
「NISAの成長投資枠を使い切ったから、同じ銘柄を特定口座でも買い増ししちゃった。これって売るときどうなるの?」

「気づいたら非課税のはずの分まで課税されてた…なんてことにならないか、ちょっと心配なんだよね」
結論から言うと、NISA口座と特定口座(または一般口座)で同じ銘柄を持っていても、証券会社のシステム上では別々の「箱」(預り区分)として管理されています。同じ会社の株だからといって自動的に一つにまとめられ、平均化されるわけではありません。売却注文を出すときは、自分がどちらの箱から売ろうとしているのかを、自分自身で確認・選択する必要があります。
この記事では、初心者がつまずきやすい「NISA預り」と「特定預り・一般預り」の違い、同じ銘柄を複数の口座で持つことになりがちなケース、売却時に気をつけたいポイントを整理します。なお、口座の仕組みや操作方法は証券会社ごとに細部が異なるため、本記事は一般的な考え方の整理にとどめ、実際の手続きは必ずご自身が利用している証券会社の公式サイトでご確認ください。
※ 本記事の制度・仕組みに関する内容は執筆時点(2026年9月)の情報です。最新情報は金融庁や各証券会社の公式サイトでご確認ください。
そもそもなぜ「同じ銘柄を複数の口座で持つ」ことになるのか
「NISAだけを使っていれば、そんな悩みは起きないのでは?」と思う方もいるかもしれません。ですが、実際には次のようなケースで、同じ銘柄をNISA口座と特定口座(または一般口座)の両方で保有することになる人は珍しくありません。
- NISAの成長投資枠の年間投資枠(240万円)を使い切ったあとも、同じ銘柄をもっと買い増ししたくて特定口座で買い増した
- もともと特定口座でコツコツ買っていた銘柄を、NISA開始後は新規購入分だけNISA枠に切り替えた
- 優待や配当を目的に、NISA分とは別枠で特定口座でも同じ銘柄を保有している
- 相場が大きく下がった局面で、NISA口座の非課税枠に余裕がなく特定口座で買い増しした

「なるほど、特別なことをしたつもりはないのに、気づいたら両方の口座に同じ株があった、というパターンなんだね」
このように、意図的か無意識かにかかわらず、投資を続けていると同じ銘柄が複数の口座区分にまたがることは起こり得ます。問題は、多くの人がこの状態を「同じ株だから、証券会社側でよしなに管理してくれているはず」と思い込みがちな点です。
「預り区分」とは何か 初心者向けにやさしく整理
証券会社の口座では、保有している株式や投資信託が「一般預り」「特定預り」「NISA預り」という区分(預り区分)ごとに分けて管理されています。この3つの違いをざっくり整理すると、以下のようになります。
| 区分 | 主な特徴 | 譲渡益・配当への課税 | |—|—|—| | 一般預り | 証券会社が損益計算を行わない口座。自分で確定申告に必要な計算をする必要がある | 課税対象(原則、確定申告が必要) | | 特定預り(特定口座) | 証券会社が年間の売買損益を計算し、「年間取引報告書」を作成してくれる口座 | 課税対象(源泉徴収あり・なしを選択可) | | NISA預り | NISA制度の非課税投資枠を使って購入した分 | 非課税(値上がり益・配当とも税金がかからない) |
📰 出典:金融庁「NISAを知る」
ポイントは、同じ銘柄であっても、この預り区分が異なれば「別の保有」として管理されるということです。たとえば同じA社の株を「NISA預りで100株」「特定預りで50株」持っている場合、証券会社のシステム上ではこの150株がひとまとめの残高として表示されるのではなく、NISA預りの100株と特定預りの50株が、それぞれ別々の取得単価・別々の損益として管理されています。
証券会社のFAQでも、預り区分についてこのように説明されています。
📰 出典:SBI証券「預り区分(一般預り/特定預り/NISA預り)について教えてください」
売却注文を出すときに起きやすい「勘違い」
この仕組みを知らないまま売却注文を出そうとすると、次のような戸惑いにつながりがちです。
「同じ銘柄なのに、まとめて売れない」と感じる
一般的に、証券会社の注文画面では、同じ銘柄でも預り区分ごとに保有数量が別枠で表示され、売却注文を出す際にも「どの預り区分から売るか」を指定する仕組みになっています。合計の保有数だけを見て「◯株売りたい」と考えていても、実際にはNISA預り分・特定預り分のどちらから売るかを自分で選ぶ必要がある、というのが基本的な考え方です。
