
「積立投資は『毎月同じ金額を買う』のが基本と聞いたけど、それ以外の方法もあるの?」

「バリュー平均法って言葉をSNSで見かけたけど、なんだか難しそうで手が出せなくて…」
結論から言うと、バリュー平均法とは「資産の目標評価額」をあらかじめ決めておき、実際の評価額とのズレに合わせて毎回の投資額を増減させる積立投資の方法です。毎回同じ金額を淡々と積み立てる「ドルコスト平均法(定額購入法)」とは異なり、値下がり時には多く買い増し、値上がり時には投資額を減らす(場合によっては一部売却する)ことで、理論上は平均購入単価を抑えやすくなるとされています。ただし、必ずドルコスト平均法より有利になるわけではなく、管理の手間や資金準備の負担が増える面もあります。この記事では、初心者向けにバリュー平均法の仕組み、ドルコスト平均法との違い、メリット・デメリット、始める前に知っておきたい注意点を整理します。
※ 本記事は2026年8月時点の一般的な情報をもとにした解説であり、特定の銘柄・投資信託の購入・売却を推奨するものではありません。制度・商品内容・手数料等の最新情報は金融庁や各証券会社の公式サイトでご確認ください。
前提知識 積立投資の基本は「ドルコスト平均法」
積立投資の入門書やNISAの解説で必ずと言っていいほど登場するのが、「毎月一定額を買い続ける」ドルコスト平均法(定額購入法)です。価格が高いときは少なく、価格が安いときは多く買うことになるため、一括で高値づかみをするリスクを抑えながら、機械的に淡々と積み立てられる点が特徴とされています。
📰 出典:金融庁「NISA特設ウェブサイト」
多くのネット証券のつみたて設定は、このドルコスト平均法の考え方をベースにしています。「毎月○円」と設定してしまえば、あとは相場が上がっても下がっても淡々と買い続けられる手軽さが、初心者に広く選ばれている理由の一つです。
一方で、「投資額が常に一定」ということは、裏を返せば「値下がりが続く局面でも、決めた金額しか買い増せない」という側面もあります。ここで比較対象として紹介されることがあるのが、これから解説する「バリュー平均法」です。
バリュー平均法とは 仕組みをやさしく解説
1. まず「目標評価額」を決める
バリュー平均法では、最初に「1ヶ月目はいくら、2ヶ月目はいくら…」というように、資産の評価額(時価残高)の目標を先に設定します。たとえば「毎月3万円ずつ評価額を増やしていく」といった具合に、右肩上がりの目標ラインをあらかじめ描いておくイメージです。
2. 実際の評価額とのズレに応じて投資額を調整する
積立のたびに、その時点の実際の評価額を確認し、目標評価額との差額を計算します。
- 実際の評価額が目標より低ければ、その差額分を多く買い増す
- 実際の評価額が目標より高ければ、その差額分だけ投資額を減らす(差が大きい場合は一部売却するケースもある)
つまり、相場が下がって評価額が目標を下回ったときほど多く買い、相場が上がって評価額が目標を上回ったときほど買う量を減らす(または売る)仕組みです。結果として「安いときに多く買い、高いときは買い控える」動きが機械的に生まれやすいとされています。
📰 出典:松井証券「ポスト『ドルコスト』?『バリュー平均法』は一考の価値あり!」
簡易シミュレーション(あくまで一例)
数字のイメージをつかむために、非常に単純化した例で比較してみます。実際の値動きはこれほど単純ではなく、将来の成果を保証するものではない点にご注意ください。
| 月 | 目標評価額 | 値動きの想定 | ドルコスト平均法(毎月3万円) | バリュー平均法(目標に合わせて調整) | |—|—|—|—|—| | 1ヶ月目 | 3万円 | 基準 | 3万円を投資 | 3万円を投資(評価額3万円) | | 2ヶ月目 | 6万円 | 相場が下落し評価額が4万円に目減り | 3万円を投資 | 目標6万円まで2万円不足→2万円を投資 | | 3ヶ月目 | 9万円 | 相場が上昇し評価額が想定以上に増加 | 3万円を投資 | 目標9万円を上回る見込み→投資額を減らす(場合により一部売却) |
このように、バリュー平均法では相場の状況によって「今月はいくら投資するか」が毎回変わります。裏を返せば、値下がりが続いた月にはまとまった資金が必要になる可能性がある、ということでもあります。
バリュー平均法とドルコスト平均法の違い 比較表
| 項目 | ドルコスト平均法(定額購入法) | バリュー平均法 | |—|—|—| | 毎回の投資額 | 常に一定 | 評価額とのズレに応じて変動(増減・売却あり) | | 目的 | 平均購入単価を平準化する | あらかじめ決めた目標評価額に近づける | | 値下がり時の動き | 一定額のまま淡々と買う | 目標との差が広がるため、より多く買い増す必要が出やすい | | 値上がり時の動き | 一定額のまま淡々と買う | 投資額を減らす、場合によっては一部売却する | | 必要な手間・知識 | 少ない(設定すればあとは自動) | 都度の計算・資金管理が必要でやや手間がかかる | | まとまった資金の必要性 | 低い | 下落が続くと想定より多くの資金が必要になる場合がある | | 向いている人の一例 | 手間をかけずに淡々と続けたい人 | 計算や管理の手間を許容でき、目標額を意識して調整したい人 |
