
「ビットコインをたくさん持ってる有名企業が『売った』とか『また買うらしい』とか、ニュースを見るたびに一喜一憂しちゃう…」

「大口投資家の動き次第で価格が動くなら、それに合わせて自分も売買したほうがいいのかな?」
結論から言うと、世界最大級のビットコイン保有企業として知られる米ストラテジー(Strategy、旧マイクロストラテジー)が、優先株の配当原資確保のためにビットコインの一部売却を続けていた一方で、2026年8月10日、フォン・リーCEOが「年内にビットコインの買い増しを再開する」との方針を表明したと報じられました。「絶対に売らない」という象徴的な姿勢で知られてきた企業の動きだけに、SNSやニュースでは大きな話題となっています。ただし、大口投資家・企業の方針転換のニュースに一喜一憂して自分の投資判断を変えることには注意が必要です。この記事では、このニュースの事実関係を整理したうえで、初心者が「大口ニュース」とどう付き合うべきかを考えます。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・暗号資産の購入や保有を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。
ストラテジー社とは? なぜ「売却」がニュースになったのか
ストラテジー社は、もともとソフトウェア企業でしたが、共同創業者マイケル・セイラー氏の主導のもと、企業の財務戦略としてビットコインを大量に買い進めてきたことで知られる米国の上場企業です。「ビットコインは長期保有し、絶対に売らない」という一貫した姿勢を打ち出してきたことが、同社を象徴するイメージとして広く知られてきました。
そのストラテジー社が2026年に入り、優先株「STRC」の配当支払いや買い戻しの原資を確保する目的で、複数回にわたりビットコインの一部売却を行っていることが明らかになっています。
📰 出典:ストラテジー、1690BTCを売却──CEOは「年内にビットコインの蓄積を再開」とコメント(NADA NEWS)
報道によれば、2026年8月3日から9日にかけても1,690BTC(平均取得単価約64,262ドル、売却額約1億860万ドル)を売却しており、これは6月29日に発表した「BTCレベニュー・プログラム」開始以降で4回目の売却とされています。2026年これまでの累計売却量は約6,916〜6,948BTCとされ、8月9日時点の保有量は840,447BTC(平均取得単価75,385ドル)と報じられています。
一転して「年内に買い増し再開」を表明
こうした一部売却が続く中、2026年8月10日、フォン・リーCEOが米メディアのインタビューで「年内にビットコインの買い増しを再開する」との方針を明らかにしたと複数の暗号資産メディアが報じました。
📰 出典:ストラテジーCEO「年内にビットコイン買い増し再開」(JinaCoin)
報道によれば、同CEOは今回の一部売却について「ビットコイン価格への弱気な見方によるものではなく、優先株の資本構造を整えるための戦術的な対応」と説明したとされています。また、2026年の年間実績として、約17万5,000BTCを購入する一方で売却は約7,000BTCにとどまっており、購入額が売却額を大きく上回る「ネットでの買い増し」基調が続いているとの報道もあります。
事実と、ここからは筆者の私見です
ここまでが報じられている事実関係です。ここからは、あくまで筆者の私見として、このニュースをどう読むかを考えてみます。
まず押さえておきたいのは、「絶対に売らない」と掲げてきた企業であっても、実際には資本政策上の都合(優先株の配当・買い戻し原資の確保など)で保有資産を売買することがある、という点です。企業の「方針」や「理念」と、実際の財務上の意思決定は、必ずしも常に一致し続けるとは限りません。これは非難すべきことというより、上場企業が株主・優先株主に対して負う資本政策上の責任がある以上、ある程度自然なことだとも言えます。
また、「売却した」というニュースと「買い増しを再開する」というニュースが、わずか数日〜1週間程度の間に相次いで報じられた点も注目に値します。ニュースの見出しだけを追いかけていると、「売った」→不安、「また買うらしい」→安心、というように、感情が短期間で大きく揺さぶられやすい構造になっている点は、初心者が特に意識しておきたいポイントだと筆者は考えます。
なお、CEOの「年内に再開する」という発言は、あくまで現時点での方針表明であり、実際にいつ・どの程度買い増すかは今後の資金調達状況(優先株の発行環境など)次第とされている点にも注意が必要です。相場や特定企業の先行きを断定的に予測することはできません。
この一件から資産形成への学びに発展させる
このニュースから、個人の資産形成にも通じる学びをいくつか整理してみます。
1. 「大口が売った/買った」情報だけで自分の売買を決めない
著名な企業や投資家の売買動向は、確かに市場の話題にはなりますが、その売買の背景には、その企業固有の資本政策や資金繰りの事情が絡んでいることが少なくありません。個人投資家が同じ理由で売買しているとは限らないため、「あの会社が買ったから自分も買う」「売ったから自分も売る」という短絡的な判断は避けたいところです。
2. ニュースの「感情の振れ幅」に自分の判断を委ねない
数日単位で「売却」「再開表明」といったニュースが交互に流れる場面では、価格そのものよりもニュースの見出しに気持ちが左右されやすくなります。あらかじめ自分の投資方針(いくらを・どのくらいの期間・どんな考え方で保有するか)を決めておき、個別ニュースのたびに方針を変えないことが、長期的な資産形成では大切だと考えられます。
3. 企業の財務戦略と個人の資産形成は前提が違う
上場企業は、優先株の配当義務や株主への説明責任など、個人とは異なる制約の中で資産を動かしています。企業のダイナミックな資金繰りをそのまま個人の投資判断の参考にするのは、前提条件が大きく異なる点に注意が必要です。
具体的なアクション・心構え
- 保有資産(暗号資産・株式など)がある場合、大口ニュースが出るたびに売買を検討するのではなく、まず「自分が最初に決めた投資方針・ルール」を確認する
- ニュースを見て感情的に動きそうになったら、一晩置いてから判断する、あるいは信頼できる複数の情報源で事実関係を確認してから考える
- 暗号資産は価格変動が株式以上に大きいため、余剰資金の範囲で、失っても生活に困らない金額にとどめる
- 暗号資産を売買する場合は、必ず金融庁登録の暗号資産交換業者を利用する(無登録の海外業者などは資産保全の面でリスクが高いとされています)
注意点・NG行動
- 「有名企業が買い増すらしいから今のうちに買っておこう」といった、大口ニュースへの飛びつき買いはおすすめできません
- 逆に「売却した」というニュースだけを見てあわてて売る「狼狽売り」も、冷静な判断とは言えません
- ニュースの一部だけを切り取って「絶対に上がる」「もう終わりだ」のように断定するのは、事実に基づかない思い込みにつながりやすいため避けましょう
- 暗号資産で利益が出た場合は雑所得として課税される可能性があり、確定申告が必要になるケースがあります。税金の扱いは個々の状況や制度改正によって変わり得るため、具体的な計算や申告については国税庁の公表情報を確認するか、税理士・税務署に相談することをおすすめします
まとめ 大口の方針転換は「話題」であって「シグナル」ではない
ストラテジー社の一部売却から一転しての「買い増し再開」表明は、暗号資産市場で大きな話題になりました。しかし、こうした大口投資家・企業のニュースは、あくまでその企業固有の事情に基づくものであり、個人投資家の売買判断をそのまま左右するシグナルではありません。
暗号資産は価格変動が大きく、詐欺やハッキング、送金ミスによる資産消失のリスクもある金融商品です。話題のニュースに振り回されるのではなく、自分自身であらかじめ決めた方針・ルールに沿って、余剰資金の範囲で、金融庁登録の交換業者を通じて、落ち着いて資産形成に向き合うことが大切です。最終的な投資判断は、必ずご自身の責任で行ってください。

