
「PERやPBRの意味はなんとなく分かったけど、結局どうやって銘柄を選べばいいの?」

「ネット証券のスクリーニング機能、条件項目が多すぎて逆に迷っちゃう…」
結論から言うと、株式投資における「スクリーニング」とは、時価総額・PER・PBR・配当利回りといった条件を組み合わせて、数千ある上場銘柄の中から自分の投資方針に合う候補を機械的に絞り込む作業のことです。1つの指標だけで判断するのではなく、複数の条件を掛け合わせることで、闇雲に銘柄を探すより効率的に候補を見つけられます。ただし、スクリーニングはあくまで「候補出し」の道具であり、絞り込んだ銘柄が必ず値上がりすることを保証するものではありません。この記事では、初心者でも実践できるスクリーニングの手順を5つのステップで解説し、あわせて注意点もお伝えします。
なお本記事は、個別銘柄の売買を推奨するものではなく、指標の見方・使い方という一般的な知識を紹介するものです。投資は元本割れを含むリスクを伴います。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。
そもそも「銘柄スクリーニング」とは?初心者が押さえるべき基本
スクリーニングは「候補を絞る」ための道具
スクリーニングとは、証券会社のツールなどを使い、「時価総額◯億円以上」「PER◯倍以下」「配当利回り◯%以上」のような条件を設定して、それに当てはまる銘柄を一覧表示する機能です。日本国内には上場企業だけで3,000社以上あり、1社ずつ決算を確認していては時間がいくらあっても足りません。条件で足切りをすることで、自分の投資スタイルに合いそうな候補を効率よく見つけられるのがメリットです。
多くのネット証券では口座を持っていれば無料でスクリーニング機能を使えます。項目は「割安性」「収益性」「安全性」「成長性」などに分類されていることが多く、代表的な指標として以下のようなものがあります。
- PER(株価収益率):株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標
- PBR(株価純資産倍率):株価が1株あたり純資産の何倍かを示す指標
- 配当利回り:株価に対して年間配当金がどのくらいの割合かを示す指標
- ROE(自己資本利益率):自己資本に対してどれだけ利益を生み出しているかを示す指標
- 時価総額・出来高:企業規模や株式の売買のしやすさの目安
業種によってPERやPBRの平均的な水準は大きく異なります。実際、[引用元:規模別・業種別PER・PBR(日本取引所グループ)|https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/04.html]でも、業種別のPER・PBRの統計が公表されており、同じ「PBR1倍」でも銀行業と情報・通信業とでは意味合いが変わってくることが分かります。つまり、スクリーニングの数値は「絶対的な正解ライン」ではなく、「同業他社と比べてどうか」という相対的な目安として捉えることが大切です。
なぜスクリーニングが資産形成に役立つのか
本サイトで繰り返しお伝えしている通り、資産形成の基本は「長期・分散・積立」です。つみたてNISAやインデックス投資信託を土台にしつつ、余剰資金の一部で個別株投資にも挑戦してみたいという方にとって、スクリーニングは「なんとなく話題だから」「SNSで見たから」といった曖昧な理由で銘柄を選ぶことを避け、自分なりの基準を持って候補を探すための第一歩になります。
一方で、スクリーニングで絞り込んだからといって、その銘柄が「必ず値上がりする」わけではありません。指標はあくまで過去の決算数値や現在の株価から算出された「参考情報」であり、将来の株価を保証するものではない点は最初に押さえておきましょう。
銘柄スクリーニングのやり方 初心者向け5ステップ
ここからは、初心者が実際にスクリーニングを行う際の流れを5つのステップで解説します。証券会社によって画面や項目名は異なりますが、考え方の順番はおおむね共通しています。
ステップ1:スクリーニングの目的をはっきりさせる
まず決めるべきは、「何のために銘柄を探すのか」という目的です。目的が曖昧なまま条件を設定すると、指標の見方がちぐはぐになりがちです。
