
「離婚を考えているけど、株や預金と違って、ビットコインってどうやって分ければいいんだろう…」

「価格が毎日大きく動くから、『いつの金額で分けるか』でもめそうで不安なんだよね」
結論から言うと、婚姻期間中に取得した暗号資産(仮想通貨)は、預金や株式と同じように「財産分与」の対象になるのが一般的な考え方です。ただし、暗号資産には価格変動(ボラティリティ)が大きい、単独名義のウォレットで管理されがち、といった特有の事情があり、「いつの時点の金額で評価するか」「現物のまま分けるか売却して分けるか」で意見が食い違いやすい傾向があります。この記事では、離婚時に暗号資産をどう扱えばよいか、初心者向けに考え方の基本と注意点を解説します。
※ 本記事は2026年8月執筆時点の一般的な情報をもとにした解説であり、法的助言・税務助言を目的としたものではありません。財産分与や離婚に関する個別の判断は、必ず弁護士に、税金に関する判断は税理士・税務署に確認してください。
そもそも財産分与とは? 暗号資産も対象になる理由
財産分与とは、離婚をする際に、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を清算し、公平に分け合う制度です。一般的には、結婚前からそれぞれが個人で持っていた財産(「特有財産」と呼ばれます)は対象外とされ、結婚後に夫婦の協力によって築かれた財産(「共有財産」)が分与の対象になるという考え方が基本になります。
預金や不動産、株式・投資信託などと同じく、婚姻期間中に取得した暗号資産も、原則としてこの共有財産に含まれると考えられています。名義が夫婦どちらか一方であっても、それだけで「自分だけの財産だから分与しなくてよい」ということにはなりません。一方で、結婚前から保有していた暗号資産や、相続・贈与によって個人的に取得した暗号資産は、特有財産として分与の対象外になるのが一般的な整理です。
暗号資産の財産分与が「難しい」と感じられる3つの理由
暗号資産以上に株式や不動産も財産分与の対象にはなりますが、暗号資産には次のような特有の事情があり、話し合いが難航しやすいといわれています。
1. 価格変動(ボラティリティ)が大きく、評価額が変わりやすい
暗号資産は株式以上に値動きが激しいことで知られています。「話し合いを始めた時点」「合意した時点」「実際に分ける時点」で評価額が数十%変わることも珍しくなく、どの時点の金額を基準にするかで受け取る金額の印象が大きく変わってしまいます。
2. 単独名義のウォレット・取引所口座で管理されがち
暗号資産は、証券口座のように配偶者へ残高が通知される仕組みが一般的ではありません。取引所の口座やウォレットが一方の名義・スマートフォンの中だけで管理されているケースが多く、そもそも「どれだけの暗号資産を保有しているか」をもう一方が正確に把握しにくいという事情があります。
3. 海外の取引所を利用している場合、把握や資料の取り寄せがさらに難しくなる
国内の金融庁登録業者だけでなく、海外の取引所を利用しているケースでは、取引履歴や残高証明の取得方法が分かりにくく、言語や手続きの壁でさらに時間がかかることがあります。無登録の海外業者を利用している場合は、そもそもの資産の安全性(出金トラブルや業者の経営リスク)にも注意が必要です。
話し合いを進めるための5つの考え方
1. 対象となる暗号資産と取得時期をリストアップする
まずは、夫婦それぞれが保有している暗号資産の銘柄・数量・取得時期を、取引所の取引履歴や残高証明をもとに洗い出します。婚姻前に取得した分や、相続・贈与で得た分は特有財産として区別できるよう、取得時期の裏付けとなる資料(取引履歴のスクリーンショットや入出金記録など)を残しておくことが大切です。
2. 評価額をいつの時点で計算するか、基準日を決める
一般的には、別居時や離婚協議時など、当事者双方が合意できる「基準時」を決め、その時点の時価で評価する考え方がよく用いられます。暗号資産は取引所によって表示価格が多少異なることもあるため、大手取引所の公表価格など、双方が納得できる情報源を事前に決めておくとトラブルを避けやすくなります。
