
「同じ仮想通貨を何回かに分けて買ったんだけど、税金の計算ってどうすればいいの…?」

「利益が出たら確定申告が必要なのは知ってるけど、『取得価額』の計算方法まで選べるって初めて聞いた」
結論から言うと、仮想通貨(暗号資産)を複数回に分けて購入した場合の損益計算では、「総平均法」と「移動平均法」という2つの評価方法のどちらかを選ぶ必要があります。何も手続きをしないと自動的に「総平均法」が適用される仕組みになっており、どちらを選ぶかによって年ごとの損益の出方が変わる場合があります。この記事では、初心者向けにこの2つの計算方法の違いと選び方、手続き上の注意点をやさしく整理します。
※ 本記事は2026年7月執筆時点の一般的な制度の考え方を紹介する情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。税制・様式は変わることがあるため、具体的な適用や判断は必ず国税庁の公式情報や税理士にご確認ください。
そもそもなぜ「計算方法」を選ぶ必要があるのか
仮想通貨は、株式のように1回だけ購入して終わり、というケースばかりではありません。同じ銘柄を時期を変えて何度も買い増したり、価格が変動する中で少しずつ買ったりする人も多いはずです。
このとき問題になるのが「売却したときの取得価額(いくらで手に入れたことにするか)をどう計算するか」という点です。購入価格がバラバラな状態で一部を売却した場合、その売却分の取得価額をどう割り出すかによって、その年の利益(または損失)の金額が変わってきます。国税庁は、この取得価額の計算方法として「総平均法」と「移動平均法」の2つを認めています。
📰 出典:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」
「総平均法」とは
総平均法とは、その年の1月1日から12月31日までに購入した金額の合計を、購入した数量の合計で割って、平均取得単価を1つ算出する方法です。年間を通じて「ならした」平均単価で計算するため、仕組みとしては比較的シンプルで、年に1回まとめて計算しやすいという特徴があります。
一方で、年の途中の値動きは平均に埋もれてしまうため、実際の売買タイミングごとの損益の実感とはズレが生じやすい面もあります。
「移動平均法」とは
移動平均法とは、暗号資産を購入するたびに、その時点で保有している数量と新たに購入した数量・金額を合算し、都度、平均取得単価を計算し直していく方法です。購入のたびに単価が更新されていくイメージで、売却時点の取得価額がより実態に近い形で反映されやすいとされています。
その分、取引回数が多い人ほど計算の手間は増えやすく、年間を通じて都度の記録・計算をこまめに行う必要があります。
具体例でイメージをつかむ(あくまで仕組みを理解するための一例)
数字のイメージをつかむために、簡単な例で考えてみます(実際の税額計算を保証するものではなく、あくまで考え方を説明するための単純化した例です)。
| 時期 | 取引 | |—|—| | 1月 | 10万円で暗号資産Aを購入 | | 6月 | 追加で20万円分を購入(このとき価格は上昇していたと仮定) | | 12月 | 保有分の一部を売却 |
このようなケースでは、
- 総平均法では「1月と6月の購入金額・数量をまとめて年間の平均単価」を出したうえで12月の売却損益を計算します
- 移動平均法では「1月の取得単価」→「6月購入後に更新された取得単価」という形で、売却時点により近いタイミングの単価を使って計算します
どちらが有利になるかは、購入・売却のタイミングや値動きの状況によって変わり、一概に「こちらが得」とは言えません。具体的な金額のシミュレーションが必要な場合は、税理士や国税庁の相談窓口に相談することをおすすめします。
どちらを選ぶか 考え方のポイント
- 取引回数が少なく、年に数回程度の売買にとどまる人:総平均法のほうが計算の手間が少なく済みやすいとされています
- 頻繁に売買を繰り返す人・複数の取引所を使い分けている人:移動平均法のほうが売却時点の実態に近い損益を把握しやすい半面、記録・計算の手間は増えます
- どちらが有利かを事前に完全に予測することは難しい:将来の値動きは誰にも分からないため、「必ずこちらが得」という断定はできません。自分の取引スタイルや、記録・計算にかけられる手間を基準に選ぶという考え方が現実的です
選ぶための手続き 「評価方法の届出書」と提出期限
