
「NISAを始めようと思うけど、株式と債券、投資信託をどんな割合で組み合わせればいいのか全然わからない…」

「『自分のリスク許容度に合わせて』ってよく言われるけど、そもそもリスク許容度って何?どうやって決めるの?」
結論から言うと、資産配分(ポートフォリオ)を決める前にまず整理しておきたいのが「自分がどれくらいの値下がりまでなら平常心でいられるか」というリスク許容度です。年齢や収入の安定度、投資できる期間、家族構成などによって、同じ「投資初心者」でも無理なく取れるリスクの大きさは人それぞれ異なります。
この記事では、リスク許容度とはどういう考え方なのか、初心者が自分のリスク許容度をチェックするための5つの視点、そしてチェックした後の資産配分への活かし方を整理します。なお、本記事は特定の金融商品の購入を推奨したり、最適な資産配分を断定したりするものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。
※ 本記事は2026年8月時点の一般的な情報をもとにした解説です。制度・統計等の最新情報は金融庁・GPIF等の公式サイトでご確認ください。
リスク許容度とは?なぜ資産配分を決める前に必要なのか
リスク許容度とは、投資においてどの程度の価格変動(値下がり)までなら受け入れられるかという度合いのことです。株式や投資信託は、値上がりする可能性がある一方で、短期的には大きく値下がりすることもあります。このとき「多少下がっても長期的な視点で見ていられる」人と、「少しの値下がりでも不安で夜も眠れなくなる」人では、無理なく続けられる投資の内容がまったく違ってきます。
金融庁も、資産形成にあたっては特定の商品や配分を一律に勧めるのではなく、値動きの異なる複数の資産に分散し、自分に合った形で長期的に取り組むことの大切さを紹介しています[引用元:金融庁「基礎から学べる金融ガイド」|https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/index.html]。裏を返せば、「自分に合った形」を考えるための出発点がリスク許容度の把握だといえます。
リスク許容度を確認せずに、SNSやニュースで話題になった配分や、他人がすすめる投資信託をそのまま真似してしまうと、値下がり局面で予想以上に不安になり、本来長期で続けるべきだった投資を悪いタイミングでやめてしまう、という失敗につながりやすくなります。まずは自分のリスク許容度を大まかにでも把握しておくことが、無理なく続けられる資産配分を選ぶ第一歩です。
リスク許容度を自己チェックする5つの視点
リスク許容度に「これが正解」という統一された数値基準があるわけではありませんが、一般的に以下のような要素が影響すると言われています。順番に自分の状況と照らし合わせてみましょう。
1. 投資に使える期間はどれくらいか
投資を続けられる期間が長いほど、一時的な値下がりが起きても、その後の回復を待つ時間的な余裕を持ちやすくなります。逆に「3年後に使う予定のあるお金」のように投資期間が短い資金は、値下がりしたタイミングで取り崩さざるを得なくなるリスクが高く、値動きの大きい資産にはあまり向いていません。
- 老後資金など20〜30年先まで使う予定がない資金 → 比較的長い期間で考えられる
- 数年以内に使う予定がある資金(教育資金・住宅購入の頭金など) → 値動きの大きい資産は避けたい
2. 収入は安定しているか、今後の見通しはどうか
会社員で毎月安定した収入がある場合と、収入が変動しやすい自営業やフリーランスの場合とでは、値下がり時に「収入でカバーできる余地」が異なります。また、転職・独立・育児休業など、近い将来に収入が変化する予定がある人は、その点も踏まえて考える必要があります。
3. 生活防衛資金はきちんと確保できているか
投資を始める前提として、生活費の3か月〜半年分程度を目安とした「生活防衛資金」を、投資とは別の預貯金として確保しておくことが一般的に大切だとされています。この資金が不十分なまま投資額を増やしてしまうと、急な出費が発生した際に、値下がりしているタイミングでも投資商品を取り崩さざるを得なくなる可能性があります。生活防衛資金が確保できているかどうかは、リスク許容度を左右する重要な要素です。
4. 家族構成・扶養家族の有無
単身か、配偶者や子どもを扶養しているかによっても、家計に求められる「守り」の度合いは変わってきます。教育費や住宅ローンなど、将来的に決まった支出が見込まれる家庭ほど、値動きの大きい資産に偏った配分は避け、確実性を重視した部分を厚めに考える人が多い傾向があります。もちろんこれも一律の正解があるわけではなく、各家庭の状況に応じて考える視点のひとつです。
5. 値下がりしたときに自分がどう感じそうか(心理的な耐性)
