同時加入とは選択制(同時利用は不可) | マッチング拠出とは選択制(同時利用は不可) |
いずれの制度でも、掛金は全額が所得控除の対象になり、運用益は非課税、原則60歳になるまで引き出せないという基本的な性質は共通しています。違いは「会社の制度の中で完結させるか」「自分で金融機関を選んで運用するか」という手続き面・選択肢の広さにあります。
📰 出典:厚生労働省「企業型DCを実施する事業主・従業員の皆さまへ 令和4(2022)年10月から企業型DC加入者がiDeCoを利用しやすくなります」
どちらを選ぶ?判断の材料になる3つの視点
特定の制度が「絶対にお得」ということはなく、会社の制度内容や本人の希望によって向き不向きが変わります。判断材料の一例として、次の3つの視点を紹介します。
1. まずは会社の制度内容を確認する
マッチング拠出を導入していない会社では、そもそも選択肢はiDeCo同時加入のみになります。逆に、会社がマッチング拠出の手数料を負担してくれる制度設計になっている場合は、コスト面でマッチング拠出が有利になりやすいと考えられます。まずは勤務先の人事・総務部門や、企業型DCの運営管理機関に制度の詳細を確認しましょう。
2. 運用商品のラインアップで選びたいなら iDeCo
企業型DCの商品ラインアップは会社が契約した金融機関のものに限られます。「もっと幅広い投資信託の中から選びたい」「特定の運用会社の商品を使いたい」という希望がある場合は、自分で金融機関を選べるiDeCoの方が選択肢が広くなる傾向があります。
3. 手続きの手間を減らしたいならマッチング拠出
iDeCoは口座開設の申し込みや年1回程度の手数料負担、転職時の手続きなど、本人が管理する手間が発生します。会社の制度内で完結し、給与天引きで手軽に上乗せしたい場合はマッチング拠出の方がシンプルです。
どちらが自分に合うかは掛金の余力や運用への関心度によっても変わるため、一方を一律に勧めるものではなく、あくまで判断材料として参考にしてください。
実践する際の注意点・リスク
- 確定拠出年金は投資信託等で運用する場合、価格変動によって資産が減る(元本割れする)可能性があります。「必ず増える」制度ではない点をまず理解しておきましょう。
- 原則60歳まで引き出せないため、生活費や急な出費に必要なお金まで上乗せしてしまうと、家計が苦しくなるおそれがあります。生活防衛資金を確保したうえで、無理のない金額から始めることが大切です。
- 上限撤廃を機に急に上乗せ額を増やす場合も、「限度額いっぱいまで拠出することが正解」とは限りません。教育費や住宅ローンなど、他の資金計画とのバランスを見ながら検討しましょう。
- 拠出限度額や併用条件は、会社に他の企業年金があるかどうかで変わり、今後も制度改正が予定されています。具体的な上限額や適用時期は、必ず勤務先の案内やiDeCo公式サイト、企業年金連合会などの公式情報で確認してください。
まとめ 制度の変化を知り、無理のない範囲で見直しを
2026年4月の改正で、マッチング拠出は「会社の掛金額まで」という制約がなくなり、これまでより多く上乗せしやすくなりました。とはいえ、マッチング拠出とiDeCo同時加入のどちらが良いかは、会社の制度内容や自分が運用にどこまで関わりたいかによって変わります。まずは勤務先の制度を確認し、無理のない金額から、長期的な資産形成の一部として検討してみてはいかがでしょうか。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の運用方法や金融商品の購入を推奨するものではありません。制度の活用は最新の公式情報を確認のうえ、ご自身の判断と責任で行ってください。

