
「決算の指標でROEは聞いたことがあるけど、ROAって何が違うの?」

「どちらも『利益率』みたいだし、見分けがつかないんだよね…」
株の決算情報を見ていると、「ROE」と並んで「ROA」という指標が出てきます。名前が似ているので、違いが分からないまま読み飛ばしてしまう人も少なくありません。
この記事では、ROA(総資産利益率)の意味と計算方法を、仮の数字を使って初心者向けに整理します。あわせて、ROEとの違いや、数字を見るときの3つの注意点、やってしまいがちなNG行動も解説します。
なお、本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行いましょう。
ROA(総資産利益率)とは?
ROAは「Return On Assets」の略で、日本語では「総資産利益率」と呼ばれます。会社が持っている資産(総資産)をどれだけ効率よく使って、利益を生み出せたかを見る指標です。
計算式は次のとおりです。
- ROA(%)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
たとえば、次のような仮の会社で考えてみます(数字は説明のための架空のものです)。
- 当期純利益:10億円
- 総資産:200億円
この場合、ROAは 10億円 ÷ 200億円 × 100 = 5% になります。「会社が持つ資産100円あたり、1年で5円の利益を出した」というイメージです。
総資産とは、会社の貸借対照表(バランスシート)に載っている資産の合計です。現金、売掛金、在庫、工場や設備、土地などが含まれます。そして、その資産は「株主から集めたお金(自己資本)」と「銀行などから借りたお金(負債)」の両方でまかなわれています。
ROEとの違いは「借入を含めるかどうか」
ROEは「自己資本」を分母にしますが、ROAは「総資産」を分母にします。ここが最大の違いです。
- ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(株主のお金に対する効率)
- ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100(借入も含めた全体の資産に対する効率)
同じ会社でも、借入が多ければ総資産は大きくなり、自己資本は小さくなります。そのため、借入を増やすとROEは高く見えやすくなりますが、ROAはあまり変わりません。
仮の例で比べてみましょう。どちらも当期純利益が10億円の会社です。
- A社:総資産200億円、自己資本150億円 → ROA 5%、ROE 約6.7%
- B社:総資産200億円、自己資本40億円 → ROA 5%、ROE 25%
ROAはどちらも5%で同じですが、ROEはB社のほうがはるかに高く見えます。B社は借入が多いことで、ROEが押し上げられているのです。ROEだけを見ると、B社のほうが優秀に見えてしまうかもしれません。ROAを一緒に見ることで、「借入の力を借りた数字なのか」を落ち着いて確認できます。
ROAを見るときの3つの注意点
注意点1:業種によって水準が大きく違う
ROAは業種によって、普通の水準が大きく異なります。
たとえば、工場や店舗、大きな設備を多く持つ業種は総資産が大きくなりやすく、ROAは低めに出る傾向があります。反対に、設備をあまり持たずに事業を行う業種は、ROAが高めに出やすい傾向があります。
つまり、「ROAが5%だから高い」「3%だから低い」と一つの基準で決めることはできません。比べるなら、原則として同じ業種の会社どうしで比べるのが基本です。
注意点2:1年分だけで判断しない
当期純利益は、その年だけの特別な要因で大きく増減することがあります。たとえば、土地を売って大きな利益が出た年や、事業の整理で大きな損失が出た年は、ROAが普段より高く、または低くなります。
1年分の数字だけで「この会社は効率がいい」と判断せず、できれば過去5年程度の推移を見て、安定しているのか、一時的なものなのかを確認しましょう。
注意点3:高い=買い、ではない
ROAが高いことは、会社が資産を効率よく使えている一つの目安になります。しかし、それだけで「株価が上がる」「買ってよい」とは言えません。
株価は、その時点の期待や人気、金利、市場全体の雰囲気など、さまざまな要因で動きます。すでにROAの高さが株価に織り込まれていることもあります。ROAはあくまで、会社の実力を知るための材料の一つです。
ROAを見るための3ステップ
初心者が、決算でROAを確認するときの手順の例です。
- 同じ業種の会社と並べて見る:業種の違う会社と比べても意味が薄いので、まずは同業他社と比較します。
- 推移を見る:直近1年だけでなく、数年分を並べて、安定しているか、上向きか下向きかを確認します。
- ROE・自己資本比率とセットで見る:ROEが高いのにROAが低いときは、借入が多い可能性があります。自己資本比率も合わせて、財務の安定性を確認します。
数字は、各社の決算短信や有価証券報告書、証券会社の銘柄ページなどで確認できます。表示される指標の計算方法はサービスによって少し異なる場合があるため、最新の情報は必ず公式の資料でご確認ください(本記事は2026年10月時点の一般的な内容です)。
やってしまいがちなNG行動

「ROAが高い会社を探せば、失敗しないよね?」

「数字だけで決めるのは、ちょっと危ないかも…」
- ROAの高さだけで銘柄を選ぶ:ROAは数ある指標のひとつです。事業内容、業績の推移、財務、株価水準などもあわせて確認しましょう。
- 業種の違う会社を比べて優劣を決める:設備の多い業種と少ない業種では、ROAの水準が違って当然です。
- ROEの高さに惑わされる:借入が多い会社はROEが高く見えます。ROAと自己資本比率もあわせて見る習慣をつけましょう。
- 1年分の数字を過信する:一時的な利益や損失で数字が動くことがあります。
- 「高ROAだから下がらない」と思い込む:どんなに優れた会社でも、株価が下がることはあります。元本割れのリスクはいつでもあります。
初心者が意識したい考え方
投資で大切なのは、一つの指標だけで判断せず、複数の情報を組み合わせて、自分が納得できる形で判断することです。また、投資は「長期・分散・積立」が基本とされています。特定の会社に資金を集中させるのではなく、投資信託やETFなどを使って、分散を意識することも大切です。
ROAのような指標は、「なぜこの会社の利益はこうなっているのか」を考えるきっかけになります。数字を丸暗記するのではなく、まずは身近な会社の決算を一つ開いて、総資産と当期純利益から、自分でROAを計算してみるところから始めてみましょう。
まとめ
- ROA(総資産利益率)は、当期純利益 ÷ 総資産 × 100 で求める、資産の使い方の効率を見る指標です。
- ROEは自己資本が分母で、ROAは借入を含めた総資産が分母です。借入が多いとROEは高く見えやすい一方、ROAは大きく変わりません。
- 見るときは、業種の違い、複数年の推移、高い=買いではないことの3点に注意しましょう。
- ROEや自己資本比率とセットで確認すると、数字の見え方が立体的になります。
本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。最終的な判断は、ご自身の責任と余剰資金の範囲で行ってください。

