6月の貿易収支が2カ月連続の赤字に 原油「中東→米国」代替調達のニュースから学ぶ、資産形成における分散の考え方

お金

「貿易赤字のニュース、正直よく分からないんだけど、家計に関係あるの?」

「中東が緊迫してるのに、なんでアメリカから原油を買う量が増えてるんだろう…」

結論から言うと、財務省が2026年7月22日に発表した6月の貿易統計で、貿易収支は4069億円の赤字となり、5月に続いて2カ月連続の赤字となりました。輸出・輸入とも前年から大きく伸びる中での赤字で、背景の一つとして、中東情勢の緊迫化を受けて原油の調達先を中東から米国などへ切り替える動き(代替調達)が進み、輸入量は減ったのに輸入単価が大きく上昇したことが挙げられています。この記事では、この貿易統計のニュースを入り口に、「国がエネルギーの調達先を分散させる動き」から、私たち個人の資産形成における分散の大切さを考えていきます。 ※ 本記事は特定の金融商品・通貨の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任で、余剰資金の範囲で行ってください。

6月の貿易統計、何が起きた?ニュースの要点整理

まずは、事実関係を客観的に整理しておきます。

そもそも「貿易収支」とは

貿易収支とは、モノの輸出額から輸入額を差し引いた金額のことです。輸出額が輸入額を上回れば「黒字」、下回れば「赤字」と表現されます。財務省が毎月発表する貿易統計は、その月にどんなモノがどれだけ輸出入されたかを示す代表的な経済指標の一つで、景気や物価、為替の動きを読み解くヒントとしてニュースで頻繁に取り上げられます。

貿易収支は4069億円の赤字、2カ月連続の赤字に

📰 出典:日本経済新聞「6月の貿易収支、2カ月連続赤字 原油輸入費が高止まり」

財務省が2026年7月22日に発表した2026年6月分の貿易統計(速報)によると、貿易収支は4069億円の赤字となり、5月に続いて2カ月連続の赤字になりました。原油の輸入コストが高止まりしていることが要因の一つとして報じられています。

輸出も輸入も大きく伸びている中での赤字

📰 出典:Yahoo!ニュース(ロイター)「貿易収支6月は4069億円の赤字、米国産原油輸入が過去最高」

同統計によると、輸出額は10兆9290億円で前年同月比19.3%増加し、10カ月連続の増加となりました。中国向けの半導体等電子部品、インド向けの精製銅などの非鉄金属、米国向けの自動車輸出が伸びをけん引したとされています。

一方、輸入額は11兆3359億円で前年同月比25.4%増加し、5カ月連続の増加でした。輸出・輸入ともに大きく伸びているにもかかわらず赤字になったのは、「輸入の伸びが輸出の伸びを上回った」ためであり、輸出が振るわなかったから赤字になったわけではない点は押さえておきたいポイントです。

原油は「量は減ったのに金額は急増」というねじれ

今回の統計で特に目を引くのが、原油の輸入動向です。原油の輸入量(数量ベース)は前年同月比13.7%減の881万キロリットルとむしろ減少しました。ところが輸入金額は同59.3%増の1兆375億円へと大きく膨らみ、輸入単価は同84.7%上昇し、1キロリットルあたり117,684円になったと報じられています。

「量は減っているのに金額は増えている」という一見矛盾した動きの背景にあるのが、調達先の転換です。米国産原油の輸入は、金額ベースで前年同月の約10倍にあたる3358億円、数量ベースでも5.6倍の272万キロリットルとなり、単月として過去最高を記録したと伝えられています。

背景にある中東情勢と、代替調達の広がり

📰 出典:共同通信(dメニューニュース)「上半期貿易赤字1兆円超 中東原油輸入量26%減」

中東情勢の緊迫化を受け、日本は原油の調達先を中東以外へ分散させる動きを強めています。2026年1〜6月の上半期累計でみると、貿易赤字は1兆円を超え、中東からの原油輸入量は前年同期比26%減少したと報じられました。中東からの調達を減らした分を米国など他地域からの調達で補おうとした結果、輸送距離の長さや原油そのものの価格差から輸入単価が上昇し、結果的に貿易赤字を押し上げる一因になった、という構図です。

なお、貿易統計の詳細・最新データは財務省の公式ページで確認できます。制度・数値は執筆時点(2026年7月)のものであり、最新の統計は公式サイトでご確認ください。

📰 出典:財務省「貿易統計」

筆者の私見・考察 「調達先の分散」はコストを伴うという現実

ここからは、事実の紹介ではなく、あくまで筆者の私見です。

今回のニュースで筆者が印象的だと感じたのは、「リスクを避けるための分散」が必ずしもタダではない、という点です。中東への依存度を下げることは地政学リスクへの備えとして合理的な判断だと考えられますが、その代わりに輸送距離が長くなったり、調達価格が割高になったりするコストを負担することになります。国のエネルギー調達戦略でも、個人の資産運用でも、「リスクを下げる行動には、何らかのコストや制約が伴いやすい」という原則は共通しているように感じます。

また、貿易赤字そのものについても、1カ月分の数字だけを見て「日本経済が弱くなった」などと断定するのは早計だと筆者は考えます。輸出・輸入とも前年から大きく伸びている中での赤字であり、原油価格という外部要因の影響が大きい点は、内訳を確認しないと見えてきません。ニュースの見出しにある「赤字」という言葉のインパクトだけで一喜一憂せず、中身を確認する姿勢が大切だと感じます。

