
「モルガン・スタンレーみたいな大手証券会社も暗号資産を扱い始めたってニュースを見たよ」

「そんな大手が扱うなら、もう暗号資産も『普通の金融商品』になったってことなのかな…?」
結論から言うと、2026年7月16日、米モルガン・スタンレー傘下のオンライン証券E*TRADE(イー・トレード)が、ビットコイン・イーサリアム・ソラナの現物取引サービスを全顧客向けに本格提供開始したと発表されました。世界有数の金融機関グループが暗号資産の取り扱いに本腰を入れたことは象徴的な出来事ですが、これは米国の顧客向けサービスの話であり、「大手が扱い始めた=日本の私たちも今すぐ安心して買うべきサイン」という意味ではありません。この記事では、今回のニュースの要点を整理したうえで、こうした「大手金融機関の参入ニュース」と個人の資産形成としてどう向き合えばよいかを考えます。
※ 本記事は2026年7月時点で報じられた内容をもとにした解説であり、特定の企業・銘柄・暗号資産の将来の値動きを断定したり、金融商品の売買を推奨したりするものではありません。
ニュースの要点整理 E*TRADEが暗号資産の現物取引を本格展開
対象顧客は約860万世帯、預かり資産は約1.56兆ドル
E*TRADEは2026年7月16日、暗号資産インフラ企業ゼロハッシュ(Zero Hash)と提携し、対象顧客がビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)・ソラナ(SOL)の3銘柄を直接売買・保有できる現物取引サービスの提供を開始したと発表しました。E*TRADEは2026年3月末時点で約860万世帯・約1兆5600億ドルの預かり資産を抱える米国大手のオンライン証券であり、今回の展開はその全顧客基盤を対象にしたものだと報じられています。
📰 出典:Yahoo!ニュース(NADA NEWS)「モルガン・スタンレー、E*TRADEで暗号資産現物取引を提供開始」
手数料は0.5%、株式などと並べて残高表示
購入した暗号資産はゼロハッシュの連携口座で管理され、E*TRADEの取引画面上で株式や投資信託など従来の資産と並べて残高を確認できる仕組みになっているとされています。取引手数料は取引額の50ベーシスポイント(0.5%)に設定されており、これは大手暗号資産取引所コインベースやロビンフッドの標準的な個人向け手数料よりも低く、2026年4月に0.75%で現物取引を始めた同業チャールズ・シュワブと比べても低い水準だと伝えられています。なお、外部ウォレットなどへの送金機能は年内の提供が予定されているとのことです。
📰 出典:ビットタイムズ「モルガン傘下「E*TRADE」仮想通貨現物取引を開始|860万世帯が対象」
2025年9月の方針表明から約10カ月、5月のパイロットを経て本格展開
モルガン・スタンレーは2025年9月、E*TRADEにおける暗号資産取引の拡大方針を初めて明らかにし、2026年5月には一部顧客を対象にしたパイロット(試験)提供を開始していたと報じられています。今回の全顧客向け展開は、約2カ月間のパイロット期間を経て当初計画が完了したかたちとなり、将来的には設立準備中の信託銀行「モルガン・スタンレー・デジタル・トラスト」へ、暗号資産関連の機能を移管していく方針も示されているとのことです。
📰 出典:Yahoo!ニュース(NADA NEWS)「モルガン・スタンレー、E*TRADEで暗号資産現物取引を提供開始」
米大手証券会社の間で広がる暗号資産取引の解禁
米国では2024年のビットコイン現物ETF解禁以降、大手証券会社が相次いで自社プラットフォーム上での暗号資産取引に対応する動きが続いており、チャールズ・シュワブに続きE*TRADEも参入したことで、伝統的な証券口座と暗号資産口座の垣根が薄まりつつある状況がうかがえます。一方、日本国内ではE*TRADEのようなサービスは提供されておらず、暗号資産を取引する場合は国内の金融庁登録業者を利用する必要があります。今回のニュースを見て「同じサービスが日本でもすぐ使える」と早合点しないよう注意が必要です。
📰 出典:Yahoo Finance「Morgan Stanley Expands Retail Crypto Access Through E*TRADE Rollout」
筆者の私見 「大手が扱う=安心」と「値動きの大きさ」は別問題
ここからは筆者の私見です。世界有数の金融グループが自社の主要な証券サービスの中に暗号資産取引を組み込んだことは、暗号資産が一部の専門的な投資家だけのものではなく、一般の個人投資家にとっても身近な選択肢の一つとして扱われる時代になってきたことを象徴する出来事だと筆者は受け止めています。手数料面でも既存の暗号資産取引所より低い水準を打ち出しており、競争が進むこと自体は利用者にとって歓迎できる面もあるでしょう。
一方で、「大手金融機関が扱っている」ということと「価格変動リスクが小さくなる」ということは、まったく別の話だと筆者は考えています。E*TRADEが暗号資産を株式や投資信託と並べて表示する仕組みは利便性が高い反面、見た目が似ていることで、資産の性質の違い(暗号資産には預金保険のような元本保護の仕組みがなく、短期間で大きく値下がりする可能性がある点など)を利用者が意識しにくくなる面もあるのではないかと感じています。「並べて見えるから同じようなもの」ではなく、それぞれの資産のリスクの大きさを個別に理解しておくことが大切だというのが筆者の見方です。
