NISA口座の3割超が「買付ゼロ」 開設したのに始められない人が抜け出す5つの考え方

株式投資

「NISA口座、去年のうちに開設だけはしたんだけど…結局まだ一度も買ってないんだよね」

「何を買えばいいか分からなくて、そのままログインすらしてない。私だけかと思ってた」

結論から言うと、それは決して珍しいことではありません。金融庁の調査によると、NISA口座数は2026年7月時点の最新公表で約2,820万口座に達した一方、そのうち買付額がゼロ円のままの口座が全体の36.6%、実に3人に1人以上を占めています。「口座は作ったけど動かせていない」という状態は、あなただけの悩みではなく、多くの人に共通する現象なのです。この記事では、なぜ未稼働のまま放置される口座がこれほど多いのかという背景と、少額から無理なく一歩を踏み出すための考え方を、初心者向けに整理します。

※本記事は2026年8月時点の情報をもとにまとめたものです。NISA制度・税制は変更されることがあるため、最新の内容は必ず金融庁や利用中の金融機関の公式情報でご確認ください。また、本記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではなく、投資は元本割れのリスクを伴います。

NISA口座の「未稼働」はどれくらい多いのか

まずは実際の数字を確認しておきましょう。

📰 出典:NISA口座の利用状況に関する調査結果(令和7年12月末時点)の公表について

金融庁が2026年7月に公表した調査によると、令和7年(2025年)12月末時点のNISA口座数は2,820万6,434口座に達し、累計の買付額は約71.4兆円となりました。一方で、このうち買付額が0円の口座は1,044万6,488口座にのぼり、全体の36.6%を占めるとされています。

つまり、単純計算ではNISA口座を持つ人の3人に1人以上が、一度も商品を購入していない状態にあるということです。政府は2027年12月末までに口座数3,400万・累計買付額56兆円という目標を掲げていましたが、買付額の目標はすでに上回った一方で、口座数の伸びに対して「実際に使われている口座」の比率には依然として課題が残っている形です。

  • NISA口座数:約2,820万口座(令和7年12月末時点)
  • 買付額0円の口座:約1,044万口座(全体の36.6%)
  • 累計買付額:約71.4兆円

この数字が示しているのは、「口座を開くこと」と「実際に投資を始めること」の間には、多くの人がつまずく大きなハードルがあるという事実です。特に若い世代を中心に口座数自体は増え続けている一方で、開設した口座を実際に使いこなせている人の割合には、依然として世代を問わず伸びしろがあるとみられています。

そもそもNISAとは何だったか、簡単におさらい

「NISA口座は作ったけど、そもそも何がお得なのか正確には覚えていない」という方のために、基本を簡単におさらいしておきます。

NISAは、通常であれば株式や投資信託の値上がり益・配当金・分配金にかかる約20%の税金が、一定の投資枠の範囲内であれば非課税になる制度です。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類があり、あわせて生涯にわたる非課税保有限度額(枠)が設けられています。口座を開設しただけの状態では、この非課税というメリットを一切活用できていないことになります。裏を返せば、少額でも購入した瞬間から、値上がり益や分配金にかかる税金の優遇を受けられる状態になるということです。

ただし、税金が優遇される制度であることと、元本が保証されることはまったく別の話です。NISA口座で購入した投資信託や株式も、通常の課税口座と同じように値動きによって購入時より値下がりし、元本割れする可能性があります。「非課税=安全」という誤解は禁物です。

「私だけじゃなかったんだ…ちょっと安心した」

「でも、このままだと非課税のメリットも使えないままだよね。なんで放置しちゃう人が多いんだろう?」

なぜ「開設しただけ」で止まってしまうのか

未稼働口座が生まれる背景には、いくつかの共通したつまずきポイントがあると考えられます。

1. 商品の選択肢が多すぎて決められない

つみたて投資枠の対象商品だけでも数百本規模にのぼり、成長投資枠を含めるとさらに選択肢は膨らみます。初心者にとっては「どれが自分に合っているのか」を判断する基準が分からず、比較検討している間に時間だけが過ぎてしまうケースが少なくありません。

