
「決算書を見たら、在庫が前の年より増えていた…これって悪いことなのかな?」

「売れ残りなら心配だけど、そうとも限らないって聞いたことがあるんだよね」
企業の決算を調べていると、貸借対照表に「棚卸資産」という項目が出てきます。製造業や小売業など、モノを扱う会社でよく目にする言葉です。
この記事では、棚卸資産とは何か、増えたり減ったりしたときにどう見ればよいかを、初心者の方向けに整理します。「在庫が増えた=悪い」「減った=良い」と単純に決めつけないための考え方をお伝えすることが目的で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
※ 本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。株式投資には元本割れのリスクがあります。制度や会計の扱いは執筆時点(2026年10月)の一般的な内容であり、最新の情報は各社の開示資料や公式サイトでご確認ください。
棚卸資産とは?
棚卸資産とは、会社が販売する目的で持っている「モノ」の総称で、一般に次のようなものが含まれます。
- 商品・製品(完成して売れる状態のもの)
- 仕掛品(作っている途中のもの)
- 原材料・貯蔵品(製品を作るための材料など)
決算書では、貸借対照表の「流動資産」の中に並びます。会社によっては「商品及び製品」「仕掛品」「原材料及び貯蔵品」のように内訳が分けて書かれています。
企業の財務情報は、上場企業であれば決算短信や有価証券報告書などで公開されています。有価証券報告書は、金融庁のEDINET(開示書類の閲覧システム)で確認できます。
📰 出典:金融庁 EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類閲覧サイト)
なぜ「在庫が増えた=悪い」とは限らないのか
在庫が増えると、一般には「売れ残っているのでは」と心配されることがあります。実際、売れ行きが悪くて在庫が積み上がっているケースもあります。ただし、在庫が増える理由はそれだけではありません。
たとえば、次のような場合も考えられます。
- 今後の販売増に備えて、あらかじめ商品や材料を多めに確保している
- 新店舗の開店や新商品の発売に向けて、商品を仕入れている
- 原材料の価格が上がり、同じ量でも在庫の金額が大きくなっている
- 季節商品の繁忙期を前に、決算期末の時点で在庫が増えている
反対に、在庫が減っていても、人気が高くて売り切れが続いている場合もあれば、販売機会を逃している場合もあります。数字の増減だけでは、良い悪いは判断できません。

「じゃあ、在庫の金額だけ見てもよく分からないんだね」

「売上や過去の推移と合わせて見るのが大事なんだと思うよ」
仮の数字で考えてみる
ここからは、あくまで説明用の仮の例です。
A社の在庫が、前の期は100億円、今期は130億円で、30%増えたとします。このとき、同じ期に売上高も30%以上増えているなら、売れる量に見合って在庫を増やしたとも考えられます。
一方、売上高がほとんど変わらないのに在庫だけが30%増えていた場合は、売れ残りが増えている可能性もあります。ただし、その場合でも、新商品の準備などの理由があることもあるため、決算説明資料などで会社の説明を確認することが大切です。
このように、在庫は「金額」より「売上との関係」や「推移」で見るほうが、実態に近づきやすいと言われています。
初心者が気をつけたい3つの注意点
1. 「増えた・減った」だけで良し悪しを決めない
在庫の増減には、前向きな理由も後ろ向きな理由もあります。数字だけを見て「悪い」「良い」と決めつけず、理由を確認する姿勢が大切です。
2. 売上や過去の推移と並べて見る
前の期との比較だけでなく、売上高の伸びや、数年分の推移と並べて見ると、変化が一時的なのか続いているのかが分かりやすくなります。業種によっても在庫の持ち方は大きく異なるため、同じ業種の会社どうしで比べるのが基本です。
3. 在庫の評価損や処分のリスクも知っておく
売れ残った在庫は、値下げ販売や処分によって、会社の利益を押し下げる場合があります。決算書の注記や会社の説明に、在庫の評価に関する記述がないかも確認の対象になります。ただし、これを見つけたからといって、必ず株価が下がるわけではありません。株価は他の多くの要因でも動くため、断定はできません。
注意点・NG行動
- 「在庫が減った=経営が好調」「在庫が増えた=危ない」と一つの数字だけで判断すること
- 業種が違う会社どうしの在庫の金額を、そのまま比べること
- SNSなどの「この会社は在庫が増えているから売り」といった意見を、そのまま信じて売買すること
- 決算書の数字だけで判断し、会社の説明や業界の状況を確認しないこと
個別の企業について判断する際は、必ず各社の公式な開示資料を確認し、必要に応じて証券会社や専門家へ相談してください。
まとめ
- 棚卸資産とは、会社が販売のために持つ商品・製品・仕掛品・原材料などの総称で、貸借対照表の流動資産に載る
- 在庫が増える理由には、売れ残りだけでなく、販売増への備えや原材料価格の上昇などもある
- 「金額」ではなく、売上や過去の推移と合わせて見るのが基本
- 数字は判断材料の一つにすぎず、株式投資には元本割れのリスクがある。長期・分散・積立を基本に、焦らず学ぶことが大切
決算書の用語を一つずつ理解していくことは、ニュースの見出しに振り回されにくくなる助けになります。まずは気になる会社の決算書で、「棚卸資産」の欄を探してみてください。

