円建てステーブルコイン「JPYC」流通量が急減、一方「JPYSC」は国債運用を開始 対照的な2つのニュースから学ぶ注意点

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「『円と同じ価値』のステーブルコインなのに、流通量が減ったり増えたりするの?」

「値段が動かないコインだから、預金と同じくらい安全なものだと思ってた…」

結論から言うと、円建てステーブルコインは「価格が1円で安定している」ことと「発行残高が安定している」ことは別の話です。2026年9月上旬、日本円ステーブルコイン「JPYC」の流通量が短期間で大きく減少した一方、SBIグループが手がける信託型の円建てステーブルコイン「JPYSC」は裏付け資産の一部で国債運用を始めたと発表され、対照的な2つのニュースが重なりました。この記事では、この2つの動きから、ステーブルコインを理解するうえで押さえておきたい視点を整理します。 ※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産・サービスの利用や購入を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、ハッキングや詐欺の被害も報告されているハイリスクな資産です。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

ニュースの要点整理 何が起きたのか

まずは、報じられている事実関係を客観的に整理します。

JPYCの流通量が1週間で約6.1億円分減少

📰 出典:JPYCの流通量減少止まらず、一週間で約6億円減(NADA NEWS)

報道によれば、日本円建てステーブルコイン「JPYC」の流通量は、2026年8月30日時点の約27億800万JPYCから、9月6日時点には約20億9,700万JPYCまで縮小しました。1週間での減少額は約6億1,100万JPYCで、その前の週(8月23日~30日)の減少額(約1億6,600万JPYC)と比べて、約3.7倍に拡大したと報じられています。

減少の中心となったのは、ブロックチェーン「Kaia」上の流通量で、この期間に約17億8,000万JPYCから約11億5,800万JPYCへと、約6億2,200万JPYC減少したとされています。この動きと時期が重なるのが、Kaia上のウォレットサービス「Unifi」が提供していたJPYCの利回り優待の変更です。年率5%の利回りを提供していた期間限定キャンペーンが、2026年9月1日午前9時(日本時間)をもって終了し、基本の年率2%に切り替わったと報じられています。

SBIの信託型ステーブルコイン「JPYSC」が国債での運用を開始

📰 出典:ステーブルコインJPYSC、短期国債で運用開始(NADA NEWS)

一方、SBIグループは2026年9月7日、信託型の円建てステーブルコイン「JPYSC」の裏付けとなる信託財産の一部について、日本国債による運用を始めたと発表しました。報道によれば、運用を開始したのは信託財産のうち10億円分で、償還までの期間が3カ月以内の短期国債に充てられているとのことです。

📰 出典:SBIの円ステーブルコイン「JPYSC」、裏付け資産10億円を国債で運用開始(あたらしい経済)

これは、2026年6月1日に施行された改正資金決済法および関係法令により、ステーブルコインの裏付け資産の管理・運用方法が柔軟化されたことを背景にした動きとされています。改正後は、一定の要件のもとで、発行額の50%を上限に短期国債や定期預金での運用が認められるようになったと報じられています。9月7日時点でのJPYSCの発行残高は約201億円相当、関連するレンディングサービス「JPYSCレンディング」の申込残高は約69億円相当で、両者を合わせた規模は約270億円相当になるとのことです。

私見・考察 「流通量の増減」と「安全性」は分けて考える

ここからは筆者の私見です。「ステーブルコイン」という言葉を聞くと、「価格が動かないから安全」というイメージを持つ方も多いかもしれません。実際、JPYCやJPYSCのような円建てステーブルコインは、通常時であれば1コインが概ね1円に近い価値で取引されるよう設計されています。しかし、今回のJPYCのニュースが示すように、「価格が安定していること」と「発行残高(流通量)が安定していること」は、まったく別の論点だと筆者は考えます。

JPYCの流通量が急減した背景として報じられているのは、特定のウォレットサービスが提供していた年率5%という比較的高い利回りキャンペーンが終了し、通常の年率2%に戻ったことです。これは、いわば「期間限定の優遇金利」が終わったことで、その優遇を目当てに資金を置いていた利用者の一部が資金を引き上げた、という自然な動きだと捉えることができます。ステーブルコインそのものの信用不安や、発行体の経営問題によって流通量が減ったわけではないと報じられている点は、冷静に区別して受け止める必要があるでしょう。

一方のJPYSCの国債運用開始は、裏付け資産の透明性や運用の柔軟性を高める制度整備の一環として報じられています。ただし、これも「裏付けに国債が入っているから絶対に安全」ということを意味するわけではないと筆者は考えます。国債も価格が変動する金融商品であり、短期国債であっても市場環境によって価値が変動する可能性はゼロではありません。あくまで、法令の枠組みの中で運用方法の選択肢が広がったという制度上の変化として理解するのが適切だと筆者は考えます。

資産形成への発展 このニュースから読者が学べること

このニュースから、個人の資産形成に役立つ視点を整理します。

学び1. 「利回りキャンペーン」は期間限定であることが多いと理解する

暗号資産・ステーブルコインの世界では、特定のサービスが期間限定で高い利回りを提示し、利用者を呼び込むキャンペーンがしばしば行われます。今回のJPYCの事例のように、キャンペーンが終了すれば利回りは通常水準に戻り、それに伴って資金の出入りが生じるのは自然なことです。「高い利回り」を見たときは、それが恒久的な条件なのか、期間限定のキャンペーンなのかを必ず確認する習慣を持ちましょう。