- 配当金を重視したいのか(配当利回り・連続増配などを重視)
- 割安さを重視したいのか(PER・PBRの低さを重視)
- 成長性を重視したいのか(売上・利益の伸び率を重視)
これらは同時に満たそうとすると条件が厳しくなりすぎることが多いため、初心者のうちは「まずは配当重視で探してみる」など、優先順位を1つか2つに絞るのがおすすめです。
ステップ2:時価総額・出来高で土台となる条件を絞る
いきなり割安さや収益性の指標を見る前に、まずは「時価総額」と「出来高(売買代金)」で足切りをしておくと、その後の検討がしやすくなります。時価総額が極端に小さい銘柄や、出来高が少なく売買が成立しにくい銘柄は、値動きが荒くなりやすく、初心者にはハードルが高い傾向があります。
一般的な目安として、まずは時価総額がある程度大きく、出来高も一定水準ある銘柄に絞ってから次のステップに進むと、値動きの荒さに振り回されにくくなります。もっとも、これは「絶対的な安全ライン」ではなく、あくまで初心者が扱いやすい候補に絞るための目安である点にご留意ください。
ステップ3:割安さの目安として「PER」「PBR」を組み合わせて見る
次に、割安さを測る代表的な指標であるPER・PBRで条件を設定します。一般的に、PERは業種平均や過去の水準と比べて低いほど「利益に対して株価が割安」とされ、PBRは1倍を下回ると「解散価値(純資産)よりも株価が低い」とされることが多いです。
ただし、PERやPBRが低いからといって、その企業が優良企業とは限りません。業績悪化が織り込まれて株価が下がっているために指標が低く見えているだけの「見せかけの割安」であるケースも珍しくありません。そのため、PER・PBRは単独ではなく、後述するROEや配当利回りと組み合わせて総合的に見ることが重要です。
ステップ4:収益性・安定性を「ROE」「配当利回り」で確認する
割安さだけでなく、その企業がきちんと利益を生み出せているかも確認しましょう。ROE(自己資本利益率)は、株主から集めた資本を使ってどれだけ効率よく利益を上げているかを示す指標です。一般的にROEが高いほど資本効率がよいとされますが、借入(負債)を多く使うことでROEが高く見えているケースもあるため、数値の背景まで見る意識を持つとよいでしょう。
配当を重視する場合は、配当利回りに加えて「配当性向(利益のうちどれくらいを配当に回しているか)」も確認すると安心です。配当利回りが極端に高い銘柄は、株価下落によって結果的に利回りが高く見えているだけの場合があるため、高さだけで飛びつかないよう注意してください。
ステップ5:候補が絞れたら決算短信・企業情報で中身を確認する
スクリーニングで候補が10〜20銘柄程度に絞れたら、そこがゴールではなくスタートです。各企業の決算短信や有価証券報告書、企業の公式サイトのIR情報などに目を通し、「なぜその数値になっているのか」「今後も同じ傾向が続きそうか」といった背景を確認しましょう。同じ業種の銘柄同士を比較してみるのも、数値の意味を理解するうえで役立ちます。
数値だけを機械的に信じるのではなく、最後は自分の目で内容を確認したうえで判断するというプロセスを踏むことが、スクリーニングを「思考停止の道具」にしないための重要なポイントです。
目的別に見る条件設定のイメージ(あくまで一例です)
条件の組み合わせ方をイメージしやすいよう、目的別の設定例を紹介します。数値は考え方を示すための一例であり、特定の水準や銘柄を推奨するものではありません。実際に使う際は、証券会社のツールで表示される業種平均・市場平均などを参考にしながら、ご自身で調整してください。
- 配当重視型のイメージ:配当利回りが市場平均より高め/配当性向が極端に高すぎない(無理な配当をしていないか)/減配の履歴が少ない
- 割安さ重視型のイメージ:PER・PBRが同業他社と比べて低め/その理由が一時的な要因なのか構造的な問題なのかを決算資料で確認
- 安定性重視型のイメージ:自己資本比率が一定水準ある/時価総額が大きく値動きが比較的穏やか
どのタイプを選ぶ場合も、「1つの条件を満たしているから良い」と単純に判断せず、複数の指標を組み合わせて総合的に見る姿勢が大切です。
スクリーニングで初心者がやりがちなNG行動
