
「ビットコインを長く持ち続けている人の保有量が過去最高って聞いたけど、それって『今が買い』ってこと?」

「みんなが握りしめてるなら、自分も乗り遅れちゃいけない気がしてくる…」
結論から言うと、長期保有者の保有量が過去最高になったというデータだけで「今が買い時」と判断するのは早計です。このデータには「数カ月前に買われたコインが、時間の経過で自動的に『長期保有』に分類されただけ」という側面もあり、直近の買い需要の強さを直接示すものではないと指摘されています。この記事では、2026年7月下旬に報じられたこのニュースの事実関係を整理したうえで、オンチェーンデータの見出しにどう向き合えばよいか、初心者向けに考えていきます。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品(ビットコインを含む暗号資産)の購入・売却を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。
ニュースの要点整理 ビットコイン長期保有者の保有量が「過去最高」に
6カ月超保有の「長期保有者(LTH)」とは
暗号資産の分析では、取得してから一定期間(一般的に155日〜6カ月程度)動かされていないビットコインを「長期保有者(Long-Term Holder、LTH)」が持つコインとして区別することがあります。短期的な値動きで売買を繰り返す投資家とは対照的に、価格が下がっても売らずに保有し続ける層の動向を見る指標のひとつです。
保有量は約1,630万BTC、流通量の約8割に
市場分析アナリストのDarkfost氏は2026年7月26日、オンチェーンデータをもとに、6カ月超保有されているビットコインが1,630万BTCを超え、長期保有者の保有量として過去最高を更新したと報告しました。これは市場に出回っている流通供給量のおよそ8割にあたる規模です。
📰 出典:ビットコイン長期保有者の保有量が過去最高──1,630万BTC超に
同分析によると、長期保有者の平均取得単価はおよそ4万9,400ドルとされ、記事執筆時点のビットコイン価格(6万4,000ドル台)を踏まえると、長期保有者全体の含み益(未実現の評価益)は平均して約30%にとどまるとの試算が示されています。これは、2025年1月に記録されたピーク時の含み益率(約340%)と比べるとかなり圧縮された水準です。
📰 出典:ビットコイン長期保有者、保有1630万BTCで含み益30%まで圧縮=アナリスト
なぜ増えているのか 「買い増し」だけが理由ではない
この「過去最高」という見出しだけを見ると、多くの投資家が強気で買い増している印象を持つかもしれません。しかし、暗号資産メディアNADA NEWSの分析(エックスウィン氏執筆)では、長期保有者の純増加は、ETF・機関投資家のカストディ(保管)・企業の財務戦略として取得されたビットコインが、売却されずに時間の経過とともに「長期保有」側へ分類されていった結果である可能性が高いと指摘されています。つまり、直近に新規の買い需要が急増したことを直接示すデータではないという注意点が添えられています。
📰 出典:長期保有者はなぜビットコインを蓄積しているのか──過去最大級のLTH増加を読み解く
同時期には、大手取引所BitMartの閉鎖表明や、韓国での海外暗号資産デリバティブ取引所アプリの配信停止など、市場の基盤面での懸念も相次いで報じられており、価格面の指標だけでなく事業者の信用リスクにも注意が必要な状況が続いています。
数字を整理すると見えてくること
ここまでの数字を、簡単な一覧で整理してみます(あくまで報道時点の一例であり、今後変動する可能性がある試算です)。
| 項目 | 2025年1月頃(ピーク時) | 2026年7月下旬(今回の報道時点) | |—|—|—| | 長期保有者の含み益率(目安) | 約340% | 約30% | | ビットコイン価格 | 高値圏 | 約6万4,000ドル台 | | 長期保有者の保有量 | ピーク時より少ない | 約1,630万BTC(過去最高) |
こうして並べてみると、「保有量は過去最高」でありながら「含み益は過去のピークよりかなり小さい」という、一見矛盾するようにも見える2つの事実が同時に成立していることが分かります。これは、長期保有者の中に、価格が高かった時期に近い水準で取得した人が一定数含まれていることを示唆しており、「長期保有=誰もが大きな含み益を抱えている」という単純なイメージとは異なる実態と言えそうです。
筆者の私見・考察 「過去最高」の見出しと実態のギャップをどう読むか
ここからは筆者の私見です。「過去最高」という言葉は非常にインパクトがあり、SNSなどでは「強気相場入りのサイン」として拡散されやすい性質があります。ただ、今回のデータを丁寧に見ていくと、次の2つの点で「単純な強気材料」と決めつけるのは慎重であるべきだと感じます。
1つ目は、前述の通り、長期保有者の増加が必ずしも「新規の強い買い需要」を意味しない点です。数カ月前に購入されたコインが、時間が経過しただけで自動的に「長期保有」に区分されるケースが一定数含まれているとすれば、それは「今まさに買いが殺到している」こととは別の話です。
2つ目は、長期保有者自身の含み益が、過去のピーク(約340%)と比べて約30%まで圧縮されている点です。「長く持ち続けている人が多い=みんな大儲けしている」というイメージとは裏腹に、実際の評価益はそこまで大きくない水準にとどまっているというのは、意外に見落とされがちな事実だと感じます。
一般的に、オンチェーンデータは市場参加者の行動パターンを知るうえで参考になる情報のひとつとされていますが、あくまで「過去に何が起きたか」を反映したものであり、将来の値動きを保証するものではありません。この点は、株式のテクニカル指標やニュースの見出しにも共通する注意点だと言えるでしょう。
