
「株式分割で株数が増えたら、100株に満たない中途半端な株数が残ってしまった…」

「単元に届かない株って、証券会社のアプリで売ろうとしても売却できないんだけど、どうすればいいの?」
結論から言うと、単元未満株(いわゆる端株)は証券取引所の通常の売買では取引できませんが、会社法で認められた「買取請求権」を使えば発行会社に買い取ってもらうことができます。逆に「買増請求権」という、単元に届くまで買い増しを請求できる権利もあります(ただしこちらは会社の定款に定めがある場合のみ利用できます)。この記事では、単元未満株を持て余したときに使えるこの2つの権利の仕組みと手続きの流れ、注意点を初心者向けに解説します。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。制度・手数料は執筆時点(2026年8月)の情報であり、今後変更される可能性があるため、実際に手続きする際は各証券会社・株主名簿管理人の公式情報でご確認ください。
そもそも単元未満株(端株)はなぜ生まれるのか
日本の多くの上場企業は、売買の最低単位を100株とする「単元株制度」を採用しています。この単元に満たない株数のことを「単元未満株」と呼びます。単元未満株が発生する主なきっかけは、次のようなケースです。
- 株式分割:保有株数に分割比率をかけた際、端数が出るケース(例:1株を1.5株に分割し、100株保有していると150株になるが、端数の設定次第では端株が生じる銘柄もある)
- 株式併合:複数の株式を1株にまとめる際、単元に満たない端数が生じるケース
- 相続・贈与:遺産分割などで株式を複数人に分ける際、1人あたりの株数が単元に満たなくなるケース
- 単元未満株サービス(ミニ株・S株など)の利用:証券会社が提供する1株単位の購入サービスを使い、そもそも単元に満たない株数だけを保有しているケース
こうして生じた単元未満株は、通常の証券取引所の板取引では売買できません。単元(100株など)に達していない株数は、取引所の最低売買単位のルールに合わないためです。
単元未満株を持て余したときに使える2つの権利
「売ることも増やすこともできないのでは」と思われるかもしれませんが、会社法では単元未満株主のために2つの権利が定められています。
1. 買取請求権(会社法192条)-会社に買い取ってもらう
単元未満株主は、発行会社に対して自分が保有する単元未満株式を買い取るよう請求できます。これは会社法で定められた権利で、上場会社であれば基本的に利用できます。
📰 出典:e-Gov法令検索「会社法」第192条
実際の手続きは、証券会社を通じて株主名簿管理人(信託銀行など)に取り次いでもらう形で行います。証券会社によって手数料や所要期間は異なりますが、公表されている例では次のような取り扱いです。
- SBI証券:1銘柄あたり550円(税込)の取次手数料がかかり、請求書到着後、通常2週間程度で売却代金が指定口座に入金される
- 楽天証券:1件あたり330円(税込)の取次手数料がかかり、換金には通常2週間程度かかる。買取価格は、証券会社が株主名簿管理人へ買取請求を行った日(受付日の翌営業日)の終値で決まり、指値注文や売却日の指定はできない
📰 出典:SBI証券「単元未満株式の買取請求」
このように、買取請求は「いつ・いくらで売れるか」を自分で選べる仕組みではなく、あくまで「換金する手段」という位置づけです。
2. 買増請求権(会社法194条)-単元に届くまで買い増す
もう一つの選択肢が、単元に不足している株数を発行会社から買い増して、単元株主になる方法です。ただし買増請求は、買取請求とは異なり、会社の定款にその定めがある場合に限り利用できます。すべての上場会社が対応しているわけではない点に注意してください。
📰 出典:e-Gov法令検索「会社法」第194条
買増請求に対応している場合も、証券会社ごとに手数料や所要期間が設定されています。公表例では、請求から株式が口座に反映されるまで2〜3週間程度、手数料は1銘柄あたり数百円程度とされています。買取請求と同様、価格や時期を自分で指定できるものではなく、あくまで会社側の自己株式の範囲で応じてもらえる制度です。
買取請求・買増請求を利用する際の注意点
便利な制度ではありますが、利用する前に知っておきたい注意点もあります。
- 価格は市場価格連動で、有利なタイミングを選べない:買取・買増ともに、価格は請求受付日を基準とした市場価格で決まります。「高く売りたいから待つ」「安く買い増したいから待つ」といった指値的な使い方はできません。
- すべての証券会社・全銘柄で対応しているわけではない:特に買増請求は対応銘柄が限られます。利用したい場合は、口座を持つ証券会社に事前に取り扱いの有無を確認してください。
- 権利確定日前後などは受付が停止される期間がある:配当・株主優待の権利確定日や、株式分割・合併などの手続き中は、請求の受付が一時的に停止されることがあります。
- 手数料がかかる:少額の端株であっても、1銘柄ごとに数百円程度の取次手数料がかかる場合があります。保有株数によっては手数料負けする可能性もあるため、事前に確認しておくと安心です。
- 請求後の撤回には会社の承諾が必要:一度請求すると、原則として自由に撤回できるものではありません。手続き前によく検討しましょう。
買取請求と買増請求、どちらを検討すべきか
最終的にどちらを選ぶか、あるいはそのまま保有を続けるかは、ご自身の状況や考え方によって異なります。一般的な判断材料としては、次のような視点が挙げられます。
- その銘柄を今後も長く保有し、議決権や株主優待など単元株主としてのメリットを得たいと考えているか
- 少額のまま保有し続けることが煩わしく、換金して整理したいと考えているか
- 追加で投資に回せる余剰資金があるかどうか
これらはあくまで一般的な考え方の整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。保有銘柄の今後の見通しや、ご自身の資産状況・投資方針に照らして、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。迷う場合は、証券会社の窓口やファイナンシャルプランナーに相談することもひとつの方法です。
やってしまいがちなNG行動
- 手続きすれば必ず得をすると思い込む:買取請求も買増請求も、あくまで「換金・買い増しの手段」であり、価格変動リスクをなくすものではありません。
- 手数料を確認せずに手続きする:保有株数が少ない場合、手数料が実質的な手取り額に対して大きな割合を占めることがあります。
- 急いで判断してしまう:特に相続などで急に単元未満株を持つことになった場合、慌てて手続きせず、証券会社に制度の詳細を確認してから進めることをおすすめします。
- 「端株の買取を代行します」といった不審な勧誘に安易に応じる:公式の手続きは証券会社・株主名簿管理人を通じて行うのが基本です。身に覚えのない業者からの勧誘には注意してください。
まとめ 端株は「使える権利」を知っていれば無駄にならない
単元未満株(端株)は、そのままでは証券取引所で売買できませんが、会社法に基づく「買取請求権」「買増請求権」という2つの権利を使えば、換金したり単元株に育てたりすることができます。どちらも価格や時期を自由に選べる制度ではなく、手数料や受付停止期間などの注意点もあるため、利用する前に証券会社へ取り扱い状況を確認しておくと安心です。
株式分割や相続などで思いがけず端株を持つことになった方は、放置してしまう前に、まずはご自身の証券会社が扱う制度の内容を確認してみてください。

