
「SNSを見てたら、有名人が『無許可の投資で逮捕された』ってニュース広告が流れてきて、ちょっとびっくりした…」

「クリックしたら本物のニュースサイトみたいな作りだったし、正直どこまで信じていいか分からないんだよね」
結論から言うと、それは十中八九「なりすまし投資詐欺広告」です。2026年7月14日、おたくま経済新聞が報じたところによると、実業家として知られるひろゆき(西村博之)氏が「無許可の金融取引を呼びかけて逮捕された」という、大手経済メディアのニュースサイトを模した偽記事がSNS広告として拡散していることが確認されました。もちろんひろゆき氏は逮捕されておらず、これは実在しない出来事です。この記事では、なぜこうした「著名人なりすまし広告」が後を絶たないのか、その手口と行政の対応を整理したうえで、私たち投資初心者がどう自衛すればよいのかを考えていきます。
※本記事は2026年7月17日時点で確認できた報道・公的機関の発表をもとに執筆しています。詐欺の手口は日々変化するため、最新情報は警察庁・金融庁の公式サイトでご確認ください。
ニュースの要点整理 「逮捕された」という偽ニュースで投資詐欺サイトへ誘導
まずは、今回報じられた偽広告の手口と、行政側の対応について、事実関係を客観的に整理します。
📰 出典:ひろゆき氏の「逮捕」を騙る偽広告 著名人を悪用した投資詐欺サイトを追跡|おたくま経済新聞
おたくま経済新聞の取材によると、問題の広告は「警察官2人に連行されるひろゆき氏」とされる画像とともにSNS上のタイムラインに表示され、タップすると大手経済メディアのウェブサイトを模した偽のニュース記事へ誘導される仕組みになっていました。偽記事では、ひろゆき氏がテレビ番組の生放送中に自ら利用しているという自動取引プラットフォームを紹介し、「放送から37分後にスタジオで手錠をかけられ連行・逮捕された」というでたらめなストーリーが展開されていたと報じられています。同記事では、偽サイトのドメインが2026年3月に取得されたものであることも確認されたとしています。
なお、ひろゆき氏はもちろん逮捕されておらず、2026年現在も通常どおり活動を続けています。今回のケースに限らず、著名な経営者や投資家、タレントの画像・名前が本人の許可なく無断で使われ、あたかも「本人が推奨している投資話」であるかのように装う手口は、これまでも繰り返し報告されてきました。
📰 出典:成り済まし広告削除要請へ SNS投資詐欺対策、警察庁が指針改定案|日本経済新聞
日本経済新聞によると、警察庁は2026年7月2日、著名人になりすまして投資を呼びかける広告を、インターネット上の違法情報の削除要請の対象に加える方針を決定したと報じられています。同月3日から16日にかけて有識者からの意見公募(パブリックコメント)を実施し、2026年8月の指針改定を目指すとされています。背景として、SNS型投資詐欺による前年の被害額が1,288億円と、前年より400億円以上増加したことが挙げられています。
📰 出典:SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!|金融庁
金融庁も公式サイトで、著名人を騙る者からのSNS上の投資勧誘に注意を呼びかけており、「SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口」を設置し、不審な広告の情報提供を受け付けています。
📰 出典:SNS型投資詐欺|警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ
警察庁のSOS47特殊詐欺対策ページでは、SNS型投資詐欺の典型的な手口として、SNSの広告やダイレクトメッセージをきっかけに投資グループへ勧誘され、専用アプリやウェブサイトへの入金を繰り返すよう仕向けられるパターンが紹介されています。同ページでは、著名人や実在する金融機関・証券会社の名前をかたる手口についても注意喚起がされています。
生成AIが手口を「本物らしく」している
近年報じられているもう一つの特徴として、著名人が実際に話しているように見える映像や音声を、生成AI(いわゆるディープフェイク)で作成し、あたかも本人が投資を勧めているかのように見せる手口も確認されています。声の抑揚や表情まで作り込まれているケースもあり、映像だけで真偽を判断するのがますます難しくなっているのが実情です。技術の進歩によって、こうした偽コンテンツの精度は今後も上がっていく可能性が高く、「動画で本人がしゃべっているから本物」という判断基準自体が、すでに安全とは言えなくなりつつあります。
筆者の私見・考察 なぜ「あり得ない話」に引っかかってしまうのか
ここからは、あくまで筆者個人の見方・考察です。事実として報じられている内容と、私の意見は分けてお読みください。
正直なところ、「著名人が投資の勧誘で逮捕された」という話自体、冷静に考えれば不自然な点が多いと感じます。しかし今回の手口が厄介なのは、偽サイトのデザインが実在する経済メディアのニュースサイトに酷似しており、パッと見ただけでは真偽を判断しにくい点だと思います。加えて、SNSのタイムラインでは似たような投稿を何度も目にすることで、「これだけ流れてくるなら本当かもしれない」と錯覚してしまう心理も働きやすいのではないでしょうか。
もう一つ気になるのは、こうした広告が「有名人が逮捕された」というショッキングな見出しで、読者の不安や好奇心を強く刺激する作りになっている点です。冷静な判断力を奪い、思わずクリックさせてしまう構成になっている点は、投資詐欺というより「情報の受け取り方」そのものに対する注意喚起として捉えたほうが良いように感じます。行政側が広告の削除要請の対象を広げようとしている動き自体は歓迎すべきことですが、制度が整うまでの間、あるいは制度が整った後も、こうした広告が完全になくなるとは考えにくく、結局は私たち一人ひとりが「怪しい」と気づく力を持つことが最後の砦になると私は考えています。