3. 現物のまま分けるか、売却して現金で分けるかを話し合う
分け方には、大きく分けて「保有している暗号資産そのものを、それぞれのウォレット・取引所口座に送金して分ける」方法と、「一度売却して現金化し、その金額を分ける」方法があります。現物のまま分ける場合は、その後の値上がり・値下がりの影響をそれぞれが個別に受けることになります。売却して分ける場合は、後述するとおり売却益に税金がかかる可能性がある点も踏まえて話し合う必要があります。
4. 話し合いで決まらない場合は、弁護士や家庭裁判所の調停を利用する
当事者だけでの話し合いがまとまらない場合は、弁護士に相談したうえで、家庭裁判所の調停を利用するという選択肢があります。暗号資産の評価や分け方について専門家の助言を受けながら進めることで、感情的な対立を避けやすくなります。
5. 財産分与としての受け取りと、税金の扱いを整理しておく
財産分与そのものは、一般的には贈与とは異なる清算的な性質のものとされ、受け取った側に直ちに贈与税がかかるわけではないとされています。ただし、財産分与のために暗号資産を売却して利益(譲渡時点の時価と取得時の価格との差額)が出た場合、その利益は暗号資産の税制上のルールに沿って、売却した側の雑所得として課税対象になる可能性があります。暗号資産の税金は株式のような申告分離課税ではなく、給与など他の所得と合算して税率が決まる総合課税(雑所得)が原則であり、株式のような損益通算・繰越控除の仕組みも使えない点に注意が必要です。個別の税務上の扱いは、必ず税理士や税務署に確認してください。
実践する際の注意点・リスク
- 評価額の認識ズレでもめやすい:暗号資産は短期間で価格が大きく変動するため、「あの時の価格なら〜」と双方の主張がかみ合わなくなることがあります。基準日と情報源を早い段階で合意しておくことが重要です。
- 一方が保有を明かしていない可能性:暗号資産は預金や証券口座と比べて第三者から見つけにくく、話し合いの前提として「保有していないと言っていたが実は保有していた」というケースも報告されています。財産の開示に疑問がある場合は、弁護士に相談し、必要に応じて専門的な調査方法を検討しましょう。
- 送金時のアドレス間違いに注意:現物のまま分ける場合、送金先のウォレットアドレスを一文字でも間違えると、資産が戻ってこない可能性があります。送金前に必ずアドレスを複数回確認し、可能であれば少額のテスト送金を行うことをおすすめします。
- 詐欺的な話に注意する:離婚や相続などお金に関する不安を抱えているタイミングは、「代わりに高利回りで運用してあげる」といった詐欺的な勧誘の標的にされやすい場面でもあります。暗号資産を扱う際は、金融庁に登録された国内の暗号資産交換業者を利用し、うますぎる話には応じないようにしましょう。
- 暗号資産はそもそも価格変動が大きく、ハッキングや詐欺のリスクもある資産です。財産分与の場面に限らず、保有・管理する際は、余剰資金の範囲であることを前提に、リスクを理解したうえで扱うことが大切です。
まとめ 感情的にならず、記録と専門家の力を借りて進めよう
暗号資産は、婚姻期間中に取得したものであれば、預金や株式と同じく財産分与の対象になるのが一般的な考え方です。ただし、価格変動の大きさや管理の分かりにくさから、評価額や分け方をめぐって話し合いが難航しやすいという特有の難しさがあります。
取引履歴や残高証明といった客観的な記録を早めに整理し、評価額の基準日を決めたうえで、必要に応じて弁護士や税理士といった専門家の力を借りながら進めることが、無用なトラブルを避ける近道になります。
本記事は情報提供を目的としたものであり、法律・税務上の助言や、特定の金融商品・暗号資産の売買を推奨するものではありません。離婚・財産分与に関する具体的な判断は弁護士に、税金に関する具体的な判断は税理士・税務署にご相談のうえ、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。
