
「NISAって聞くけど、初任給も少ないし自分にはまだ早い気がする…」

「投資って何十万円もまとまったお金がないと始められないんじゃないの?」
結論から言うと、20代・新社会人こそNISAを始めるのに向いたタイミングです。理由はシンプルで、「時間」という最大の武器を持っているからです。まとまった資金は必要なく、月1,000円や5,000円といった少額からでも始められます。この記事では、収入がまだ少ない20代・新社会人の方に向けて、無理なくNISAを始めるための5つのステップと、注意しておきたいポイントを解説します。
なお、投資である以上、価格の変動により元本割れ(投じた金額を下回ること)が起こる可能性があります。NISAは非課税の「箱」であって、元本や利益を保証する制度ではありません。この記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではなく、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。
なぜ20代・新社会人こそNISAに向いているのか
「時間を味方につけられる」のは20代の最大の強み
投資の世界では、運用期間が長いほど、価格変動が平準化されやすく、複利(利益が利益を生む効果)の恩恵を受けやすいと一般的に言われています。同じ金額を積み立てるにしても、30年間続けられる人と10年間しか続けられない人とでは、時間の使い方に大きな差が生まれます。
金融庁も、少額からの長期・積立・分散投資が資産形成の基本的な考え方であるとして、NISA制度の普及を進めています。20代でスタートすれば、たとえ相場が下落する局面があっても、その後の回復を待つ時間的な余裕を持ちやすいという点は、20代ならではのアドバンテージといえます。
📰 出典:金融庁「NISAを知る」
「お金がないから投資できない」は誤解
「投資はまとまった資金がある人がするもの」というイメージを持っている方もいますが、現在のNISA制度やネット証券では、月々1,000円や100円単位から投資信託の積立を始められる仕組みが一般的になっています。新社会人で手取りが少ない時期こそ、「まずは少額で仕組みに慣れる」というスタンスで十分です。
- 大きな金額を一度に投じる必要はない
- 給料日に合わせて自動で積み立てる設定にすれば、手間もかからない
- 慣れてきたら、昇給やボーナスに合わせて金額を見直せばよい
大切なのは「金額の大きさ」よりも「早く始めて、無理なく続けること」だと理解しておきましょう。
そもそもNISAとは?初心者向けにおさらい
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託を売却して得た利益や、受け取った配当・分配金にかかる税金(通常約20%)が非課税になる制度です。2024年から始まった新しいNISA制度では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠があり、あわせて生涯で1,800万円まで非課税で投資できる仕組みになっています(執筆時点・2026年8月)。
新社会人がまず利用を検討しやすいのは、長期の積立・分散投資に適した商品に絞られている「つみたて投資枠」です。金融庁の基準を満たした投資信託が対象となっており、初心者でも比較的商品を選びやすいのが特徴です。
- NISAは「非課税の箱」であり、値動きのある商品を買う以上、元本割れの可能性がある
- 制度の内容(非課税枠・対象商品など)は今後変更される可能性があるため、最新情報は金融庁や利用する証券会社の公式サイトで確認する
📰 出典:金融庁「新しいNISA」制度の概要
20代・新社会人がNISAを始める5つのステップ
ステップ1. 生活防衛資金と毎月の投資額を決める
投資を始める前に、まず確保しておきたいのが「生活防衛資金」です。病気・失業など不測の事態に備えて、生活費の3ヶ月〜半年分程度を、投資に回さない預貯金として別に確保しておくという考え方が一般的です。
新社会人であれば、この防衛資金がまだ十分でないケースも多いはずです。その場合は、
- まず生活防衛資金を優先的に貯めながら、
