
「確定申告のとき『配当控除』っていう欄を見かけたんだけど、何のことか分からなくて…」

「配当金の税金の申告方法には何種類かあるって聞いたけど、配当控除とはまた別の話なの?」
結論から言うと、配当控除とは、国内株式の配当金について確定申告で「総合課税」を選んだ場合に使える税額控除の制度です。配当所得の一定割合を所得税・住民税から直接差し引ける仕組みですが、対象となる配当とならない配当があり、また必ずしも総合課税を選ぶことが得になるとは限りません。この記事では、配当控除の基本的な仕組みと、判断する際に押さえておきたいポイントを初心者向けに整理します。
※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の申告方法・課税方式の選択を推奨するものではありません。税金は個人の所得状況によって有利・不利が変わるため、実際の判断・具体的な計算は税務署・税理士にご確認ください。
前提知識 配当金の課税方式には3つの選択肢がある
国内の上場株式の配当金を受け取る際は、原則として支払い時に一定の税率(所得税・復興特別所得税・住民税をあわせて20.315%)が源泉徴収されます。そのうえで、確定申告をするかどうか、するとしてどの課税方式を選ぶかによって、最終的な税負担が変わる仕組みになっています。
配当所得の課税方式には、大きく分けて次の3つがあります。
- 申告不要制度:源泉徴収だけで課税関係を終わらせる(確定申告をしない)
- 申告分離課税:株式の譲渡損失と損益通算するために確定申告し、譲渡所得等と同じ税率で課税される
- 総合課税:確定申告をして、給与所得など他の所得と合算したうえで課税される
このうち、配当控除が使えるのは「総合課税」を選んだ場合のみです。申告不要制度や申告分離課税を選んだ場合には、配当控除は適用されません。
配当控除とは 税額控除の仕組みと控除率
[引用元:No.1250 配当所得があるとき(配当控除)|国税庁|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm]によると、配当控除は、総合課税を選んで確定申告した配当所得について、一定の金額を所得税額から直接差し引くことができる税額控除の制度です。
一般的に紹介されている控除率の目安は次のとおりです(執筆時点)。
| 課税総所得金額 | 所得税の控除率 | 住民税の控除率(一般的な目安) | |—|—|—| | 1,000万円以下の部分 | 配当所得の10% | 配当所得の2.8%程度 | | 1,000万円を超える部分 | 配当所得の5% | 配当所得の1.4%程度 |
課税総所得金額が1,000万円を超える場合は、超える部分の配当所得についてのみ控除率が半分になる計算方法が用いられます。たとえば課税総所得金額が1,025万円、うち配当所得が50万円のケースでは、1,000万円を超える25万円分は控除率5%、残りの25万円分は控除率10%として計算するといった形です。具体的な計算方法は国税庁のタックスアンサーで確認できます。
「税額控除」は、所得金額そのものを減らす「所得控除」とは異なり、計算された税額から直接差し引かれる点が特徴です。そのため、同じ控除率でも所得控除より税負担の軽減効果を感じやすい仕組みだといえます。
配当控除の対象になる配当・ならない配当
配当控除は、すべての配当金・分配金に使えるわけではありません。対象になるかどうかの主な目安は次のとおりです。
- 対象になりやすいもの:国内の上場株式・投資信託(株式投資信託)などから受け取る、内国法人からの配当金
- 対象にならないもの:NISA口座内で受け取った配当金(そもそも非課税のため申告対象外)、J-REIT(不動産投資信託)の分配金、外国株式・海外ETFからの配当金、発行済株式の3%以上を保有する大口株主が受け取る配当金 など
とくに勘違いしやすいのが、J-REITの分配金や外国株式の配当金です。これらは配当所得として課税される点は国内株式の配当と同じですが、配当控除の対象には含まれません。「配当」という名前がついていても、控除の対象かどうかは商品によって異なることを押さえておく必要があります。
総合課税+配当控除を選ぶと得になりやすいケース・そうでないケース
一般的に、次のような傾向が紹介されることが多いです(あくまで一般的な傾向であり、個々の所得状況によって結果は異なります)。
- 課税所得が少なく、所得税率が低い層:総合課税を選び配当控除を使うことで、申告不要制度(20.315%相当)より税負担が軽くなる場合がある
- 課税所得が多く、所得税率が高い層:総合課税では所得税率が高くなるため、配当控除を考慮しても申告不要制度のほうが有利になりやすい場合がある
ただし、総合課税を選んで確定申告をすると、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の算定基準となる所得金額、扶養控除・配偶者控除の判定に使う所得金額などが増える可能性があります。所得税・住民税だけで有利・不利を判断すると、こうした他の制度への影響を見落とすことがあるため注意が必要です。
手続きをする際の注意点
- 確定申告で総合課税を選ぶ場合、株式の譲渡損失との損益通算はできません(損益通算をしたい場合は申告分離課税を選ぶ必要があります)。
- [引用元:No.1000 所得税のしくみ|国税庁|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm]など公式情報でも案内されている通り、税制は改正されることがあります。かつては所得税と住民税で異なる課税方式(たとえば所得税は総合課税、住民税は申告不要)を選べる時期もありましたが、税制改正により課税方式を統一する取り扱いに変わった経緯があります。最新の取り扱いは、確定申告のたびに国税庁・お住まいの自治体の公式情報で確認してください。
- 配当控除の適用を受けるには確定申告書に必要事項を記載する必要があります。証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」などを手元に用意しておくとスムーズです。
初心者がやりがちなNG行動・失敗例
- 「配当控除があるから総合課税のほうが絶対お得」と、自分の所得水準を確認せずに思い込んでしまう
- NISA口座の配当金にも配当控除が使えると誤解してしまう
- 外国株式の配当金やJ-REITの分配金についても、国内株式と同じように配当控除が使えると思い込んでしまう
- 総合課税を選んだ結果、国民健康保険料などが上がってしまうことを知らずに申告してしまう
- 譲渡損失との損益通算をしたいのに、誤って総合課税(配当控除の対象)を選んでしまう
リスクと注意点(必ず入れる)
配当控除はあくまで税金の計算上の制度であり、株式投資そのものの元本割れリスクを軽減するものではありません。配当控除や配当利回りの高さだけに注目して個別銘柄を選ぶと、業績悪化による減配・無配や、株価そのものの下落によって、受け取る配当以上に資産価値が目減りする可能性もあります。税制面のメリットと、投資対象そのものが持つリスクは分けて考えることが大切です。
なお、本記事で紹介した控除率・制度の内容は執筆時点(2026年8月)の一般的な情報に基づくものです。税制は改正されることがあるため、実際に確定申告を行う際は、国税庁・お住まいの市区町村の最新の公式情報を確認するか、税理士にご相談ください。
まとめ 配当控除は「総合課税を選んだ場合」の税額控除
配当控除は、国内株式の配当金について総合課税を選んで確定申告した場合に使える税額控除で、課税総所得金額に応じて所得税10%・5%、住民税2.8%・1.4%程度が目安とされています。NISA口座の配当やJ-REITの分配金、外国株式の配当は対象外である点、総合課税を選ぶと国民健康保険料などに影響しうる点には注意が必要です。どの課税方式が自分にとって有利かは所得水準や他の制度への影響によって変わるため、思い込みで判断せず、必要に応じて税務署・税理士に確認しながら、長期的な資産形成の方針全体の中で税金の扱いを整理していくことが大切です。