最後に、数字だけでは測れない「心理的な耐性」も重要な視点です。たとえば、資産評価額が「1年で20%下落した」と想定したとき、次のどちらに近いか考えてみましょう。
- 「長期的な視点で見れば想定の範囲内」と捉え、淡々と積立を続けられそうか
- 不安で夜も眠れず、積立を止めたり売却したりしたくなりそうか
後者に近いと感じる人ほど、値動きの大きい資産(株式の比率が高い商品など)の割合を抑え、値動きが比較的穏やかとされる資産(債券を含む商品など)の比率を高めに考えることが、無理なく続けるための一つの工夫になります。株式と債券の一般的な値動きの違いについては、証券会社等の解説も参考になります[引用元:野村證券 証券用語解説集「コア・サテライト戦略」|https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/A02578.html]。
チェックした結果を資産配分にどう活かすか
5つの視点を確認したら、「値動きの大きい資産(株式中心の投資信託など)」と「値動きが比較的穏やかとされる資産(債券を含む投資信託・預貯金など)」を、自分なりのバランスで組み合わせて考えるのが一般的な考え方です。
参考として、公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、長期的に必要な運用利回りを最低限のリスクで確保するという目的のもと、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式をそれぞれ分散して保有する基本ポートフォリオを定めています[引用元:GPIF「基本ポートフォリオの考え方」|https://www.gpif.go.jp/gpif/kihon.html]。GPIFの配分比率は年金という長期・巨額の資金運用を前提としたものであり、個人がそのまま真似すべき「正解」ではありませんが、「長期の目標に対して、値動きの異なる資産を組み合わせてリスクを管理する」という考え方自体は、個人の資産形成にも参考になる視点です。
なお、リスク許容度は一度決めたら固定というものではありません。収入状況やライフイベント(結婚・出産・転職など)の変化に応じて見直す人も多く、定期的に自分の状況を振り返ることが大切です。
やりがちなNG行動・初心者が陥りやすい失敗例
- 他人の配分をそのまま真似する:SNSやブログで紹介されている配分は、その人の年齢・収入・投資期間を前提にしたものです。自分の状況と大きく異なる可能性があることを忘れずに。
- 値上がり局面で「もっとリスクを取ればよかった」と焦って配分を大きく変える:好調な相場が続くと、値動きの大きい資産の比率をつい増やしたくなりますが、その後値下がりした際に想定以上の不安を感じるケースも少なくありません。
- 生活防衛資金を確保せずに投資額を決めてしまう:投資に回せる金額を「余裕資金」ではなく「手元にある全額」で考えてしまうと、いざというときに困る可能性があります。
- 一度決めた配分を見直さないまま何年も放置する:ライフステージの変化に合わせて、数年に一度は自分のリスク許容度を確認し直すことも大切です。
知っておきたいリスクと注意点
リスク許容度に合わせて資産配分を考えたとしても、投資である以上、元本を下回る(元本割れする)可能性は常にあります。「自分に合った配分だから安全」というわけではなく、あくまで「無理なく続けやすくするための工夫」である点を理解しておきましょう。
また、NISAなどの税制優遇制度や各金融機関が提供する商品ラインナップは今後見直される可能性があります。制度の詳細や最新情報は、金融庁や口座開設先の証券会社の公式サイトで必ず確認するようにしてください[引用元:金融庁「NISAを知る」|https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/]。
自分だけでは判断が難しいと感じる場合は、特定の商品を売り込まない独立系のファイナンシャルプランナー(FP)に相談するという選択肢もあります。その場合も、最終的な投資判断は情報を踏まえたうえでご自身の責任で行うようにしましょう。
まとめ リスク許容度は「自分のペースを知るための物差し」
リスク許容度は、正解が一つに決まるものではなく、投資期間・収入の安定度・生活防衛資金の有無・家族構成・心理的な耐性という要素を通じて、自分なりに把握していくものです。他人の配分をそのまま真似するのではなく、まず自分の状況を確認したうえで、値動きの大きい資産と穏やかな資産をどう組み合わせるかを考えることが、長く無理なく投資を続けるための土台になります。
投資はいつ始めても、どんな配分で臨んでも、元本割れのリスクをゼロにすることはできません。リスクとリターンは表裏一体であることを理解したうえで、余剰資金の範囲で、ご自身の責任のもと取り組むようにしましょう。
