
「株が20%下がったから、20%上がれば元に戻るよね?」

「実はそうでもないって聞いたけど、どういうこと?」
結論から言うと、株価が下がったあとに元の値段へ戻るには、下がった割合よりも大きな割合で上がる必要があります。たとえば20%下がった場合、元に戻すには25%の上昇が必要で、50%下がった場合は100%(2倍)の上昇が必要です。
この記事では、投資初心者の方に向けて、下落率と「元に戻るために必要な上昇率」の関係を、仮の数字を使ってやさしく解説します。下落局面で慌てないための考え方や、やってはいけない行動もあわせて紹介します。なお、数字はすべて分かりやすさのための仮の例であり、将来の値動きを予想・保証するものではありません。
なぜ「下がった割合」と「戻すために必要な割合」は同じにならないのか
理由はとてもシンプルで、割合を計算するときの「元の金額」が変わるからです。
たとえば、1,000円の株が20%下がると、800円になります。ここから元の1,000円に戻すには、あと200円上がる必要があります。しかし、今の株価は800円なので、200円は800円に対して25%にあたります。
- 下落:1,000円 → 800円(−20%。基準は1,000円)
- 回復:800円 → 1,000円(+25%。基準は800円)
下落するときは「高い金額」を基準に割合を測り、回復するときは「下がって低くなった金額」を基準に測るため、同じ割合では元に戻れないのです。
下落率と必要な上昇率の早見表(仮の数字)
下落率ごとに、元に戻るために必要な上昇率を計算すると次のとおりです。計算式は「必要な上昇率=1÷(1−下落率)−1」です。
| 下落率 | 1,000円が何円になる? | 元に戻るために必要な上昇率 |
|---|---|---|
| −10% | 900円 | 約+11.1% |
| −20% | 800円 | +25% |
| −30% | 700円 | 約+42.9% |
| −40% | 600円 | 約+66.7% |
| −50% | 500円 | +100%(2倍) |
| −70% | 300円 | 約+233.3% |
下落率が小さいうちは、必要な上昇率との差はそれほど大きくありません。しかし、下落率が大きくなるほど、必要な上昇率は急速に大きくなります。−50%では2倍、−70%では3倍以上の上昇が必要です。
筆者の私見|「大きく下げない」ことの大切さ
ここからは事実ではなく、筆者の私見です。
この仕組みを知ると、投資では「大きく増やす」ことよりも、「大きく減らさない」ことの重みが大きいと感じます。大きな下落は、回復に必要なハードルを一気に高くするからです。
ただし、これは「下がったらすぐ売るべき」「下がる前に売り抜けるべき」という意味ではありません。相場の天井や底を事前に当てることは、プロでも難しいと言われています。大切なのは、自分が許容できる範囲を超えて、1つの銘柄やテーマに大きな金額を集中させないことだと考えます。
初心者が知っておきたい3つの視点
1. 「同じ割合で戻る」と思い込まない
「20%下がったから20%上がれば戻る」という感覚は、多くの人が持ちやすい思い込みです。保有している資産が下落したときは、戻るために必要な上昇率が下落率より大きいことを、一度計算して確認しておくと、冷静に状況を整理できます。
2. 分散して「大きな下落」の影響を小さくする
1つの銘柄だけに集中していると、その銘柄が大きく下がったとき、ほかで補いにくくなります。一般的には、銘柄・地域・資産の種類・買う時期を分けて持つ「分散」によって、資産全体への影響を小さくする考え方があります。ただし、分散しても元本割れの可能性がなくなるわけではありません。
3. 投資額は「失っても生活に困らない範囲」で決める
大きな下落が起きたとき、生活費や近い将来に使う予定のお金まで投資していると、回復を待てずに売らざるを得なくなることがあります。投資は、余剰資金の範囲で行い、生活防衛資金は別に確保しておくことが大切です。
仮の数字で考えてみよう
たとえば、100万円を1つの銘柄に投資して、その銘柄が50%下落した場合を考えます。
- 100万円 → 50万円(−50%)
- 元の100万円に戻すには、50万円を100万円に増やす必要があり、+100%(2倍)の上昇が必要
一方、100万円を10万円ずつ10の銘柄に分けて投資していたとします。そのうち1つが50%下落し、ほかの9つが横ばいだった場合は次のようになります。
- 下落した1つ:10万円 → 5万円(−5万円)
- 全体:100万円 → 95万円(−5%)。元に戻るには約+5.3%が必要
もちろん、これは分かりやすくするための極端な仮定です。実際には複数の銘柄が同時に下落することもあります。分散は「損失をゼロにする」ものではなく、「1つの出来事の影響を小さくする」ための考え方です。
やりがちなNG行動
- 「戻るはず」と根拠なく待ち続ける:必要な上昇率が大きいほど、戻るまでに時間がかかる可能性があります。戻る保証はありません。
- 取り返そうと借入れや信用取引で金額を増やす:損失が想定以上に膨らむ恐れがあります。
- 下落のたびにナンピン(買い増し)を繰り返す:1つの銘柄への集中度が高まり、リスクが増えることがあります。
- SNSの「今が底」「必ず戻る」という声を鵜呑みにする:根拠や目的が分からない情報で、予定外の金額を動かさないようにしましょう。
- 値動きが怖いあまり、一度の下落で投資をやめてしまう:長期の積立では、下落局面も想定したうえで続けやすい金額を決めておくことが大切です。
下落に備えてできること(セルフチェック)
- 自分の保有資産が、30%・50%下がったらいくらになるかを計算してみる
- そのとき、生活に影響が出ない金額かを確認する
- 1つの銘柄・テーマの割合が大きすぎないか見直す
- 積立投資なら、無理なく続けられる金額か確認する
- 制度(NISAなど)や商品の仕組みは、最新の公式情報で確認する
制度や商品の詳細については、金融庁などの公式情報もご確認ください。
📰 出典:金融庁「NISA特設ウェブサイト」
リスクと免責事項
株式や投資信託などの金融商品は、価格が変動し、元本を割り込む可能性があります。本記事で紹介した数字はすべて分かりやすさのための仮の例であり、将来の値動きや運用成果を予想・保証するものではありません。
本記事は2026年10月時点の一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。制度や税制は変更される可能性があるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。投資の最終判断は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。
まとめ|「大きく下げない」仕組みづくりが長続きの鍵
株価が下がったあとに元に戻るには、下がった割合より大きな割合で上がる必要があります。20%の下落には25%、50%の下落には2倍の上昇が必要です。
この仕組みを知っておくと、「いつか戻るから大丈夫」という思い込みを避け、分散や投資額の見直しなど、事前の備えを考えるきっかけになります。焦らず、余剰資金の範囲で、長期目線で資産形成を続けていきましょう。