資産形成への発展 「エネルギーを分散する国」から学ぶ、個人の分散の考え方

日本は資源を輸入に頼る「資源小国」という前提

日本はエネルギー自給率が低く、原油をはじめとする資源の多くを海外からの輸入に頼っています。今回のように地政学リスクが高まると調達コストが上振れしやすく、それが物価や為替を通じて私たちの家計にも波及しうる構造です。この「輸入に頼る構造」自体は、個人の努力で変えられるものではありません。だからこそ、この構造を前提にしたうえで、家計・資産形成の面で備えておくという発想が役に立ちます。

国の分散と、個人の分散は発想が共通している

| 主体 | 分散の対象 | 分散の目的(一般的な考え方) | |—|—|—| | 国(エネルギー政策) | 原油の調達先(中東・米国など) | 特定地域への依存によるリスクの低減 | | 個人(資産形成) | 銘柄・資産クラス・地域・通貨 | 特定の値動きに資産全体が左右されるリスクの低減 |

エネルギー調達の分散と、資産形成における分散は、対象こそ違いますが「一つに依存しすぎない」という発想は共通しています。ニュースを「自分には関係のない話」で終わらせず、家計・資産の点検のきっかけとして活用してみるのも一つの方法です。

家計・資産形成で見直したい3つの視点

  1. 外貨建て資産の保有割合を確認する:円安・資源高が重なると、資産を円だけで保有している場合、実質的な購買力が目減りするリスクがあります。全世界株式インデックスファンドなど外貨建て資産を組み入れた商品を保有している場合は、その割合を一度確認しておくとよいでしょう。
  2. エネルギー関連セクターへの偏りを点検する:資源価格の変動は特定の業種の業績に影響することがあります。保有する投資信託・ETFの業種構成を確認し、一つの業種・テーマに偏りすぎていないか見直す機会にしてみてください。
  3. 物価上昇(インフレ)への備えを考える:原油高は輸送費・光熱費などを通じて幅広い商品・サービスの価格に波及する可能性があります。現金・預金だけに資産を集中させると、物価が上昇する局面では実質的な価値が目減りするリスクがある点も踏まえておきたいところです。

なお、これらはあくまで一般的な考え方の紹介であり、特定の商品・銘柄・通貨の購入を勧めるものではありません。実際にどの程度の割合で資産を配分するかは、年齢・収入・リスク許容度によって人それぞれ異なります。

(参考)分散のイメージを簡単な例で考える

たとえば、資産のすべてを円建ての預金だけで持っている場合と、円建て資産と外貨建て資産(全世界株式インデックスファンドなど)を組み合わせて持っている場合とでは、円安・資源高が同時に進んだ局面での資産全体の値動きの受け方が変わってくると考えられます。これはあくまで考え方を整理するための一例であり、将来の運用成果を保証するものではありません。実際の資産配分は、生活防衛資金を確保したうえで、ご自身のリスク許容度に応じて検討することが大切です。

具体的なアクション・心構え 短期の値動きより「構造」を見る

貿易統計や為替のニュースは、日々細かく動きます。しかし個人の資産形成において大切なのは、その日その日の数字に一喜一憂して売買することではなく、「なぜそうなっているのか」という構造を理解したうえで、長期・分散・積立という基本方針を保つことだと筆者は考えます。

  • 貿易赤字のニュースを見た日に、慌てて外貨建て資産を買い増したり、逆に売却したりする必要は基本的にありません。
  • すでにNISAなどで積立投資をしている場合、経済指標の発表のたびに積立額を頻繁に変える必要はありません。
  • 気になる場合は、四半期に一度など、あらかじめ決めたタイミングで自分の資産配分(ポートフォリオ)を見直す習慣を作ることをおすすめします。

注意点・NG行動 貿易赤字のニュースで避けたいこと

  • 「貿易赤字=円安確定」と断定して行動すること:為替は貿易収支のほかにも金利差・地政学リスクなど、多くの要因が絡み合って動きます。一つの指標だけで先行きを断定するのは避けましょう。
  • 話題になった資源関連・エネルギー関連の個別銘柄に飛びつくこと:ニュースで注目されたからといって、特定の銘柄やテーマに資金を集中させることは、値動きが激しくなった際に大きな損失につながるリスクがあります。
  • SNS等で「円は暴落する」「今すぐ資産をすべて外貨に換えるべき」といった断定的な意見を鵜呑みにすること:将来の為替や物価の動きを断定することは誰にもできません。あくまで判断材料の一つとして参考にする程度にとどめましょう。

まとめ 数字の中身を確認し、落ち着いて分散を続ける

2026年6月の貿易統計は、貿易赤字が2カ月連続となった一方で、輸出・輸入とも前年から大きく伸びている点、そして中東情勢を背景に原油の調達先が米国などへシフトしている点が特徴的なニュースでした。

「赤字」という見出しの強さだけに反応するのではなく、その背景にある構造(エネルギー調達の分散とそれに伴うコスト)を理解することが、落ち着いた資産形成につながります。国がリスク分散のためにコストを払っているように、私たち個人も、資産・通貨・地域を分散させることで、先の読めないニュースに一喜一憂しない備えをすることができます。

最後にあらためて、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・通貨の購入や売却を推奨するものではありません。為替・物価・資源価格の動向は不確実性が高く、将来の値動きを保証するものでもありません。投資はご自身の判断と責任で、余剰資金の範囲で行うようにしてください。制度・データは執筆時点(2026年7月)の情報であり、最新の内容は財務省など公式サイトでご確認ください。

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