
「NISAでコツコツ増やしてきた株や投資信託、元気なうちに子どもや孫に少しずつ渡してあげたいな」

「でも、現金の贈与と違って株の贈与ってどうやるの?税金はどうなるんだろう…」
結論から言うと、上場株式や投資信託も現金と同じように生前贈与でき、年間110万円までの「暦年贈与」の非課税枠や、2,500万円まで(2024年からは別枠の年110万円も追加で)贈与税がかからない「相続時精算課税制度」を使うことができます。ただし、株式には「贈与した日の評価額をどう計算するか」「NISA口座のまま贈与はできない」といった、現金の贈与にはない独自の注意点もあります。この記事では、初心者の方に向けて、株式・投資信託を生前贈与する際の基本的な仕組みと、押さえておきたい注意点を整理します。
※ 本記事は制度の一般的な仕組みを解説する情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談・法律相談の代わりになるものではありません。特定の金融商品の売買や、贈与するかどうかの判断を助言するものでもありません。実際の贈与を検討する際は、必ず税理士・国税庁の最新公式情報をご確認ください。
なぜ「株式の生前贈与」を知っておくと資産形成に役立つのか
相続だけでなく「渡し方」も選べる時代に
将来の資産承継というと「相続」をイメージする方が多いかもしれませんが、元気なうちから少しずつ財産を移していく「生前贈与」も、資産形成・資産承継の選択肢のひとつです。特にNISA口座などでコツコツ積み立ててきた株式・投資信託がある家庭では、「増えた分を子や孫の教育資金・将来の資産形成のきっかけに」と考える方も増えています。
現金の贈与とは異なる注意点がある
現金の贈与であれば「いくら渡したか」がそのまま金額になりますが、株式や投資信託は日々価格が変動する資産です。そのため「贈与した日にいくらの価値があったとみなすか」という評価のルールや、証券会社での名義変更の手続きなど、現金にはない独自の仕組みを理解しておく必要があります。知らずに進めると、想定より税負担が大きくなったり、手続きでつまずいたりすることもあるため、事前に基本を押さえておくことが大切です。
株式・投資信託を生前贈与する方法 4つのステップ
1. 「暦年贈与」か「相続時精算課税」か、方針を考える
生前贈与の税金の計算方法には、大きく分けて次の2種類があります。
- 暦年課税(暦年贈与):もらう人1人につき、年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない基礎控除がある方式です([引用元:国税庁 タックスアンサー No.4402「贈与税がかかる場合」|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm])。
- 相続時精算課税制度:累計2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、2024年からはこれとは別枠で年110万円の基礎控除も新設されました。ただし、この制度で贈与した財産は将来の相続の際に相続財産へ加算され、相続税の計算対象になる点が暦年課税と異なります([引用元:国税庁 タックスアンサー No.4103「相続時精算課税の選択」|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4103.htm]、[引用元:日本経済新聞「生前贈与、相続時精算課税に年110万円の基礎控除新設」|https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28BYC0Y5A720C2000000/])。
どちらが向いているかは、贈与する金額・時期・家族構成によって異なります。「毎年少しずつ渡したい」なら暦年課税、「値上がりが期待される株式をまとめて早めに渡しておきたい」なら相続時精算課税、というように目的に応じて選ばれることが多いですが、最終的な選択はご自身の状況を踏まえて税理士に相談することをおすすめします。
2. 贈与する株式・投資信託の評価額を把握する
株式・投資信託を贈与する場合、贈与税の計算のもとになる金額は「贈与した日にいくらだったか」という評価額です。上場株式は、原則として贈与があった日の終値などをもとに一定のルールで評価されます(相続税評価と似た考え方が使われますが、基準となる日は異なります)。日々値動きする資産のため、具体的な評価額の算定は証券会社の残高報告書や税理士の確認を通じて行うのが安心です。
3. 証券会社で「贈与による移管」の手続きをする