非課税で残しておきたかった分まで売ってしまう不安
NISA預り分は値上がり益が非課税になるメリットがあるため、多くの人は「できればNISA預り分は長く持っておきたい」「値上がりしたときの利益を非課税で受け取りたいから、値下がり時は課税口座の含み損分から先に売って損益通算に使いたい」など、口座ごとに異なる考え方を持っています。ここで預り区分を意識せずに注文してしまうと、本来残しておきたかった非課税枠の保有分を誤って売却してしまう、あるいはその逆になってしまう可能性があります。
移管(口座間の付け替え)は基本的にできない
「間違えたので、あとからNISA預り分と特定預り分を入れ替えたい」と思っても、購入後に預り区分を変更することは基本的にできません。NISA口座で購入した株式等を特定口座・一般口座(課税預り)に移すには、いったん売却してから買い直すなど、別の手続きが必要になるケースが一般的です。しかもその際、保有数量の一部だけを移すことができず、対象銘柄の全数量をまとめて手続きしなければならない場合もあります。証券会社によって取り扱いが異なるため、詳細は必ず利用している証券会社の案内で確認してください。

「注文する前に、画面に『NISA預り』『特定預り』ってちゃんと書いてあるか確認するクセをつけたほうがよさそうだね」
売却時に確認しておきたい5つのポイント
同じ銘柄をNISA口座と特定口座(または一般口座)の両方で持っている方が、実際に売却する際に確認しておきたいポイントを整理しました。
1. 注文画面で「預り区分」の表示を必ず確認する
売却注文を出す前に、その注文がNISA預り分なのか、特定預り(または一般預り)分なのかを、注文画面上で必ず確認しましょう。証券会社によって表示のされ方や選択方法は異なりますが、「預り区分」「口座区分」といった項目名で選べるようになっているのが一般的です。
2. 「非課税枠を優先して残したいのか、課税口座を優先して残したいのか」を自分の中で決めておく
値上がりが期待できると考えている銘柄であれば、非課税メリットを長く活かせるNISA預り分をなるべく残し、特定預り分から先に売却を検討する、という考え方をする人もいます。逆に、損失が出ている銘柄については、特定口座(課税口座)側で売却して損益通算・繰越控除の対象にする、という考え方をする人もいます。ただし、NISA口座で生じた損失は特定口座の利益と損益通算することができない点には注意が必要です。どちらが自分にとって望ましいかは、資産全体の状況や税金の考え方によって変わるため、一律の正解はありません。判断に迷う場合は、税務署や税理士など専門家に確認することをおすすめします。
3. NISAの非課税投資枠の「再利用ルール」も踏まえて考える
NISA預り分を売却すると、その分の非課税投資枠(簿価残高ベース)は翌年以降に再利用できる仕組みになっています。裏を返せば、売却したその年のうちに同じ枠を使い直せるわけではありません。「とりあえずNISA預り分を売って現金化しよう」という判断が、非課税枠の使い方全体にどう影響するかも、あわせて考えておくとよいでしょう。
4. 複数年にわたってNISAで購入している場合は、年ごとの管理にも注意する
同じ銘柄をNISA口座で複数年にわたって買い増ししている場合、証券会社によっては購入した年ごとに保有分が細分化されて管理されていることがあります。「NISA預り」とひとくくりに考えていても、実際にはさらに細かい区分があるケースがある、という点も知っておくと戸惑いが減ります。
5. 操作に不安があれば、注文を確定する前にコールセンター等へ確認する
預り区分の指定を誤ると、後から取り消しや訂正ができない場合があります。特に初めて複数口座で同一銘柄を売却する際は、注文確定ボタンを押す前に画面表示を落ち着いて確認する、不明点があれば証券会社のサポート窓口に問い合わせる、といった慎重さが安心につながります。
初心者が陥りやすいNG行動
- 保有数の合計だけを見て、預り区分を確認せずに売却注文を出してしまう
→ 意図しない口座から売却され、非課税メリットを取り損ねる可能性があります。
- 「証券会社が自動でお得な方から売ってくれるはず」と思い込む
→ 預り区分の選択は基本的に投資家自身が行うものであり、証券会社が投資家の税負担を最小化するよう自動判断してくれるわけではありません。
