イランと原油、そして日本株の行方——地政学リスクが高まる時代の投資家心得

株・投資

> 本記事は情報提供を目的とし、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

はじめに——今、世界で何が起きているのか

2026年6月25日(今日)、日経平均は前日比▲613円で引けました。「中東情勢が怖い」「原油が上がって物価も上がる」「いったいどうなるの?」——そんな声が投資家・資産形成層のあいだで高まっています。

この記事では、イランをめぐる地政学リスクの現状を整理し、原油市場・日本株・家計への影響を読み解きながら、長期の資産形成という観点から私たちが何を考え、どう行動すべきかを一緒に考えていきます。

「ニュースが怖くて、今すぐ全部売ってしまいたい気持ちになっています……」

「その気持ちはよくわかります。でも、判断する前に”何が起きているか”をきちんと整理しましょう。焦りは往々にして最悪のタイミングの売買を生みます。」

第1章 ニュースの要点整理——事実ベースで何が起きたか

1-1 イスラエル・米国によるイラン攻撃(2026年2月28日)

2026年2月28日、イスラエルおよびアメリカがイランへの軍事攻撃を実施したことが各国メディアで報道されました。この出来事は、中東地政学リスクを一気に顕在化させることになりました。

とりわけ市場が敏感に反応したのは「ホルムズ海峡封鎖リスク」です。ホルムズ海峡はペルシャ湾から外海への唯一の出口であり、世界の原油輸送量の約2割がここを通過します。封鎖ないし通行に支障が生じれば、原油供給は即座にひっ迫します。

この懸念からWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は一時93.94ドルまで急騰。事態の深刻さを市場が価格で示した瞬間でした。

📰 出典:内閣府月例経済報告「中東情勢の緊迫化と原油供給リスク」

1-2 原油高が日本経済に与える影響(2026年3〜4月)

日本は原油の約95%を中東からの輸入に頼っており、エネルギー自給率は約13%にとどまります。これは先進国のなかでも極めて低い水準であり、中東情勢の影響を正面から受けやすい構造です。

内閣府の試算によれば、今回の原油価格上昇は消費者物価を0.25〜1.26%押し上げる効果があるとされています。

さらに、帝国データバンクの分析では、原油高が食品・光熱費・輸送コストなどに波及することで、勤労者世帯の年間家計支出が最大約50万円増加するとの試算も示されました。月あたりに換算すると約4万円強——これは家計に無視できないインパクトです。

📰 出典:帝国データバンク「2026年3月の原油価格高騰が日本経済に及ぼす影響」

📰 出典:内閣府月例経済報告「中東情勢の緊迫化と原油供給リスク」

1-3 日本株の急落——6月8日の「複合的ショック」

2026年6月8日、日経平均株価は前週末比▲2,563円という歴史的な急落を記録しました。これは単一の悪材料ではなく、複数のリスクが重なった「複合的ショック」と分析されています。

  • 中東地政学リスクの再燃(イランをめぐる緊張の再度高まり)
  • 米国のハイテク株下落の波及
  • 円高方向への為替シフト(リスクオフによる円買い)
  • 国内機関投資家のリバランス売り

📰 出典:財界オンライン「株価は『中東リスク』を織り込んだか?下落調整の終わりを読む」

1-4 6月23日以降——停戦協議と新たな懸念材料

6月23日以降、停戦協議の進展を示す報道が複数出てきたことで、原油価格はやや落ち着きを取り戻しつつあります。しかし市場全体の緊張は収まっておらず、特にハイテク株の軟調さが続いています。

そして2026年6月24日、米ホワイトハウスは876億ドル(約13兆円)規模の補正予算を議会に要求したことが報じられました。この予算の柱のひとつは、イランをめぐる軍事費(「イラン戦費」)です。

📰 出典:AP通信「補正予算876億ドルを議会要求 ホワイトハウス、イラン戦費など」

米国が議会に公式の補正予算を要求するという行為は、これが「短期で終わる局面」ではないことを示唆しています。財政面での本格的なコミットメントが始まったと見ることができます。