※ 上記はあくまで一般的な特徴の整理であり、どちらの方法が優れているかを断定するものではありません。実際の成果は相場の動き方や実行のタイミングによって大きく変わります。
バリュー平均法のメリットとされる点
相場下落時に機械的に買い増しやすい
目標評価額とのズレを埋める仕組み上、相場が下落して評価額が目標を下回るほど、投資額を増やす計算結果になります。「下がったから怖くて買えない」という心理的なハードルを、あらかじめ決めたルールに従うことで下げやすいと紹介されることがあります。
平均購入単価を抑えやすいとされる
理論上、値下がり時に多く買い、値上がり時に買い控える(または売る)ため、ドルコスト平均法よりも平均購入単価を抑えやすい、と解説されることがあります。ただし、これは相場の値動きパターンや実行期間によって結果が変わるため、常に上回ることを保証するものではありません。
バリュー平均法のデメリット・注意点
まとまった資金の準備が必要になる場合がある
相場の下落が続くと、目標評価額との差がどんどん広がり、月々の必要投資額が想定以上に膨らむことがあります。「今月は一定額しか用意できない」という状況では、目標通りに買い増せず、本来の狙い通りの効果を得られない可能性があります。
計算・管理の手間がかかる
毎回、目標評価額と実際の評価額を確認し、差額を計算する必要があります。多くのネット証券のつみたて設定のように「設定すれば自動で完結する」仕組みではないため、継続する手間や知識のハードルはドルコスト平均法より高くなりがちです。
値上がり時に売却すると税金がかかる場合がある
評価額が目標を上回った際に一部売却する運用をすると、利益が出ていれば譲渡益に課税される場合があります。特定口座やNISA口座での取り扱い、非課税枠の再利用に関するルールは制度によって異なるため、詳しくは各証券会社や国税庁の公式情報をご確認ください。
「必ずドルコスト平均法より得をする」わけではない
バリュー平均法は理論上有利になりやすいと紹介されることがありますが、どのような値動きでも必ず優れた成果になると保証されたものではありません。相場の動き方によっては、ドルコスト平均法と比べて大きな差が出ない場合や、資金繰りの負担だけが増えてしまう場合もあります。
初心者がやりがちなNG行動
目標評価額を高く設定しすぎる
将来のリターンを楽観的に見積もりすぎて目標評価額の上昇ペースを高く設定すると、相場が想定通りに伸びなかった場合に、必要な投資額がどんどん膨らんでしまいます。無理のない範囲で、余剰資金でまかなえるペースに設定することが大切です。
資金が足りずに目標額を投資できない月に焦って判断してしまう
まとまった資金が用意できない月に、目標額を投資できないからといって焦って他の資産を取り崩したり、生活費に手をつけたりするのは避けましょう。あくまで「余剰資金の範囲で無理なく続けられるか」を優先してください。
仕組みを理解しないまま複雑な運用に手を出す
バリュー平均法はドルコスト平均法に比べて計算や判断の要素が多く、仕組みを十分に理解しないまま始めると、途中で挫折したり、意図と違う売買をしてしまったりする可能性があります。まずは少額・シンプルな設定で試し、無理そうであればドルコスト平均法に戻すという柔軟さも一つの考え方です。
始める前に知っておきたいリスクと注意点
- 元本割れのリスクはなくならない:バリュー平均法もドルコスト平均法も、あくまで「買い方・投資額の決め方」の工夫であり、値下がりそのものを防いだり、利益を保証したりするものではありません。
- 「必ず儲かる」手法ではない:平均購入単価を抑えやすいと紹介されることはあっても、相場全体が長期的に下落し続けた場合には、どちらの方法でも損失が生じる可能性があります。
- 売却時には税金がかかる場合がある:利益が出た際の売却には譲渡益課税がかかる場合があります。詳細な取り扱いは税務署・税理士にご確認ください。
- 制度・税制は変わる可能性がある:NISAをはじめとする非課税制度や税率は法改正により変わることがあります。本記事の内容は2026年8月時点の一般的な情報であり、最新の制度内容は金融庁・国税庁・各証券会社の公式サイトで必ずご確認ください。
- 投資判断は自己責任で:本記事で紹介した内容は判断材料の一つであり、特定の銘柄・投資信託の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で、余剰資金の範囲で行ってください。
まとめ まずは仕組みの違いを理解し、無理なく続けられる方法を選ぶ
バリュー平均法は、目標評価額とのズレに応じて投資額を調整する積立投資の方法で、値下がり時に機械的に買い増しやすいという特徴があります。一方で、まとまった資金の準備や計算の手間が必要になる場合があり、「毎月一定額を淡々と積み立てる」ドルコスト平均法とは向き不向きが分かれます。
どちらの方法にも共通するのは、「長期・分散・積立」という考え方の土台の上に成り立っているという点です。まずは自分の家計や性格に合わせて、無理なく継続できる方法かどうかを基準に検討してみてはいかがでしょうか。迷ったときは、手間の少ないドルコスト平均法から始め、慣れてきたら別の方法も学んでみる、という段階的な進め方も一つの選択肢です。

