
「特定口座で株の配当をもらったんだけど、確定申告した方がいいのかな…?」

「そもそも配当金の税金って、選び方が3つもあるって知らなかった」
結論から言うと、特定口座(源泉徴収あり)で受け取った上場株式等の配当金は、「申告不要制度」「総合課税」「申告分離課税」の3つから、自分で有利な方法を選ぶことができます。何もしなければ申告不要のままで完結しますが、所得の状況によっては確定申告をした方が税金の負担が軽くなる場合もあります。この記事では、3つの課税方法の違いと、初心者が判断の目安にできる考え方、そして選ぶ前に知っておきたい注意点を解説します。
※ 本記事は2026年8月執筆時点の税制に基づく一般的な解説です。税率や控除額などの制度は変わることがあるため、実際の申告にあたっては国税庁や税務署、税理士に最新の内容をご確認ください。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
そもそも配当金にはどんな税金がかかるのか
📰 出典:国税庁 タックスアンサー No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
国税庁によると、上場株式等の配当金は、原則として支払われる際に所得税および復興特別所得税15.315%・住民税5%、合計20.315%が源泉徴収(天引き)されます。
特定口座(源泉徴収あり)で株式を保有している場合、この源泉徴収だけで納税が完結するため、多くの人は特に手続きをしなくても税金の精算が終わっています。ただし、この源泉徴収された配当金について、確定申告で「総合課税」または「申告分離課税」を選び直すことも可能です。つまり、配当金の税金は次の3つの中から選べる仕組みになっているということです。
- 1. 申告不要制度:確定申告をせず、源泉徴収された20.315%で完結させる
- 2. 総合課税:給与所得などほかの所得と合算して確定申告し、税率は所得全体に応じた累進税率が適用される
- 3. 申告分離課税:配当所得だけを他の所得と分けて申告し、税率は20.315%のまま計算する
「どれが得か」は一律には決まらず、所得の金額や、株式の売却損の有無によって変わってきます。ここからは、目的別にどのケースでどの方法が候補になりやすいかを整理します。
なぜ「選べる」制度になっているのか
配当金の税金がこのように選択式になっているのは、投資家一人ひとりの所得水準や状況によって、公平な税負担になる方法が異なるためです。所得税は「所得が多い人ほど税率が高くなる」累進課税が基本ですが、配当金の源泉徴収税率は所得の大小にかかわらず一律20.315%です。そのため、もともとの所得が少ない人にとっては、源泉徴収されたままだと相対的に税負担が重くなってしまう場合があります。逆に、株式の売却で損失が出た年は、源泉徴収された配当金の税金を取り戻せる可能性がある、という救済的な意味合いも申告分離課税にはあります。制度の背景を知っておくと、自分がどのケースに近いかをイメージしやすくなります。
配当金の税金 3つの選び方を目的別に整理
1. 「特に手続きしたくない」人は申告不要制度のままでよい
確定申告をすることが義務ではない点も重要です。特定口座(源泉徴収あり)であれば、何もしなくても納税は完結しています。扶養控除や配偶者控除の判定、国民健康保険料の計算などに影響させたくない場合は、あえて確定申告をせず申告不要制度のままにするという選択肢も十分に合理的です。
2. 課税所得が比較的少なめの人は総合課税が候補になりやすい
📰 出典:国税庁 タックスアンサー No.1250「配当所得があるとき(配当控除)」
国税庁によると、総合課税を選んで確定申告をした場合、国内株式の配当所得には「配当控除」という税額控除を適用できます。控除率は課税総所得金額1,000万円以下の部分については10%(投資信託の分配金等は一部異なる場合があります)とされています。
総合課税は所得税の税率が累進課税(所得が多いほど税率が高くなる仕組み)のため、給与所得などを含めた課税所得の水準が低めの人ほど、配当控除の効果もあわさって、源泉徴収された20.315%より低い税率で計算し直せる可能性があります。反対に、課税所得が多く適用税率が高い人は、総合課税を選ぶとかえって税負担が増えるケースもあるため、一般論として「所得が少ない人ほど有利になりやすい」という程度の理解にとどめておくのが安全です。
3. 株式の売却損がある人は申告分離課税が候補になりやすい
📰 出典:国税庁 タックスアンサー No.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
国税庁によると、申告分離課税を選んで確定申告をすると、上場株式等の譲渡損失(売却損)と配当所得を損益通算(相殺)できます。税率は源泉徴収と同じ20.315%のままですが、その年に売却損が出ている場合は、配当金にかかっていた税金の一部または全部が還付される可能性があります。
なお、損益通算してもなお引ききれない売却損は、確定申告を続けることで翌年以降3年間繰り越せる制度もあります。売却損が出た年は「申告分離課税を選んで損益通算する」という選択肢を一度検討してみる価値があります。
あくまで一例としての試算イメージ
イメージをつかむために、簡単な試算例を紹介します(数値は説明のための一例であり、実際の税額や有利不利を保証するものではありません)。