そして本日2026年6月25日、日経平均は再び前日比▲613円で取引を終えました。「不透明感が続く」という表現がまさに適切な局面が続いています。

第2章 筆者の私見・考察(意見として)

ここからは筆者個人の見解・考察です。事実とは区別してお読みください。

2-1 「市場はすでに織り込んでいるか?」という問い

株式市場の格言に「Bad news is good news(悪材料は織り込まれた後は好材料になる)」というものがあります。6月8日の▲2,563円という急落は、ある意味で市場が「地政学リスクを真剣に折り込みはじめた瞬間」だったと筆者は見ています。

問題は、「どこまで折り込めば十分か」が誰にもわからない点です。イランをめぐる情勢は、以下のシナリオが考えられます。

シナリオA(楽観): 停戦協議が加速し、7〜8月には一定の合意に向かう。原油価格は70ドル台へ落ち着き、株式市場は安定を取り戻す。

シナリオB(中立): 停戦協議は進展と後退を繰り返し、数ヶ月単位の不透明期間が続く。原油は80〜90ドルのレンジをさまよい、株式も方向感を欠いた展開となる。

シナリオC(悲観): ホルムズ海峡での事態が再燃し、原油が100ドルを超える局面が来る。世界的なスタグフレーション懸念が台頭し、リスク資産全般から資金流出が起きる。

どのシナリオが現実になるかは、今この瞬間には誰にもわかりません。重要なのは「どのシナリオになっても対応できる体制を整えておく」ことです。

「シナリオCが怖すぎて……」

「最悪シナリオを想定することは大切です。ただ、過去の歴史を振り返ると、地政学リスクによる株価下落は多くの場合、数ヶ月以内に回復局面を迎えています。問題は”それに耐えられる財務体力があるか”です。」

2-2 「876億ドルの補正予算」が意味すること

ホワイトハウスが876億ドルという大規模な補正予算を議会に要求した事実は、複数の意味で重要だと筆者は考えます。

第一に、米国政府がこの軍事行動を長期的なコミットメントとして位置づけているという意思表示です。これは「数週間で終わる話」ではなく、財政的な裏付けを持った中期的な対峙が始まったことを示しています。

第二に、米国の財政赤字拡大への懸念が再燃するリスクです。すでに高水準にある米国の財政赤字がさらに膨らむとなれば、米国債の信用力に対する不安や、長期金利上昇圧力を生む可能性があります。長期金利が上昇すると、一般に高PERのハイテク株や成長株には逆風となります。

第三に、ドル高・円安方向への圧力です。米国が大規模な財政出動をする局面では複雑な為替変動が起きますが、日本の輸入コスト増加という観点では、円安は原油高とのダブルパンチになるリスクがあります。

2-3 日本株の「2段階の影響」

日本株への影響は、大きく2段階で考えると整理しやすいです。

第1段階(短期): リスクオフによる全面安。内外機関投資家がポジションを縮小し、特に輸入コストが増大する内需・輸送・食品セクターへの売り圧力がかかります。

第2段階(中期): 企業業績への実際の影響が出始める決算期(7〜10月)に、業種間での明暗が鮮明になります。エネルギーコスト転嫁力がある企業とそうでない企業の差が広がる可能性があります。

第3章 資産形成への発展——地政学リスクから学べること

3-1 地政学リスクは「予測不能」を前提にする

投資の世界で最も難しいのは「予測不能な出来事(ブラックスワン)への対応」です。2026年2月のイラン攻撃も、2020年のコロナ禍も、2022年のロシアによるウクライナ侵攻も——事前に正確に予測した人はほとんどいませんでした。