総平均法・移動平均法のどちらを使うかは、何もしなければ自動的に総平均法が適用される仕組みになっています。移動平均法を使いたい場合は、「所得税の(有価証券・暗号資産の)評価方法の届出書」を提出する必要があります。
📰 出典:国税庁「A1-21 所得税の暗号資産の評価方法の届出手続」
一般的な制度の考え方として、次のような点が案内されています。
- 提出期限は、暗号資産を新たに取得した日、または従来取得している暗号資産と種類が異なる暗号資産を新たに取得した日の属する年分の確定申告期限までとされている
- 評価方法は暗号資産の種類ごとに選ぶことができ、例えば「ある通貨は総平均法、別の通貨は移動平均法」という組み合わせも制度上は可能とされている
- 届出をしなかった場合は、自動的に総平均法が適用される
これらはあくまで一般的な制度の紹介であり、提出方法(e-Taxの利用可否等)や様式の詳細、期限の具体的な起算日は変更される可能性があります。実際に届出を検討する場合は、必ず国税庁の最新の公式情報を確認するか、税理士に相談してください。
初心者がやりがちなNG行動・失敗例
- 届出の存在自体を知らず、後から「移動平均法にしておけばよかった」と気づいても、その年に遡って変更できない
- 複数の取引所・ウォレットをまたいで取引しているのに、一部の取引履歴を集計し忘れる
- 「どちらが得か」を自己流で判断し、計算方法を年によって都合よく変えようとする(継続適用が前提とされているため、慎重な判断が必要です)
- 「仮想通貨は匿名だから申告しなくても分からない」といった誤解のもと、届出や申告自体を怠る
知っておきたいリスクと注意点
- 暗号資産は株式以上に値動きが大きいハイリスクな資産です。計算方法を工夫しても、価格変動そのもののリスクがなくなるわけではありません
- 税金の話は「利益が出た後」だけの問題ではありません。取得価額の計算方法を選ぶ手続きは、暗号資産を取得した年の申告期限までに済ませておく必要がある点に注意してください
- 詐欺・ハッキング・送金ミスによる資産消失のリスクにも常に注意してください。「必ず儲かる」「未公開コインで確実に稼げる」といった話は詐欺を疑い、暗号資産の売買には必ず金融庁・財務局に登録された国内の暗号資産交換業者を利用してください。無登録の海外業者への安易な誘導には応じないようにしましょう
- 税金の具体的な計算・判断は自己流で済ませず、国税庁の相談窓口や税理士に確認してください。本記事はあくまで一般的な仕組みの紹介であり、個別の税額を保証するものではありません
暗号資産は必ず「余剰資金(当面使う予定がなく、最悪失っても生活に困らないお金)」の範囲で取り組むことが大原則です。「億り人」を目指すような一攫千金の発想ではなく、リスクと税金の仕組みの両方を理解したうえで、無理のない範囲で向き合うことが大切です。
よくある疑問 Q&A
Q. 一度選んだ計算方法は、後から自由に変更できますか? A. 一般的に、評価方法は継続して適用することが前提とされています。変更を検討する場合の具体的な手続き・条件は、国税庁の最新情報や税理士に確認することをおすすめします。
Q. 少額の取引しかしていない場合でも、届出をしたほうがいいですか? A. 取引回数や金額、ご自身の状況によって最適な選択は異なります。判断に迷う場合は、自己判断せず税理士や国税庁の相談窓口に相談してください。
Q. 総平均法と移動平均法、どちらのほうが税金は安くなりますか? A. 値動きや売買のタイミング次第で有利不利が変わるため、一概にどちらが得とは言えません。将来の値動きを断定することはできない点にもご注意ください。
まとめ 計算方法の違いを知り、早めに手続きを確認する
仮想通貨の損益計算には「総平均法」と「移動平均法」という2つの評価方法があり、何も届出をしなければ総平均法が適用されます。どちらが有利かは取引スタイルや値動き次第で変わるため、断定的な優劣はありません。大切なのは、こうした計算方法の選択肢があることを知り、必要であれば申告期限までに届出を検討することです。
仮想通貨は株式以上に値動きが大きく、詐欺やハッキング、送金ミスによる資産消失のリスクもあるジャンルです。必ず金融庁登録の暗号資産交換業者を利用し、余剰資金の範囲で、税金面の不安があれば税務署や税理士に確認しながら向き合っていきましょう。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