また、株式投資の世界でも「機関投資家の保有比率が上昇した」「大口投資家が買い越した」といった需給データが話題になることがありますが、いずれも「過去の結果」を示す後追いの情報であり、それ自体が将来の株価を約束するものではない、という点は共通しています。今回のビットコインのニュースも、同じ枠組みで捉えると理解しやすいのではないかと感じます。
資産形成への発展 「みんなが持っている」を売買判断の物差しにしない
このニュースから、資産形成における一つの学びを引き出すとすれば、「他の投資家がどれだけ保有しているか」を、自分の売買タイミングを決める直接の根拠にしない、という姿勢の大切さです。
長期保有者のデータが強気に見えても弱気に見えても、それは市場全体の傾向を示す一つの参考情報にすぎません。個人投資家が本当に向き合うべきなのは、他人の行動ではなく「自分自身がどのくらいのリスクを取れるか」「いつ・どれくらいの資金を投じるか」という、自分自身の投資方針です。
一般的に、資産形成の基本は特定のニュースや指標に一喜一憂して売買を繰り返すことではなく、あらかじめ決めた方針(毎月一定額を積み立てる、余剰資金の範囲にとどめるなど)を淡々と続けることだとされています。話題性の高いオンチェーンデータほど、この基本を忘れさせる力を持っている点には注意したいところです。
ドルコスト平均法という「もう一つの長期保有」
今回のニュースの主役である長期保有者は、機関投資家や企業の財務戦略として一括で大きな金額を投じているケースが多いと考えられます。一方、個人の初心者がまねをしやすい「長期保有」の形としては、毎月決まった金額をコツコツ積み立てる、いわゆるドルコスト平均法(定額積立)という考え方があります。
一括で高値づかみをしてしまうリスクを抑えながら、時間を分散して購入することで平均取得単価をならしていく手法で、値動きの大きい暗号資産や株式投資信託などでよく紹介される考え方です。ただし、これも「必ず利益が出る」ことを保証する手法ではなく、右肩下がりの相場では平均取得単価も下がりにくいという限界がある点には注意が必要です。あくまで一つの考え方として、ご自身の状況に合わせて検討してみてください。
具体的なアクション・心構え 短期的な材料に振り回されないために
「過去最高」というニュースを見たときに、初心者の方が意識しておきたい心構えを整理します。
- 見出しと中身を分けて読む:「過去最高」「記録更新」という言葉の強さと、実際のデータの意味(含み益はむしろ圧縮している等)を分けて確認する習慣を持ちましょう。
- 自分の投資額を決めてから動く:ニュースに反応して急に投資額を増やすのではなく、あらかじめ決めた毎月の積立額・上限額を守ることが、長期的には値動きに振り回されにくい行動につながるとされています。
- 分散を意識する:暗号資産は株式や投資信託と比べても値動きが大きい資産です。資産の一部に組み込む場合も、ビットコイン単独・暗号資産全体への集中を避け、他の資産クラスとのバランスを考えることが基本とされています。
- 金融庁登録の暗号資産交換業者を使う:BitMartの閉鎖のように、海外の取引所は日本の預金保険のような保護制度の対象外であり、突然のサービス終了リスクもあります。国内で取引する場合は、必ず金融庁登録の暗号資産交換業者を利用しましょう。
注意点・NG行動 やってはいけない考え方
- 「みんなが握りしめている=今が買い」という短絡的な判断:前述の通り、長期保有者の増加は新規の買い需要そのものを表すデータではありません。この一点だけを根拠に投資判断をするのは避けましょう。
- 借金やレバレッジをかけた投資:強気に見えるニュースをきっかけに、生活費や借入金を使って大きなポジションを取るのは非常にリスクが高い行為です。あくまで余剰資金の範囲にとどめてください。
- 含み益・含み損への過剰反応:含み益・含み損は売却するまで確定しない評価上の数字です。ニュースの数字に一喜一憂して慌てて売買することは、長期的な資産形成にとってマイナスに働きやすいとされています。
- 税金を後回しにすること:ビットコインを売却・使用して利益が出た場合、原則として雑所得として課税され、給与所得などと合算して確定申告が必要になるケースがあります(給与所得者で年間の利益が20万円を超える場合など、具体的な要件は状況によって異なります)。「値上がりして嬉しい」で終わらせず、記録をこまめに残しておくことが後々の手間を減らすポイントです。制度の詳細や自分のケースに当てはまるかどうかは、最新の情報を国税庁のウェブサイトや税理士に確認することをおすすめします。
- 株式投資と同じ感覚で扱うこと:暗号資産は株式と異なり、価格の裏付けとなる企業業績や配当がなく、需給や思惑によって値動きが大きくなりやすい資産です。ハッキングや取引所の突然の閉鎖といった、株式にはあまり見られないリスクがある点も踏まえ、資産全体に占める割合は慎重に考えたいところです。
まとめ 数字の裏側を確認し、落ち着いて自分の方針を守ろう
ビットコインの長期保有者の保有量が過去最高になったというニュースは、一見すると強い強気材料に見えますが、実際にはデータの性質や含み益の水準など、冷静に見るべきポイントがいくつもあることが分かりました。
暗号資産に限らず、投資の世界では「過去最高」「記録更新」といった見出しが日々飛び交います。そのたびに一喜一憂して売買を繰り返すのではなく、出典を確認し、数字の背景にある事情まで読み解いたうえで、自分自身の長期・分散・積立という基本方針を淡々と続けることが、結果的に「相場に振り回されない」投資家への近道だと言えるのではないでしょうか。