だとすれば、問うべきは「次に何が起きるか」ではなく、「どんな出来事が起きても資産を守れる仕組みを持っているか」です。

これは「リスクを取るな」という意味ではありません。リスクを適切に分散し、自分が許容できる範囲でとる、という資産形成の基本原則の話です。

3-2 分散投資の意味が改めて問われる局面

「分散投資が大事」とはよく言われますが、今回の局面は分散投資の「本当の意味」を考え直す機会でもあります。

単純な株・債券・現金の3分散でいいのか、地域分散はどうか、通貨分散は、コモディティ(商品)への配分は——これらは人によって答えが異なります。しかし、以下の点は広く共通する考え方として挙げられます。

1. 特定の地域・セクターへの集中投資は見直しを

日本株だけ、ハイテクだけ、という集中ポートフォリオは、今回のような複合的ショックで打撃を受けやすいです。地域・セクター・資産クラスをまたいだ分散が、長期的な安定性を生みます。

2. インフレヘッジの観点を持つ

原油高が消費者物価を押し上げる局面では、実物資産や物価連動債、あるいは自分の収入基盤(スキルアップ・副収入)を強化することもインフレヘッジのひとつです。「お金の置き場」だけでなく「稼ぐ力」を高めることも、資産形成の重要な柱です。

3. キャッシュポジションの意味を再評価する

「現金は負け」という風潮があった超低金利時代とは異なり、2026年の日本は預金金利も動き始めており、現金の維持コストは以前より小さくなっています。「いざというとき動ける余力」としてのキャッシュポジションは、今こそ再評価すべきです。

3-3 原油関連銘柄・コモディティへの過度な集中を戒める

「原油が上がるから○○株を買おう」という発想は自然ですが、注意が必要です。

  • 地政学リスクが和らぐと原油価格は急反落するリスクがある
  • 個別銘柄は市場全体のトレンドとは別の固有リスクを持つ
  • 上昇局面で入ると「高値づかみ」になりやすい

特定の材料に乗った短期的なポジション取りは、プロのトレーダーにとっても難しい世界です。長期の資産形成を目指す一般投資家が無理に参加する必要はありません。

第4章 具体的なアクション・心構え

4-1 今すぐやるべきこと

(1)自分のリスク許容度を再確認する

今の自分のポートフォリオで、仮に日経平均がさらに20%下落したとして、精神的・経済的に耐えられるか?ここを冷静に問い直してください。「耐えられない」と感じるなら、ポジションを減らすことは合理的です。ただし、それは「今後の下落を予測したから」ではなく「自分のリスク許容度に合わせる」という理由であるべきです。

(2)生活防衛資金の確保

投資の原則として、生活費6ヶ月〜1年分は現金で確保することが推奨されています。この金額が揺るぎなく確保されているなら、残りの資産での投資は続けられます。逆に生活防衛資金が心もとないなら、まずそちらを優先してください。

(3)積立投資を止めない

毎月の積立(iDeCoやNISAを含む)は、特段の理由がない限り継続することを推奨します。下落局面での積立は、将来の取得単価を引き下げる効果(ドルコスト平均法)があります。「怖いから止める」は、長期的に見て損失を確定させる行為になりやすいです。

「積立を止めたいと思っていましたが、続けたほうがいいんですね。」

「はい。積立投資の最大の強みは『自動的に安い時に多く買える』仕組みにあります。下落局面こそ、その仕組みが活きる瞬間です。感情で止めると、この恩恵を失います。」

4-2 中期的に考えること(3ヶ月〜1年)

(1)情勢の定点観測をする

毎日相場をチェックして一喜一憂する必要はありませんが、月に1〜2回は以下の点を確認することをお勧めします。

  • WTI原油価格の水準(70ドル割れ/90ドル超えのどちら方向か)
  • 停戦協議の進捗
  • 米連邦準備制度(FRB)の金融政策スタンス(インフレ再燃への対応)
  • 日銀の動向(国内物価と金利の方向)

これらをざっくり把握しておくだけで、「突然の大きなニュース」に慌てることが減ります。

(2)ポートフォリオの定期見直し(リバランス)

