
「つみたてNISAで投資信託を買い始めたけど、この商品を作っている運用会社が倒産したら、積み立てたお金って消えちゃうの…?」

「ニュースで会社が破綻したって聞くと、自分のお金も一緒になくなるんじゃないかって心配になるんだよね」
結論からお伝えすると、投資信託を運用している「運用会社」が倒産しても、あなたが積み立てた資産(信託財産)が消えてしまうことは、原則としてありません。投資信託の資産は、運用会社自身の資産とは別に、信託銀行という別の金融機関で法律に基づいて厳格に分けて管理(分別管理)されているためです。
この記事では、投資信託の仕組みに関わる3つの会社の役割と、それぞれが破綻した場合に資産がどう扱われるのかを、初心者向けに整理します。なお、制度・実務の細部は変わることがあるため、本記事は2026年8月執筆時点の一般的な仕組みの解説です。最新の内容は、利用する運用会社・証券会社や、資産運用業協会などの公式情報でご確認ください。
投資信託は「3つの会社」が役割分担して成り立っている
投資信託と聞くと、1つの会社がすべてを担っているようなイメージを持つ方もいますが、実際には性質の異なる3つの会社が役割を分担しています。
- 販売会社:証券会社や銀行など、投資家との窓口になる会社。口座開設・購入・解約などの手続きを行う
- 運用会社(委託会社):どの株式や債券にどれだけ投資するかという「運用の指図」を行う会社。ファンドの中身を設計・管理する
- 信託銀行(受託会社):投資家から集めたお金(信託財産)を実際に保管・管理する会社。運用会社の指図に基づいて売買を執行する
つまり、私たちが普段「投資信託」として認識している商品は、①窓口の販売会社、②運用の指図を行う運用会社、③お金を実際に保管する信託銀行という、独立した3社の分業によって成り立っています。この「保管する会社」と「運用を指図する会社」が別になっている点が、後述する資産保全の仕組みのポイントです。
それぞれの会社が破綻したら、資産はどうなるのか
運用会社が破綻した場合
運用会社は「運用の指図」を行うだけで、投資家から預かったお金そのものを保管しているわけではありません。信託財産は信託銀行に保管されているため、運用会社が経営破綻しても、信託財産そのものへの直接的な影響は原則としてないとされています。運用会社が破綻した場合、そのファンドは他の運用会社に運用が引き継がれるか、あるいは信託契約が終了して現金化される「繰上償還」という対応が取られるのが一般的です。
信託銀行が破綻した場合
信託財産を保管する信託銀行についても、法律(信託業法・投資信託及び投資法人に関する法律等)によって、信託銀行自身の固有の財産とは明確に区分して管理する「分別管理」が義務づけられています。そのため、信託銀行が破綻した場合でも、信託財産は信託銀行自身の負債の返済にあてられることはなく、原則として他の信託銀行に引き継がれるか、繰上償還されるとされています。
販売会社が破綻した場合
販売会社はあくまで購入・解約の窓口であり、信託財産を保管しているわけではありません。販売会社が破綻した場合も信託財産そのものへの影響はなく、投資家の口座(保有している投資信託)は他の販売会社へ移管されるか、解約されて現金化される形で対応されるのが一般的です。
3社の破綻パターンをまとめると
| 破綻した会社 | 信託財産への直接的な影響 | 一般的な対応 | | — | — | — | | 運用会社(委託会社) | 原則なし(信託銀行が別に保管) | 他の運用会社への引き継ぎ、または繰上償還 | | 信託銀行(受託会社) | 原則なし(分別管理が法律で義務) | 他の信託銀行への移管、または繰上償還 | | 販売会社 | 原則なし(保管業務を行っていない) | 他の販売会社への口座移管、または解約 |
このように、3社のうちどこが破綻しても、「投資家から預かったお金そのもの」が経営破綻の巻き添えで失われる、という設計にはなっていません。
なぜこの仕組みが成り立つのか 「分別管理」の考え方
