投資信託を解約(売却)するとき、「信託財産留保額」という費用が差し引かれることがあります。結論から言うと、信託財産留保額は「証券会社や運用会社の手数料」ではなく、「長く持つ投資家の負担を公平にするためにファンドへ残される費用」で、かかるかどうか・いくらかはファンドごとに異なります。購入前に目論見書(もくろみしょ)で確認しておけば、慌てずに済みます。
この記事では、信託財産留保額の仕組みと計算例、初心者が確認しておきたいポイントを、やさしく整理します。
※ 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。投資信託は元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。
信託財産留保額とは?「手数料」とは少し違うファンドへの費用
信託財産留保額とは、投資信託を解約(または購入)するときに、換金する人が負担してファンドの資産(信託財産)に残す費用のことです。
なぜこんな費用があるのか
投資信託は、たくさんの投資家のお金をまとめて運用しています。ある人が解約すると、ファンドは解約代金を用意するために、持っている株や債券の一部を売る必要があります。このときに売買の手数料などのコストが発生します。
もし、そのコストを残った投資家みんなで分担すると、長く持ち続けている人が不利になってしまいます。そこで、「解約する人が、自分の解約で発生するコストを負担する」という考え方で設けられているのが信託財産留保額です。
販売手数料や信託報酬との違い
| 費用の種類 | かかるタイミング | 支払先 |
|---|---|---|
| 購入時手数料 | 購入するとき | 販売会社(証券会社など) |
| 信託報酬 | 持っている間ずっと | 運用会社・販売会社・信託銀行 |
| 信託財産留保額 | 解約するとき(購入時にかかるファンドもある) | ファンド自身(信託財産に残る) |
つまり、信託財産留保額は証券会社の収入にはならず、ファンドの中に残る点が大きな違いです。
計算例:解約したらいくら差し引かれるのか
ここでは、あくまで仮の数字で考えてみます。
- 解約する金額(基準価額ベース):100万円
- 信託財産留保額:0.3%
この場合、100万円×0.3%=3,000円が差し引かれ、受け取りは約99万7,000円になります。
実際の率はファンドによって異なり、0.1〜0.5%程度のものもあれば、かからない(0%)ファンドも少なくありません。上の数字は説明用の仮のもので、実在のファンドの数字ではありません。
初心者が購入前に確認したい3つのポイント
1. 目論見書で「あるか・ないか・何%か」を見る
信託財産留保額は、目論見書の「手続・手数料等」の欄に記載されています。「ありません」と書かれているファンドもあれば、「解約請求受付日の翌営業日の基準価額に0.3%」のように書かれているファンドもあります。購入前に一度チェックしておきましょう。
2. 「頻繁に売買するほど影響が大きい」ことを理解する
信託財産留保額は、解約のたびにかかります。長期で持ち続ける前提なら影響は小さいですが、短期間で乗り換えを繰り返すと、そのたびに差し引かれて負担が積み重なります。「安くなったから売って、別のファンドに乗り換える」といった行動は、費用面でも慎重に考えたいところです。
3. 信託報酬など他のコストと「合計」で考える
留保額がゼロでも、信託報酬が高ければ、長期で見たときのコストは大きくなります。逆に、留保額があっても、信託報酬が低く長く持つなら総コストは抑えられる場合もあります。ひとつの数字だけで「安い・高い」と判断せず、次のように全体を見てください。
- 購入時手数料の有無
- 信託報酬(年率)
- 信託財産留保額の有無
- 保有する予定の期間
よくある誤解とNG行動
- 「信託財産留保額=手数料の一種なので、証券会社を変えれば安くなる」:ファンドごとに決まっているため、同じファンドなら販売会社を変えても基本的には同じです。
- 「留保額がなければ、いつ解約しても損をしない」:留保額がなくても、基準価額の変動で元本割れすることはあります。
- 「留保額がかかるファンドは悪いファンド」:長く持つ人の公平性を守る仕組みでもあり、一概に良し悪しは判断できません。
- 費用だけで商品を決める:運用方針やリスクの内容も含めて、自分の目的に合うかどうかを確認しましょう。
筆者の私見:「売るときの費用」まで事前に見ておく習慣を
ここからは筆者の個人的な意見です。投資を始めるとき、つい「買う前の費用」ばかりに目が行きがちです。しかし、売却時にかかる費用を知っておくと、急にお金が必要になったときにも落ち着いて判断できます。

「解約するときにお金が引かれるなんて、知らなかったです…」

「ファンドによってはかからないものもあります。買う前に目論見書でさっと確認する習慣をつけておくと安心ですよ。」
投資は長期・分散・積立が基本です。必要になったときに慌てて解約するようなことがないよう、生活防衛資金を別に確保したうえで、余剰資金で続けるのがおすすめです。
参考にしたい公的な情報
投資信託の費用の考え方は、公的な機関の資料でも確認できます。制度や手数料は変わることがありますので、執筆時点(2026年10月)の内容として、最新は公式情報をご確認ください。
📰 出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト
📰 出典:投資信託協会
まとめ:買う前に目論見書、売る前にもう一度費用の確認を
- 信託財産留保額は、解約する人が負担してファンドに残す費用で、販売会社の手数料ではない
- かかるか・いくらかはファンドごとに異なり、ゼロのファンドも多い
- 目論見書で確認し、信託報酬など他のコストとあわせて総合的に考える
- 頻繁な乗り換えは、費用が積み重なりやすい
焦らず、無理のない範囲で、長く続けられる形を整えていきましょう。
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。