- 移管すればいつでも口座間を自由に付け替えられると考えてしまう
→ NISA預りと課税預りの間の移管には条件や制限があり、思い立ったときに部分的に自由に付け替えられるとは限りません。
- 税金の判断を独学だけで完結させてしまう
→ 損益通算や確定申告に関わる判断は、個々の状況によって最適解が変わります。不明点は税務署・税理士に確認する姿勢を持ちましょう。
具体例で考える 同じ値上がりでも「箱」が違うと手取りが変わる
言葉だけではイメージしづらいので、簡単な例で確認してみましょう(あくまで一例であり、実際の株価の動きや成果を保証するものではありません)。
- NISA預りで100株、1株1,000円で購入(投資額10万円)
- 特定預りで50株、同じ銘柄を1株1,000円で購入(投資額5万円)
- その後、株価が1株1,500円まで値上がりし、それぞれ全数を売却したと仮定
この場合、NISA預り分の値上がり益(500円×100株=5万円)には税金がかかりませんが、特定預り分の値上がり益(500円×50株=2万5,000円)には、譲渡益に対して合計20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)の税金がかかるのが原則です。
📰 出典:国税庁 タックスアンサー No.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
同じ銘柄・同じ値上がり幅であっても、どちらの「箱」から売ったかによって手元に残る金額が変わってくることが分かります。だからこそ、売却時にどちらの預り区分から売るのかを意識することが大切なのです。
よくある質問
Q. NISA預りと特定預りの取得単価は、証券会社が自動的に平均してくれないのですか? A. されません。NISA預りと特定預り(一般預り)は別々の残高として管理されるため、取得単価や損益もそれぞれ別に計算されます。同じ銘柄をまとめて一つの平均取得単価として扱ってくれるわけではない点に注意しましょう。
Q. 配当金についても、預り区分によって扱いは変わりますか? A. 配当金の非課税・課税の扱いも、その配当の元になっている株式がどちらの預り区分にあるかによって決まります。NISA預り分に対応する配当は非課税、特定預り(課税口座)分に対応する配当は課税対象です。受け取り方式(株式数比例配分方式など)の設定によっても扱いが変わるため、あわせて証券会社の案内を確認しておくと安心です。
Q. 迷ったときは、まず何をすればいいですか? A. 売却注文を出す前に、保有銘柄一覧の画面で「預り区分」ごとの数量・取得単価を確認する習慣をつけることが第一歩です。表示の見方が分からない場合は、注文を確定する前に証券会社のサポート窓口に問い合わせましょう。
リスクと注意点のまとめ
ここまで解説してきた預り区分の仕組みは、あくまで「口座の管理・税金計算の仕組み」に関するものであり、どの銘柄をいつ売買すべきかという投資判断そのものを示すものではありません。株式投資には元本割れのリスクが常に伴い、値動きは誰にも断定できません。本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資は必ずご自身の判断と責任のもと、余剰資金の範囲で行ってください。
また、預り区分ごとの具体的な操作方法・移管の可否・手数料の扱いなどは証券会社によって異なり、制度自体も将来変更される可能性があります。実際に手続きを行う前には、必ずご自身が利用している証券会社の最新の公式情報を確認するようにしてください。
まとめ 「同じ銘柄=同じ扱い」ではないと知っておくだけで安心できる
NISA口座と特定口座(一般口座)で同じ銘柄を保有していても、証券会社のシステム上は別々の「預り区分」として管理されており、取得単価や損益も別々に計算されます。売却注文を出す際には、どの預り区分から売るのかを自分で確認・選択する必要があり、あとから預り区分を自由に入れ替えることも基本的にはできません。
この仕組みをあらかじめ知っておくだけで、「間違えて非課税分を売ってしまった」「思っていたのと違う口座から売れてしまった」といった戸惑いを避けやすくなります。長期・分散・積立という投資の基本姿勢とあわせて、口座の仕組みについても少しずつ理解を深めていきましょう。