資産形成への発展 「著名人が推奨」という言葉自体が警戒サインになる
こうしたニュースから、資産形成の観点で得られる学びを考えてみます。
まず押さえておきたいのは、著名な経営者や投資家が、SNS上の広告で無登録の自動取引ツールや非公開の投資グループへの参加を個人的に呼びかけるということは、基本的にありません。金融庁のサイトでも案内されているとおり、著名人が無料で投資教室を開いたり、確実に利益が出る投資話を無償で教えたりすることは通常考えにくいとされています。つまり「〇〇さんも使っている」「〇〇さんが直接教えてくれる」という触れ込みそのものが、詐欺を疑うべき警戒サインになり得るということです。
また、投資助言・代理業や金融商品取引業を行うには、金融庁への登録が必要です。日本国内で個人向けに投資商品の勧誘や助言を行っている業者であれば、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で検索することができます。SNS広告からLINEグループやアプリへ誘導され、そこで初めて出てくる業者名について、この登録の有無を確認する習慣を持つだけでも、被害を防げる可能性は大きく変わってくると思います。
「儲かっている画面」を鵜呑みにしない
今回のようなケースに限らず、SNS型投資詐欺では、詐欺グループが用意した専用アプリやサイト上で「利益が出ている」ように見える画面を見せられるケースが多く報告されています。しかし、そこに表示されている数字は実際の取引結果とは無関係で、いくらでも操作可能な架空の表示である場合があるとされています。「実際に儲かっている画面を見せてもらったから信用した」という被害者の声も少なくないため、目に見える数字だけで安心しないという姿勢が大切です。
「情報の入口」を分散させておく意味
長期・分散・積立という考え方は、投資対象の分散だけでなく、「投資に関する情報をどこから得るか」という点にも応用できると筆者は考えています。SNSの広告やタイムラインだけを情報源にしていると、アルゴリズムによって刺激の強い投稿・広告が優先的に表示されやすく、詐欺広告に接する機会も増えてしまいます。証券会社や運用会社が発信する公式情報、金融庁・日本証券業協会といった公的機関の情報、書籍など、複数の信頼できる情報源を普段から持っておくことが、SNS上の怪しい話に対する免疫にもつながるのではないでしょうか。
具体的なアクション・心構え 詐欺広告を見分けるためにできること
SNS上で投資に関する広告や情報に接したとき、初心者の方にまず意識してほしい行動を整理します。
- 「著名人が逮捕された」「著名人が推奨」系の広告は開かない:ショッキングな見出しやセンセーショナルな煽りは、まず疑ってかかりましょう
- 登録業者かどうかを金融庁のサイトで確認する:投資商品の勧誘を受けたら、その業者名を金融庁の登録業者一覧で検索する習慣をつけましょう
- LINEグループやDMへの誘導には応じない:SNSの広告やダイレクトメッセージから個別のグループ・アプリへ誘導される流れは、詐欺の典型的なパターンとして繰り返し報告されています
- 不審な広告は金融庁・SNS事業者に報告する:金融庁の「SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口」や、各SNSの通報機能を活用しましょう
- 資産運用は証券会社・銀行など登録された金融機関の正規窓口から始める:NISA口座の開設なども含め、公式サイトや実店舗など確実な経路を利用しましょう
注意点・NG行動 同じ被害を防ぐために
SNS型投資詐欺で実際に被害につながりやすい行動を、あらためて整理しておきます。
- 「今だけ」「あなただけ」という誘い文句を信じる:限定性・緊急性を強調する表現は、冷静な判断をさせないための典型的な手口とされています
- 家族や友人に相談せず一人で判断する:投資額が大きくなるほど、誰にも相談していないケースで被害が拡大しやすいと報告されています
- 少額の「成功体験」をきっかけに入金額を増やす:最初だけ少額の出金に応じ、信用させてから大きな入金を促す手口が報告されています
- 偽サイトのURLやドメインを確認しない:本物そっくりのデザインでも、URLをよく見ると公式サイトとは異なる場合が多くあります
なお、本記事は特定の金融商品・サービスの利用を推奨するものではなく、また特定の個人・広告主を断定的に非難する意図もありません。あくまで報道・公的機関の発表に基づく事実の整理と、一般的な注意喚起を目的としています。投資に関する最終判断は、必ずご自身の責任のもと、信頼できる登録業者を通じて、余剰資金の範囲で行ってください。価格変動や思わぬトラブルにより、投資元本を割り込む可能性があることにもご留意ください。
まとめ 「うまい話」ほど立ち止まって確認する習慣を
著名人になりすました投資詐欺広告は、今回のひろゆき氏のケースに限らず、手を替え品を替え今後も現れる可能性が高いと考えられます。警察庁や金融庁による削除要請・注意喚起の取り組みは心強い動きですが、制度が完全に追いつくまでには時間がかかるのが実情です。
だからこそ、私たち自身が「著名人の推奨」「確実に儲かる」といった言葉に接したときに、一度立ち止まって公式情報を確認する習慣を持つことが、資産を守る第一歩になります。焦らず、怪しいと感じたら開かない・信じない・相談する。この基本を徹底することが、遠回りのようで一番確実な自衛策だと言えるでしょう。