2. 「損をするのが怖い」という心理的なブレーキ

口座開設まではキャンペーンや周囲の勧めで勢いよく進められても、いざ「自分のお金を投じる」段階になると、元本割れへの不安が急に現実味を帯びてきます。この不安自体は自然な感情であり、悪いことではありません。ただ、不安を解消する情報を得ないまま先延ばしにしてしまうと、そのまま口座だけが残り続けてしまいます。

3. 最初の設定作業が思ったより手間に感じる

つみたて設定には、金融機関の選択、口座区分の指定、積立額・積立日・引き落とし方法の登録など、いくつかのステップがあります。一つひとつは難しくなくても、「後でやろう」と後回しにしているうちに数か月、数年が経ってしまう人もいます。

4. 相場のニュースを見て「今はタイミングが悪い」と感じてしまう

株価の下落や急変動のニュースを見て、「今から始めるのはリスクが高いのでは」と考え、始める時期を先延ばしにしてしまう人もいます。長期・積立を前提とする投資では、購入タイミングを完璧に見極めようとすること自体が難しく、かえって「始められない」状態を長引かせる一因になり得ます。

未稼働から抜け出すための5つの考え方

ここからは、実際に一歩を踏み出すための考え方を紹介します。いずれも「必ずうまくいく方法」ではなく、無理なく行動に移すための一般的な工夫です。

1. 「完璧な商品選び」を目指さない

最初から自分にとって完璧な1本を選ぼうとすると、比較検討に時間がかかりすぎてしまいます。まずは、全世界株式や国内外の株価指数に幅広く分散して投資するインデックス型の投資信託など、値動きの仕組みが比較的分かりやすい商品から検討し、必要に応じて後から見直す、という考え方もあります。特定の商品名を挙げて推奨するものではなく、あくまで「選び方の一般的な考え方」として参考にしてください。

2. 金額は「無理なく続けられる少額」から始める

いきなり大きな金額を投じる必要はありません。月々数千円〜1万円程度など、生活費や緊急時の備えに影響しない範囲の金額から始め、家計に慣れてきたら見直すという進め方が、多くの入門者向け解説で紹介されています。少額であれば、値動きに対する心理的な負担も小さく抑えやすくなります。

3. 「つみたて設定」をして自動化する

毎回自分で購入の判断をする方式だと、相場のニュースに気持ちが左右され、結局買えないまま時間が過ぎてしまうことがあります。あらかじめ毎月一定額を自動で買い付ける「つみたて設定」をしておけば、値動きを気にしすぎずに投資を続けやすくなります。これは、購入時点を分散させることで高値づかみのリスクを一定程度抑える効果が期待できる考え方であり、将来の利益を保証するものではありません。

4. 「始める日」をあらかじめ決めてしまう

「そのうち始めよう」という先延ばしは、未稼働口座が生まれる大きな要因のひとつです。相場の良し悪しを見極めようとするのではなく、「給料日の翌週」「今月中」など、自分の中で始める日を先に決めてしまうことで、行動に移しやすくなります。

5. 分からないことは金融機関の公式窓口・公的な相談窓口で確認する

商品性や手数料、リスクについて分からない点がある場合は、SNSの断片的な情報だけで判断せず、口座を開設している証券会社・銀行の公式サイトや窓口、あるいは金融庁・日本証券業協会などの公的な情報で確認する習慣をつけましょう。判断材料を丁寧に集めることが、不安を減らし行動につなげる近道になります。

少額から始めた場合のイメージ(あくまで一例の試算)

「少額から」と言われても、どれくらいの規模感になるのかイメージが湧きにくいかもしれません。あくまで一例として、毎月1万円を年率3%で20年間積み立てた場合の単純計算を紹介します。

