同じ指数のインデックスファンドでも成績に差が出る理由 トラッキングエラーの見方

株式投資

「つみたてNISAで『S&P500連動』のインデックスファンドを探したら、似たような商品がいくつも出てきた…」

「信託報酬の数字はほとんど同じくらいなんだけど、これって結局どれを選んでも同じなのかな?」

結論から言うと、同じ指数に連動することを目指すインデックスファンドでも、実際の値動きが指数とぴったり一致するとは限りません。このズレの大きさを表す指標が「トラッキングエラー(連動誤差)」です。信託報酬(運用コスト)だけを見て選ぶのではなく、トラッキングエラーの考え方も知っておくと、インデックスファンドを比較するときの視点がひとつ増えます。

この記事では、NISA・つみたて投資でインデックスファンドを選ぼうとしている初心者の方向けに、トラッキングエラーとは何か、なぜ生まれるのか、購入前・保有中にどう確認すればよいかをやさしく解説します。

※ 本記事の内容は執筆時点(2026年9月)の一般的な制度・商品性の解説です。個別の投資信託の詳細な数値・最新の運用状況は、必ず各運用会社の目論見書・運用報告書・公式サイトでご確認ください。

そもそもトラッキングエラーとは何か

📰 出典:トラッキングエラー|投資信託の始め方・制度|三菱UFJアセットマネジメント

トラッキングエラーとは、投資信託のリターンとベンチマーク(連動を目指す指数)のリターンとの間に生じる乖離の大きさを表す指標で、一般的に小さいほどベンチマークとの連動性が高いとされています。

📰 出典:トラッキングエラー|証券用語解説集|野村證券

インデックスファンド(パッシブ運用)は、日経平均株価やTOPIX、S&P500といった特定の指数と同じような値動きを目指して運用されますが、実際の運用で指数と完全に一致した値動きになることは稀とされています。このズレを数値化したものがトラッキングエラーです。

つまり、「同じS&P500に連動する」とうたう商品どうしを比べても、実際の値動きの精度には差が出ることがある、というイメージを持っておくとよいでしょう。

なぜトラッキングエラーは生まれるのか

「信託報酬が低ければ、それだけ指数に近い値動きになるはず」と考えがちですが、実際には信託報酬以外にもいくつかの要因が影響します。

📰 出典:トラッキング・エラー|金融・証券用語解説集|大和証券

一般的に、トラッキングエラーの発生要因としては、信託報酬や売買にかかるコスト、指数の構成銘柄をファンド内で完全に同じ比率で組み入れられない運用上の制約、配当の再投資や資金の流出入のタイミングのずれなどが挙げられます。

主な要因を整理すると

| 要因 | 内容 | |—|—| | 運用コスト | 信託報酬・売買手数料などが日々のリターンを目減りさせる | | 銘柄の組み入れ方法 | 指数の構成銘柄すべてをそのままの比率で保有する「完全法」か、一部の銘柄で近い値動きを再現する「サンプリング法」かで差が出やすい | | 現金の保有比率 | 解約対応などのため現金を一定割合保つファンドは、株式100%の指数とわずかにズレやすい | | 配当・分配のタイミング | 配当の再投資や、資金の流出入があったタイミングで一時的にズレが生じることがある |

一般的に、構成銘柄が多い指数(新興国株式指数など)を完全法で再現しようとすると売買コストがかさみやすいため、サンプリング法を採用するファンドも見られます。どちらの方法が優れているというより、「なぜそのファンドがその運用方法を選んでいるのか」を理解しておく材料として捉えるとよいでしょう。

具体的なイメージ シミュレーションで考える連動誤差

数値のイメージをつかむために、あくまで一例として考えてみましょう。仮にある指数の年間リターンが+10%だったとして、

  • ファンドAの基準価額の年間リターンが+9.9%だった場合
  • ファンドBの基準価額の年間リターンが+9.5%だった場合

どちらも「指数に連動を目指す」商品ですが、指数との差はファンドAのほうが小さく、この差の積み重なり方(ばらつき)を測ったものがトラッキングエラーだとイメージすると分かりやすいでしょう。差がわずかに見えても、保有期間が長くなるほど積み重なっていく可能性があるため、長期の資産形成を考えるうえでは無視できない視点のひとつです。

※ 上記はあくまで仕組みを理解するための簡易的な例であり、実際の数値・将来の運用成績を示すものではありません。将来の成果を保証するものでもありません。

ETFの「乖離率」との違いに注意

インデックス投資を調べていると、トラッキングエラーとは別に「乖離率」という言葉を目にすることもあります。両者は似ていますが、指しているものが異なります。

| 用語 | 何と何のズレか | 時間軸のイメージ | |—|—|—| | トラッキングエラー | ファンドのリターンとベンチマーク(指数)のリターンのズレ | 一定期間の運用成績としてのズレ | | 乖離率(ETFの場合) | ETFの市場価格と基準価額(ファンド本来の価値)のズレ | ある時点での価格のズレ |

ETF(上場投資信託)は取引所でリアルタイムに売買されるため、需給の状況によって市場価格が基準価額から一時的にズレる「乖離率」という別の論点も存在します。トラッキングエラーは「運用そのものが指数にどれだけ忠実か」を見る視点、乖離率は「取引価格が適正かどうか」を見る視点、と役割が異なる点を押さえておきましょう。

