
「会社から海外転勤の辞令が出た…うれしいけど、コツコツ積み立ててきたNISAはどうなるんだろう」

「非居住者になったら口座が使えなくなるって聞いたことがあるけど、詳しくは分からないんだよね」
結論から言うと、海外赴任などで日本の非居住者になる場合、何もしなければNISA口座はいったん閉鎖され、保有していた株式・投資信託は課税口座に払い出されます。ただし、会社の辞令による転勤など一定の条件を満たし、出国前に所定の届出をしておけば、非課税のまま最長5年間NISA口座を維持できる制度があります。この記事では、非居住者になる前後で必要な手続きの流れと、初心者が見落としやすい注意点を整理します。
※ 本記事は2026年8月時点の制度理解にもとづく一般的な解説です。手続きの詳細・最新の取扱いは金融庁・日本証券業協会および口座を開設している証券会社の公式情報で必ずご確認ください。
そもそもなぜNISA口座は「非居住者」で扱いが変わるのか
NISA(少額投資非課税制度)は、日本国内に住所がある「居住者」であることを前提に非課税の恩恵を受けられる制度です。そのため、海外赴任などで日本の非居住者になると、原則としてNISA口座をそのまま使い続けることはできません。
📰 出典:金融庁「NISAを知る」
金融庁のNISA特設サイトでは、NISA口座の対象者を日本国内に住所を有する個人などと案内しており、この「居住者」という前提が非居住者になった場合の取扱いの土台になっています。
何も手続きをしないまま非居住者になった場合、証券会社での手続きを経てNISA口座は閉鎖され、それまで非課税で保有していた株式や投資信託は、特定口座・一般口座といった課税口座へ払い出されます。払い出し後に値上がりした部分は、通常どおり課税対象になります。
非居住者になってもNISAを続けられる「継続適用」制度
一方で、2019年度の税制改正により、一定の条件を満たす場合に限り、非居住者になった後も一定期間NISA口座の非課税措置を継続できる仕組みが設けられています。これは、あくまで会社の辞令など「本人の意思だけでは避けられない事情」による出国を想定した例外的な措置です。
対象になりやすいケース・対象になりにくいケース
- 対象になりやすい:勤務先からの転勤命令・出向命令による海外赴任、それに伴い同行する配偶者など
- 対象になりにくい:自己都合による海外留学、ボランティア活動、転職を伴う自発的な海外移住など
「会社の命令によるものか」「本人の意思による選択かどうか」が大きな分かれ目になる、という点をまず押さえておきましょう。判定は証券会社・税務署の確認によるため、該当するか迷う場合は自己判断せず、必ず口座のある証券会社に相談してください。
出国前後で必要な手続きの流れ
継続適用を受けるためには、決められたタイミングで所定の届出書を提出する必要があります。ここでは基本的な流れを4つのステップで整理します。
1. 出国が決まったら早めに証券会社へ相談する
海外赴任が内示・決定した時点で、まずはNISA口座を開設している証券会社に連絡しましょう。継続適用を希望する場合は、出国日の前日までに手続きを終える必要があるため、直前になってから慌てないよう早めの相談が安心です。
2. 出国前に「継続適用届出書」を提出する
継続してNISA口座を非課税のまま維持したい場合は、出国日の前日までに証券会社へ「継続適用届出書」を提出します。この届出により、非居住者になった後も、それまで保有していた株式・投資信託を非課税のままNISA口座内に置いておくことができます。

「届出さえ出せば、海外にいる間もずっと非課税のままなの?」

「そこがポイントで、期間には上限があるみたいだよ」
3. 非居住者の間は「新規の買付」ができない点に注意する
継続適用が認められても、非居住者である間は、つみたて投資枠・成長投資枠のどちらであっても新規の買付はできません。つみたて投資の設定をしていた場合も、出国にあわせて積立は停止されるのが基本です。あくまで「すでに保有している分を非課税のまま置いておける」制度であり、非居住者の間に新たに非課税枠を使って買い増しできるわけではない、という点を誤解しないようにしましょう。
4. 帰国したら「帰国届出書」を提出する
帰国して日本の居住者に戻ったら、証券会社へ「帰国届出書」を提出します。これにより、あらためてNISA口座での新規買付(つみたて投資の再開など)ができるようになります。
見落としやすい「5年」という期限
継続適用には期間の上限があり、継続適用届出書を提出した年の翌年から数えて5年目の12月31日までが非課税措置を維持できる期限とされています。この期限までに帰国届出書を提出しなければ、NISA口座は自動的に閉鎖され、保有していた商品は課税口座へ払い出されてしまいます。
📰 出典:日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」
日本証券業協会が公表しているNISAのQ&Aでも、非居住者となる場合の継続適用の考え方や期限の取扱いが整理されています。海外赴任の期間があらかじめ「3年」「5年」などと決まっている場合でも、延長や再赴任によって期限をまたいでしまうケースもあるため、赴任期間が延びそうな場合は早めに証券会社へ確認しておくと安心です。
たとえば、2026年に3年間の海外赴任が決まり継続適用届出書を提出したものの、赴任が延長されて帰国が6年目にずれ込んだとします。このケースでは、当初の5年という期限内に帰国届出書を提出できず、NISA口座がいったん閉鎖され、保有商品が課税口座へ払い出されてしまう可能性があります。あくまで一例であり、実際の取扱いは口座を開設している証券会社にご確認ください。
実践する際の注意点・リスク
- 手続き対応の可否は証券会社によって差がある:継続適用の手続きに対応していない金融機関もあるとされています。海外赴任の可能性がある場合は、対応状況をあらかじめ確認しておくと安心です
- 払い出し後は課税口座になる:継続適用の手続きをしない、または期限を過ぎた場合、それまで非課税だった含み益にも今後は通常どおり課税されるようになります
- 元本割れのリスクは変わらない:NISA口座を継続できても課税口座に払い出されても、株式・投資信託である以上、価格変動による元本割れのリスクは常にあります。手続きの有無が投資の成果を保証するものではありません
- 判断に迷ったら自己判断しない:対象になるかどうか、期限がいつになるかは個々の状況によって異なります。必ず証券会社・税務署などの公式な案内で確認しましょう
まとめ 早めの確認と手続きで慌てないために
海外転勤・出国が決まったら、まず「継続適用の対象になりそうか」「証券会社が手続きに対応しているか」を早めに確認することが何よりも大切です。何もしなければNISA口座は閉鎖され課税口座に払い出されますが、条件を満たし出国前に届出をしておけば、最長5年間は非課税のまま資産を維持できます。
いずれの場合も、株式や投資信託は元本保証のある商品ではなく、長期・分散・積立という基本の考え方は海外赴任中であっても変わりません。制度は今後見直される可能性もあるため、最新の取扱いは必ず金融庁・日本証券業協会・口座のある証券会社の公式情報で確認してください。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却や特定の金融機関の利用を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