半年〜1年に一度、当初設定した資産配分から大きくずれていないか確認し、必要に応じてリバランスしましょう。たとえば「株式70%・債券20%・現金10%」と決めていたのに、株価下落で「株式55%・現金25%」になっていたなら、当初の方針に戻す検討をします。

第5章 注意点・NG行動

ここでは、地政学リスクが高まる局面でやりがちな「NG行動」を具体的に挙げます。

NG① パニック売り

「怖いから全部売る」は、歴史的に見て最悪のタイミングと重なりやすいです。2020年3月のコロナショック時に全部売った方のなかには、その後の回復局面に乗り遅れた方が多くいました。「下落に耐えられないリスクを取り過ぎていた」なら修正すべきですが、それは平時に行うべきことです。

NG② ニュースに飛びついた集中投資

「原油が上がるから石油株を集中買い」「有事に強いと言われる○○を一気に買う」といった行動は、素人ほどやりがちで、素人ほど高値で入りやすいです。一部の資金でエクスポージャーを取ることはあっても、ポートフォリオの大半を一点張りにしてはいけません。

NG③ SNSやYouTubeの「確実に儲かる情報」に飛びつく

地政学リスクが高まると、「今すぐ○○を買え!100%確実に上がる!」といった過激な発信が増えます。金融商品の投資に「100%確実」はありません。断定的な表現をする情報源には特に慎重になってください。

NG④ 信用取引でのポジション拡大

不透明な局面での信用取引(レバレッジ)は、損失を数倍に拡大するリスクがあります。現物資産でさえ管理が難しい局面に、さらにレバレッジをかけることは、資産を大幅に毀損するリスクがあります。

NG⑤ 「様子見」のまま何年も放置

逆の注意点も必要です。「怖いから様子見」のまま、数年間何も始めないのも問題です。長期の資産形成は時間が大切な資源です。「今始める」ことのメリットは、「市況が落ち着いてから始める」ことのそれより、長期的には大きくなる傾向があります(長期では「始めた時期」より「続けた期間」が重要になるため)。

第6章 まとめ

今回の記事で整理してきたことを振り返ります。

事実として起きたこと:

  • 2026年2月28日、イスラエル・米国がイランを攻撃し、WTI原油は93.94ドルまで急騰
  • 日本は原油の約95%を中東に依存しており、消費者物価上昇・家計コスト増加の懸念が具体化
  • 6月8日に日経平均が▲2,563円の歴史的急落、6月25日も▲613円と軟調が続く
  • 米ホワイトハウスが876億ドルの補正予算(イラン戦費含む)を議会に要求

筆者の考察(意見):

  • 876億ドルの補正予算要求は「短期で終わらない紛争」を示唆しており、不透明期間が続く可能性がある
  • 停戦協議の進展次第でシナリオが大きく分岐するため、特定シナリオに賭けるより「どちらになっても対応できる体制」が重要

長期投資家がとるべき姿勢:

  • パニック売りより「リスク許容度の再確認」
  • 積立投資は継続(下落局面こそドルコスト平均法が機能する)
  • 分散投資の徹底、特定材料への集中投資を避ける
  • ニュースの定点観測をしながら、感情でなく計画に従って動く

「今日の記事でかなり整理できました。地政学リスクって怖いだけじゃなく、自分の投資方針を見直す機会でもあるんですね。」

「その通りです。市場の乱気流は、自分のリスク許容度・分散の具合・長期方針がしっかりしているかを確認させてくれる”試験”でもあります。怖いからこそ、冷静に向き合うことが長期の資産形成の力になります。」

地政学リスクは消えることなく、形を変えながら世界経済に影響し続けます。大切なのは、リスクがないふりをするのではなく、リスクと向き合いながら自分のペースで資産形成を続けることです。

今日の相場下落に揺れているあなたへ——焦らず、計画通りに、一歩一歩続けましょう。

> 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行い、余剰資金の範囲内で投資を行ってください。市場動向は予測不能であり、元本割れのリスクがあります。

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