現金と異なり、株式・投資信託は贈与する側の証券口座から、もらう側の証券口座へ「振替(移管)」する手続きが必要です。もらう側がまだ証券口座を持っていない場合は、未成年者名義の口座を含めて新たに口座開設が必要になるケースが一般的です。手続きに必要な書類や日数は証券会社ごとに異なるため、事前に取引のある証券会社へ確認しておくとスムーズです。
4. 贈与税の申告が必要かどうかを確認する
暦年課税で年間110万円を超える贈与を受けた場合や、相続時精算課税制度を選択した場合は、原則として翌年の贈与税の申告期間内に税務署への申告が必要です。「非課税枠内だから何もしなくていい」と思い込まず、金額や制度の選択状況によって申告の要否が変わる点に注意しましょう。申告の要否や具体的な税額計算は、国税庁の公式情報を確認するか、税理士に相談するのが確実です。
株式の生前贈与で見落としがちな注意点
NISA口座のまま贈与することはできない
見落とされがちなポイントとして、NISA口座(非課税口座)で保有している株式・投資信託を、そのまま子や孫のNISA口座へ非課税で移すことはできません。贈与する場合は、いったん課税口座(特定口座・一般口座)に払い出したうえで、通常の贈与の手続きを行う扱いになります。「NISAだから贈与も非課税」と誤解しないよう注意が必要です。制度の詳細は変更される可能性があるため、最新情報は金融庁の公式サイトで確認してください([引用元:金融庁「NISAを知る」|https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/])。
取得費は「もらった側」が引き継ぐ
株式・投資信託を将来売却して利益(譲渡益)が出た場合の税金計算では、「取得費」(もともといくらで買ったか)をもとに利益を計算します。贈与の場合、取得費は贈与時の評価額にリセットされるのではなく、原則として贈与した人が取得したときの価格・取得時期を引き継ぐ扱いになります。そのため、含み益の大きい株式を贈与すると、もらった側が将来売却したときに想定より大きな譲渡益課税を受ける可能性がある点は知っておきたいポイントです。
「名義だけ子ども」の贈与は税務上のリスクがある
実際にはお金や株式の管理を親がすべて行っており、子ども名義の口座を形式的に用意しているだけの「名義財産」は、税務調査で贈与と認められず、後から相続財産とみなされるリスクがあります。贈与を成立させるには、もらう側が口座の存在や中身を認識し、実質的に管理・処分できる状態にしておくことが大切だとされています。判断に迷う場合は、自己判断せず税理士に確認しましょう。
生前贈与を検討する際にやりがちなNG行動
- 非課税枠だけを見て、家計の余裕を確認せずに贈与してしまう:贈与する側の老後資金・生活費を圧迫してまで渡すのは本末転倒です。まずは自分たちの生活防衛資金・老後資金を確保したうえで検討しましょう。
- 評価額の計算や申告の要否を自己判断で済ませてしまう:株式の評価ルールは現金より複雑なため、思い込みで進めると想定外の税負担につながることがあります。
- 贈与契約書を作らず「口約束」だけで済ませてしまう:贈与が成立したことを証明する記録がないと、後から税務上のトラブルになる可能性があります。
- NISA口座からそのまま非課税で贈与できると誤解する:前述の通り、NISA口座の資産は一度課税口座に払い出してから贈与する扱いになります。
リスクと注意点
株式や投資信託は日々価格が変動する資産であり、贈与した後に値下がりして元本を割り込む可能性があります。生前贈与は税負担を軽減する目的で行われることが多い一方、渡した資産の運用成果を保証するものではありません。また、贈与税・相続税の制度や非課税枠は税制改正によって変更されることがあるため、この記事の内容は執筆時点(2026年8月)の一般的な情報として参考にしていただき、実際に贈与を行う際は必ず国税庁の最新の公式情報を確認するか、税理士にご相談ください。
まとめ 制度を理解したうえで、家族で早めに話し合いを
株式・投資信託の生前贈与は、暦年課税や相続時精算課税といった非課税の仕組みを活用できる一方、評価額の計算方法やNISA口座の取り扱い、取得費の引き継ぎなど、現金の贈与にはない独自のルールがあります。「渡して終わり」ではなく、贈与した後にもらった側にどのような税負担が生じるかまで理解したうえで、家族で早めに話し合っておくことが、お互いにとって安心できる資産承継につながります。最終的な贈与の方法や金額の判断は、ご自身の家計状況を踏まえ、必要に応じて税理士などの専門家に相談しながら、自己責任で行ってください。
株式・投資信託を子や孫に生前贈与する方法を初心者向けに解説。暦年贈与や相続時精算課税の非課税枠、NISA口座の注意点、取得費の引き継ぎなど押さえるべきポイントを紹介します。