条件を厳しくしすぎて候補がゼロ、または極端に少なくなる
「PERは10倍以下、PBRは0.8倍以下、配当利回りは4%以上、ROEは15%以上」のように条件を欲張ってしまうと、該当する銘柄がほとんどなくなってしまうことがあります。最初は条件を緩めに設定し、候補を眺めながら少しずつ絞り込んでいく方が、初心者にとっては扱いやすいでしょう。
数値が良いという理由だけで飛びつく(いわゆるバリュートラップ)
PERやPBRが低い、配当利回りが高いという理由だけで購入を決めてしまうと、実は業績悪化が進行中だったり、将来的な減配リスクを抱えていたりする銘柄をつかんでしまうことがあります。指標が割安に見える背景には理由があることが多いため、「なぜ割安なのか」を必ず確認する習慣をつけましょう。
一度絞った銘柄リストを「正解」だと思い込み、放置する
スクリーニングの結果は、あくまでその時点の株価・決算数値に基づくスナップショットです。時間が経てば株価も業績も変わるため、一度絞り込んだ銘柄リストをそのまま長期間放置せず、定期的に見直すことが望ましいでしょう。
「実績値」か「予想値」かを確認せずに比較してしまう
PERには、直近の決算(実績)を基に計算する「実績PER」と、会社側や証券会社が公表する今後の業績見通しを基に計算する「予想PER」があります。同じ「PER15倍」でも、どちらの数値かによって意味合いが変わるため、比較する際はできるだけ同じ種類の数値同士で見比べるようにしましょう。証券会社のスクリーニング画面には、どちらの数値を使っているかが表示されていることが多いので、あわせて確認する習慣をつけると誤解を防げます。
スクリーニングを使ううえでのリスクと注意点
- 指標だけで将来の株価を予測することはできません。 PER・PBR・ROEなどはあくまで過去から現在までの数値であり、将来の業績や株価の動きを保証するものではありません。
- スクリーニングで見つけた銘柄も、価格変動や元本割れのリスクがあります。 割安・好業績に見える銘柄であっても、株価が下落し投資元本を下回る可能性は常にあります。
- 個別株投資は、分散投資と組み合わせることが基本です。 特定の1〜2銘柄に集中投資するのではなく、つみたてNISA等でのインデックス投資を土台にしながら、余剰資金の範囲で個別株にも取り組むといった分散の考え方が重要です。
- 指標の計算方法や開示ルールは変わることがあります。 最新の制度・統計は、証券会社や[引用元:JPX 統計情報(株式関連)|https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/index.html]など公式情報で確認することをおすすめします。
- NISA制度など税制優遇の内容も変更されることがあります。 個別株をNISA口座(成長投資枠)で購入する場合は、対象商品の条件や非課税枠について、必ず最新の公式情報をご確認ください。[引用元:NISA特設ウェブサイト(金融庁)|https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/]
本記事は2026年8月時点の情報を基に、指標の一般的な見方・使い方を紹介したものであり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資は元本割れを含むリスクを伴いますので、必ずご自身の判断と責任のもと、余剰資金の範囲で行ってください。
まとめ 数値は「地図」、最後は自分の目で確かめよう
株のスクリーニングは、時価総額・PER・PBR・ROE・配当利回りなどの条件を組み合わせることで、膨大な銘柄の中から自分の投資方針に合う候補を効率よく見つけるための便利な道具です。一方で、指標が良いというだけで飛びつくのではなく、「なぜその数値になっているのか」を決算短信などで確認するひと手間が、思わぬ落とし穴を避けるうえで欠かせません。
スクリーニングはゴールではなくスタート地点です。焦らず、まずは条件を緩めに設定して候補を眺めることから始めてみてはいかがでしょうか。個別株投資に取り組む場合も、つみたてNISAなどによる分散投資を土台にしながら、無理のない範囲で長期的に付き合っていく姿勢を大切にしてください。