インデックスファンドを比較するときの4ステップ

1. まず「同じ指数」に連動する商品どうしを並べる

比較の前提として、ベンチマークが同じ指数の商品どうしを並べることが大切です。たとえば「S&P500連動」と「全世界株式(オールカントリー)連動」では、そもそも投資対象が異なるため、トラッキングエラーだけを比べても意味がありません。

2. 信託報酬(運用コスト)をまず確認する

トラッキングエラーを見る前に、まずは信託報酬の水準を確認しましょう。信託報酬はトラッキングエラーを生む要因のひとつであり、目論見書に記載されている基本的な比較材料です。

3. 運用報告書でベンチマークとの推移を見比べる

📰 出典:トラッキングエラーとは?|投信まるごとQ&A

トラッキングエラーは、ファンドのリターンとベンチマークのリターンの差を年率の標準偏差として数値化する方法が一般的とされています。運用会社が公表する運用報告書や月次レポートには、基準価額の推移とベンチマークの推移が並べて示されていることが多く、両者の線がどれくらい重なっているかを目で見て確認することもできます。

4. 一時点の数値だけでなく、複数期間・複数商品で見比べる

トラッキングエラーは市場環境によっても変動するため、直近1年だけでなく、可能であれば3年・5年といった複数期間の傾向を見比べると、一時的なブレなのか継続的な傾向なのかを判断しやすくなります。同じ指数に連動する複数の商品を並べて比較する視点も役立ちます。

インデックスファンド選びでやりがちなNG行動

  • 信託報酬の数字だけを見て「同じようなものだろう」と決めつける:信託報酬が近い商品でも、運用方法や規模の違いでトラッキングエラーには差が出ることがあります。
  • トラッキングエラーの数値だけを絶対視して銘柄を頻繁に乗り換える:わずかな差にこだわって何度も商品を乗り換えると、その都度の手間や機会損失につながりかねません。長期・積立の基本方針を崩してまで追いかける指標ではありません。
  • 「トラッキングエラーが小さい=必ず儲かる」と誤解する:トラッキングエラーはあくまで「指数にどれだけ忠実に連動できているか」を示す指標であり、指数自体が値下がりすれば、連動が正確なファンドほどそのまま値下がりを反映します。
  • 公表資料を確認せず、口コミやランキングサイトの情報だけで判断する:最終的な数値は、各運用会社が公表する目論見書・運用報告書で確認することが基本です。
  • ファンドの純資産総額の大小を確認せずに比較する:一般的に、純資産総額が小さすぎるファンドは、資金の流出入の影響を受けやすく、値動きが不安定になりやすいとされています。トラッキングエラーとあわせて、純資産総額の推移も確認しておくと安心材料になります。

リスクと注意点

  • インデックスファンドは、ベンチマークとなる指数が値下がりすれば、連動が正確であるほどそのまま基準価額も下落します。トラッキングエラーの小ささは「安全性」を意味するものではなく、あくまで「指数への忠実さ」を示す指標である点に注意してください。
  • 投資信託は元本が保証された商品ではなく、購入時より値下がりして元本割れとなる可能性があります。
  • 信託報酬・運用方法・トラッキングエラーの実績は、運用会社や商品の見直しによって変わることがあります。最新の数値は必ず各運用会社の目論見書・運用報告書・公式サイトでご確認ください。
  • 本記事は特定の投資信託・銘柄の購入や乗り換えを推奨するものではありません。

資産形成への発展 コスト比較の「もう一つの視点」として

信託報酬の低さは、インデックスファンドを選ぶうえで分かりやすい比較材料です。ただ、それだけで「どの商品も同じ」と判断してしまうと、実際の運用の中身にある違いを見落としてしまうことがあります。トラッキングエラーという考え方を知っておくと、

  • 目論見書や運用報告書のどこを見ればよいかが分かる
  • 「なぜこの商品はこの運用方法を採用しているのか」を考えるきっかけになる
  • 短期的な基準価額の上下に一喜一憂せず、指数との関係性という視点で保有商品を見直せる

といった形で、長期・分散・積立という基本方針のもとでの「商品を理解する力」につながります。

まとめ 信託報酬とあわせて「連動の正確さ」も知っておく

トラッキングエラーとは、インデックスファンドの値動きとベンチマークとなる指数の値動きとの乖離の大きさを表す指標です。信託報酬や売買コスト、銘柄の組み入れ方法、現金比率などさまざまな要因で生まれ、一般的に小さいほどベンチマークへの連動性が高いとされています。

インデックスファンドを比較するときは、信託報酬だけでなく、同じ指数に連動する商品どうしで運用報告書のベンチマークとの推移を見比べる視点も持っておくと、商品理解が一段深まります。ただし、トラッキングエラーが小さいことは「儲かること」や「安全であること」を意味するものではなく、指数自体の値下がりリスクは避けられません。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資信託・銘柄の購入や乗り換えを推奨するものではありません。投資信託は値動きのある商品であり、元本割れのリスクがあります。制度・商品内容は変更される可能性があるため、最新情報は必ず公式サイト・目論見書・運用報告書でご確認のうえ、投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

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