
「そういえば最近、EDINETで『四半期報告書』を探しても見つからない銘柄があるんだけど…」

「制度が変わったって聞いたけど、決算情報の何が変わったのか、正直よく分かっていない」
結論から言うと、2024年4月以降に始まった事業年度から、上場企業が法律にもとづいて提出していた「四半期報告書」のうち、第1・第3四半期の分は廃止され、取引所ルールに基づく「四半期決算短信」に一本化されました。第2四半期報告書は「半期報告書」という名前・位置づけに変わり、こちらは引き続き提出されています。年次の「有価証券報告書」に変更はありません。この記事では、何がどう変わったのかを整理し、個人投資家として決算情報をチェックするときに気をつけたいポイントを解説します。
※ 本記事は2026年9月時点で確認できる制度・仕組みをもとにした一般的な情報提供であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。制度の詳細・最新の運用は金融庁・日本取引所グループ(JPX)の公式情報でご確認ください。投資には元本割れのリスクが伴い、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。
そもそも「四半期報告書」とは何だったのか
四半期報告書は、金融商品取引法にもとづいて上場企業などに提出が義務づけられていた法定開示書類で、3か月ごとの業績や財務諸表を、比較的詳しい注記つきでまとめたものでした。決算後すみやかに公表される「決算短信」よりも情報量が多く、公認会計士等による「四半期レビュー」という一定のチェックを経て提出される点が特徴でした。
📰 出典:「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(第1・第3四半期報告書の廃止等)(金融庁)
2024年4月から何が変わった?改正のポイント
2023年11月に成立した金融商品取引法等の改正により、2024年4月1日以後に開始する事業年度から、上場企業について次のような変更が行われました。
- 第1四半期・第3四半期の「四半期報告書」は廃止され、取引所(東証)ルールに基づく「四半期決算短信」の開示に一本化
- 第2四半期報告書は「半期報告書」という名称・位置づけに変更され、提出は継続(公認会計士等によるレビューの仕組みもおおむね維持)
- 年次の「有価証券報告書」(決算日から3か月以内に提出)には変更なし
📰 出典:4~6月から四半期決算大きく変更 報告書廃止、短信に一本化(日本経済新聞)
背景には、決算短信と四半期報告書で内容が重複していた開示実務を見直し、企業側の開示事務の負担を軽減する狙いがあったとされています。実際にこの一本化について、上場企業へのアンケートでは約8割が「賛成」と答えたとの報道もあります。
📰 出典:四半期報告書廃止で「決算短信に一本化」賛成8割、企業が評価する利点(ニュースイッチ)
開示書類の位置づけを整理 新旧の比較
| 開示書類 | 廃止前 | 現在(2024年4月〜) | |—|—|—| | 第1・第3四半期 | 四半期報告書(金商法・EDINET) | 四半期決算短信(取引所ルール・TDnet) | | 第2四半期(中間期) | 四半期報告書 | 半期報告書(金商法・EDINET) | | 年次決算 | 有価証券報告書 | 有価証券報告書(変更なし) |
決算短信自体は以前からTDnetで速報として公表されており、今回の改正でゼロから新しく登場した書類ではありません。変わったのは「第1・第3四半期の法定開示(四半期報告書)が廃止され、決算短信が実質的にその役割も担うことになった」という位置づけの部分です。
個人投資家にとっての影響・注意点
1. 情報の探し場所が一部変わった
これまでEDINET(金融庁の開示システム)で四半期報告書を検索していた場合、第1・第3四半期分は同じ形では見つからなくなりました。代わりに、証券取引所の適時開示情報サイト「TDnet」や各社IRサイトで公表される決算短信を確認する形になります。
2. 開示の粒度・レビューの有無が書類によって異なる
四半期決算短信は速報性が重視される一方、四半期報告書にあった詳細な注記(セグメント情報の細目や関連当事者取引の記載など)が、決算短信では簡略化されている場合があります。また、決算短信は法定の四半期レビューが必須ではなく、企業の任意判断による部分がある点も、以前の四半期報告書とは異なります。より詳しく知りたい場合は、半期報告書(中間期分)や年次の有価証券報告書もあわせて確認するとよいでしょう。
3. 「情報が減った」と早合点しない
書類の名称や提出根拠が変わっただけで、業績数値そのものが分からなくなったわけではありません。決算短信には引き続き損益計算書・貸借対照表などの主要な財務情報が記載されており、四半期ごとの業績を追うこと自体は従来どおり可能です。
資産形成への発展 制度の「入れ物」が変わっても見るべき中身は同じ
決算情報の入手先や書類名が変わっても、投資判断の材料として確認すべき基本、つまり「増収か減収か」「利益は計画に対してどう進捗しているか」「事業ごとの状況はどうか」といった中身の見方自体は変わりません。制度改正のニュースに触れたときは、その変化に驚くだけでなく、次のような姿勢を持つことが役立ちます。
- 気になる銘柄の決算情報を確認するときは、TDnet(決算短信)とEDINET(半期報告書・有価証券報告書)の両方を使い分ける習慣を持つ
- 「四半期報告書がなくなった=開示が後退した」と単純に決めつけず、実際に決算短信の中身を確認してみる
- 制度・様式は今後も見直される可能性があるため、最新情報は金融庁・日本取引所グループの公式サイトで確認する
注意点・NG行動
- 制度名が変わったことだけを根拠に「この会社は情報開示に消極的になった」などと特定企業を断定的に評価すること
- 決算短信の速報値だけを見て「必ず上がる/下がる」と相場を断定すること
- 情報源の変化に戸惑い、決算情報の確認自体をやめてしまうこと
制度改正はあくまで開示の「仕組み」の見直しであり、個別企業の実態や株価の先行きを保証・否定するものではありません。株式投資には常に価格変動・元本割れのリスクが伴うことを前提に、複数の情報源を確認しながら、無理のない範囲で判断することが大切です。
まとめ 書類名が変わっても「見る姿勢」は変わらない
2024年4月から、上場企業の第1・第3四半期報告書は廃止され、決算短信への一本化が進みました。第2四半期報告書は半期報告書に、有価証券報告書は従来どおり存続しています。情報の探し場所や書類の粒度に多少の変化はあるものの、投資判断の材料として決算情報を確認する習慣そのものは、これまでと変わらず大切にしたい視点です。制度の変化に振り回されず、TDnetとEDINETをうまく使い分けながら、落ち着いて情報収集を続けていきましょう。