学び2. ステーブルコインも「発行体の仕組み」によって性質が異なる

ひとくちに「円建てステーブルコイン」と言っても、資金移動業の枠組みで発行されるものと、信託の枠組みで発行されるものなど、法律上の位置づけや裏付け資産の管理方法は発行体ごとに異なります。「1コイン=1円」という見た目の安定性だけでなく、どのような法律・仕組みに基づいて発行されているのかを理解しておくことが、リスクを正しく把握するうえで重要です。

学び3. 裏付け資産の情報開示を確認する習慣を持つ

JPYSCのように、裏付け資産の運用方法や発行残高を公表している事業者の情報は、そのサービスの透明性を判断する材料になります。ステーブルコインを利用する際は、発行体が金融庁登録業者かどうかに加えて、裏付け資産に関する情報開示がどの程度なされているかも確認するとよいでしょう。

学び4. 「安定資産」でも税金・自己責任の原則は変わらない

ステーブルコインは値動きが小さいため、一見すると株式やビットコインのような資産と異なるもののように感じるかもしれません。しかし、暗号資産を使った取引で利益が生じた場合は、雑所得として所得税の課税対象になり得ます。具体的な計算方法や確定申告が必要かどうかは、国税庁の公表情報を確認するか、税務署・税理士に相談することをおすすめします。

学び5. 「円建て」でも預金保険の対象ではない点に注意する

銀行の預金であれば、一定額まで預金保険制度によって保護される仕組みがありますが、ステーブルコインは銀行預金とは異なる法的な枠組みで発行されている点に注意が必要です。信託型のスキームでは、裏付け資産が信託財産として分別管理されることで利用者保護を図る設計になっているとされていますが、その保護の仕組みは預金保険とは異なります。「円建て」という言葉の響きだけで銀行預金と同じ安全性を連想せず、それぞれの制度上の違いを理解しておくことが大切です。

学び6. 詐欺・ハッキングのリスクは他の暗号資産と同様に存在する

ステーブルコインは価格変動が小さい設計ですが、暗号資産全般に共通する「秘密鍵やウォレットの管理ミスによる資産の消失」「フィッシング詐欺による不正送金」「無登録業者や偽サービスによる詐欺」といったリスクは、ステーブルコインであっても他の暗号資産と同様に存在します。「値動きがないから安心」という油断が、こうした詐欺・ハッキングの被害につながらないよう、ウォレットの管理や送金先の確認は他の暗号資産と同じレベルで注意する必要があります。

具体的なアクション・心構え

  • 高利回りキャンペーンの「期間」を必ず確認する:サービスの利用規約や告知ページで、提示されている利回りが恒久的なものか期間限定なのかを確認しましょう。
  • 発行体の法的な仕組みを調べる:資金移動業か信託型かなど、発行体がどのような法律の枠組みで運営されているかを公式情報で確認しましょう。
  • 金融庁登録業者を利用する:暗号資産・ステーブルコインの取引は、必ず金融庁に登録された国内の業者を通じて行いましょう。
  • 利益が出た場合の税金を意識しておく:暗号資産の利益は雑所得として課税対象になり得るため、取引記録を残し、必要に応じて税理士・税務署に確認しましょう。

注意点・NG行動

  • × 「価格が1円で安定している=リスクがない」と思い込むこと
  • × 高い利回りだけを見て、期間限定かどうかを確認せずに資金を投じること
  • × 発行体の仕組みや裏付け資産を確認せず、「大手グループが関わっているから安心」と安易に判断すること
  • × 「未公開の暗号資産で必ず儲かる」といった話法や、無登録の海外業者への安易な資金移動

学び7. 「対照的なニュース」を並べて読むことで理解が深まる

今回のように、同じ「円建てステーブルコイン」というジャンルの中で、一方は流通量が減少し、もう一方は裏付け資産の運用範囲を広げるというニュースが同時期に報じられたことは、読者にとって良い比較材料になります。片方のニュースだけを見ていると「ステーブルコイン離れが進んでいる」あるいは「制度整備が進んで安心材料が増えた」といった一面的な受け止め方になりがちですが、複数の動きを並べて見ることで、業界全体の動向をより立体的に理解できるようになります。日頃からニュースを一つの見出しだけで判断せず、関連する情報を合わせて確認する姿勢を持つとよいでしょう。

まとめ 「動かない価格」の裏側にある仕組みを理解する

JPYCの流通量減少とJPYSCの国債運用開始は、一見すると対照的なニュースに見えますが、どちらも「円建てステーブルコインの仕組みや裏付け資産を理解することの大切さ」を教えてくれる事例だと筆者は考えます。価格が動かないように見える資産であっても、その裏側には発行体の法的な枠組みや利回りキャンペーンの設計、裏付け資産の運用方法といった要素があり、これらを理解しないまま「安全な資産」と思い込むのは避けるべきです。暗号資産・ステーブルコインには価格変動やハッキング・詐欺の被害、税制上の取り扱いなど、株式以上に注意すべきリスクが伴います。利用する際は必ず金融庁登録業者を選び、余剰資金の範囲で、自己責任のもと判断してください。本記事の情報は執筆時点(2026年9月)のものであり、最新の内容は各社の公式サイトや金融庁・国税庁の公表情報でご確認ください。

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