- ケース1:給与収入がパート・アルバイト程度で、課税所得がそれほど多くない人が、年間5万円の配当金を受け取った場合。総合課税を選び配当控除を適用すると、源泉徴収された税額の一部が還付される可能性があります
- ケース2:その年に保有株式を売却して10万円の損失が出ており、同じ年に配当金を8万円受け取った人。申告分離課税を選んで損益通算すると、配当金にかかっていた源泉徴収税額が還付される可能性があります
- ケース3:給与収入が高水準で、課税所得の適用税率がすでに20%を超えている人。総合課税を選ぶと、配当控除を考慮してもかえって税負担が増える可能性があります
いずれのケースも「可能性がある」という段階の話であり、実際の有利不利は所得の内訳や控除の状況によって変わります。断定はできないため、最終的には確定申告書等作成コーナーのシミュレーション機能などで、ご自身の数値をもとに試算することをおすすめします。
選ぶ前に知っておきたい注意点
所得税と住民税は別々の方式を選べない
📰 出典:東京都北区「令和6年度より上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等について所得税と異なる課税方式を選択することが出来なくなりました」
かつては所得税で総合課税、住民税では申告不要、といったように別々の方式を選ぶことができましたが、税制改正により令和6年度(令和5年分)以降は、所得税で選んだ課税方式が住民税にもそのまま適用されるよう統一されています。「所得税は総合課税で得をして、住民税だけ申告不要にする」といった従来の使い分けはできなくなっている点に注意が必要です。
確定申告をすると扶養控除・保険料に影響することがある
総合課税・申告分離課税のいずれを選んだ場合も、確定申告した配当所得は合計所得金額に算入されます。その結果、配偶者控除・扶養控除の判定基準を超えてしまったり、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の算定に影響したりする場合があります。特に家族の扶養に入っている人や、年金と配当収入がある人は、税金だけでなく社会保険料への影響も含めて確認することが大切です。判断に迷う場合は、税務署や税理士に自分の状況を伝えて確認することをおすすめします。
配当控除が使えないケースもある
配当控除は、総合課税を選べば必ず使えるわけではありません。国内の証券投資信託の分配金の一部や、REIT(不動産投資信託)の分配金、外国株式の配当金などは、配当控除の対象外とされている場合や控除率が異なる場合があります。特に外国株式の配当については、現地で源泉徴収された税金について「外国税額控除」という別の制度で調整する仕組みになっており、配当控除とは別の話になります。保有している商品が配当控除の対象になるかどうかは、投資している証券会社の目論見書や取引報告書、国税庁の案内で個別に確認しておくと安心です。
NISA口座内の配当金はそもそも非課税
NISA(少額投資非課税制度)口座で保有している株式の配当金は、受取方式を正しく設定していれば非課税となり、そもそも今回のような課税方式の選択自体が発生しません。特定口座と一般口座(課税口座)で保有している配当金についてのみ、今回の3つの選択肢が関係してくる点も押さえておきましょう。
どの方法が有利かは「試算してみないと分からない」
ここまで紹介した傾向はあくまで一般的な目安であり、実際にどの方法が有利になるかは、給与所得の金額・配当金の金額・売却損の有無・扶養家族の状況など、人によって条件が異なります。「総合課税にすれば必ず得をする」「申告分離課税が一番お得」といった断定はできません。確定申告書等作成コーナーなどで複数のパターンを試算してみたり、税理士に相談したりしたうえで判断することをおすすめします。
初心者がやりがちなNG行動
- 税率の数字だけを見て自己判断してしまう:配当控除や損益通算の条件を踏まえずに「総合課税の方が税率が低いはず」と思い込むと、実際には損をする申告をしてしまう場合があります
- 住民税への影響を確認しないまま申告してしまう:所得税だけを見て得だと判断しても、住民税や国民健康保険料への影響まで含めるとトータルでは負担が増えることがあります
- 扶養に入っている家族の分を安易に申告してしまう:配偶者控除・扶養控除の判定に影響し、世帯全体の税負担がかえって増えるケースもあります
まとめ 焦らず「自分の状況」で試算してから選ぶ
配当金の税金は、申告不要制度・総合課税・申告分離課税の3つから選ぶことができ、それぞれ向いている人の傾向は異なります。所得が少なめの人は総合課税、売却損がある人は申告分離課税が候補になりやすい一方、確定申告をすると住民税や社会保険料にも影響する点には注意が必要です。
いずれの方法にも一長一短があり、「これを選べば必ず得する」という単純な話ではありません。株式投資自体にも価格変動による元本割れのリスクがあることを前提に、税金の選択についても長期的な資産形成の一部として、焦らず自分の状況を確認しながら判断していきましょう。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や特定の申告方法を推奨するものではありません。最終的な申告方法の判断や具体的な計算は、税務署・税理士など専門家に確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。