また、今回はあくまで米国の顧客向けサービスの話であり、日本の個人投資家が直接この仕組みを使えるわけではありません。海外の大手企業の動きが華々しく報じられると、つい「自分も乗り遅れないように」と焦りたくなりますが、まずは自分が実際に利用できる制度・サービスは何かを冷静に確認する姿勢が欠かせないと筆者は考えています。
資産形成への発展 「大手参入ニュース」から学べる3つの視点
今回のニュースは、個人の資産形成において次のようなことを考えるきっかけになります。
- 「大手が扱い始めた」ことと「自分が今買うべきか」は別の問題として考える: 有名企業の参入というニュースの話題性と、実際に自分の資産の一部として組み入れるかどうかの判断は、切り離して考える必要があります。見出しの勢いだけで判断しない習慣を持ちましょう
- 「残高が一元管理される」ことと「リスクが揃う」ことは同じではない: 取引画面や資産管理アプリで株式・投資信託・暗号資産の残高が並んで表示されるようになっても、それぞれの資産が持つ値動きの大きさやリスクの性質は異なります。表示上の見やすさとリスクの実態を混同しないようにしたいところです
- 海外の金融サービスの動きは、そのまま日本の制度に当てはまるとは限らない: 米国の大手証券会社が提供するサービスであっても、日本の個人投資家がそのまま利用できるとは限りません。話題になっている海外サービスに関心を持った場合も、まずは日本国内で自分が実際に利用できる、金融庁登録の暗号資産交換業者や証券会社を確認することが基本です
手数料の安さだけで判断しない
今回のニュースでは50ベーシスポイントという手数料水準が話題になっていますが、手数料の低さは金融商品を選ぶ際の一つの判断材料にすぎません。取扱銘柄の内容、セキュリティ体制、預けた資産の管理方法(分別管理の状況など)、サポート体制といった要素も含めて、総合的に確認する視点が重要です。手数料が安いからといって、自分のリスク許容度を超えた金額を投じてよい理由にはなりません。
「デジタル資産の主流化」という流れそのものは知識として押さえておく
大手金融機関が相次いで暗号資産取引に対応し始めている流れそのものは、資産形成を考えるうえで知っておいて損はない知識です。ただし、知識として押さえることと、実際に自分の資産配分に組み入れることの間には、リスク許容度の確認や余剰資金の有無といった、自分自身の状況を踏まえた判断のプロセスが必要になります。
暗号資産に関心を持ったときの一般的なチェックポイント
仮に、こうしたニュースをきっかけに暗号資産そのものに関心を持った場合でも、判断材料として一般的に確認されている観点には次のようなものがあります。あくまで一般的な知識としての紹介であり、特定の銘柄・サービスの利用を勧めるものではありません。
- 取り扱う事業者が金融庁登録の暗号資産交換業者かどうか
- その資産の値動きの過去の幅(どの程度の下落が過去に起きたことがあるか)
- 手数料・スプレッドなどのコスト水準
- 利益が出た場合の税金の扱い(国内では雑所得として総合課税の対象になる場合があるとされています)
具体的なアクション・心構え
今回のようなニュースを見たときに、長期目線で意識しておきたい行動を整理します。
- 「大手が扱っている」という見出しだけで判断せず、自分が使えるサービスかどうかをまず確認する: 海外サービスの話題を、そのまま自分の投資行動に結びつけない
- 暗号資産への投資は余剰資金の範囲にとどめる: 生活費や近い将来に使う予定のお金には手をつけず、失っても生活に支障が出ない範囲で検討する
- 国内で暗号資産を取引する場合は金融庁登録の取引所を選ぶ: 無登録の海外業者や、話題性だけで勧誘してくるサービスへの安易な登録は避ける
- 資産管理アプリ等で残高が一元化されても、リスクの異なる資産だと意識する: 見た目の使いやすさとリスクの実態を切り分けて考える
注意点・NG行動
- 「モルガン・スタンレーのような大手が扱っているから安全」と思い込み、根拠を確認せずに暗号資産や関連サービスに資金を投じる
- 海外の大手企業の参入ニュースを見て「乗り遅れたくない」という焦りから、日本国内で利用できない海外サービスや無登録業者に安易に手を出そうとする
- 資産管理画面で株式や投資信託と並んで表示されることから、暗号資産のリスクの大きさを軽視してしまう
- 手数料の安さだけを理由に、自分のリスク許容度を超えた金額を投じる
まとめ 話題の主役より、自分が使える制度とリスクの理解を優先する
2026年7月16日に明らかになったE*TRADEの暗号資産現物取引の本格展開は、世界有数の金融グループが暗号資産を証券サービスの中に本格的に組み込んだ出来事として注目を集めています。大手企業同士の手数料競争が進み、暗号資産がより身近な選択肢として扱われる流れそのものは、資産形成を考えるうえで知っておいて良い動きだと言えるでしょう。
一方で大切なのは、「大手が参入した」「話題になっている」という見出しの勢いに流されるのではなく、自分が実際に利用できる国内の制度・事業者は何か、そしてその資産がどの程度の値動きをする可能性があるのかを、自分自身の目で確認したうえで判断することです。海外の華やかなニュースほど、一度立ち止まって事実と自分の状況を整理する姿勢が、結果的に自分の資産を守ることにつながります。
最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の企業・銘柄・暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。暗号資産には価格変動リスクに加え、ハッキングや詐欺的な勧誘のリスクもあることを理解した上で、国内の金融庁登録業者を利用し、余剰資金の範囲で無理なく検討するようにしましょう。

