結論から言うと、2026年7月21日に円相場が一時1ドル=163円台まで下落し、1986年12月以来39年7カ月ぶりの安値を更新しました。中東情勢の緊迫による「有事のドル買い」が主因とされていますが、こうした為替ニュースを見て「今のうちに外貨建て資産を買い増すべきか」「積立を止めるべきか」と一喜一憂するのは禁物です。この記事では、今回の円安のニュースを客観的に整理したうえで、長期的な資産形成の視点からどう受け止めればよいかを考えていきます。

「また円安のニュース…このまま円の価値がどんどん下がっていくのかな」

「外貨建ての投資信託を持ってるけど、今買い増した方がいいのか分からない」
そんな不安を感じている方に向けて、事実と私見を区別しながら、落ち着いて考えるための材料をお伝えします。
ニュースの要点整理 円相場が163円台、39年7カ月ぶりの安値に
まずは今回のニュースの事実関係を確認しましょう。
- 2026年7月21日、ロンドン外国為替市場で円相場が対ドルで下落し、一時1ドル=163円00〜10銭前後をつけました。これは1986年12月以来、39年7カ月ぶりの安値水準です。
- 直接の背景とされているのは、米国とイランの間で攻撃の応酬が続くなど中東情勢が緊迫化していることです。原油先物価格が値上がりする中、基軸通貨で流動性の高いドルに資金が集まる「有事のドル買い」が優勢になったと報じられています。
- あわせて、原油高が続けば日本の貿易収支・交易条件の悪化につながるとの見方も、円売り・ドル買いを後押しする材料として指摘されています。
📰 出典:日本経済新聞「円相場が一時163円台 39年7カ月ぶり安値更新、有事のドル買い」
📰 出典:日本経済新聞「ロンドン外為21日 円相場、一時163円台に下落 39年7カ月ぶり安値 中東緊張でドル買い」
📰 出典:時事通信(Yahoo!ニュース)「円下落、39年半ぶり安値 中東対立で「有事のドル買い」」
また、この時期は政府の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」原案が話題になっていたタイミングでもあります。原案には日銀の金融政策運営を巡る記述が盛り込まれ、市場の一部では利上げをけん制する意図があるのではないかとの見方も出ていました。今回163円台をつけた直接のきっかけは中東情勢とされていますが、こうした国内の政策方針を巡る思惑も、円安が長引きやすい地合いの一因として意識されていたようです。
📰 出典:Yahoo!ニュース(NRI研究員の時事解説)「骨太の方針原案で明らかになる政府による日本銀行の利上げ牽制姿勢と円安進行リスク」
なお、今年に入ってからも円は7月上旬に162円台まで下落する場面があり、じりじりと最安値を更新し続けている状況です。今回の163円台は、その流れの延長線上にある動きと捉えられます。
筆者の私見 「有事のドル買い」は長期化を前提にできない
ここからは筆者の私見です。中東情勢を背景にした「有事のドル買い」は、地政学リスクが後退すれば巻き戻される可能性がある、短期的な値動き要因だと筆者は考えています。実際、過去にも中東情勢の緊迫と緩和のニュースを受けて、為替や株価が数日単位で上下する場面が繰り返されてきました。
一方で、日銀の金融政策運営を巡る国内の政治的な思惑は、より構造的で息の長いテーマになり得ると感じています。金利差だけでなく「政府と中央銀行の関係」という要素が意識され始めている点は、今後の円相場を考えるうえで注目しておきたいポイントです。
ただし、これはあくまで筆者個人の見立てであり、為替がこの先どちらに動くかを断定するものではありません。専門家の間でも見方は分かれており、「163円台が定着する」とも「反落する」とも言い切れないのが実情です。相場の先行きを正確に予測することは、プロの投資家であっても難しいという前提を忘れないようにしたいところです。
資産形成への発展 円安ニュースをどう自分の資産に落とし込むか
今回のニュースから、資産形成の観点で考えておきたいポイントを整理します。