  • 積立元本の合計:1万円 × 12か月 × 20年 = 240万円
  • 年率3%で複利運用できたと仮定した場合の単純計算での将来見込み額:約328万円

この差額(約88万円)は、あくまで「毎年一定の年率で運用できた」という非現実的な前提を置いた単純計算上の数字です。実際の相場は毎年プラス3%で推移するわけではなく、年によって大きく増えることもあれば、元本を下回ることもあります。将来の運用成果を保証するものではなく、あくまで「少額でも長期間続けることで、時間を味方につけるとはどういうことか」をイメージするための参考値として捉えてください。

一歩を踏み出すときにやってしまいがちなNG行動

前向きに一歩を踏み出そうとする際、次のような行動は結果的に遠回りになりやすいため注意しましょう。

  • SNSで話題になっている個別の銘柄・商品をよく調べずに、勢いだけで購入してしまう
  • 「非課税だから絶対に得」と思い込み、値動きのリスクを確認しないまま大きな金額を投じてしまう
  • 生活費や近い将来使う予定のお金まで投資に回してしまい、必要なときに現金が足りなくなる
  • 少し値下がりしただけで「やっぱり自分には向いていない」と判断し、積立を途中でやめてしまう
  • 「もっと詳しくなってから始めよう」と勉強だけを続け、いつまでも最初の一歩を先延ばしにする

これらはいずれも、焦りや情報不足からくる行動です。分からないことがあれば無理に急いで判断せず、公式情報を確認しながら、自分のペースで進めることが遠回りのようで結局は近道になります。

一歩を踏み出す前に知っておきたいリスクと注意点

行動に移すこと自体は前向きな一歩ですが、投資である以上、次の点は必ず理解した上で判断してください。

  • 投資信託・株式などのNISA対象商品は、値動きにより投資元本を下回る(元本割れする)可能性があります。「非課税」であることは、元本が保証されることを意味しません。
  • 「長期・分散・積立」は値動きのリスクを一定程度平準化する考え方として紹介されることが多い手法ですが、必ず利益が出ることを保証するものではありません。
  • NISAの年間投資枠・非課税保有限度額、対象商品の範囲などの制度内容は変更されることがあります。最新情報は必ず金融庁や利用中の金融機関の公式サイトでご確認ください。
  • 生活費や近い将来に使う予定のあるお金まで投資に回すのは避け、あくまで余剰資金の範囲で行ってください。
  • 特定の投資信託・株式・金融機関を推奨する内容ではありません。最終的な商品選びや投資判断は、ご自身でリスクを理解した上で行ってください。

「完璧じゃなくていいから、まずは少額で一歩踏み出してみようかな」

「うん。放置している口座、今週中に設定だけでもしてみようと思う」

まとめ 「口座を作ること」がゴールではない

NISA口座数は着実に増え続けている一方で、金融庁の調査では買付額ゼロの口座が全体の36.6%を占めることが明らかになっています。この数字は、多くの人が「制度への関心」と「実際に一歩を踏み出すこと」の間で足踏みしていることを示しています。

商品選びに完璧を求めず、無理のない少額から、つみたて設定によって自動化する形で始めれば、心理的なハードルはぐっと下がります。焦って大きな金額を投じる必要はありません。大切なのは、余剰資金の範囲で、長期・分散・積立という基本を意識しながら、無理なく続けられる形を見つけることです。

一方で、「みんなが始めているから」「口座を持っているのに使わないのはもったいないから」といった理由だけで、内容をよく理解しないまま踏み出すのもおすすめできません。焦って始めることと、無理なく一歩を踏み出すことは似ているようで違います。制度の基本とリスクを理解し、自分にとって無理のない金額・方法であることを確認したうえで、まだ口座を開いたままにしている方は、この機会に小さな一歩から検討してみてはいかがでしょうか。

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