- 並行してごく少額(月1,000円〜5,000円程度)でNISAを始めて慣れておく
という進め方も一つの考え方です。いずれにせよ、「生活費を削ってまで投資に回す」ことは避け、余剰資金の範囲で行うことが大原則です。
ステップ2. ネット証券で口座を開設する
NISA口座は、銀行や証券会社などの金融機関で開設できますが、初心者にはスマートフォンで手続きが完結し、手数料が比較的低いネット証券を選ぶ方が多い傾向にあります。証券会社ごとに取扱商品・積立の最低金額・ポイント制度などが異なるため、複数を比較したうえで選ぶとよいでしょう。
口座開設には、マイナンバー確認書類や本人確認書類が必要になるのが一般的です。NISA口座は1人1口座しか持てない(税制上のNISA口座として)ため、金融機関選びは慎重に行いましょう。
ステップ3. 積立設定をする(商品はいきなり絞り込みすぎない)
つみたて投資枠の対象商品は、金融庁への届出が必要な投資信託に限定されており、いずれも長期・積立・分散投資に適した設計とされています。とはいえ、商品数は数百本にのぼるため、初心者はまず
- 国内外の株式に幅広く分散した「全世界株式型」「米国株式型」などのインデックス型投資信託
- 信託報酬(保有中にかかるコスト)が低いもの
を軸に、目論見書や運用会社の公式情報を確認しながら検討するのが一般的な考え方です。特定の銘柄・ファンドを「これが一番おすすめ」と断定することは、投資助言にあたるためこの記事では行いません。あくまで選ぶ際の一般的な視点として参考にしてください。
ステップ4. 無理のない金額で「自動積立」に設定する
金額と商品を決めたら、毎月決まった日に自動で買い付ける設定をしておきましょう。給料日の直後に設定しておけば、「余ったお金で投資する」のではなく「先に投資する分を確保する」形になり、続けやすくなります。
参考として、一定の利率を仮定した場合の積立額のイメージを表にまとめました。あくまで過去の平均的な利回りなどを参考にした一つの試算であり、将来の運用成果を保証するものではない点にご注意ください。
| 毎月の積立額 | 積立期間 | 積立元本(合計) | 年利3%を仮定した場合の目安 | |—|—|—|—| | 5,000円 | 10年 | 60万円 | 約70万円 | | 5,000円 | 20年 | 120万円 | 約164万円 | | 10,000円 | 20年 | 240万円 | 約328万円 | | 10,000円 | 30年 | 360万円 | 約583万円 |
※ 上記は年利3%で複利運用できたと仮定した単純計算の一例です。実際の運用は市場の状況により上振れ・下振れし、元本を下回ることもあります。将来の成果を保証するものではありません。
このように、投資できる金額が少額でも、運用期間が長くなるほど複利の効果が積み上がっていく可能性がある、というのが「時間を味方につける」という考え方の背景です。もちろん、これは相場が一定の利回りで推移した場合の仮定にすぎず、実際には下落する年もあれば上昇する年もあります。
ステップ5. 値動きに一喜一憂せず、続けることを最優先にする
NISAを始めた後、株価や基準価額が下落する局面は必ずと言っていいほど訪れます。ここで大切なのは、日々の値動きを見て一喜一憂しないことです。長期・積立・分散投資は「短期間で大きく増やす」ためのものではなく、時間をかけて資産形成をしていくための考え方であることを、始める前に理解しておきましょう。
20代がやりがちなNG行動
生活費を切り詰めてまで投資額を増やす
「早く始めたから、できるだけ多く投資したい」という気持ちは理解できますが、生活費や緊急時の備えを犠牲にしてまで投資額を増やすのは本末転倒です。無理な金額設定は、相場が下落した際に「生活費に困って売らざるを得ない」状況を招きかねません。
SNSの「いくら儲かった」という投稿に影響されすぎる
SNSには、短期間で大きな利益を得たという投稿が数多く見られます。しかし、それらは一部の成功例であり、同じように損失を出している人の声は表に出にくいという構造があります。他人の成果に焦って、身の丈に合わない金額を投じたり、値動きの荒い商品に飛びついたりしないよう注意しましょう。