外貨建て資産・投資信託への影響を理解する
米国株式や全世界株式のインデックスファンドなど、外貨建て資産に投資している方にとって、円安は保有資産の円換算評価額を押し上げる方向に働くことがあります。逆に円高に転じれば、その分評価額が目減りする可能性もあります。為替ヘッジの有無によっても値動きは変わってくるため、自分が保有している商品が為替ヘッジあり・なしのどちらのタイプかを、この機会に確認しておくとよいでしょう。
輸入物価・生活費への影響も意識する
円安は食品やエネルギーなど輸入品の価格上昇を通じて、家計の生活費に直接影響を及ぼします。資産運用のリターンだけでなく、日々の支出面でも円安の影響を受けているという事実は、家計全体で資産形成の計画を立てる際に踏まえておきたい視点です。
「今だけ」の値動きに投資判断を左右されない
歴史的な安値更新という見出しは強いインパクトがありますが、だからといって「今のうちに外貨建て資産を買い増すべき」「円資産は危ないから今すぐ売るべき」と短期的に判断するのは避けたいところです。長期・分散・積立を基本とする資産形成では、日々の為替水準そのものよりも、あらかじめ決めた資産配分のルールを淡々と続けることの方が重要だと考えられています。
具体的なアクション・心構え 長期目線でできること
短期的な値動きに反応するのではなく、次のような視点で自分の資産と向き合ってみることをおすすめします。
- 保有している投資信託・ETFが「円建て」「外貨建て」「為替ヘッジあり・なし」のどれに当たるかを確認する
- 積立投資をしている場合は、為替水準を理由に一時的に止めたり増やしたりせず、決めた金額・タイミングを継続する
- 特定の通貨(円やドルなど)に資産が偏りすぎていないか、資産配分全体を見直す機会にする
- 為替や金利のニュースは「なぜそう動いたのか」の背景を理解する材料として活用し、売買のタイミング判断の材料にはしすぎない
いずれも地味に感じるかもしれませんが、値動きの大きい局面ほど、基本に忠実であることが結果的にリスクを抑えることにつながると考えられています。
注意点・NG行動 為替ニュースで陥りやすい失敗
為替が大きく動いたときにやってしまいがちな、避けたい行動を挙げておきます。
- 「円安が続くから」という理由だけで、余剰資金の範囲を超えて外貨建て資産やFXへの投資を一気に増やす
- 逆に「そろそろ円高に反転するはず」という予想だけで、積立投資や保有資産を急に売却する
- SNS等で見かけた「1ドル◯円まで行く」といった断定的な予想を鵜呑みにして売買判断をする
- 為替差益を狙った短期的なレバレッジ取引に、生活資金や借入金を投じる
繰り返しになりますが、為替の先行きを正確に言い当てることは、専門家でも困難です。断定的な情報に接したときほど、一度立ち止まって冷静に考える習慣を持つことが大切です。
まとめ 為替の見出しに動じず、長期の資産形成を続けよう
2026年7月21日、円相場は中東情勢の緊迫を背景に一時163円台まで下落し、39年7カ月ぶりの安値を更新しました。政府の骨太の方針を巡る思惑なども意識される中、円安基調がどこまで続くかは専門家の間でも見方が分かれています。
だからこそ、こうしたニュースに接したときは「事実として何が起きたのか」を冷静に整理したうえで、自分の資産配分や積立方針を見直すきっかけとして活用することをおすすめします。歴史的な水準を更新したという見出しの強さに引っ張られて、短期的な売買判断をしないよう心がけましょう。
なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・通貨の売買を推奨するものではありません。為替相場・株式相場にはいずれも変動リスク・元本割れの可能性があります。投資は必ずご自身の判断と責任のもと、余剰資金の範囲で行うようにしてください。制度・相場に関する情報は執筆時点(2026年7月21日)のものであり、最新の状況は日本銀行・財務省・各金融機関の公式情報でご確認ください。