この仕組みの土台になっているのが「分別管理」という考え方です。信託財産は、法律上、運用会社・信託銀行いずれの固有財産とも区別された「投資家のための財産」として扱われます。そのため、仮に運用会社や信託銀行が倒産して債権者への返済が必要になった場合でも、信託財産は差し押さえの対象にならないとされています[引用元:投資信託の安全性|資産運用業協会|https://www.imaj.or.jp/study/investmenttrust/meritrisk/safety.html]。
三菱UFJアセットマネジメントも、ファンドの運用に携わる各金融機関(販売会社・運用会社・信託銀行)のいずれかが破綻した場合について、信託財産は分別管理されているため直接的な影響を受けない旨を案内しています[引用元:ファンドの運用に携わる各金融機関が破綻した場合、ファンドはどうなりますか。|三菱UFJアセットマネジメント|https://faq1.am.mufg.jp/answer/676a43d13aa2ae25adf36788/]。同様の説明は他の運用会社の投資家向け解説でも共通して見られ、業界内で広く採用されている一般的な仕組みであることがうかがえます[引用元:販売会社や運用会社が破綻したらどうなるの?|ふくろう教授の投資信託ゼミナール|https://www.nam.co.jp/seminar/rescue/operation/1207358_4925.html]。
なお、証券会社が破綻した場合に株式や現金を一定額まで補償する「投資者保護基金」には1人あたり1,000万円という上限がありますが、投資信託の分別管理には、その性質上こうした金額の上限はないとされています。これは、証券会社に預けた財産を対象とするセーフティネットと、投資信託そのものの保有構造の違いによるものであり、どちらが優れているという話ではなく、それぞれ仕組みが異なる、という点として理解しておくとよいでしょう。
ここは誤解しないで 分別管理が「守ってくれないもの」
分別管理の仕組みを知ると安心する一方で、勘違いしやすいポイントもあります。この仕組みが守ってくれるのは、あくまで「関係会社の経営破綻から信託財産を守る」という部分です。
- 値下がりによる元本割れは補填されない:投資信託は株式や債券などに投資する商品である以上、市場の変動によって基準価額が下がり、購入時より資産が目減りする可能性は常にあります。分別管理は、この値下がりリスクを補償するものではありません。
- 繰上償還そのものが投資計画に影響しうる:運用会社や信託銀行の破綻・撤退により繰上償還となった場合、投資家の意図とは関係なく、その時点の基準価額でファンドが強制的に現金化されます。長期での積立を想定していた場合、思わぬタイミングで資産構成が変わる可能性がある点は留意が必要です。
- どの運用会社・ファンドを選ぶかの判断材料にはなるが、選び方そのものではない:分別管理は業界共通の仕組みであるため、「この運用会社は分別管理をしているから安心、この運用会社はしていないから危険」という差にはなりにくい制度です。ファンド選びでは、運用方針・信託報酬(手数料)・純資産総額の推移など、他の観点も合わせて確認することが一般的とされています。
まとめ 「会社の破綻リスク」と「値動きのリスク」は別物として理解する
投資信託は、販売会社・運用会社・信託銀行という3社が役割を分担し、投資家から集めた資産(信託財産)は信託銀行のもとで各社の固有財産とは分けて管理されています。この分別管理の仕組みにより、3社のいずれかが経営破綻しても、信託財産そのものが原則として保全される設計になっています。
一方で、この仕組みはあくまで「会社の破綻から資産を守る」ためのものであり、投資信託そのものが持つ「基準価額の変動による元本割れのリスク」をなくすものではありません。「会社が潰れる不安」と「値動きで損をする可能性」は別のリスクとして切り分けて理解し、後者については、長期・分散・積立といった考え方でリスクと付き合っていく姿勢が大切です。
本記事は投資信託の一般的な仕組みの解説であり、特定の運用会社・ファンドの購入を推奨するものではありません。制度・実務の詳細は変更される可能性があるため、最新情報は各運用会社・販売会社や資産運用業協会などの公式情報でご確認ください。投資には元本割れを含む価格変動リスクが伴います。投資判断は必ずご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