少し値下がりしただけで積立をやめてしまう
相場が下落すると不安になり、積立を止めたり売却したりしたくなる気持ちは自然なものです。しかし、下落局面で買い付けを続けることは、平均購入単価を抑える効果(ドルコスト平均法の考え方)につながるとされており、長期の積立投資においては、下落時こそ淡々と続けることが基本とされています。もちろん、これは将来の値上がりを保証するものではありません。
つみたて投資枠と成長投資枠を混同して無理に使い切ろうとする
新しいNISAには「つみたて投資枠」(年間120万円)と「成長投資枠」(年間240万円)があり、あわせて年間360万円まで投資できます(執筆時点)。ただし、これは上限であって「使い切らなければ損」というものではありません。新社会人の収入で無理に上限まで投資しようとする必要はなく、自分の収入・支出に見合った金額で始めることが何よりも重要です。
📰 出典:金融庁「NISAを知る」よくある質問
始める前に知っておきたいリスクと注意点
投資である以上、NISAを使っていてもリスクがゼロになるわけではありません。始める前に、以下の点は必ず理解しておきましょう。
| 注意点 | 内容 | |—|—| | 元本割れの可能性 | 株式・投資信託は値動きのある商品であり、投じた金額を下回ることがあります | | 非課税枠の再利用 | NISA枠内で損失が出ても、他の課税口座の利益と損益通算(相殺)はできません | | 制度変更の可能性 | 非課税枠や対象商品などの制度内容は将来変更される可能性があります | | 短期売買には不向き | つみたて投資枠は長期の積立・分散投資を想定した制度設計になっています |
損益通算ができない点は見落とされがちですが、特定口座(課税口座)で保有している株式の売却損とNISA口座内の利益・損失は、原則として相殺できない仕組みになっています。この点も踏まえたうえで、無理のない範囲で活用することが大切です。
📰 出典:金融庁「NISAを知る」制度の注意点
新社会人からよく聞かれる3つの疑問
Q. iDeCoとどっちを優先すべき?
iDeCo(個人型確定拠出年金)も税制優遇のある制度ですが、原則60歳まで引き出せないという大きな特徴があります。新社会人のうちは、転職・結婚・住宅購入など将来の支出が読みにくい時期でもあるため、まずは必要なときに引き出せるNISAから始め、収入や生活が安定してからiDeCoの活用を検討する、という順番で考える方も多いようです。どちらが自分に合うかは収入・勤務先の制度・将来設計によって異なるため、一律に「こちらが正解」とは言えません。
Q. ボーナスが出たらまとめて投資してもいい?
ボーナスで積立額を一時的に増額できる制度を設けている証券会社もあります。ただし、ボーナスをすべて投資に回すのではなく、まずは緊急時の備えや欲しかったものへの支出とのバランスを考えたうえで、余った範囲で積立額に上乗せする、という考え方が無理のない進め方です。
Q. 会社に確定拠出年金(企業型DC)がある場合、NISAはいらない?
企業型DCとNISAは制度の目的や引き出し制限が異なるため、どちらか一方だけで十分とは限りません。すでに企業型DCに加入している場合は、拠出額や運用商品を確認したうえで、NISAを併用するかどうかを検討するのも一つの考え方です。制度の詳細は勤務先の担当部署や金融機関に確認することをおすすめします。
まとめ 焦らず、少額から一歩を踏み出そう
20代・新社会人がNISAを始める際に大切なのは、まとまった資金を用意することではなく、「早く始めて、無理なく続けられる金額で一歩を踏み出すこと」です。生活防衛資金を意識しながら、月1,000円〜5,000円といった少額からでも構いません。
投資は短期間で大きく儲けようとするものではなく、長期・分散・積立を基本としながら、時間を味方につけて取り組むものです。「絶対に増える」ということはなく、元本割れのリスクは常にあることを理解したうえで、あくまで余剰資金の範囲で、ご自身の判断と責任のもとに取り組むようにしましょう。制度の内容は変わることがあるため、実際に始める際は金融庁や利用する証券会社の公式サイトで最新情報を確認してください。

